「訪問診療と訪問看護の違いと働き方」セミナーレポート|2023/1/12~~2023/1/26開催
セミナー概要
2023年1月「訪問診療と訪問看護の違いと働き方」セミナー
マイナビ看護師主催のオンライン合同セミナーが、期間限定で開催されました。3法人が参加し、「訪問診療と訪問看護の違いと働き方」をテーマに、在宅医療の現状と看護師の役割について、また実際に訪問診療・訪問看護で働く看護師さんへのインタビューを実施。本レポートでは、充実のセミナー内容をぎゅっとまとめてご紹介します。業務内容の詳細や、訪問の仕事ならではのやりがいなど、訪問診療・訪問看護への転職を考えている看護師さんは必見です!
【講演内容】
■医療法人社団 平郁会
「在宅医療の現状と看護師の役割」
「訪問診療の働き方を紹介&看護師へインタビュー」
■医療法人社団 しろひげファミリー
「訪問診療/訪問看護の働き方を紹介&看護師へインタビュー」
■ソフィアメディ株式会社
「訪問看護の働き方を紹介&看護師へインタビュー」
セミナーの様子
閉じる
セミナーレポート
■医療法人社団 平郁会
医療法人社団平郁会は、24時間365日、休日・夜間関係なく対応できる往診体制を整えているクリニックです。本セミナーでは、在宅医療や地域医療の現状と、看護師の役割について詳しく解説。さらにクリニックの案内や訪問診療の働き方についての説明、現役看護師のインタビューなど、充実の内容をお届けしました。
<在宅医療の現状と看護師の役割>
現在の看護師を取り巻く状況について、まず「看護師の離職問題」が挙げられます。高齢社会による医療・介護業界の慢性的な人手不足に加えて、新型コロナウイルスにより、それがさらに加速している状況です。また職場環境としては、残業や夜間のオンコール対応等の負担といった不規則な勤務形態が引き起こす「ワークライフバランスの保持困難」や、ライフステージの変化が離職の要因として考えられます。
診療報酬の改定や医療の発展にともない、在院日数が短縮化していることから、在宅医療のニーズが高まっています。今後、病院の病床数は大きく増加する見込みはなく、サ高住や有料老人ホーム等の施設が新しく開設することはあっても、高齢者の増加率と比較すると足りないため、やはり「在宅でいかに多くの方が過ごせるか」が重要なポイントとなるでしょう。
国としても、病院医療から在宅医療へ移行するようさまざまな施策が打ち出されています。今後は「外来・入院・在宅」の3本柱で支える必要があり、在宅は必要不可欠です。なかでも、地域を支えるチームの一員として、看護師の役割は以前にも増して重要度が高まっていると感じます。
在宅医療では、スペシャリストよりジェネラリストが求められます。高い専門性をもつスペシャリストが求められる看護師は、専門分野以外ではスキルを活かしづらく、看護師としての活躍場所が限られる場合があります。一方、在宅医療は患者の年齢、疾患、生活環境、地域性等が多種多様であり、臨機応変な対応と柔軟な思考やマネジメント力が求められるジェネラリストが必要とされるため、在宅医療で培った知識やスキルは、どの分野でも通用するでしょう。
訪問看護と訪問診療は、働き方に違いがあります。訪問看護師は、患者さまが療養生活を円滑に送れるように支援する療養上の世話が求められます。健康観察・医療処置に加えて、利用者の生活に時間をかけてじっくり関わりながら、精神的ケアや生活支援もおこないます。一方で、医師と訪問する訪問診療看護師は、診療の補助がメインです。連携する多職種への情報提供や、医師の指示をわかりやすく補足説明したり、環境を整えたりと、看護師としての療養上の世話に関する視点が必要不可となります。
在宅医療で働く魅力は、日勤と夜間がしっかり分かれた勤務体制なのでワークライフバランスを保ちやすいこと、チームで協働し、患者さまを尊重した医療・看護の提供が実現できること、治療優先の医療提供ではなく、個別性の高い看護が提供できることなどが挙げられます。
今後看護師に求められるのは、「臨機応変さ」と「柔軟な姿勢と調整力」、そして患者さまを尊重したサービス提供のために、多職種との連携や多角的に物事を捉える力も大事です。それらを身につけることで、看護の幅を広げることができるでしょう。
<法人概要/訪問診療の働き方>
私たち平郁会は、患者さまの求めに対して、「断らない」ということを大切にしています。24時間365日、休日・夜間関係なくいつでも連絡がつく往診体制を整えており、精神科、神経内科、皮膚科など専門医による診療体制や医療機関手配など、さまざまなサービス体系をご用意しています。
訪問診療の帯同はもちろん、地域の関連職種の方々との連携、検査や処置の実施、コールセンター対応など、看護師の業務は多岐に渡ります。
当法人が求める人物像は、「思いやり、気づきのある方」「ポジティブに考えて行動できる方」「仕事に情熱を持って取り組める方」「療養者や多職種の方々を尊重し、協働できる方」「新しい学びを吸収しながら看護師として成長したいと思っている方」です。このような姿勢を大切に、これまでの経験を活かし、一緒に地域で活躍できる方をお待ちしています。
<看護師インタビュー>
結婚出産を経て有床クリニックで働いていましたが、子育てに余裕が出てきたところで、「今まで経験してきたことをさらに活かしたい」と考えるようになりました。高齢化社会ということもあり、在宅の需要が増えるなか、医療サポート体制が整っていることや、日中・夜間のオンオフがしっかり分かれていることが入職の決め手になりました。訪問看護も検討しましたが、訪問診療の方がより医療寄りであることに魅力を感じて、こちらを選びました。
未経験のまま入職することは不安で、戸惑いもありましたが、わからないことはすぐに調べたり、先輩スタッフに優しく教えてもらったりしました。慣れてきたころには、病棟、在宅、どの現場にいても私にできることややるべきことは同じだと思い、不安はすぐに解消されていきました。在宅医療では、限られた設備・情報・時間のなかで、患者さまに安心して過ごしていただくことを考えなければなりません。必要な知識をしっかりつけることが大切です。また患者さまのご家族や、医師とのコミュニケーション、多職種連携の能力はとてもついてきたと実感しています。
具体的な仕事内容は、バイタル測定と医師の診察サポート、検査をするのであれば心電図をとったり採血をしたりします。患者さまのお宅から出た後も、訪問看護師さんやケアマネージャーさんと今後の方向性をふまえた情報共有をするために、車の中で相談させていただくこともあります。
患者さまだけではなく、大切なご家族を失った辛さに寄り添うグリーフケアも、私が大事にしていることのひとつです。ご自宅でのお看取りの後、ご家族から「不安もあったが心強かった」というお言葉をいただいたことは、訪問診療のやりがいにつながりました。今年、在宅慢性期領域の特定行為研修を終了しました。そこで学んだことを活かし、患者さま、ご家族さまが在宅で安心して過ごせるように、さらに観察の視点、手技スキルアップ、コミュニケーション能力を磨いていきたいと思っています。
■医療法人社団 しろひげファミリー
医療法人社団 しろひげファミリーは、在宅診療、訪問看護ステーション、居宅支援事業、訪問介護ステーション、社会貢献活動の5つの事業を展開をしています。本セミナーでは、現在募集している訪問看護師と随行看護師の仕事内容や待遇について詳しく解説。看護師2名によるインタビューもたっぷりとお届けしました。
<法人概要/訪問診療・訪問看護の働き方>
当院はガン末期の方や重症度の高い患者さまが多く、「どんな疾患の方でも断らない」をモットーに、在宅でのお看取りができるように全スタッフ一丸となりサポートをしております。随行看護師の1日の流れは、朝のカンファレンス・全体朝礼後、9時ごろから16時ごろまで1日8件から10件ほどのお宅に医師と訪問し、採血やバルーン交換、褥瘡処置などをおこないます。診療所に戻ってからは、スタッフ間での情報共有をします。当院の患者さまはさまざまな疾患をお持ちであり、それらの症例を医師とともに近くで見ることができるのが、当院の随行看護師の特徴です。訪問時にはドライバーが必ず付きますので、運転をすることはなく、運転免許も不要です。続いて訪問看護師ですが、朝の流れは同様です。ただし件数は1日4件から5件、一人ひとりの患者さまに深く関わることができるのが特徴です。業務に慣れてきましたら、可能であればオンコールの対応もお願いしています。訪問看護師の場合、ご自身で車を運転して訪問していただくため、運転免許をお持ちの方、お車の運転に抵抗がない方にお願いしたいと思っていますが、自転車での訪問もご相談可能でございます。随行看護師は、往診対応や診療が長引いた際に残業が多少発生しますが、月に10時間~20時間程度です。基本的に土日祝日がお休みですが、2023年の4月から土曜診療をスタートする予定なので、土曜日勤務できる方を歓迎します。各種社会保険制度完備、訪問看護師のオンコール手当は別途支給いたします。在宅領域が未経験だった看護師も多く在籍しており、手厚い研修制度のご用意もあるので、ご安心ください。
<訪問看護師インタビュー>
以前外科病棟で働いていたとき、訪問看護師さんと関わった経験から、訪問看護師を目指すようになりました。当院では常に医師が側にいる環境で働くことができますので、患者さまの思いを一番大切にしつつ、医師の思いを伝えながら尽くせることにやりがいを感じています。またその思いを共有できる仲間がいるのも心強いです。
入職後のフォロー制度として、病棟と同じようにプリセプター制度を設けており、看護技術はもとより心のケアもできるよう寄り添いながらサポートいたします。急いですぐに一人立ちさせるということは考えていません。しろひげファミリーの訪問看護ステーションは、在宅診療に併設されたステーションなので、お看取りの患者さまが多くいらっしゃいます。常に患者さまのことを考え、ともに泣き笑い、そして支え合いながらチームで仕事をしているステーションです。
<随行看護師インタビュー>
以前はクリニックに勤めていましたが、転居にともない転職活動をしたところオファーをいただき、訪問診療について調べるうちに奥の深さを知り、興味を持って飛び込みました。病院とは違い、在宅では治療よりも患者さまやご家族の苦痛を取ることを最優先します。また、病院には当たり前にある物品がご自宅にはない、ということも最初は困りました。入職直後はギャップに戸惑いましたが、徐々に理解し、今は納得しながら随行看護師をしています。
訪問診療では、患者さまとご家族に自分が求められていることを実感でき、大きな喜びを感じます。ご自宅で最期を迎えられるというのはこんなにあたたかいものなんだ、と患者さまの笑顔やご家族の感謝の言葉がやりがいにつながっています。最初は不安でしたが、実際に訪問診療をやってみて、これほど奥が深くてやりがいのある仕事はないと実感しています。
■ソフィアメディ株式会社
<会社概要/訪問看護の働き方>
在宅医療のニーズが高まる一方、受け皿不足のため「自宅で最期を迎えたい」という希望を叶えられなくなる可能性があることから、在宅医療の重要性はさらに高まっています。また、看取り難民や入院関連機能障害の方が多くいるなかで、訪問看護の担い手も不足しています。医療・福祉全体で、1,000万人ほどケアを提供する人材がいるとされていますが、訪問看護師は非常に少ない割合です。こうした社会の課題を解決する訪問看護師やセラピストの活躍は、これから必要不可欠です。
ソフィアメディがミッションとして掲げる「生きるを看る」は、自己犠牲で成り立つものでなく、スタッフの「生きるを看る」も含まれています。スタッフの心身を健康に保つ取り組みとして、コンディションを可視化したり、相談しやすい環境を整えたりと、コンディションの早期キャッチアップに努めています。
働き方改革プロジェクトとして最も活用されているのが、時間単位で取得可能な有給制度です。お子さまの行事への対応や、病院の受診で中抜けするなど、柔軟に利用できる制度です。新人研修後はOJT、フォローアップ研修、Off-JTなど、適宜弊社の教育研修グループに相談できる体制も整えられており、手厚い研修とサポートをご用意しています。さらにキャリア形成については、職域・職種を超えた挑戦が可能です。弊社は未経験の方の不安にも対応できるように、ICT化を率先して推進し、人事施策も含めや教育体制をしっかりと整えているので、ぜひご安心ください。
<看護師インタビュー>
ソフィアメディに入職して、お客さま一人ひとりの「生きるを看る」に寄り添えるということに、看護師としてとてもやりがいを感じています。病院と違い環境が整っていない点や、困った時に自分ひとりで判断しなければいけない点など、訪問看護師として大変なことはたくさんありますが、ご自宅にあるもので工夫したり、チームで連携して助け合ったりして乗り切っています。
急性期で働いた経験もありますが、やはり病院は「病気を診る」ことに特化しているので、治療を優先に対応していました。一方在宅では、「生きるを看る」ことに寄り添っていて、お看取りの時にも温かみのある最後のお別れができることが、病院との大きな違いだと思います。
訪問ならではの楽しさや喜びもたくさん感じます。ご家族さまに、「家族がひとり増えたと思って何でも言ってくださいね」とお伝えできることが、在宅の素晴らしさです。その方の辛さを取ってあげることはできなくても、寄り添うことで安心感を与えられる訪問看護師の仕事にやりがいを感じています。
「患者さん中心の看護がしたい」という看護師さんから人気が高まっている訪問診療・訪問看護業界。ここ数年で大きく変化した在宅医療の現状、病院の看護業務とは異なる業務内容、そして1日のスケジュールや働き方も大きく違います。各法人によっても特徴や待遇はさまざまです。疑問に感じたことやもっと詳しく知りたいことなど、マイナビではみなさんのお悩みに個別にお答えいたします。「未経験だけど大丈夫?」「面接対策が知りたい」など、どのようなことでも構いませんので、ぜひキャリアアドバイザーにご相談ください。