2021年5月9日(日)、「2021年 看護の日トークイベント~だから、私は、看護を選ぶ。~」(日本看護協会主催)が開催されました(無料オンライン配信)。
2人の認定看護師(集中ケア、感染管理)が登壇し、女優の志田未来さんや看護学生とともに熱いトークを繰り広げた本イベントの様子をレポートします。
若年層に看護の魅力を発信したい
「看護の日」(毎年5月12日)は、老若男女を問わず誰もが「ケアの心」「看護の心」「助け合いの心」を育むきっかけとしてもらうため、フローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなんで1990年に制定されました。超少子高齢社会の日本で医療・看護の提供体制を維持していくためには、少なくとも18歳人口の18人に1人の割合で看護職をめざしてもらう必要があるとされています。
そこで日本看護協会は、2021年度以降の「看護の日」事業などを通して、若年層に向けたメッセージ発信を強化する方針です。
本イベントもその一環としての取り組みで、日本看護協会の福井トシ子会長は「看護のスペシャリストが仕事の魅力を大いに語る姿を、ぜひ多くの中高生にも見ていただきたい」と期待を語りました。
トークセッションに登場したのは、東京都立多摩総合医療センターで集中ケア認定看護師として働く下澤洋平さんと、日本医科大学多摩永山病院で感染管理認定看護師として働く山本愛さん。そして、2021年度の「看護の日」ポスターにも起用されている、看護学生の奈良部眞由子さんと稲垣凌太さん(ともに東邦大学看護学部2年生)でした。
さらに、テレビドラマで看護師役を演じた経験を持つ女優の志田未来さんが、スペシャルゲストとしてトークに参加。「専門用語が難しくて、慣れているように話すのが大変でした」と当時の苦労を振り返るとともに、コロナ禍でよりいっそう注目される看護師の仕事について勉強したいと本イベントへの思いを語りました。
集中ケア認定看護師が実践する「一歩先を行く看護」
集中ケア認定看護師のやりがいについて下澤さんに質問する奈良部さん
トークセッションでは、まず看護学生が認定看護師の職場を訪れる様子を収めた映像が流され、それを踏まえて質疑応答などが行われました。集中ケア認定看護師の下澤さんは、緊迫感あるICUの現場での仕事ぶりを紹介。集中ケアを要する重症の患者さんに対しても、早期からのリハビリテーション介入で合併症を予防することの大切さ、それと同時に安全性を担保することの必要性などを話しました。
また、新型コロナウイルス感染症に絡んで注目されているECMO(体外式膜型人工肺)使用時、懐中電灯を当てながら刺入部や管の様子を確認するなど、看護師が実際に行う観察の手順やポイントを詳しく説明しました。
集中ケア認定看護師として働く魅力を語る下澤さん
「患者さんにとってのゴールはICUを出ることではなく、元通りに社会復帰できること。それをサポートするため『一歩先を行く看護』を意識し、痛みなどの症状が出る前に予防的な対応をしたり、鎮静中の患者さんでも表情やささいな身体の動きから気持ちをくみ取ったりすることを心がけています。多職種チームで介入して患者さんが回復されたとき、集中ケア認定看護師になってよかったと感じます」と語る下澤さん。高度な専門的知識・技術を発揮しながら全人的に患者さんを看るプロフェッショナルな仕事ぶりに、看護学生の熱いまなざしが注がれました。
「病院全体を守る」感染管理認定看護師の役割
感染管理認定看護師として働く魅力を語る山本さん
感染管理認定看護師の山本さんの映像では、感染制御部に所属する看護師の役割が紹介されました。例えば、一般の看護師が患者さんをアセスメントして看護計画を立てるのと同じように、感染制御部の看護師は院内感染対策の状況をアセスメントし、計画的に実行・調整しながら、「病院に出入りするすべての人を感染症から守る」という高い志で日々の業務に当たっていることが分かりました。カンファレンスや問い合わせ対応、病棟ラウンドだけでなく、保健所との連携、サーベイランス、研修の講師を務めるなど、縦横無尽に活躍する姿が印象的でした。
スタッフへ指導する際に意識していることを聞かれた山本さんは、「職種により物事の見方が異なるため、意見が対立することもあります。でも、『患者さんのため』という思いは一緒のはず。その目的を見失わず、上手に意見をまとめていくことが大切です」と答えました。コロナ禍にあっては、あらためて自らの役割を見つめ直したそうです。
看護の道を選んだ「思い」を振り返る一日に
認定看護師の多岐にわたる仕事内容に感嘆する志田未来さん
トークセッションを受けて、志田未来さんは「想像以上に看護師のお仕事は大変で、プロフェッショナルな現場なんだと実感しました。私たちが皆さんに会うのは、肉体的にも精神的にも弱っているとき。そのときに看護師さんがかけてくれる言葉や笑顔に、いつも救われています。看護師になるまでの道のりでは楽しいことばかりではないと思いますが、自分の理想とする看護師像に向かって頑張ってください」とメッセージを送りました。
Nursing Nowキャンペーンを振り返る福井会長と島田氏
トークセッションのほかにも、看護職への関心を集め、地位向上を図ることを目的とした世界的なキャンペーンNursing Nowを振り返る映像を披露。
加えて、厚生労働省医政局看護課長の島田陽子さんと、日本看護協会の福井トシ子会長の対談で同キャンペーンの総括が行われ、説得力ある政策提言のためにもエビデンスの構築が重要であることなどが確認されました。
背景のスクリーンには全国の看護師たちが「元気の歌」でダンスする映像も
最後に、つんく♂さんが作詞作曲し、相川七瀬さんが歌うNursing Nowキャンペーン公式ソング「元気の歌」が流れ、キッズダンサーによる元気いっぱいのパフォーマンスで締めくくられた「看護の日トークイベント」。
「医療従事者の方や、そのご家族の方ががんばってくださっているからこそ今の私たちの生活が保たれているんだな、ということをすごく実感しました。」と感謝を表す志田未来さん
これから看護の道を進む学生にとって大きな刺激となったのはもちろん、現役で活躍する看護師の皆さんにとっても初心を思い出し、明日へのエネルギーを充填するきっかけになったのではないでしょうか。
取材・文/ナレッジリング(中澤仁美)
撮影/高嶋 一成[colors]動画素材提供/公益社団法人 日本看護協会
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■イベント概要
開催日時 : 2021年 5月 9日(日)14:00~16:00
開催形式 : YouTube Live にて無料配信
イベント公式 HP : https://www.nurse.or.jp/home/event/simin/event/index.html
※公式アーカイブ動画もHPでご覧いただけます!