
「国家資格で不況に強く、平均年収が高い」といわれる看護職ですが、ほかの仕事と比較して、本当に年収は高いのでしょうか?
大卒の初任給を比べてみると、サラリーマンの平均初任給が20万2000円(厚生労働省『平成27年 賃金構造基本統計調査』)なのに対し、看護師の平均初任給は26万9788円(日本看護協会『2015年 病院看護実態調査』)と、看護師のほうが6万7000円以上高いという結果に。離職率が全国でも高い傾向にある東京都や大阪府(日本看護協会『看護職員需給状況調査』)では、慢性的な看護師不足のため、夜勤手当を高めに設定している病院も。そのため、夜勤手当を含めると、1年目でも年収が500万円を超えることもあるようです。
年代別に直近10年間の看護師平均年収をグラフ化(グラフ1)し、比較してみると労働者平均をほぼ上回る結果となりました。注目したいのは“女性労働者の平均年収”。労働者平均では、管理職などのポジションにつく40~50代の男性も含まれるため全体平均が高くなっていますが、女性労働者平均は、25~60歳までほぼ横ばいの“約300万円”。対する看護職は、年収に男女差があまりないといわれ、年齢が上がるごとに年収も上昇し、25歳以降は、“約400~500万円”を推移。女性労働者の平均年収と“約100~200万円”の差がでています。
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また、看護師・准看護師の直近10年間の平均年収をグラフ化(グラフ2)してみると、看護職は“不況に強い” ということも明らかに。2008年のリーマンショックを機に、賞与を減額する企業が増加したため、2009年度の労働者平均年収は前年に比べ約24万円程度落ち込みましたが、看護師・准看護師の年収はこの10年間、ほぼ横ばいで推移しています。
ここまでのデータから、看護職の年収は他業種と比べると【不況に強く・収入も高水準】ということがわかります。また、国家資格なので全国どこでも求人があり、出産や育児で一時的に休んでも復職しやすいというのも人気の秘密です。 しかし、現場の看護師さんからは「激務の割に給料が安い」「夜勤は増やしたくないけど、お給料は増やしたい」などの声も上がっています。
超高齢社会を迎え、地域包括ケアによるチーム医療が推進されるなか、患者さんに密接に関わる看護師の役割は大きく、いままで以上に、高度な医療知識や技術、判断力を求められます。また、在宅ケアや訪問看護などの地域医療に携わる看護師のニーズが増えていくことも予想されます。こうした看護師の役割や雇用ニーズなどの変化に柔軟に対応するためには、「資格を取得する」「専門性を極める」「病院以外で働く」など、働き方に幅を持たせることが大切です。
しかし、いざ「転職をしよう!」「キャリアプランを立てよう!」と思っても、どのようなキャリアプランがあるのか? どうしたらよいかわからない人も多いかと思います。ここでは、看護資格を活かしたキャリアプランを紹介します。
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- 【病院クリニック・施設で働く】
- ◆管理職
看護師のキャリアアップとしてまずイメージする管理職。管理職には「主任・師長・部長」があります。最近では看護師経験者を「副院長」に抜擢する病院も増えつつあります。副院長の役割は、看護部のトップとして病院の経営戦略を考えることです。病院の多くは院長(1名)―副院長(数名)で構成されています。看護部長は各病床の看護師長を取りまとめる、看護師のトップ。看護部長の看護観、人柄で看護部の雰囲気や方針が大きく変わります。看護師長は、病棟を取りまとめる役割を担い、一般企業でいえば課長クラス。主任は、看護師長の補佐役で、一般企業でいえば係長クラスです。
【平均年収】
副院長 600~1000万以上 部長 600~1000万円
師長 500~700万円 主任 400~500万円
※副院長・部長・師長は夜勤・残業手当がつかなくなり、年俸制を採用して給料を大幅にアップする場合が多く、主任は月1~3万円の役職手当が一般的。◆専門看護師
看護ケアのプロとして、患者のケアと医療者の連携を行う。
【平均年収】
450~550万円
※月1~3万円の資格手当がつくことも。◆認定看護師
臨床現場で高水準の看護技術を実践する臨床現場のエキスパート。
【平均年収】
450~550万円
※専門看護師と同じように月1~3万の資格手当がつくことも。◆助産師
妊婦さんの出産をサポート。女性限定の国家資格。試験突破は狭き門となっているが、看護職の中でも唯一、独立開業の権利がある資格。
【平均年収】
450~550万円◆訪問看護師
地域ケアのプロフェッショナル。地域の訪問看護ステーションに所属し、患者さんの自宅に訪問してケアをする。訪問看護で独立開業し、経営者として活躍することも可能。
【平均年収】
380~500万円
◆介護支援専門員
介護に関するエキスパート。ケアを必要とする人の相談を受け、最適なケアを総合的にコーディネート、マネジメントする。
【平均年収】
360~400万円 - 【企業で働く】
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◆保健師
病気予防のスペシャリスト。地域の保健所や企業、学校の保健室がおもな活躍の場。夜勤ナシ、土日休みなど労働環境が安定しており、人気資格のため就職・転職競争率は高め。
【平均年収】
380~420万円◆治験コーディネーター(CRC)
病院やクリニックなどへ訪問し、適切に治験が行われるように患者さん、医師、製薬会社などの調整を行うコーディネートのプロ。幅広い職種の人と接するので視野が広がる。
【平均年収】
380~450万円 - 【教育・研究】
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◆養護教諭 ◆看護教員
学校の保健室で児童の健康管理を行う「養護教諭」や、看護師養成学校で生徒を指導する「看護教員」などのほか、大学院等で看護関連の研究を行うなどの選択肢も。
【平均年収】
養護教諭 400~500万円 看護教員 400~450万円 - 【独立・起業する】
- 経験や資格を活かし記者として活躍するほか、ヘルスケアの会社などを設立するなど。
- 【社会活動・政治・行政】
- ボランティア活動に貢献する、国会・地方議員として活躍するというキャリアパスも。
- ※上記で明記している平均年収は地域や病院の規模、手当の有無などによって異なります
看護師のキャリアプランは以上のようにさまざま。「専門性を極める、技術向上をめざす」「病院で管理職になる!」「企業に勤めて働く時間を安定させる」「助産所を開設する」……など、いろいろな可能性や活躍の場があり、看護資格での職域の広がりは無限大です。
看護師は、『不況に強い・収入も高水準・求人が多い・職域が広い』など、数多くの魅力がある職業ですが、『キツイ・汚い・ツライ』という不満の声も多く、看護師の9割超が精神、肉体疲労を訴えています(全国大学高専教職員組合『労働状況に関する調査』)。 日本看護協会の調査によると、過去5年の離職率は11%前後と高い水準で推移(『2015年 病院看護実態調査』)しています。また、経験年数平均5年の看護師の約7~8割が転職を経験しているというアンケートも。理由の多くは、結婚・子育て・育児などライフスタイルの変化ですが、過酷な労働環境や過度なストレス、手取りへの不満という声もありました。
看護師の退職理由 TOP5
1. 子育て・育児・出産
2. 結婚
3. 忙しすぎる
4. 賃金への不満
5. 人間関係やストレス
(「マイナビ看護師」調べ)
長い看護師人生、一度や二度の転職はもはや当然のようですが、
できるだけ自分のライフスタイルに合った満足度の高い職場を選ぶにはどうしたらよいでしょうか?
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転職を成功させる3つのポイント
1. 生活スタイルを考えたキャリアプラン形成
2. 希望条件を1つに絞らない
3. しっかりと情報収集をする
男性の看護師が増えたとはいえ、看護師の9割以上は女性です。そのため、結婚・出産・育児などのライフイベントが仕事に大きく影響します。家族の協力なくしては、働き続けることはできません。また、人の命を預かり、長時間・不規則な勤務になりがちで、人間関係のストレスも多いため、鬱など心の病にかかりやすい職業だといわれています。もし心の病気にかかってしまったら、たとえ年収が下がったとしても、ストレスのない、快適な職場選びをすることは、お金以上に大切なことです。自分の生活スタイルを考え、看護師としてどう働いていくかを考える、つまり「1.生活スタイルを考えたキャリアプラン形成」が重要になります。
2つめに、「2.希望条件を1つに絞らない」ということも重要になります。
たとえば、忙しい急性期病棟に勤めていた人が、結婚を機に転職を考え「夜勤のない職場」を希望したとします。しかし、「夜勤ナシ」という条件だけで職場を選ぶと、求人の選択肢が1/5~1/10程度にぐっと狭くなってしまい、なかなかいい求人に巡り会えない場合もあります。また、「とにかく給与の高い病院で働きたい」という条件だけで病院を選んでしまうと、ハードすぎる職場で、長く働けないというような失敗を招くこともあります。「通勤時間」を考えて職場を選ぶことは長く働く上で非常に重要ですが、育児などの理由で「自宅から近い職場」という条件だけで小さなクリニックを選んでしまい、看護に対する考え方が院長先生と合わずに、すぐに辞めてしまったという転職失敗例も数多くあります。
このように、1つの条件だけで転職先を決めてしまうと失敗しがちです。 転職先を選ぶ際に大事なのは、自身が本当に大事にしたい条件(たとえば「ワークライフバランス」「年収アップ」「自身に合った看護観をもつ看護部長のいる病院」など)を最低2つ、3つは洗い出し、それらのバランスを重視することです。すべてにおいて完璧な求人は世の中に存在しないかもしれません。でも、それぞれがほどほどにバランスよく調和のとれた求人はあるはずです。転職先の希望は1つに絞らず、3~4つのファクターを考え、自分の中で優先順位を付けて整理することが大切です。【自分の希望条件を書き出してみる】
「やりたい看護が実現できる」「教育体制がしっかり整っている」「通勤時間が短い」
「育休・産休制度がある」「資格の補助金が出る」「休みが取りやすい」
「賞与がある」「夜勤手当が高い」「退職金制度がある」「評価制度がしっかりしている」
「見学ができる」「手取り10万アップ」「雰囲気がよい」「人間関係が良好」「正職員」
など、上記のように転職で希望すること、重視することを書き出してみましょう。そこに優先順位をつけ、希望条件を整理すると、ライフスタイルに合った、理想の職場が見つかりやすくなります。
3つめのポイントとして重要なのが「3.情報収集」です。求人票に書いてある情報が希望条件に合っているからと、転職を決めたところ……
「掲載されている内容と病院の内情がまったく違っていた!」
「看護部長の看護観と合わず職場の雰囲気になじめなかった」
など、イメージしていた職場とのギャップが大きすぎて、すぐに辞めてしまったというケースもみられます。こうした失敗を防ぐために大切なことは情報収集です。実は、求人票や求人広告には書かれていないリアルな情報をゲットできるかどうかが、「転職成功のキーポイント」だといっても過言ではありません。病院を見学に行く、実際に働いている人に話を聞くといったことで、求人には書かれていない情報をしっかり収集しましょう。 しかし、
「転職希望の病院に知り合いなんていない……」
「実際の残業時間がどれくらいあるかなんて聞きにくい」
「見学に行きたいって誰に言えばいいの?」
というように、調べにくい、聞きにくい、わからないことも多く、がんばって情報を調べようとして、「見学に行っただけなのに、話が進んでしまい、第一希望ではない病院に入職が決定してしまった」とったケースもあります。このように自分だけで希望条件を整理し、病院の情報を収集するのはなかなか大変な作業です。
そんなときは、転職支援サービスなどを利用してみましょう。転職のスペシャリストであるキャリアアドバイザーが、1~3のポイントをおさえ、一人ひとりに合った働き方や職場選びをサポートしてくれます。自分では聞きにくい「具体的な賞与」「夜勤手当の金額」や「詳細な労働条件」といった、求人票には掲載されていないリアルな情報を収集してくれるだけでなく、「手取りアップの交渉」や、「月曜だけは絶対に5時まで」といった希望条件の交渉なども行い、求人票にはない新しい働き方を提案してくれることも。いい職場をみつけて長く働くことは、看護師としての生涯年収アップにつながり、長期的に見れば数百~数千万円の差が出ることも。 一人で転職・復職先を探すのは難しい、転職にいつも失敗する、掲載されていない病院の情報を知りたい、ブランクがあるのでまずは相談に乗ってほしい……というときに転職支援サービスを活用してはいかがでしょうか?
使命感に燃え、誓いを立てた戴帽式から早数年……。憧れと現場の違いに苦悩することもあったかと思います。しかし、そんなときこそチャンスです。 自分に合った理想の職場で5年後、10年後も自分らしくイキイキ活躍してください!
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