• 2022年5月24日
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地域看護とは? 現場で活躍する訪問看護師・保健師の仕事内容も

 

昨今の核家族化や共働き世帯の増加などによって在宅看護が難しくなる一方、「住み慣れた地域で自分らしく生きたい」と望む高齢者の方は多く存在します。家族など特定の個人や施設に頼らず地域ぐるみで健康づくりに取り組むことで、高齢者の方はもちろん若い世代の方も大きなメリットを得られるでしょう。

当記事では、地域看護の概要および地域看護分野で活躍する看護師の仕事などについて解説します。看護師の活躍の場として、近年注目される「地域」に関心を持つ方は、ぜひ参考にしてください。

地域看護とは?

地域看護とは、地域住民および集団・組織の健康増進や病気予防などをサポートする看護を指す言葉です。社会情勢や地域の特性に合わせて広く看護サービスを提供することで、人々の健康かつ幸福な暮らしの実現に寄与します。

健康面から人々のQOL向上に貢献し健康寿命の延伸を図ることは、よりよい地域社会を作るためにも不可欠といえるでしょう。

地域看護学の定義

日本地域看護学会は、地域看護学を「看護師および保健師、助産師に求められる基礎的な知識とスキルを伸ばすための学問」と定義しています。

地域看護学の大きな目的は、地域住民の健康と安全を支え、生活の質の向上と継続性の保障に貢献することです。また、企業や学校などさまざまなコミュニティとの協力を通じてよりよい看護を探求しつつ、健康で安全な地域社会づくりの一端を担うことも重要な目的です。生活の場や健康レベルに関係なくあらゆる人々を健康面から支えることで、一人ひとりが自分らしい暮らしを実現できることを理想とします。
(出典:日本地域看護学会「地域看護学の再定義」

在宅看護学・公衆衛生看護学との関係性

病気や障がいを抱えつつ自宅で暮らす方とそのご家族などを対象とする在宅看護は、地域看護を構成する重要な要素の1つです。在宅看護は基本的に療養中の方向けの看護であり、病気の早期発見・治療や重症化予防などが重視されます。

一方で公衆衛生看護は集団、組織、地域といったコミュニティのための看護であり、看護される方の年齢や健康レベルは一様ではありません。そのため公衆衛生看護学では健康づくりや病気予防に主眼が置かれており、健康情報の提供やコミュニティの環境改善の支援などを中心とします。
(出典:日本地域看護学会「地域看護学の定義について」
(出典:日本公衆衛生看護学会「日本公衆衛生看護学会による公衆衛生看護関連の用語の定義」

地域看護が注目されている理由

地域看護が注目されている理由

地域看護の仕組みを整えることで医療機関の負担が軽減され、看護師の活躍の場も増えると期待できます。看護師の雇用を拡大しキャリアアップのチャンスを増やすことは、持続可能な医療・介護システムを整えるためにも欠かせません。

次に、地域看護に関連する厚生労働省の取り組みについて解説します。

地域医療構想とは?

少子高齢化により、医療従事者数の減少や病床不足などが懸念されています。患者さん一人ひとりに合わせた医療を効率よく提供するためには、医療機関の細分化や地域との連携強化などが鍵となります。

地域医療構想は、地域における高度急性期・急性期・回復期・慢性期それぞれの医療ニーズを満たしてよりよい医療サービスを提供するための医療計画です。各地域ではまず2025年の医療ニーズに関する推計値や各医療機関の現状などを把握し、病床機能分化や連携強化を進めています。加えて、在宅医療の充実や医療スタッフの確保・育成なども重要な課題です。
(出典:厚生労働省「地域医療構想」

患者さん一人ひとりの体調や家庭状況などをよく把握している看護師は、地域医療において特に重要な役割を担う存在です。看護師の皆さんが適切な医療ケアを行いつつ患者さんと医療・介護関係者などの橋渡し役となることで、患者さんのQOL向上に貢献できるでしょう。

地域包括ケアシステムとは?

要介護状態の方が増えている現在、住み慣れた場所で自分らしく生き続けることを望む方が少なくありません。各自治体は2025年をめどに地域包括ケアシステムの構築を進め、地域の状況に応じて医療・介護・生活支援などを一体的に提供する仕組みを整えています。
(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

また、障がいのある方や子育て世代の方などを対象とするケアシステムづくりも重要な課題です。子育て世代の方のQOLを上げ、少子化を食い止めるためには、地域で協力して子育てを支える仕組みが不可欠となるでしょう。

地域包括ケアシステムにおける看護師の活躍の場は、医療機関や福祉施設のほかにも多岐にわたります。例えば地域包括支援センターで健康相談・介護予防関連業務などを担うスタッフの中には、看護師資格を持つ方が少なくありません。また、看護師資格者として福祉用具や医薬品などの研究開発に携わる方も増えています。

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地域看護において活躍する訪問看護師

地域看護において活躍する訪問看護師

地域看護に携わりたい看護師の皆さんには、訪問看護師などがおすすめです。訪問看護師は医療機関や訪問看護ステーションなどに所属し、自宅療養中の患者さんを訪問して看護サービスなどを提供します。訪問看護師のおもな業務は、次の通りです。

看護師の業務の例

  • 主治医の指示に基づく医療ケア
  • 健康チェック
  • 身体介護、生活支援
  • 服薬、栄養管理
  • リハビリ
  • 認知症ケア
  • ターミナルケア
  • ご家族向けのアドバイス

勤務先によっては、上記の業務に加えて新規利用者獲得に向けた営業活動や社用車メンテナンスなどを行うこともあります。医療ケアや健康チェックはもちろん、身体介護やご家族のサポートなども訪問看護師の重要な業務です。そのため、訪問看護師は一般的な病棟看護師と比べて介護職に近いといえるでしょう。

訪問看護師を目指す際にチェックしておきたいポイントは、次の通りです。

在宅看護・訪問介護との違い

訪問看護と似た言葉に、「在宅看護」「訪問看護」があります。

在宅看護は、自宅療養が可能な状況において主治医の指示を得つつ自宅で看護を行うことです。在宅看護においてはご家族がおもな看護者となり、必要に応じてデイケアなどのサービスを利用します。在宅看護の一環として訪問看護サービスを利用した場合は、自宅を生活拠点としながら医療スタッフによる看護を受けることが可能です。

なお、訪問看護と訪問介護には次のような違いがあります。

  訪問看護 訪問介護
サービス提供者 看護師
※必要に応じて、作業療法士や理学療法士が同行
介護福祉士資格などを持つホームヘルパー
おもなサービス内容 医療ケア・健康チェック
身体介護
リハビリ
患者さんやご家族へのアドバイス
身体介護
生活・家事支援
利用者さんやご家族へのアドバイス
サービスの利用条件 要支援・要介護認定を受けなくても利用可能 要支援・要介護認定を受けたのち、ケアマネジャーに相談してケアプランを作ってもらう

ホームヘルパーは医療行為ができないため、訪問介護においては身体介護や生活・家事支援などが中心となります。患者さんが訪問看護と訪問介護を併用している場合、訪問看護師は介護スタッフと連携しながら必要なケアを提供することが大切です。

訪問看護師になるには?

訪問看護師になるためには、看護師または准看護師資格が必要です。病棟看護師などと比べて業務の幅が広い訪問看護師は、1人で多くの責任を負うこととなります。そのため訪問看護師になる際は3〜5年程度の臨床経験を求められることが多い傾向です。一方で、近年は新卒や未経験で訪問看護師を目指せる施設も見られます。

訪問看護師は基本的に夜勤がなく、土日祝日も休みやすいことがメリットです。ただし勤務先によってはオンコール対応を求められる場合があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

訪問看護に活かせる資格

訪問看護師になるためには、看護師・准看護師資格が必須であるものの、特別な専門資格は特に求められません。しかし、次のような資格を持っておくと、キャリアの選択肢を広げやすくなるでしょう。

●運転免許

患者さんの自宅などを訪問する際、自動車の運転を必要とすることが少なくありません。そのため、運転免許を持っていない方は取得することがおすすめです。また、ペーパードライバーの方はまず運転に慣れておくと安心でしょう。ただし、都市部などでは電動自転車や公共交通機関などでの移動が基本となることもあります。

●特定認定看護師

特定認定看護師は、特定の分野において高い看護スキルを持つ看護師に与えられる資格です。2020年度からは在宅ケアをはじめとする19分野の教育が開始されており、次の条件をすべて満たすことで資格を取得できます。

  • 認定看護分野の経験3年以上を含め、看護師としての実務経験が5年以上ある
  • 認定看護師教育機関に入学し、計800時間程度のカリキュラムを修了する
  • 全カリキュラム修了後、認定審査に合格する

(出典:日本看護協会「資格認定制度 認定看護師」

●専門看護師

専門看護師は、質の高い看護ケアに加えて患者さんのご家族のケアや保健福祉医療に関わる人々のコーディネーションなどを行います。また、看護実践の場で研究活動を行いながら知識・技術向上を図ることも専門看護師の役割です。2022年現在は在宅看護やがん看護など14分野が設定されており、次の条件をすべて満たすことで資格を取得できます。

  • 専門看護分野の経験3年以上を含め、看護師としての実務経験が5年以上ある
  • 看護系大学院修士課程を修了し、専門看護師教育課程において定められた26単位または38単位を取得する
  • 専門看護師教育課程の修了後、認定審査に合格する

(出典:日本看護協会「資格認定制度 専門看護師」

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訪問看護師に向いている人の特徴

訪問看護師に向いている人のおもな特徴は、次の通りです。

・患者さん一人ひとりとじっくり関わることにやりがいを感じる

患者さんの入れ替わりが激しい急性期病棟などでは、一人ひとりの患者さんとじっくり向き合って看護できないケースが多々あります。患者さんの自宅でケアを行う訪問看護師は、周囲にほかの患者さんがいない状況で患者さん本人やご家族と落ち着いて信頼関係を築くことが可能です。

・医療機関以外の場所で医療に携わることに興味がある

訪問看護師は、患者さん一人ひとりのご家族や介護スタッフ、そして地域住民の方と顔を合わせる機会が多くなります。医療スタッフに限らずさまざまな立場や職業の人々と日常的に接することで「地域に貢献している」と実感でき、ときには看護活動に役立つヒントを得られるでしょう。

地域看護で重要な役割を担う保健師とは?

地域看護で重要な役割を担う保健師とは?

健康に関する相談・指導業務などを行う保健師は、訪問看護師と同じく地域看護や地域包括ケアシステムにおいて欠かせない存在です。実際の業務内容は、勤務する場所によって大きく異なります。

行政保健師 保健所や保健センターをはじめとする公的機関に勤務し、健康診断時の保健相談などを行う
学校保健師 教育機関(中学・高校・大学など)に勤務し、学生・生徒・教職員向けの健康相談やケガの応急処置などを行う
病院保健師 病院に勤務し、健康診断・健康相談や看護師のサポート業務などを行う
産業保健師 民間企業・団体に勤務し、従業員の健康管理などを行う

病気・ケガの治療および悪化予防を専門とする看護師に対し、保健師は健康な人の病気予防や健康維持に関する業務に特化しています。とはいえ両者の業務内容には共通点も多く、看護師から保健師へのキャリアチェンジを目指す人も少なくありません。

保健師を目指す際にチェックしておきたいポイントは、次の通りです。

保健師になるには?

保健師国家試験を受けるためには、まず看護師資格を持っていることが前提となります。すでに看護師資格を持っている場合は、自治体指定の保健師養成所などで保健師課程を修了し国家試験を受ける方法が一般的です。

看護師資格を持っていない場合の資格取得方法は、次の2種類に大きく分かれます。

  • 4年制大学で看護課程と保健師課程を修了し、看護師国家試験と保健師国家試験を同時に受験する
  • 3年制短大や専門学校へ通って看護師国家試験を受験し、合格後に保健師養成施設などへ通って保健師国家試験を受験する

なお、2022年現在保健師国家試験の試験科目は「公衆衛生看護学」「疫学」「保健統計学」「保健医療福祉行政論」となっています。
(出典:厚生労働省「保健師国家試験の施行」

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保健師の仕事に活かせる資格

地域看護現場における保健師の業務やスキルアップに役立つおもな資格は、次の通りです。

●ケアマネジャー(介護支援専門員)

地域包括支援センターや介護福祉施設などで活躍するケアマネジャーの主要業務は、要介護者向けケアプラン作成やマネジメント業務などです。ケアマネジャーを目指す場合はまず介護支援専門員実務研修受講試験を受験し、合格後に介護支援専門員実務研修を修了します。なお、受講試験を受けるためには保健師や看護師として5年以上の経験が必要です。
(出典:厚生労働省「介護職員・介護支援専門員 概要」

●養護教諭免許(一種・二種)

小中学校などで「保健室の先生」として働くためには、養護教諭免許が必要です。保健師養成施設などで所定の単位を修了した場合は、各自治体へ申請すれば養護教諭二種免許を取得できます。

管理職を目指す場合などは、一種免許の取得を検討するとよいでしょう。一種免許を取得するためには、国が定める教員養成機関に半年以上在籍し所定の単位を修得する必要があります。4年制大学で養護教諭育成課程を修了した場合は、各自治体への申請により取得が可能です。

養護教諭一種・二種免許取得後各自治体の教員採用試験に合格すれば、養護教諭として働くことができます。
(出典:厚生労働省「教員免許状に関するQ&A」
「養護教諭の免許資格を取得することのできる大学」

保健師に向いている人の特徴

保健師に向いている人のおもな特徴は、次の通りです。

・話しやすい雰囲気を持っている

保健師は、業務の特性上不特定多数の方から相談を受ける機会が多くなります。初対面の方の緊張をほぐしつつ「この人なら安心して話せる」と思ってもらうためにも、親しみやすくおだやかな雰囲気づくりを心がけるとよいでしょう。

・相手の小さな異変や心の動きに素早く気づける

例えば健康相談を受ける場合、相談者さん自身がなぜ困っているか、何を話せばよいかをよく理解していないこともしばしばです。保健師が相手の様子や何気ない話の内容などに注意することで、健康トラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。

病院と地域をつなぐ退院支援・退院調整看護師

病院と地域をつなぐ退院支援・退院調整看護師

退院支援・退院調整看護師は、入院中の患者さんとご家族が退院後も適切なケアを受けつつ自分らしく過ごせるよう支える看護師です。

退院支援は、退院後の療養生活に関する患者さんやご家族の意思決定を支えることです。患者さんやご家族が病状を正しく理解し、また退院後に受けたい医療ケアなどについて主体的に考えることで、療養生活上の課題や解決方法を探りやすくなります。またご家族や医療スタッフ・ソーシャルワーカーなどに向けて退院前カンファレンスを行い、退院を阻む要因や退院後に起こり得る問題などを共有することも欠かせません。

退院支援の一環として行う退院調整は、患者さんやご家族の意向に沿って退院後の療養環境を整えるための作業です。例えば在宅看護に必要なサービス・器具類の手配や、身体介護に関するご家族向けのアドバイスなどが退院調整に当たります。退院調整部門がある医療機関では、退院支援・退院調整看護師がチームのまとめ役となります。

退院支援・退院調整看護師を目指すために必要な資格は特にないものの、病棟での経験や在宅看護関連の経験などを求められるケースが少なくありません。また、一部の地域や医療機関では退院支援・退院調整看護師向けの研修プログラムも設けられています。

ソーシャルワーカーとの違い

退院支援・退院調整看護師は、患者さんやご家族に対しておもに医療面からアプローチすることで退院後の療養生活を支えます。一方、ソーシャルワーカーは患者さんやご家族が抱える心理的な問題あるいは社会生活上の問題の解決に重点を置くことが特徴です。

退院によって患者さんの生活拠点が自宅や介護福祉施設に変わると、地域社会と関わる機会が多くなります。退院支援・退院調整看護師とソーシャルワーカーがそれぞれの得意分野を活かして協働することで、患者さんとご家族がより自分らしく生きるための助けとなるでしょう。

退院支援・退院調整看護師に向いている人の特徴

退院支援・退院調整看護師に向いている人のおもな特徴は、次の通りです。

・根気よく、かつ柔軟に対応することができる

退院後の療養生活について患者さんやご家族の意見が食い違ったり、意見が二転三転したりすることは珍しくありません。医療スタッフとしてより患者さんに近い立場にいる退院支援・退院調整看護師は、患者さんやご家族の不安をくみ取りつつ最良の選択をできるよう促すことが重要です。そのため、相手を急かしたり自分の意見を押し付けたりせずじっくり話を聞くスキルが役立つでしょう。

・マネジメント業務を得意とする

退院支援・退院調整看護師としてさまざまな職種や立場の人をまとめるためには、チームのスケジュール管理能力や状況を素早く判断し的確な指示を出す能力が求められます。主任・リーダーなどを経験した方や話し合いをまとめることが得意な方は、退院支援・退院調整看護師に向いているでしょう。

地域看護領域への就職・転職はマイナビ看護師で!

「老いや病気と共存しながら最後まで自分らしく生きたい」というニーズの増加を受けて、地域看護領域の看護師の確保・育成に注力する自治体が増えています。地域看護領域では訪問看護師や保健師をはじめ多くの職種の方々が活躍しており、看護師は幅広いキャリアを築くことができるでしょう。

全国各地の看護師求人を扱う「マイナビ看護師」では、エリアや業界に精通したキャリアアドバイザーが求職者をサポートいたします。地域看護分野でキャリアアップしたい方はもちろんワークライフバランスを重視し地元で無理なく働きたい方も、ぜひご活用ください。

まとめ

地域看護は、地域全体で住民・組織・団体の健康づくりを支え、持続可能な医療・介護システムの構築に寄与するための看護です。看護師は地域看護に欠かせない存在であり、近年は医療機関以外の現場で活躍する方も少なくありません。

マイナビ看護師では常に多くの看護師求人を扱っており、看護業界に強いキャリアアドバイザーが求職者を全力でサポートいたします。看護師として新しいことに挑戦したい方や転職に不安がある方は、マイナビ看護師へお気軽にご相談ください。

※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています

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