• 2021年4月6日
  • 2021年11月19日

新型コロナウイルスに直面する看護職の厳しい実態

 

新型コロナウイルスに直面する看護職の厳しい実態

2020116日、国内で初の感染者が認められたCOVID-19(新型コロナウイルス)。爆発的な感染拡大を受けて、半年以上たった現在も終息のめどが立っていないのが実情。そうしたなか、多くの感染者に対応する看護職にとっては、非常に困難な日々が続いています。今回は、公益社団法人東京都看護協会が行った緊急調査をもとに、コロナ下において看護職が困っていることやメンタルヘルス・ケアに対する施設側の取り組みなど、現場の実態をまとめてみました。

現場で対応する看護職が困っていることは?

※グラフは東京都看護協会の調査資料をもとに再構築

東京都看護協会が都内の施設を対象に行った調査(調査期間202068日~630日、234施設が回答)において、「COVID-19に対峙する看護職の立場で困ったことはありますか。(複数回答)」と質問したところ、94.4%の施設が「はい」と回答しました。

◎困ったこととして最も多かったのが「個人防護用具の不足」

※グラフは東京都看護協会の調査資料をもとに再構築

同調査によると、困ったこととしてもっとも多かったのが「個人防護用具の不足」です。202091日に日本医労連が発表した緊急実態調査(調査期間2020811日~827日 全国120施設)においても、もっとも不足しているのは「ガウン・ゴーグル(31.7%)」で、続いて「マスク(30.0%)」となっています。

※グラフは日本医労連の調査資料をもとに再構築

つまり、医療用マスク、ガウンなどの不足によって、十分な感染防止策がとれないだけでなく、限られた備品に合わせて対応できるスタッフが限られてしまう……。というのが現場の実情。なかにはゴミ袋や雨がっぱなどをガウンとして代用する事業所もあるようです。

◎次点は「患者さんへの対応」

接触を極力減らした対応は、心理的なストレスを生むと同時に、十分なケアができないことへのストレスにもつながっています。公益社団法人日本看護協会によると、看護職の入室回数、滞在時間をチェックするといった細かい制限もあり、管理者側にとっても負担が増えています。加えて、療養中のケアだけでなく、亡くなった後のエンゼルケアもできないといった状況に対して、ジレンマを抱える看護職もいるようです。

医療現場におけるメンタルヘルス面での課題

※グラフは東京都看護協会の調査資料をもとに再構築

新型コロナウイルスの対応において、看護職が受ける心身のストレスも大きな課題といえます。東京都看護協会の同調査では、「COVID-19に伴う看護職員へのメンタルヘルス・ケアについて工夫されていますか」という質問に対し、6月の時点で「工夫している」と回答した医療機関は127施設で、全体の54.3%。50%以上の医療機関が、何らかのメンタルヘルス・ケア体制を整備していることがわかります。具体的な工夫としては、施設内でのメンタルヘルスチームを結成したり、相談窓口の設置やカウンセラーによる個人相談の機会を設けたりしているといった施策が見られました。

なお、感染対応の看護職がストレスを感じるのは、感染リスクだけではありません。感染拡大による医療需要の急増は、深刻な人員不足に拍車をかけているだけでなく、接触を避けるための細かな業務が増えるなど、人員配置や交代勤務への負担も高まっています。さらに、周囲からの差別・中傷に悩まされるなど、多くの要因が複雑に絡んでいるのが実状です。

「燃え尽き症候群」を防ぐため、セルフケアの見直しからはじめよう

予断を許さない状況のなかで、看護職の需要は高まる一方。恐怖や不安と向き合いながら、張り詰めた日々を過ごしていると、「燃え尽き症候群」の可能性も懸念されています。そうした状況に対応するためにも、日々のメンタルケアを心がけましょう。

一般的なメンタルケアの方法としては、4R(レクリエーション、レスト、リラクセーション、リトリート)があげられますが、現在のような混乱した状況だと、うまくストレス解消につながらないかもしれません。

以下にセルフケアにおけるポイントを紹介しておくので、きちん意識しながらストレス解消に取り組んでみてください。

・基本的なニーズとなる、食事や水分、睡眠を満たす
・休みをとる
・同僚とのコミュニケーションをとる
・家族と連絡を取る
・価値観の違いを尊重する
・常に情報を更新する
・メディアを制限する
・自身の働きをほめる

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大による社会的な影響は計り知れません。そんななか、感染者に直接向き合う看護職は、感染リスクと複雑な不安を抱えています。収束が見えない状況ではありますが、休息が取れる時間にはしっかりとセルフケアを行い、「自分自身を大切にすること」を心がけましょう。

文:みのうかなこ(ライター・薬事法管理者)

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