• 2021年10月8日
  • 2021年11月16日

プリセプター制度とは? メリットや役割・必要なスキルを解説

 

プリセプター制度は、先輩看護師が新人看護師の指導や教育を行う制度です。プリセプターには、職場で経験を積んで十分な実力と指導力があると認められた看護師が選ばれます。しかし、プリセプター制度になじみがない場合、制度の実情が分からず不安に思う人もいるでしょう。

今回は、プリセプター制度の概要や他の教育制度との違い、メリット・デメリットなどを解説します。プリセプター制度を取り入れている職場で働く際は、プリセプター制度に対する理解を深めておきましょう。

プリセプター制度とは?

プリセプター制度とは、先輩看護師が新人看護師にマンツーマンで指導・教育・フォロー・ケアを行う制度です。指導を行う先輩看護師を「プリセプター」、指導を受ける新人看護師を「プリセプティ」と呼称します。

各病院の教育・指導制度によって異なるものの、プリセプター制度には6か月~1年程度の期間を設けるケースが一般的です。プリセプター制度はプリセプターシップとも呼ばれ、新人看護師が臨床現場に立つ初期段階で用いることで高い効果の発揮が期待されます。

(出典:厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン」

プリセプター制度の目的

プリセプター制度の目的は、新人看護師が直面しがちな「リアリティショック」を和らげつつ看護業務に対する意欲を高め、早期離職を防ぐことです。国の法改正によって、2010年4月から新人看護職員に対する臨床研修の実施が努力義務化されたことを受け、多くの医療・介護施設でプリセプター制度が採用されるようになりました。

(出典:厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン」

新人看護師が看護学生時代に机上や研修で身に付けた技術や知識を、実際の臨床現場で役に立てられず、実力不足を痛感するケースはめずらしくありません。また、「シフト制が思っていたよりつらい」「人間関係が面倒」など、看護技術以外で仕事へのやる気を失ってしまうケースもあります。

プリセプター制度は、明確な指導者を指定することで、プリセプティに看護技術や自己管理方法を伝授し、仕事や対人関係の悩みをきめ細やかにフォローする制度です。プリセプティが一人前の看護師になるまで導くことで、新人の実力育成や職場への定着を目指します

プリセプター制度の種類

職場によって実態は多少異なるものの、プリセプター制度は下記の3種類に大別されます。

●プリセプターのマンツーマンとなる
プリセプター制度の基本形です。プリセプターとプリセプティがともに業務にあたりながら、プリセプターが看護技術や日常業務などの指導・教育、精神的なフォローを行い、看護師としてのお手本を示します。

プリセプターの上にシニアプリセプター(アソシエイト)が付く
プリセプターの上に支援・補佐役のシニアプリセプターが付き、全体の指導・教育の進捗状況を監督する形です。職場によってはプリセプターが日常業務の指導・相談を行い、シニアプリセプターが実践的な技術指導を行うなど、役割を分担するケースもあります。

精神的なフォロー役にメンターが付く
看護技術や日常業務などの指導・教育はプリセプターが担い、プリセプティの精神的なフォローはメンターが担当する形です。プリセプティに寄り添う立場で精神的・人間的な成長を手助けし、中長期的なキャリアを見据えて支援を行います。

プリセプター制度の指導内容

プリセプターに任命された場合、担当するプリセプティに行う指導内容は下記の4つです。

業務内容の教育・指導
プリセプティに業務内容を教育・指導し、看護実践時のサポートも行います。業務の進捗状況や知識・技術の習得度を共有し、把握することも大切です。

看護知識の学習支援
看護知識を身に付けるために必要な予習内容や、実践後のレポート提出を指示します。レポート内容を確認し、場合によっては訂正・指導を行わなければなりません。

看護技術習熟度の確認・評価
職場ごとに定められている看護技術のチェックリストに基づき、プリセプティの看護技術を評価します。習熟が不十分と判断された項目は、再教育や学習のサポートが必要です。

精神面のフォロー
プリセプティが仕事を失敗したり人間関係に不安を抱いたりした場合は、相談に乗る・励ますなどし、精神面のフォローを行います。お互いの信頼関係を築き、業務をスムーズに遂行できたときには褒めて自信を付けさせることも重要です。

プリセプター制度と他の教育体制の違い

プリセプターのマンチーム支援

新人看護師教育・支援体制は、プリセプター制度以外に「チューターシップ」「メンターシップ」「チーム支援型」の3つがあります。各体制におけるプリセプター制度との違いは、下記の通りです。

チューターシップ プリセプティにチューター(相談相手)を配置し、業務や学習の効率的な進め方、精神面・生活面での相談・支援を行います。チューターは「指導」ではなく「相談」を担当するため、看護技術や日常業務の実践的な指導は別の看護師が受け持つケースが一般的です。
メンターシップ プリセプティの味方として指導・助言を行い、理解者として相談に乗るという役割を果たします。メンターは精神面での支援を主とし、中長期的なキャリアを視野に入れながら人間的な成長を援助する立場です。実践的な指導を行うことはあまりありません。
チーム支援型 プリセプティに単独の指導者を付けず、配属されたチームの先輩たちから得意分野をそれぞれ指導してもらう役割分担型の教育体制を指します。

(出典:厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン」

実践的な指導が行われないチューターシップ・メンターシップでは、プリセプター制度との併用も多い傾向です。

プリセプター制度のメリット・デメリット

プリセプターとプリセプティの看護師

プリセプター制度は、新人看護師を教育・指導・支援することで看護師の実力を底上げし、職場への定着が期待できる制度です。しかし、プリセプター制度にはメリットだけでなくデメリットがあることも考慮しなければなりません。

ここでは、プリセプター制度におけるメリット・デメリットを、プリセプター側とプリセプティ側に分けて解説します。

プリセプター側

プリセプターとして新人を指導することで得られるメリット・デメリットは、下記の通りです。

メリット
  • 自分が持つ技術や知識の再確認ができる
  • 教えることで自分の能力向上も見込める
  • プリセプティが評価されると自分の評価も上がる
デメリット
  • 通常業務以外の仕事が増え、負担が大きくなる
  • プリセプターへのサポート体制が整っていない場合がある

プリセプティに分かりやすい教育を行うためには、まず自分自身が指導内容を理解していなければなりません。看護業務の基礎を復習する・日常業務を意識的に振り返ることで、自らの技術や知識を高めることが可能です。

ただし、通常業務に加えてプリセプティの指導計画を立てる・評価を下すといった仕事も増えるため、職場の体制によっては負担が重く感じる可能性があります。

プリセプティ側

プリセプティとして先輩から指導されることで得られるメリット・デメリットは、下記の通りです。

メリット
  • 分からないことがあれば直接質問しやすい
  • 技術を習得しやすい
  • 実践時もサポートが入るため、精神的な負担が少ない
デメリット
  • 教育担当者を選べないケースが多い
  • 能力不足のプリセプターもいる

プリセプター制度の指導はマンツーマンで行います。疑問を抱いたらその場ですぐに質問でき、付きっきりで指導してもらえるため、技術や知識が身に付きやすい傾向です。また、看護現場で動揺してもすぐにフォローしてもらえることは、新人にとって非常に心強い環境といえるでしょう。

その反面、担当のプリセプターと相性が悪かったり、プリセプターの能力が足りなかったりすると、職場が嫌になりやすいといったデメリットもあります。

看護師がプリセプターになるには?

プリセプターとなる看護師に特別な資格やスキルは必要ありません。しかし、一般的には3年以上の職務経験を有した中堅看護師が任命される傾向です。厚生労働省が公表した「新人看護職員研修ガイドライン」では、新人の実地指導者にふさわしい人物・能力として下記の条件を提示しています。

【人物】

看護職員として必要な基本的知識、技術、態度を有し、教育的指導ができる者であることが望ましい。

【能力】

  • 新人看護職員に教育的に関わる能力
  • 新人看護職員と適切な関係性を築くコミュニケーション能力
  • 新人看護職員の置かれている状況を把握し、一緒に問題を解決する能力
  • 新人看護職員研修の個々のプログラムを立案できる能力
  • 新人看護職員の臨床実践能力を評価する能力

(引用:厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン」

プリセプターの担当者は、職場ごとで必須となる技術や知識の基準をクリアした看護師から選ぶケースがほとんどです。そのため、職場で勤務経験を重ねたからといって、すべての看護師がプリセプターに指名されるとは限りません

プリセプターに選ばれたということは、「看護師として十分な人柄と指導能力を備えている」と評価されたという証です。この抜擢をチャンスと思い、新人の素質や能力を伸ばすと同時に自らの実力向上も目指しましょう。

プリセプターになった看護師の1日の仕事

プリセプター制度で、スケジュールを確認する看護師

プリセプターの1日は、下記の流れで進みます。

スケジュールと新人の様子を確認する
仕事の進み具合を具体的に聞く
新人の考えを引き出して1日を振り返る

プリセプターとしてプリセプティを教育する際は、下記の点に注意しましょう。

  • 気付いたことは、業務終了時ではなくその場で指導する
  • 質問されたこと以外にも、積極的に技術や知識を伝える
  • 「この場合はこうする」など、指導内容は具体的に教える

以下では、プリセプターの仕事内容・教育時に注意すべきことを、1日の時間帯ごとに解説します。

朝:スケジュールと新人の様子を確認する

朝は、その日のスケジュールを確認します。おおよその流れを共有できたら、プリセプティの業務進行具合を確認する・フォローに入れるタイミングを伝えておきます。同時に、プリセプティが担当業務に過度の緊張や不安を抱いていないか観察しなければなりません。

可能な限りプリセプティの自立を促すことが望ましいものの、患者の安全が最優先です。プリセプティの技術習得度に合わせて適宜スケジュールを調整し、業務に立ち会ったり事前に学習・確認したりする時間を確保しましょう。

昼:仕事の進み具合を具体的に聞く

昼は、朝に共有したスケジュールの進み具合を確認します。仕事の進捗状況を確認する際、「大丈夫? 」という聞き方をすると、プリセプティは「大丈夫です」と反射的に答えかねません。「○○はどこまで進んでる? 」「今日は外来が多いから◯◯を先に終わらせよう」など、具体的な質問や指示を心がけましょう。

また、新人のうちは休憩に入るタイミングが掴めないこともめずらしくありません。休憩時間の少し前から様子をうかがい、スムーズに休憩入りできるようフォローしましょう。朝に立てた計画にこだわらず、進捗状況に合わせて柔軟にスケジュールを変更することで、現場の状況に即した優先順位の付け方を実践を通じて学ばせる機会を与えられます。

夜:新人の考えを引き出して1日を振り返る

夜は、1日を総括する時間です。プリセプティを指導する立場としては、あれもこれもと詰め込みたくなりますが、ここはグッと抑えて重要なポイントのみ簡潔に伝えましょう。また、プリセプターの考えを一方的に述べたり、「はい/いいえ」で終わるような質問をしたりしてはなりません

感じたこと・考えたことを、自分の言葉で表現させることがプリセプティの成長につながります。そして、疑問・質問には具体的なアドバイスを送り、褒めるべきところはしっかりと褒めることで、プリセプティのやる気を引き出すことができるでしょう。

【時期別】プリセプターの看護師の役割

プリセプターの看護師

約1年にわたるプリセプティの教育では、時期によってプリセプターの役割が下記のように変化します。

4~6月 手本を見せながら意味・根拠を伝える
7~9月 実務の中で優先順位の付け方を教える
10~12月 長所を伸ばして課題解決を図る
1~3月 技術や知識の習得状況に気を配る

ここでは、プリセプターの役割や教育方針を時期別に解説します。

4~6月:手本を見せながら意味・根拠を伝える

4~6月は、プリセプターとプリセプティがペアを組み、付きっきりで看護業務の基本から教える時期です。

多くの場合、入職直後は数日間業務を見学させる「シャドーイング」を行います。シャドーイングでは、プリセプターが実際の業務を見せながら、一つひとつの行為が持つ意味・目的・根拠を教えることが大切です。身体の動きや作業内容だけでなく「なぜこうするのか」を理解することで、プリセプティが患者を受け持ったときに自信を持って看護に従事できるでしょう。

また、4~6月は「リアリティショック」を起こしやすい時期です。プリセプティが不安やストレスを抱え込まないよう、精神面のフォローにも気を配りましょう。

7~9月:実務の中で優先順位の付け方を教える

7~9月は、プリセプターの受け持ち患者が通常人数に戻り、プリセプティも少しずつ受け持つ患者を増やす時期です。この時期は、増えた業務の割り振りや情報収集がうまくいかず、仕事の効率が悪くなるプリセプティが増えます。

仕事に手間取る原因を考える際は、自分の経験を例に挙げながら具体的なアドバイスを送ることが必要です。仕事の優先順位が付けられない場合は、実務の中で効率的な仕事の回し方を教えましょう

10~12月:長所を伸ばして課題解決を図る

10~12月は、プリセプティが身に付けるべき基本項目の習得に目処が立ち、実用頻度の低い処置の指導も視野に入れられる頃です。同時に、プリセプティ同士の習得度合いに個人差が出てきます。そのため、習得が進んでいる項目は褒めて伸ばし、苦手とする業務はフォローに入るなど、個人に合わせた指導方法を選択しなければなりません。

自分の習得度合を気にしている場合は、同期と比較して技術の習得を焦るよりも、「目の前の患者に向き合い安全な医療を届ける」ことを重視するよう伝えましょう

1~3月:技術や知識の習得状況に気を配る

1~3月は、ほとんどの業務でプリセプティの自立が進み、プリセプターの指導する機会が少なくなる時期です。そのため、未経験の技術を経験済みと誤認したり、習得度合いのチェック漏れを起こしたりしないよう、気を引き締めなければなりません。「新人を卒業したプリセプティが必要な技術を学んでいない」という事態を引き起こさないためには、習得状況の念入りな確認が重要です。

また、1年間を総括して振り返ると同時に、2年目に向けての抱負や課題を認識させることも欠かせません。1年間の努力を評価して褒めることで、独り立ちするプリセプティに自信を付けさせ、一人前の看護師として先輩となる自覚を持たせましょう

プリセプターとして指導する際の3つのポイント

最後に、プリセプターとしてプリセプティを指導する際、心がけるべきポイントを3つ紹介します。

別の新人と比べて評価しない
プリセプターとして指導していると、つい他のプリセプティと比較してしまいがちです。しかし、「基礎は遅いが応用は速い」「習得は遅いが正確性が高い」など、プリセプティの成長度合いには個人差があります。プリセプティを評価する際は、他者と比較せず、客観的かつ冷静に判断を下さなければなりません

新人がミスしたらフォローする
新人にミスは付きものです。ミスを叱ることも時には必要ですが、ただ厳しく叱責するだけではプリセプティを委縮させ、さらなるミスを招きかねません。ミスをしたプリセプティは十分に落ち込んでいます。プリセプターとして必要なことは、同じ失敗を繰り返さないために指導し、前向きに業務へ取り組めるよう精神的なフォローに努めることです。

1人で抱え込まず周囲と協力する
プリセプターを任されたからといって、プリセプティに関するすべてを1人で抱え込む必要はありません。本来、新人教育は職場全体が一丸となって行うべきことです。自分では対応しきれない問題が起こった場合や、プリセプターとしての悩みが生じた場合は、周りの人に相談して協力を求めましょう

プリセプターとして指導する際は、プリセプティや周囲と積極的なコミュニケーションを欠かさないことが大切です。プリセプティが一人前の看護師に育つよう、上記の3つのポイントを意識した上で指導しましょう。

まとめ

プリセプター制度は、先輩看護師が1人の新人看護師をマンツーマンで担当し、教育・指導する制度です。プリセプティは直接指導を受けることで技術や知識を習得しやすい、プリセプターは自らの技術や知識の向上が見込めるなどのメリットがあります。

ただし、マンツーマンが基本の制度とはいえ、新人教育は職場全体で責任を持って行うことが前提です。1人で解決しきれない問題が起こった場合は、遠慮せず周囲に相談しましょう。他にも看護師求人や仕事・職場情報などに興味がある場合は、「マイナビ看護師」をぜひご活用ください。

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