• 2022年3月17日
  • 2022年3月16日

病棟看護師とは? 病棟の種類・仕事内容・給料・向いている人の特徴も

 

病棟は看護師・准看護師にとって最も一般的な職場であり、全国から多くの求人も出されています。病棟勤務の看護師は「病棟看護師」と言われており、実際に自分がお世話になった看護師に憧れて病棟看護師を目指す方も少なくありません。

しかし、具体的に病棟看護師はどのような仕事をするのか、給料はどれくらいなのかわからない方も多いでしょう。病棟看護師の中でも働く場所によって仕事内容や給料は大きく異なるため、まずは病棟看護師の働き方に関するさまざまな知識を得ておきましょう。

そこで今回は、病棟看護師の概要から仕事内容(病棟別)、給料相場、向いている方の特徴まで徹底的に解説します。病棟看護師の仕事に興味・関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

病棟看護師とは?

病棟看護師とは、病院の入院施設、いわゆる病棟で働く看護師のことです。基本的に新人看護師は病棟看護師として働くことが多くなっています。

主に入院患者さんの看護ケアや医療サポートを24時間365日体制で行うため、同じ病棟で働く看護師と2交代制もしくは3交代制で夜勤をすることが基本となっています。なお、2交代制か3交代制かは病院によって異なることを覚えておきましょう。

病棟看護師の役割

病棟看護師は、ほかの医療スタッフよりも近い位置から患者さんの安全と快適な生活を支えなければなりません。病棟看護師が日々行う基本的な仕事内容は、下記の通りです。

  • バイタルサイン測定
  • 注射・点滴・与薬
  • 生活介助
  • 身の回りのお世話
  • 体位交換
  • ナースコール対応
  • カルテ記入
  • 多職種カンファレンス など

働く病棟によって仕事内容の傾向は異なりますが、上記の業務は基本的にどの病棟でも必ず行うものだと考えておきましょう。

また、日々の看護業務をこなす中でインシデント(医療事故につながる出来事)があった際は、同じインシデントを繰り返さないようインシデントレポートを記入したり、病棟に入院する患者さんの家族の不安を何らかの形で解消に導いたりすることも病棟看護師の重要な役割です。

外来看護師との違い

看護師の種類は、大きく病棟看護師と外来看護師の2つに分けられます。外来看護師とは、その名の通り外来勤務をする看護師のことで、主に通院する患者さんのケアやサポートを行います。

外来看護師の主な仕事内容は「外来担当医師の診療補助」で、具体的には医師の指示に従って脈拍・血圧を図ったり、患者さんに対して簡易的な処置や自宅での生活指導を行ったりします。規模の小さい病院(クリニック・診療所など)では、医療事務員が行うような受付・電話対応・レセプト業務といった事務業務を行うこともあります。反対に病棟もあるような規模の大きい病院では、病棟にいる医療スタッフとの連携が必要となることも多々あるでしょう。

病棟看護師とは違って24時間365日体制で患者さんのケアを行わないため、完全週休二日制・日勤のみという安定した働き方が可能です。その一方で、患者さんと関わる時間が短く、限られた時間の中での素早いアセスメント・密度の濃いコミュニケーションが求められます。

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病棟看護師が働く「病棟」とは? 仕事内容の違いも

「病棟」とは

ひとくちに「病棟」といっても、その種類は多岐にわたります。働く病棟の種類や環境によって仕事内容や働き方にも違いが大きく出るため、各種類の仕事内容を把握したうえで「自分にはどのような病棟が適しているのか」を考えましょう。

ここからは、病棟看護師が活躍できる病棟の種類を、仕事内容とあわせて紹介します。

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高度急性期病棟

高度急性期病棟とは、急性期患者さんのうち容体が変化しやすく緊急性を要する重篤患者さんに対して、最先端かつ高度な医療を提供する病棟です。「救命救急病棟」「集中治療室(新生児集中治療室・小児集中治療室含む)」「ハイケアユニット」「総合周産期集中治療室」が例として挙げられます。

高度急性期病棟で働く看護師は、患者さんの看護ケア・処置に加えて、医師による検査や診療補助も重要な仕事です。主に容体急変のおそれがある重篤患者さんを対応することから、状態把握からアセスメントまで素早く行わなければなりません。そのため、ほかの病棟に比べてやや緊張感が高く、バタバタと忙しくすることもあります。

急性期病棟

急性期病棟とは、発症した病気により突然健康状態が悪化した患者さんや、重症度の高い患者さんに対して、高度な医療を提供する病棟です。一次救急・二次救急の指定を受けた病棟もあり、診療科目は幅広いといえるでしょう。

急性期病棟で働く看護師は、重症度の高い患者さんの看護ケアや医師の診療介助が主な仕事内容となっています。生命にかかわる患者さんに対して一刻も早く適切な処置を行わなければならないため、高度急性期病棟と同様、スピード感が常に求められます。

回復期リハビリテーション病棟

回復期リハビリテーション病棟とは、急性期で治療したのち回復期(病状安定から1~2か月後)に入った患者さんに対して、適切な医療とリハビリを中心に提供する病棟です。リハビリでは、基本的に「発症以前の状態を目指したリハビリ」を提供します。

回復期リハビリテーション病棟で働く看護師は、病棟看護師の基本的な業務内容に加えて、ほかの医療スタッフと連携をとりながら日常サポート補助・リハビリ補助を行うことが主な仕事内容です。医療スタッフ・患者さんとじっくり関わるため、コミュニケーション能力が求められます。

療養型病棟

療養型病棟とは、急性期での治療を終えたあとも長期にわたり療養が必要となる患者さんに対して、看護や介護、リハビリなど適切な医療を提供する病棟です。「療養型病院」「介護療養型医療施設」とも呼ばれます。

療養型病棟で働く看護師は、基本的に病棟看護師の主な仕事内容と同様です。さらに、経口摂取困難の患者さんや体が思うように動かない患者さんも多いため、介護者を含むほかの医療スタッフと連携しながら日常的なケアを行うことも特徴です。患者さんの平均的な入院期間は4~5か月と、一人ひとりの患者さんの長い療養生活を支えることが、療養型病棟で働く看護師の役目といえるでしょう。

慢性期病棟

慢性期病棟とは、急性期で治療したのち病状は安定しているものの、長期的な看護や治療が必要となる慢性期の患者さんに対して、適切な医療を提供する病棟です。

慢性期病棟で働く看護師は、病棟看護師の主な仕事内容に加えて、患者さんの症状悪化の早期発見や合併症予防、ターミナルケアも重要な仕事となります。慢性期患者さんは少しの変化が生命にかかわる大きな影響となる可能性もあるため、一人ひとりの患者さんに丁寧に寄り添いながら小さな変化も見逃さないスキルが求められます。

緩和ケア病棟

緩和ケア病棟とは、生命を脅かす病気(末期がんなど)などの問題に直面している患者さんに対して、身体的・精神的苦痛を緩和し、生活の質(QOL)を向上するためのケアを提供する病棟です。

緩和ケア病棟で働く看護師は、治療を目的とした看護ケアではなく、痛みや不快症状を和らげるためのケアを中心に行います。具体的には、痛みのコントロールや褥瘡予防・ケアなどが挙げられます。これらのいわゆる「ターミナルケア」に加えて、患者さんの家族に対してもあらゆるサポートを行うことも看護師の重要な役割です。

地域包括ケア病棟

地域包括ケア病棟とは、急性期での治療が終了し病状が安定したものの、在宅復帰に不安のある患者さんに対して、安心して帰宅できるため・自分らしい生活を行うための適切なケアを提供する病棟です。レスパイト入院にも対応していることが特徴です。

地域包括ケア病棟で働く看護師は、主に病棟からの入院受け入れ業務から退院支援、患者さんや家族、各種専門職間の調整まで、多方面での幅広いサポートを行うことが主な仕事内容となります。介護者と連携をとりながら介護領域にも携わることも多々あるため、一般的な看護技術に加えて、基本的な介護技術も求められます。

病棟看護師の1日の仕事の流れ

病棟看護師の1日の仕事の流れ

病棟看護師の仕事内容や役割は、働く病棟によっても大きく異なることを説明しました。ここでは、ルーティンワークが基本となる慢性期病棟で働く看護師の1日の流れを紹介します。

8:00~9:00 【出勤・朝礼】
出勤したら夜勤看護師からの申し送りを受け、受け持ち患者さんの情報収集を行います。その後朝礼にて当日の計画をチーム全員で確認します。
9:00~11:30 【ラウンド・患者対応】
受け持ち患者さんの病室を巡回し、状態確認・バイタルサイン測定・清拭・洗髪など各患者さんのケアを行います。
11:30~ 【昼食配膳・配薬】
患者さんに昼食を配膳します。必要な患者さんに対しては食事介助を行います。看護師も同様に、交代制で60分の昼休憩をとります。
13:00~13:30 【カンファレンス】
各医療スタッフと集まり、患者さんの情報を共有します。
13:30~15:00 【ラウンド・患者対応】
受け持ち患者さんの病室を巡回し、午後のバイタルサイン測定や午前中にできなかったケア業務の続きを行います。
15:00~16:00 【カンファレンス・カルテ記入】
各医療スタッフと集まり、患者さんの情報を共有します。その後、患者さんの情報をカルテに記入します。
16:00~17:00 【申し送り・終礼】
夜勤看護師が出勤してきたら、チーム全体で夜勤看護師へ申し送りをします。その後、チーム全体で終礼を行います。
17:00 【退勤】

上記のスケジュールはあくまでも一般的な病棟看護師のスケジュールであり、実際には職場ごとに細かな違いがあることに留意しておきましょう。

病棟看護師の給料相場

病棟看護師の給料相場

看護師全体の給料相場は厚生労働省から発表されています(約492万円)が、病棟看護師の給料相場は公的機関からの明確なデータが出されていません。しかし、おおよその給料については求人情報から算出することができます。看護師求人サイト「マイナビ看護師」に掲載された求人情報をもとに算出した病棟看護師の給料相場は、約380万〜500万円です。

看護師全体(※1) 病棟看護師(※2)
約492万円 約380万~500万円
(出典※1:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」
(出典※2:マイナビ看護師「病棟の看護師求人・転職・募集一覧」

看護師全体の平均年収と比較すると、上限は病棟看護師のほうが高いことがわかります。病棟看護師は週1~2日、交代勤務制で夜勤帯に働くことが基本となり、夜勤手当が多くつくことが要因といえるでしょう。また、高度急性期病棟・急性期病棟など忙しい傾向にある病棟では、さらに高い給料を得られます。

高収入・好待遇の求人の特徴は?

マイナビ看護師に掲載された病棟看護師求人のうち、高収入・好待遇の求人は下記のような特徴がありました。

「高収入」が特徴
  • 東京都・大阪府などの都市部
  • 高度急性期病棟・急性期病棟
「好待遇」が特徴
  • 全国展開しているグループ病院
  • 企業立病院
  • 都市部の大学病院・特定機能病院

東京都・大阪府などの都市部にある病院や急性期病棟では、年収450万円以上を得られる求人が数多くありました。また全国展開しているグループ病院や企業立病院など母体がしっかりしており、経営が安定している病院は福利厚生が整っている傾向です。都市部の大学病院や特定機能病院では、「週休2日制」「出産・育児休暇」「介護休暇」などの待遇も多く見られました。

病棟看護師が給料アップを目指すには?

病棟看護師が給料アップを目指すには、大きく「働き方(勤務形態)を変える」「専門資格を取得する」の2つが方法として挙げられます。

働き方を変えて給料アップを目指す方法には、具体的に夜勤や転職があります。夜勤をすれば夜勤手当がつくため、「職場や日々の主な業務全般は変えたくないけど、給料を少しでも上げたい」と考える看護師の方におすすめです。しかし、「生活スタイルなど何らかの事情があり夜勤はなるべく避けたい・今の職場じゃ給料アップが見込めない」という場合は、思い切って転職するとよいでしょう。もしかすると、現状よりも気楽な働き方でよりよい給料を得られる可能性もゼロではありません。

また、専門資格の取得により働き方が大きく変わり、結果として給与水準が向上するケースもあります。給料アップが見込める代表的な資格には、「専門看護師資格」「認定看護師資格」が挙げられます。その他にもケアマネジャーや呼吸療法認定士など、キャリアアップや給料アップにつながる資格は多くあるため、自身の理想の職場に求められるような資格の取得を目指してみてもよいでしょう。

病棟看護師に向いている方の特徴

さらなるキャリアアップや給料アップを目指して、外来看護師から病棟看護師を目指す方も少なくありません。病棟看護師は外来看護師よりも業務負担が多く忙しいことが特徴ですが、中には外来看護師からの転職で「病棟看護師のほうが自分に向いていた」と感じる看護師の方もいます。

では、具体的にどのような方が病棟看護師に向いているのでしょうか。最後に、病棟看護師に向いている方の特徴を紹介します。

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多職種との連携を円滑に行える

病棟看護師は、医師や同じ病棟で働く看護師のほか、外来看護師・コメディカルスタッフ(薬剤師・理学療法士・作業療法士・栄養士など)・介護スタッフ(介護士・ケアマネジャーなど)といったあらゆる職種と日々密に関わることとなります。

特に高度急性期病棟・急性期病棟などスピーディーな動きが求められる病棟の場合、多職種との連携を円滑に行えるスキルをもつ看護師はより重宝されます。周りからの信頼のもと多くの業務を任せてもらえるため、キャリアアップもしやすくなるでしょう。

患者さんと信頼関係を築ける

病棟にいる患者さんは、毎日を院内で過ごす方です。患者さんの生活を支え、生命を守るためには、患者さんが安心して信頼できる病棟看護師でなければなりません。そのため、患者さんと信頼関係を築き上げることが得意な看護師は、大いに活躍できる病棟看護師となれるでしょう。

また、信頼関係を築き上げるべきは患者さんのみではなく、患者さんの家族も同様です。患者さんの家族とコミュニケーションをとれる時間は限られているため、いかに短い時間で家族の不安を解消できるかも重要といえるでしょう。

所属病棟で必要な専門知識やスキルを学ぶ意欲がある

前述の通り、ひとくちに病棟看護師といっても、所属する病棟によって働き方は大きく異なります。働き方が違うということは、得るべき知識やスキル、技術も異なるということです。各病棟で患者さんに適切な医療・ケアを提供するためには、適切な知識を得ることが最重要です。

ただやみくもに病棟看護師になりたいという思いだけでなく、所属病棟で必要となる専門知識やスキルをしっかり学び、将来に生かしたいと考える「学ぶ意欲のある方」は、病棟看護師にぴったりといっても過言ではありません。

なお、ここで紹介した3つの特徴はあくまでも傾向であり、すべて当てはまらなければ病棟看護師には向いていないというわけではありません。今は当てはまらないと感じていても、働いてあらゆる経験をしながら身につく部分も多くあります。病棟看護師はやりがいも多く感じられる職業であるため、現状の職場に不満を抱いている看護師の方は、ぜひ病棟看護師の転職を検討してはいかがでしょうか。

まとめ

病棟看護師とは、入院施設のある病棟で働く看護師のことです。主に入院中の患者さんに対して、24時間365日体制で看護ケア・サポートを行います。そのため、2交代制もしくは3交代制で夜勤があることも特徴です。

ひとくちに病棟といっても、入院患者さんの状態が異なるさまざまな種類があります。所属病棟によって働き方や給料相場も異なるため、転職先として病棟を選ぶのであれば、理想の働き方や給料をまず把握することが重要です。

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