保健師とは、病気がけがを予防し、人々が健康的で安全な生活を送れるようにサポートする仕事です。看護師のキャリアを活かして保健師へ転職する人も多く、医療職の中でも非常に人気が高い職業となっています。
当記事では、保健師の給料相場や、保健師の種類や仕事内容について詳しく解説します。また、保健師として働くメリットや必要な資格、転職活動におけるポイントも紹介するため、保健師の仕事や転職に興味がある人はぜひ参考にしてください。
保健師の給料相場
保健師の平均給料は約476万円となっており、看護師の平均給料の約492万円よりやや少ない傾向です。保健師と看護師の都道府県別平均給料は、下記の通りです。
【都道府県別】保健師の平均給料(年収)
都道府県 | 保健師の平均給料 | 看護師の平均給料 |
---|---|---|
全国平均 | 約476万円 | 約492万円 |
北海道 | 約532万円 | 約485万円 |
青森県 | 約321万円 | 約541万円 |
岩手県 | 約397万円 | 約467万円 |
宮城県 | 約287万円 | 約495万円 |
秋田県 | 約460万円 | 約515万円 |
山形県 | 約493万円 | 約460万円 |
福島県 | 約306万円 | 約457万円 |
茨城県 | 約564万円 | 約504万円 |
栃木県 | 約400万円 | 約497万円 |
群馬県 | 約393万円 | 約446万円 |
埼玉県 | 約538万円 | 約516万円 |
千葉県 | 約506万円 | 約497万円 |
東京都 | 約539万円 | 約519万円 |
神奈川県 | 約545万円 | 約522万円 |
新潟県 | 約514万円 | 約490万円 |
富山県 | 約399万円 | 約515万円 |
石川県 | 約365万円 | 約513万円 |
福井県 | 約274万円 | 約505万円 |
山梨県 | 約349万円 | 約502万円 |
長野県 | 約519万円 | 約476万円 |
岐阜県 | 約342万円 | 約530万円 |
静岡県 | 約573万円 | 約514万円 |
愛知県 | 約464万円 | 約510万円 |
三重県 | 約411万円 | 約474万円 |
滋賀県 | – | 約495万円 |
京都府 | 約473万円 | 約507万円 |
大阪府 | 約480万円 | 約498万円 |
兵庫県 | 約453万円 | 約501万円 |
奈良県 | – | 約504万円 |
和歌山県 | 約596万円 | 約496万円 |
鳥取県 | 約290万円 | 約497万円 |
島根県 | 約569万円 | 約476万円 |
岡山県 | 約424万円 | 約459万円 |
広島県 | 約592万円 | 約494万円 |
山口県 | 約589万円 | 約492万円 |
徳島県 | – | 約504万円 |
香川県 | 約320万円 | 約468万円 |
愛媛県 | 約554万円 | 約444万円 |
高知県 | – | 約441万円 |
福岡県 | 約429万円 | 約463万円 |
佐賀県 | 約381万円 | 約451万円 |
長崎県 | 約458万円 | 約482万円 |
熊本県 | 約359万円 | 約424万円 |
大分県 | 約411万円 | 約405万円 |
宮崎県 | 約418万円 | 約455万円 |
鹿児島県 | 約564万円 | 約444万円 |
沖縄県 | 約440万円 | 約454万円 |
全国平均で比較した場合、保健師の給料は看護師より低い傾向にありますが、地域によっては大幅に上回るケースもあります。都市部ほど保健師の年収は高くなっており、500万円を超えることも少なくありません。また、看護師と比較すると、保健師の平均給料は働く地域により差が出やすいことがわかります。
保健師の平均給料を地域別に見ると、北海道・東北地方の平均給料はやや低めですが、北海道と山形県は全国平均を上回っています。関東地方は、全体的に平均給料が高い傾向です。中部地方は平均給料を下回る傾向にあるものの、新潟県・長野県・静岡県では500万円を上回っています。
近畿圏の平均給料は全国平均前後となっており、和歌山県は日本全国で最も保健師の平均給料が高い地域です。中国・四国地方では広島県・山口県・島根県・愛媛県、九州地方では鹿児島県の平均給料が高くなっています。
保健師の仕事内容
保健師の主な仕事内容は、健康診断に対するアドバイスや保健指導・生活指導を通し、人々が健康的な生活を送れるように支援することです。保健福祉の観点から広範囲における感染症対策に取り組むこともあれば、電話や窓口で個人的な相談に応じることもあります。
指導対象者の年齢や健康状態はさまざまで、取り扱う問題は生活習慣・育児・感染症・メンタルヘルス・介護保健関連など多岐にわたります。保健師の種類や勤務場所によって詳細な仕事内容は異なりますが、どのような職場であっても病気を未然に防ぐために適切な指導・対策を実施することは共通しています。
また、保健師は他職種と協力しながら働くため、広い視野で課題解決に取り組むことが大切です。保健師として働くためには、予防医療の知識・技術のほかに、福祉分野への理解やコミュニケーション能力なども必要となります。
保健師の種類と活躍する場所
保健師はさまざまな場所で活躍しており、勤務する場所によって仕事内容が大きく異なります。保健師として、どのような人々を指導したいのか、どのような役割を担いたいのかを考慮して就職先を選びましょう。
ここでは、保健師の種類と仕事内容、活躍する場所について詳しく解説します。
行政保健師:保健所・自治体
行政保健師とは、地方公務員もしくは国家公務員として行政機関に勤め、公衆衛生を担う保健師です。行政保健師は年齢性別を問わずすべての地域住民に関わるため、業務内容は多岐にわたります。行政保健師の主な仕事内容は、以下の通りです。
●行政保健師の主な仕事内容
- 乳幼児から高齢者まで、すべての地域住民へ対する生活支援
- 感染症の調査や予防対策
- 健康促進にまつわる講座の実施や呼びかけ
行政保健師の勤務場所には、大きく分けて保健所と自治体があります。
保健所は、政令指定都市や中核市に設置されている公的機関であり、地域住民の健やかな生活のために専門的・技術的に幅広いサービスを提供する施設です。保健所では、市区町村の保健福祉に関する課題を汲み取り、医師・看護師・管理栄養士といった各分野の専門職と協力しながら地域住民の健康をサポートします。
自治体における保健師の主な就業先は、市町村保健センターや役所です。保健センターは市民が必要時において気軽に利用できることを目的とした施設であり、母子手帳交付や新生児訪問を行うほか、予防接種・健康診断・がん健診などをサポートします。また、高齢化が進んでいる地域では、高齢者の家庭訪問や介護相談なども行います。
産業保健師:企業・健康保険組合
産業保健師とは、企業社員の一人として、従業員が安全に働けるように健康面や衛生面をサポートする保健師です。産業保健師の主な仕事内容は、以下の通りです。
●産業保健師の主な仕事内容
- 従業員の健康診断実施
- 従業員の心身における健康状態管理
- 休職者との面談・復職支援
- 労働環境の整備・改善
- 健康増進イベントの企画・実施
- 産業保健師との連携
産業保健師は、民間企業や健康保険組合で活躍しており、健康診断やストレスチェックなどを通してメンタル・フィジカルの両面から従業員を支えます。近年では、従業員のメンタル不調による休職や退職などの問題も多いため、保健師によるメンタルヘルスケアは重要な業務の1つとなっています。セクシャルハラスメントやパワーハラスメントといった問題にいち早く気付き対処することも必要です。
産業保健師は定期的に職場巡視を実施し、業務内容への理解を深めるとともに、必要に応じて経営層へ労働環境の改善案を申し出ます。ときにはセルフケアや生活習慣病予防などのイベントを開催し、従業員の健康意識を高めるための活動も行います。
また、産業保健師は産業医と企業をつなぐ役目も担っており、産業医と連携を取り柔軟に対応していくことも大切です。
病院保健師:病院・診療所・訪問看護ステーション・地域包括支援センター
病院保健師とは、医療機関に所属して患者・利用者・スタッフの健康を支える保健師です。病院保健師の主な仕事内容は、以下の通りです。
●病院保健師の主な仕事内容
- 医療機関内での健康診断・健康相談実施
- 患者及び患者の家族へ対する通院・退院の支援
- 健康や福祉に関する情報発信
病院保健師の就業先には、病院・診療所・訪問看護センター・地域包括支援センターなどがあります。
病院・診療所・訪問看護センターで働く病院保健師の役目は、患者の退院後における社会復帰を支援したり、病院内で予防医療や衛生管理を担いスムーズな診療体制を整えたりすることです。施設によっては、看護業務を兼任する場合もあります。医療施設内において、保健師は外部と連携を取り、地域医療を促進する存在として需要が高まっています。
地域包括支援センターは、高齢者が最期まで自立して生活できるようにサポートする施設です。地域包括支援センターでは、社会福祉士やケアマネージャーと連携を取りながら、ケアプラン作成や健康イベントなどを行い、高齢者の介護予防・健康増進に努めます。
学校保健師:学校
学校保健師とは、主に私立学校に常駐し、教職員や生徒の健康管理を担う保健師です。学校保健師の主な仕事内容は、以下の通りです。
●学校保健師の主な仕事内容
- けがや急病の応急処置
- 生徒と教職員の心身における健康管理・健康維持
学校保健師の主な職場は、私立小学校・中学校・高等学校や、大学・専門学校などです。公立の小中学校・高等学校で勤務する際には、養護教諭免許を取得し養護教諭採用試験に合格する必要があります。
学校保健師は、病気予防に関する情報発信や保健指導を通して、教職員や生徒が健康的な生活を送れるようにサポートします。また、日頃から校内における人間関係にも注意し、いじめなどスクールハラスメントの防止に努め、問題が生じた場合には適切に対処していくことも必要です。
学校保健師は生徒から人間関係や就職活動などの相談を受けることも多く、不安を抱える子どもの心に優しく寄り添うコミュニケーション能力や包容力が求められます。
なお、保健師と養護教諭は専門分野が異なります。保健師は教職員や生徒の健康・安全を守るための予防医療における専門家であり、養護教諭は生徒に対して保健指導を行う教育者です。
保健師として働くメリット
保健師は予防医学の専門的な知識を活かして、社会に大きな貢献ができる仕事です。一人ひとりの生活を支えることが、ひいては地域全体の健康レベルの向上につながります。社会の健康と安全を守れる仕事に、やりがいを感じることができるでしょう。
保健師は多くの地域住民や他業種の人と関わるため、コミュニケーションが好きな人に向いている仕事です。ここでは、保健師として働くメリットを5つ紹介します。
予防医療の専門知識を蓄積できる
保健師の専門分野は「予防医学」です。予防医療は、病気の予防や早期発見、重症化・再発防止など幅広いステージで役立つものであり、年齢性別を問わずすべての人に関わっています。
日本では、高齢社会に伴う医師不足や医療費増大が課題となっている中で予防医療の重要性が提唱されており、今後も保健師の需要が高まるでしょう。また、予防医療は普段の日常生活にも活かすことができるため、人生を通じて有益な知識となります。
安定した環境で働ける
保健師は安定した環境の職場が多く、離職率が低い傾向にあります。公務員である行政保健師は、業績に左右されず年功序列で昇給が見込めます。行政機関は倒産の心配もなく、生涯を通して安定した収入を得ることができるでしょう。
産業保健師が勤務する企業では、健康経営の実施に伴い待遇面を充実しているケースも少なくありません。大手企業においては賞与額や昇給額が大きく、高収入も期待できます。
また、保健師の求人は正社員・派遣社員・パートなど、多様な種類の求人があるため、自分の生活スタイルに応じた働き方を選べることも魅力です。
比較的働きやすい環境である
保健師が働きやすいといわれる理由は、下記の通りです。
- 夜勤や残業が少ない
- 土日・祝日は休みの職場が多い
- 有給休暇が取りやすい
- 出産休暇・育児休暇の実績がある職場が多い
- 大企業や総合病院など、規模の大きい職場では福利厚生が充実している
職場により差はあるものの、保健師は仕事とプライベートを両立し、ワークライフバランスを実現しやすい環境にあるといえます。
保健師は家庭や育児と両立しやすいため、生涯を通して働くことができる職業として女性からの人気が高い傾向です。
身体的・精神的な負荷が少なく働ける
保健師の仕事はカウンセリングや健康指導などのデスクワークが中心であり、肉体労働はほとんどありません。夜勤もなく規則的な生活を送れるため、コンディションが整った状態で勤務することができます。
また、保健師が専門とする予防医療では、人の生死に関わる場面が少ないという特徴があります。重大な医療処置を行うこともないため、看護師と比較すると精神的な負担が軽いといえるでしょう。
社会的に意義のある仕事である
保健師は、地域住民や企業社員の健康に貢献できる仕事です。高齢者の健康寿命を延ばし、介護負担を軽減して人々がいきいきと生活できる社会をつくりあげるためには、保健師の活躍が欠かせません。
また、看護師が患者と携わる時間は一時的な治療期間に限られますが、保健師は地域住民や企業社員と長期間にわたり関係を築いていきます。多くの人と直接関わる中で感謝される場面も多く、やりがいを感じることができるでしょう。
保健師の仕事に就くために必要な資格
保健師として働くためには、「看護師免許」と「保健師免許」の2つの国家資格を取得する必要があります。保健師免許の取得方法には2つのパターンがあり、各パターンにおける手順は以下の通りです。
●保健師免許の取得方法
ダブル受験する場合 | (1)高校卒業後、「看護学系学部の大学」もしくは「看護師・保健師統合カリキュラムを採用した看護系専門学校(修業年数4年以上)」を卒業する (2)保健師国家試験・看護師国家試験をダブル受験し、合格する |
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看護師免許取得後に、保健師免許を取得する場合 | (1)高校卒業後、「看護学系の短期大学」もしくは「看護系の専門学校(修業年数3年以上)を卒業する (2)看護師国家試験を受験し、合格する (3)「保健師養成学校(1年制)」もしくは「看護系大学保健師養成課程(3年次編入)」を卒業する (4)保健師国家試験を受験し、合格する |
ダブル受験で保健師国家試験のみ合格した場合は、翌年以降に看護師国家試験を再受験し合格することで、保健師免許の申請が可能です。なお、行政保健師になるためには、保健師免許取得後に各地自体が実施する公務員試験に合格する必要があります。
第107回保健師国家試験の合格率は94.3%で、このうち新卒者の合格率は97.4%となっており、難易度は高くないといえるでしょう。なお、保健師国家試験の出願者数は、看護師国家試験の約11%となっています。
保健師国家試験は、一般問題が1問1点(74点満点)、状況設定問題が1問2点(68点満点)で、142点中86点以上正解で合格となります。
(出典:厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表」)
保健師に転職するためのポイント
保健師の求人数は看護師に比べて少なく、離職率が低いということもあいまってポストに空きが出にくい傾向にあります。このため、保健師への転職が難しいと感じる人も少なくありません。
しかし、いくつかのポイントを押さえることで、保健師への転職をスムーズに進めることが可能です。ここでは、保健師に転職するためのポイントを3つ紹介しています。
自分にとって譲れない条件を明確化する
保健師へ転職する条件を明確にすると、転職活動の軸がぶれず、自分が本当に望んでいる職場に就職することが可能です。
条件を明確化するためには、転職理由を踏まえ、転職先に求める希望条件を5つほど書き出し優先順位をつけていきます。希望条件を書き出す際は、「給料〇万円以上」「通勤時間〇分以内」など、できるだけ具体的に示すことがポイントです。
実際に就職先を探す際には、応募先の条件と優先順位を照らし合わせ、自分の希望が叶えられる職場であるか確認しましょう。
ビジネスマナーやPCスキルを身につけておく
保健師へ転職する際には、ビジネスマナーやPCスキルを身につけておくと役立ちます。保健師は企業や行政機関に就職し、管理職や取引先と接する機会もあるため、一般的なビジネスマナーが必要です。メール対応や電話応対、面談などで困らないように、ビジネスシーンにふわさしい礼儀作法や言葉遣いを身につけましょう。
また、保健師はレポート作成やデータ分析を任されることも多いため、ワード・エクセルの基本スキルが必要です。また、健康イベントや講習会を行う企業では、パワーポイントのスキルも役立ちます。保健師としての選択肢を広げるためにも、PCスキルを身につけておきましょう。
求人数の多い転職サイトを活用する
保健師は求人が少ない職種であるため、求人数が多い転職サイトを活用し、応募の機会を増やすことが大切です。保健師には看護師免許も必要となることから、看護師や医療業界に特化した専門の求人サイトを利用するとよいでしょう。
また、保健師の転職には、非公開求人も探せる転職サイトの活用がおすすめです。人気の高い職種である保健師は、非公開求人として扱われているケースも少なくありません。
日本全国の求人情報を豊富に取り扱っている転職サイトでは、情報更新も頻繁に行われるため、転職活動がスムーズに進みます。
まとめ
保健師とは、病気がけがを予防し、人々の健康的な生活を守る予防医療の専門家です。保健師には、行政保健師・産業保健師・病院保健師・学校保健師があり、勤務先により詳細な仕事内容が異なります。なお、保健師として働くためには、看護師免許と保健師免許が必要です。
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