• 2022年5月24日
  • 2022年5月25日

小児科で働く看護師の仕事内容は? やりがいや求められる資格・適性

 

「子どもが好き」「子育ての経験を活かしたい」といった理由から、小児科を専門とする看護師さんは多く存在します。しかし、小児科での勤務経験がない方の中には、小児科の看護師が活躍できる場所や具体的な仕事内容について詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。

当記事では、小児看護師の仕事内容や主な職場、平均年収や求められることが多い資格・スキルについて解説します。小児科看護師のやりがいやメリット・デメリット、小児科看護師に向いている人の特徴を押さえたうえで、自分に合った働き方ができるか検討しましょう。

小児科とは?

小児科は、小児期の病気の診断を行い、患者さんへの治療を行う診療科を指します。小児科の受診には「何歳まで」という年齢制限はありませんが、乳幼児や学齢期・思春期の子どもを中心に診察や治療、処置を行うことが一般的です。

小児科の特徴として、感染症やアレルギー性疾患、呼吸器系疾患など、多様な疾患を扱うことが挙げられます。また、治療だけでなく、予防接種や乳幼児健診などを行い、保護者に発達状況や養育のポイントなどを指導する役割も果たしていることも、ほかの診療科とは異なるポイントといえるでしょう。

小児科には、呼吸器系や消化器系の疾患で受診する患者さんが多く見られます。また、入院している患者さんには、周産期に発生した病態のケアにあたる方も存在します。

小児科が主に担当する乳幼児期・学齢期の人口は年々減少傾向にあり、入院患者数も連動するように減少中です。しかし、当該年代における人口に占める入院患者の割合は大きく変わらないことから、今後も一定の需要があると考えられます。

また、外来で小児科を受診する患者さんの人数には、過去と現在で大きな変化は見られません。このことから、少子高齢化が進む現代においても、小児科のニーズは高いといえるでしょう。
(出典:厚生労働省「小児医療に関するデータ」

小児科で働く看護師の仕事内容

小児科で働く看護師の仕事内容

看護師はさまざまな診療科で活躍しており、各診療科の特徴・特性に応じた業務を行っています。それでは、小児科で働く看護師は主にどのような業務に携わっているのでしょうか。

ここでは、小児科で働く看護師の主な仕事内容について詳しく解説します。小児科未経験ではあるものの、小児科の看護師の仕事に興味がある方はぜひ参考にしてください。

医療行為

小児科で働く看護師の主な仕事は、ほかの診療科と同様に、問診や処置を行う医師を補助することです。小児科では小さな子どもの患者さんを相手にすることも多く、患者さんが診察や処置の際に泣いたり暴れたりする場合もあります。患者さんをうまくなだめ、落ち着いて診療・処置を受けられるようサポートすることも看護師の重要な役割です。

さらに、特定の器官の診察・治療を行う他診療科とは違い、小児科では子どもに関するさまざまな疾患を総合的に診察・治療するという特徴があります。小児科の看護師は、感染症や循環器系疾患、アレルギー、発達障害などさまざまな領域のケアに対応できるよう、幅広い専門知識と看護技術を身につけて実践することも大切です。

患者さんのケア

小児科の入院患者さんは主に子どもであるため、食事や就寝のサポートといった身の回りのお世話を行うことも看護師の大切な仕事の1つです。また、入院生活における精神的なストレスを和らげるために、クリスマスやひな祭りなどの季節のイベントを企画・実施することも多くあります。

また、診察や治療を怖がる患者さんに対しては、病気に関することや治療・検査のことなどを分かりやすく説明する「プレパレーション」を実施し、精神的なケアを行います。処置前から処置後までの一連の過程で患者さんに寄り添い、患者さんが前向きに治療に取り組めるようなサポートに努めることも、小児科看護師の重要な仕事といえるでしょう。

患者さんの家族のケア

小児科では、患者さんである子どものケアと同時に、保護者など家族のケアを行うことも大切です。子どもの病気の内容・状態によっては、保護者が強い不安を感じて神経質になることもあります。患者さんの家族との会話などから不安や悩みを感じ読み取り、精神的なサポートを行うことが求められます。

また、家庭でのケアが適切かつスムーズに行えるよう、必要な知識や技術を患者さんの家族に分かりやすく伝えることも大切です。患者さんの病状を理解してもらい、適切な治療・療養ができるよう、家族など周囲の大人も含めたサポートを心がけましょう。

小児科看護師が働く職場

小児科看護師が働く職場

小児科看護師として働ける職場は多数ありますが、勤務先によって主な仕事内容や小児科看護師として身につけられる知識・スキルが異なります。小児科看護師としてスキルアップ・キャリアアップしていくためには、自分のキャリアプランや学びたいことに適した職場を選ぶことが大切です。

ここでは、小児科看護師が活躍できる主な職場を5つ紹介します。各職場の特徴をふまえたうえで、自分に合った働き方ができる勤務先を選びましょう。

総合病院

総合病院や大学病院といった比較的規模の大きな医療機関では、多くの場合、小児科の外来・病棟が設置されています。

小児科病棟では、重篤な疾患や先天性疾患を抱える患者さんが入院していることもあります。小児疾患に関するさまざまな知識・スキルを身につけたい方に向いているといえるでしょう。小児科は人気のある診療科であるため、病院によっては希望通りに配属されない可能性もあることに注意が必要です。

こども病院

こども病院(小児専門病院)は、小児科やその周辺領域を専門とする病院を指します。主に乳幼児や学齢期・思春期の子どもを対象とした医療機関ですが、妊産婦や胎児を患者さんとして受け入れている施設もあります。

こども病院は小児科専門であることから、小児科への志望度が高い看護師の方に人気のある職場です。施設数が少ないため、倍率が高い傾向がある点に注意しましょう。

小児科クリニック

小児科クリニックは、主に周辺地域に住む子どもたちの診療を行う医療機関を指します。入院設備がない施設が多く、日勤のみで夜勤やオンコール対応がないため、仕事と家庭との両立も実現しやすいでしょう。

一方で、保育園・幼稚園や学校の降園・下校後といった時間に受診する患者さんも多く、他診療科のクリニックより残業が多い傾向があることに注意が必要です。また、冬季は風邪やインフルエンザなどの感染症で受診する患者さんが増加し、業務量も増えるケースが多いことに留意しましょう。

NICU(新生児集中治療室)

NICU(新生児集中治療室)とは、先天性疾患がある新生児や低出生体重児、手術を必要とする新生児などの管理・治療を集中して行う施設です。看護師は新生児のケアや体調管理、急変時の対応にあたりながら、保護者や家族への精神面でのケアも行います。

NICUに入っていた患者さんの状態が落ち着いてきた場合、GCU(継続保育室・回復治療室・発育支援室)に移ってケアを実施します。体調管理のほか、授乳指導・沐浴指導や保護者のメンタルケアなど、退院後も親子が健やかに生活できるようサポートすることがGCUの看護師の主な仕事となります。

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PICU(小児集中治療室)

重篤な疾患をもつ新生児期以降の小児患者さんには、PICU(小児集中治療室)で集中的な治療・管理を行います。

PICUは専門性が高いうえに施設数も限られているため、遠方から入院してくる患者さんもいます。一般の小児科病棟よりも重篤な疾患をもっているケースが多く、ハイレベルな知識やスキル、的確な処理能力・正確な判断能力が求められるでしょう。

小児科看護師の平均年収

小児科看護師の平均年収

小児科看護師として働くことを考えている方の中には、小児科看護師の年収がどの程度であるか気になる方もいるでしょう。厚生労働省のデータでは、看護師全体の平均年収は「約492万円」と示されていますが、小児科看護師の年収相場はどのくらいなのでしょうか。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

マイナビ看護師が扱っている小児科看護師の求人では、約350万〜500万円前後といった年収額が提示されているケースが多く見られます。就職後の勤続年数や経験・スキルによっては、さらなる収入アップも見込めるでしょう。

なお、入院病棟がある病院などでは、夜勤手当やオンコール手当などの分、年収も高くなる傾向があります。約400万〜550万円といった年収額が提示されているケースも見られます。また、給料だけでなく、出産・育児休暇や介護休暇など、自分が活用したい福利厚生があるかどうかチェックすることも大切です。

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小児科看護師のやりがい・メリット

小児科看護師のやりがい・メリット

看護師に限らず、自分に合った仕事を見つけるためには、その仕事の魅力やメリットについて理解しておくことが大切です。自身が携わる領域のよい側面を知っておくことで、就職活動などにも積極的に取り組めるでしょう。

ここでは、小児科看護師が仕事にやりがいを感じることが多いポイントや、小児科ならではのメリットについて紹介します。

小児科分野の専門知識が身につく

小児科では、ほかの診療科のように症状や器官・部位ごとに分かれておらず、子どもが抱える疾患のほぼすべてに対応するという特徴があります。それぞれの疾患に対し適切に対応することが求められる小児看護師は、仕事をこなす中で幅広い専門知識・スキルを身につけられるでしょう。

また、小児期によくかかる感染症や先天性疾患、発達障害など、小児科分野の専門知識を習得できることも小児科で働くメリットの1つです。専門性が高いため、看護師としてのスキルアップにもつながります。

子どもの成長に密接に関わることができる

小児科は重篤な疾患以外にも、感染症やアレルギーといった身近な疾患を広く診察するほか、乳幼児健診や予防接種など子どもの健康に深く関わります。健康状態にかかわらず、小さな頃から小児科のかかりつけ医をもつ家庭も多いため、看護師は一人ひとりの患者さんと長く付き合うことになります。子どもたちの成長を間近で感じることができるでしょう。

また、入院していた患者さんが元気になって退院していく姿にやりがいを感じる方も多く存在します。子どもの成長を保護者などの家族とともに見守れることは、小児科看護師の仕事における魅力の1つです。

小児科看護師の大変な点・デメリット

小児科看護師の大変な点・デメリット

小児科看護師の仕事はやりがいやメリットも多い一方で、働くうえで大変に感じることも少なからず存在します。しかし、看護師を目指す方や看護師として活躍している方であれば、大変に感じることや注意点を事前に把握することで、十分対応できるでしょう。

ここでは、小児科看護師の仕事における大変な点や、デメリットと感じることが多いポイントについて解説します。メリットと併せて確認し、小児科看護師になるための心の準備をしておきましょう。

苦しむ子どもや家族への対応が難しい

小児科看護師は、病気に苦しむ子どもに対し、ストレスを和らげて病気への不安や心身の負担を軽減させることが求められます。病気についてうまく理解できない年齢の子どもや、入院・通院が長引いている子どもには、特に細心の注意を払って対応することが大切です。

また、小児科では患者さんである子どもの保護者と信頼関係を築き、必要な治療をスムーズに進めることも重要になります。特に小さな子どもを育てる保護者は、子どもの病気に対してナーバスになりがちです。病状や治療法を分かりやすく誠実に説明し、不安を取り除くことも求められます。

子どもは急変のリスクが高い

子どもの患者さんの場合、成人よりも急変の件数自体は少ないといわれていますが、小さなミスによって重大な事故が発生するケースがあります。小さなミスから患者さんの容態急変につながる恐れもあるでしょう。

急変のリスクを最大限抑えるためには、ミスがないよう常に緊張感をもち、急変時には状況をすばやく判断して対応することが大切です。実際にあったケースを学び、必要な知識やスキルを着実に身につけて、急変時には適切な対応をとれるようにしておきましょう。

小児科看護師に求められる資格

小児科看護師に求められる資格

小児科の看護師として働くために必要な資格は「看護師資格」のみであり、そのほかの特別な資格は必要ありません。

しかし、小児科看護師としてスキルアップしたい方や、患者さん・家族のメンタルケアについて勉強したい方は、小児科勤務に役立つ資格取得に挑戦することもおすすめです。

ここでは、看護師が小児科での仕事に活かせる主な資格を紹介します。

専門知識を高められる資格

小児科領域の専門知識を高められるものとして、主に以下の資格が挙げられます。

  • 小児看護専門看護師
    子どもたちの健やかな成長・発達をサポートできる知識・スキルが身につきます。多職種との連携や高水準の看護ケアについても学べる資格です。
    (公式サイト:https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cns
  • 小児救急看護認定看護師
    救急時の小児に対する救命スキル・トリアージの実践に関する知識・スキルが身につく資格です。虐待への対応や、子ども・親の権利擁護も担います。
    (公式サイト:https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn
  • 新生児集中ケア認定看護師
    高いリスクを抱える新生児へのケアや、病態変化の予測と重篤化の予防、適切な親子関係を構築するためのサポートについて学べる資格です。
    (公式サイト:https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn
  • 助産師
    助産師は看護職の1つであり、妊産婦のケアや分娩介助、新生児のケアを担う職業を指します。胎児や妊産婦に関する知識は小児科での勤務に活かせるでしょう。
    (公式サイト:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/157

精神的なケアに役立つ資格

小児科における患者さんやその家族への精神的なケアには、主に次の資格が役立ちます。

  • 臨床心理士
    資格取得により、臨床心理学に基づいた知識や技術を活用し、心の問題を解決できるよう取り組む能力を培えます。患者さんや家族の心のケアに役立つでしょう。
    (公式サイト:http://fjcbcp.or.jp/
  • 社会福祉士
    障害などで日常生活を送ることが難しい方からの相談を受け、アドバイスや適切な福祉サービスへの紹介などのサポートを行います。社会福祉士としての知識を活用すれば、より患者さんや家族に寄り添った支援ができるでしょう。
    (公式サイト:http://www.sssc.or.jp/shakai/shikaku/index.html
  • チャイルドマインダー
    家庭的保育に関する専門的な知識やスキルを学べます。子どもの個性に合った看護ケアを実践したい方におすすめです。
    (公式サイト:https://www.hoiku.co.jp/
  • 思春期保健相談士
    心身の成長・生育が著しく、周囲からの影響を受けやすい思春期の子どもたちに対し、専門的な知識や経験に基づいて対応し、健全な成長をサポートすることができます。
    (公式サイト:https://www.jfpa.or.jp/puberty/consultant/

小児科看護師が向いている人の特徴

小児科看護師が向いている人の特徴

小児科看護師が向いている人の特徴には次のようなものが挙げられます。

小児科看護師が向いている人の特徴

  • 子どもが好き
  • 忍耐力がある
  • コミュニケーション能力が高い
  • 観察力がある

子どもと接する機会が非常に多い小児科では、「子どもが好き」という気持ちが大きな原動力となります。治療に対して不安を抱える子どもにも粘り強く対応できる忍耐力や、子どもの目線に合わせた話し方ができるコミュニケーション能力も求められるでしょう。子どもの変化を見抜く観察力も必要です。

このような特徴に当てはまらない場合でも、小児科看護師を目指す過程や、小児科での勤務を通して適性を身につけられるケースもあります。まずは、看護師専門の求人サイトなどで実際の小児科求人をチェックしてみましょう。

未経験でも就職・転職は可能?

小児科は新卒の方や未経験の方でも就職・転職することが可能ですが、高い専門性が求められることから、小児科経験者が有利になるケースも多いといわれています。小児科の経験がない方は、小児科看護師の仕事に役立つ資格を取得するなど、業務に関する知識をアピールできるように準備しておくことをおすすめします。

また、一般的な就職・転職サイトではなく、業界に特化したエージェントを利用することもおすすめです。「マイナビ看護師」では、看護師転職に強みをもつキャリアアドバイザーが、求職者の希望に沿ったサポートを提供いたします。

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まとめ

子どもの病気に広く対応する小児科では、看護師は医療行為のサポートや患者さん・家族のケアという重要な仕事を担います。専門性の高い仕事を大変に感じることがある一方、小児科で働くことにやりがいやメリットを感じる機会も多いでしょう。職場によって働き方や仕事内容も異なるため、自分に適した勤務先を選ぶことが大切です。

小児科への就職・転職を考えている方は、キャリアアドバイザーによる丁寧なサポートを提供する「マイナビ看護師」にぜひご相談ください。

※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています

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