なかなか聞けない本音がいっぱい!
訪問看護のホントのところを
お話しします!
現役の訪問看護師さん7名が新宿・マイナビ看護師のオフィスに集合! 実際の仕事内容や訪問看護の魅力について本音で語っていただきました。意外なエピソードから共感できる思いまで盛りだくさんです。
青山洋子さん(仮名)
専門学校卒業後、循環器専門病院へ入職し、循環器内科および循環器外科で2年半の経験を積む。その後、総合病院の混合病棟を経て、すみれ訪問看護ステーション(東京都目黒区)へ転職(訪問看護歴1年8ヵ月)。
河野潤子さん
大学病院病棟で2年半、一般病院病棟を11年の経験を積む。その後、ミレニアへ転職(訪問看護歴は5年7ヵ月)。現在、係長。
阿部由加莉さん
新卒時は山形県の総合病院へ入職し、外科病棟に配属。入職して4年目、東京都の総合病院へ転職して消化器科に配属。3年の経験を積んだのち、アオアクアへ転職(訪問看護歴8ヵ月)。
鈴木典子さん
13年の病棟経験を積んだ後、訪問診療・訪問看護の現場スタッフおよび管理者として勤務。14年のキャリアを経て、ハンズマムの代表取締役兼所長に就任。呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、認定心理士の資格も持つ。
高島裕実さん
大阪府医師会看護専門学校卒業後、一般病院心臓外科および循環器内科病棟、医療センター呼吸器内科・感染症科、一般病院消化器内科および脳神経外科病棟で7年の経験を積む。その後、ミレニアへ転職(訪問看護歴1年3ヵ月)。現在、所長。
小池彩沙さん
新卒時は総合病院(東京都)へ入職し、内科病棟に配属。入職して3年目、ラックコーポレーションへ転職(訪問看護歴2年半)。現在、所長。
橋場真紀子さん
さいたま赤十字専門学校卒業後、さいたま赤十字病院へ入職し、循環器病棟に配属。入職6年目、ラックコーポレーションへ転職(訪問看護師歴10年)。現在、主任。
「病院での常識」に覚えた違和感
――皆さん病棟での看護経験をお持ちですが、今振り返っていかがですか?
河野さん
私は前職の病院で看護主任という立場でしたが、実はケアの最前線に未練がいっぱいでした(笑)。患者さんに呼び止められて「話を聞いてほしい」と言われても、その時間を作ることがなかなかできず、その方が何を伝えたかったのかわからないままになってしまったことを、ずっと引きずっていて。「患者さんに寄り添うことができないなら、私が看護師としてここにいる意味はないのかな?」と思い始め、やがて訪問看護の道を進むことになりました。
小池さん
私は病棟勤務時代からターミナルケアに興味がありましたが、病院では「この患者さんは、まもなく亡くなるだろう」という段階に至ったら、あとは心電図を見ながら「その時」を待っているような感じ。ご家族をお呼びしても間に合わなければ、患者さんは一人で亡くなっていく。それはご本人やご家族が求めていたターミナルのあり方なのだろうかという思いが強かったですね。
鈴木さん
病院では良い悪いではなく、どうしてもルーチン業務に走ってしまいますからね。一人の患者さんの死もある意味でルーチンになっている。「患者さんの話を聞く」というのは、ルーチンでないから対応しにくい。「病院は疾患を治す場所、在宅は患者さんの生活を支える場所」という性格の違いが影響している部分も大きいですね。
河野さん
訪問看護でも時間の制約はもちろんありますが、ある患者さんのケアをしている間にその場を離れて、次に向かわなければならないということは基本的にはありません。1時間を与えられたら、それは一人の患者さんのためだけの時間。「ここに、やりたかった看護があるのかな」と思いましたね。
青山さん
やっぱり「人が好き」「もっと人とかかわりたい」という思いが原動力になっているんですね。
小池さん
看護師なら皆がそうだと思いますが、それ(自分の思う看護)が満たされないと感じたとき、さあどうするのかという選択ですね。
――そのように、ある意味でルーチン化した看護というのは、訪問看護の現場では通用しないのでしょうか。
鈴木さん
病院では、個々の疾患を見る目は養われるでしょう。ただ、残念なことに私自身、入院中の患者さんに対して「どのように生きたいですか?」という質問をしたことはありませんでした。訪問看護は、「どう生きたい?」という問いかけから始まります。疾患のコントロールが多少悪かったとしても自分らしく人生を送りたいのか、あるいはそうでないのか、まずはじっくりお話ししましょう、と。これが「生活を支える場所」の意味です。訪問看護師は疾患を診るのではなく生活を支えに行くので、「患者さんの“人生の表舞台”に立ったらダメよ」と、私はスタッフによく言っています。
橋場さん
訪問看護師は黒子(くろこ)ですよね。主役になってはいけない。
鈴木さん
そうです。前面に出てはいけない。「自分らしく生きたい」と選択した結果、たとえ入院した場合より早く命を落とすことになってしまっても、それはご本人にとって納得できる死なんです。
橋場さん
やっぱり「病棟看護の常識」に染まっていると、訪問看護の世界ではやっていけない面はあると思います ね。例えば、病棟看護は患者指導というところから入るので、どうしても「上から目線」になってしまいがち。「昼食の時間は今だけなんだから、食べないなら下膳しますよ」とかね。患者さんの具合を見て、本当は後に回したほうがいいケアがあっても、「積み残しておくと準夜勤のナースに悪い」ということもありますね。患者さんのことより、組織の論理が優先してしまう例です。訪問看護では「朝9時に来てもらっても、本人は寝ていますから、リハビリなんてできませんよ」とご家族から言われたら、患者さんに合わせて 時間を再調整するわけです。
青山さん
病院では、医療者が患者さんやご家族から「ありがとうございました」と言われるのが当たり前でしたが、当時はそれほどおかしいとは感じていなかったですね。
「ルーチンでないこと」を楽しむ
――ルーチンでないことに、やりがいや面白さを見出すこともできるわけですね。
橋場さん
病院では考えられないことも多いですよ。例えば、患者さんのお宅には点滴台がないから、カーテンレールを使って対処したり。ある意味、出たとこ勝負の工夫や対応力が必要ですね。
鈴木さん
お宅ごとのローカルルールがあったり、患者さん一人ひとりの好みもそれぞれですからね。びっくりしたのは、タワシでゴシゴシと洗髪しないと気が済まない患者さんがいたこと。頭皮も傷ついているだろうに、ヘアトニックを振りかけてくれないと嫌だと言われて(笑)。
河野さん
病院であれば、「勝手なことはしないでください!」で終わり。でも、よく考えてみれば、私たちの生活でも皆それぞれが「マイルール」を持っているはずなんです。そういうものを、患者さんの生活の一場面としてとらえるのか、治療計画や病院生活の秩序を乱す行為ととらえるのか、その違いだと思います。
小池さん
もう一つ挙げると、入院している患者さんにとって、病院の看護師は誰であろうが「看護師さん」ですよね。
名前のない存在です。訪問看護では「今日は“小池さん”が来ると認識してもらえる。小さなことのようですが、私にとって自分自身が看護師として生きている意味を与えてくれるもので、いつもそのありがたさを感じています。
阿部さん
私も病院から訪問看護へ移って、自分の生きている意味というのは強く感じるようになりました。私の働きかけで患者さんの心が動き、行動に前向きな影響が与えられるとしたら、「私が訪問した」という意味が確かにあるんだと感じさせてくれます。
小池さん
そういうことって、病院にいるときにはなかなか気づけないものですよね。
訪問看護を知ることで、キャリア選択の幅が広がる
――訪問看護のやりがいや面白さを裏返すと、未経験者にとっては「訪問看護の難しさ」として迫ってくるような気もします。そうした不安は、どのように解消できますか?
青山さん
私がこの世界に入ったばかりのときも、そうした不安は確かにありました。上司に相談して、「一例ずつ体験していけばわかるようになるし、そうなるまでは同行するから」と言われても不安で。「どんな参考書を買ったらコツが載っていますか?」なんて聞いたりもしましたが(笑)、確かに飛び込んだら慣れていく、そういうものでしたね。
鈴木さん
分厚い本を読んでも、訪問看護はうまくできるようにならない(笑)。
看護師は勉強熱心で、科学的・論理的な思考プロセスの訓練もしてきているせいか、それがアダになって「えいっ!」と飛び込むことが苦手な人も多いですね。
小池さん
訪問看護は、基本的には看護師一人だけでお宅にうかがいますし、次回訪問まで時間が空くことも多いです。病棟のように、常に患者さんのそばにいるというわけにもいかない。ですから、自分にかかってくる責任は重いし、「次の訪問までに何かあったらどうしよう」と不安にもなりますよね。
でも、ステーションに帰れば仲間がいて、相談できる環境があります。現場でわからないことがあれば、その場でステーションに電話して聞くこともできる。そうした意味では「決して一人じゃない」と思ってほしいですね。
高島さん
「訪問看護ステーションのオフィスは、病院のナースステーションのようなもの」と思っておけば、気分が楽になるかもしれませんね。
鈴木さん
訪問看護では縦社会的な、上から「こうしなさい」と押さえ付けられる雰囲気があまりないというのは特徴的ですよね。私が今の会社の代表になるよう勧められたときも、「煩わしい人間関係がなく、一人ひとりのスタッフが働きやすい職場にしてもいいなら受けますよ」と言って引き受け、今年で3年目になります。
――新卒で訪問看護師になるという選択肢は考えづらいでしょうか?
河野さん
学生の頃から訪問看護師になりたいと思っていた子が就職先を選ぶとき、学校の先生は「訪問看護をするには最低3年の病棟経験がないと……」とおっしゃったそうです。彼女は一度、病院へ就職しましたが訪問看護への思いが断ちがたく、退職してうちの会社にやって来ました。現時点で1ヵ月半が経ちましたが、仕事ぶりもなかなか頼もしいうえに、「看護師になって良かったと初めて思いました」と言ってくれて、私は涙が出るほどうれしかったです。
鈴木さん
「看護師は病院にいるもの」「病棟経験がなければ訪問看護はできない」という固定観念があるのは、教育現場の頭の固さも影響しているのかもしれませんね。
河野さん
少なくとも、「3年」という期間に根拠はありませんよね。
鈴木さん
新卒の志望者が来ても、私たちは自信を持って受け入れ、一人前に育て上げますよ。
河野さん
今は看護教育のカリキュラムに在宅領域が入ってきましたね。実習で訪問看護の現場に触れる機会もあるので、良さをわかってくれる学生さんも増えてくると期待しています。病院では一人の患者さんについて病態関連図を書いてケアプランに落とし込む暇もありませんが、在宅ではじっくりと考えることができます。病院しか選択肢がなかった時代を考えると、看護師の可能性は広がりましたね。
小池さん
最近うちの会社に入ったスタッフは、病院では外来で半年の経験しかなく、出産のため退職していました。
つまり、基本とされる看護技術を現場で実践した経験がほとんどない。そこで私たちはプリセプター制度を作り、メインで指導に当たるスタッフを固定しました。また、訪問するお宅についても、比較的ケアが簡単なケースからステップアップできるよう考慮しました。彼女は今、問題なくやってくれていますよ。
河野さん
研修は受ける当人に合ったものでないと意味がないですよね。例えば、挫折を経験して自信が持てなかったり、長期のブランクのある人だったりしたら、初期のうちに成功体験を積ませてあげられるように心がけています。
小池さん
うちでは研修ファイルというものを作って、全スタッフが閲覧できるようにしています。月一回の面接時に外部研修を含めて一人ひとりの希望を聞き、成長の手助けをしています。
――新卒時から訪問看護の世界に入ると、その後のキャリア選択の幅が狭まるという懸念はありませんか?
河野さん
訪問看護をこなす力があれば、その後に病院へ就職しても立派に務まると思いますよ。アセスメント能力や、今後の転帰を予測しながら患者さん全体を見る力が格段に備わってきますから。
鈴木さん
「病院内部の部署異動でも、従来と違う科に配属されれば知らないことはたくさんありますよね。例えば、消化器外科から透析へ移って、何も勉強することなく仕事がこなせる人はいないでしょう。常に勉強は必要ですが、訪問看護から病棟への間にも、同じような壁があるにすぎないと思います。
高島さん
訪問看護では看護師としての観察力や判断力がしっかりと身につくし、病院でしかやらない技術は後から学ぶこともできますからね。
病棟看護師と訪問看護師の間にある壁を破りたい
――これからは看護師さんの転職も、病棟と在宅を行き来するような動きが活発になってくるのかもしれませんね。
鈴木さん
そうなるとうれしいですね。ただ、これは長らく感じてきたことですが、病棟看護と訪問看護をあまりにも別物と考えているからなのか、訪問看護師は病棟看護師から下に見られることがありますね。
全員そうそうそう(笑)。
鈴木さん
「訪問看護ではキャリアが積めない」というような固定観念も、そうしたところに根っこがあるような気がしています。
阿部さん
それに加えて、訪問看護に対する誤解やアレルギーがあり、転職の不安も重なって、なかなか一歩を踏み出せないんでしょうね。自分の場合もそうだったので。でも、鈴木さんや河野さんのお話をうかがって、若い志望者も増えていると知ってうれしいですね。
鈴木さん
私自身、かつては「ドクターヘリに乗ってバリバリ活躍してみたい」と思っていた時代もあります。それから、皆さんと同じように「これから私は、どのような看護師として生きていきたいんだろう?」と、何度も自問自答することになりました。正直に言って、その答えはまだ探している途中です。でも、今日の皆さんのお話をうかがって、誰もが人生の分かれ道を通ってきたんだなとわかりました。「訪問看護はすごい、病棟看護はダメ」ということではなく、一人ひとりの看護師さんが本当に自分のやりたい看護に出合うために、人生の選択肢はいくつかあるんだよということをわかってもらえればいいなと思います。
座談会を終えて
今回ご参加くださった皆さんは、「自分の目指す看護」を求めて訪問看護の世界に飛び込んだ方たち。自分の仕事に誇りとやりがいを持ち、訪問看護ならではの苦労さえも楽しげに語る姿は輝いていました。
日頃、同僚と語り合うことはあっても他の事業所で働く同じ立場の看護師さん同士で話すことはないためか、今回の座談会はご参加くださった皆さんにとっても刺激あるものとなったようです。
全員が口を揃えたのは、「不安があっても周囲がサポートするから大丈夫」という言葉。訪問看護に少しでも興味があるなら、そこへ飛び込むことを考えてみてもいいかもしれません。
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*掲載内容は、2013年12月時点のものです。
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