- 1 人の言動は脳によって支配され、動かされている
- 2 周囲から浮いている人間には、 浮いている人間なりの理由があります
- 3 人の顔立ちや体格がちがうように、 「変わった人」も脳にいろいろなちがいがあるだけ
- 4 はっきりとした意見を言おうとしない人から、 いいアイデアを引き出すには「イエス・バット」を活用しましょう
- 5 普段から自分の言動を客観的に分析していると、 苦手な人とうまく付き合えるようになります
- 6 「あの人の本心は見抜けない」という前提に立ったほうが、 関係はうまくいく
- 7 【脳にまつわる意外な迷信!?】脳科学的には、 右脳型人間も左脳型人間も存在しない
- 8 人間関係の環境を変えると、 運命が変わる
人の言動は脳によって支配され、動かされている
人間の心も考えも、すべて脳の働きによって生じているという事実を知れば、不確かな臆測に惑わされることは少なくなります。
親しげに接してくる人、近寄りがたい人、理解に苦しむ人、そしてあなた自身さえも……人の言動は脳によって支配され、動かされているのです。
脳科学をもとに人を見て相手と接することができれば、いままでよりずっと深いところで人間を理解できます。それは、仕事や恋愛、人生そのものにおいて、あなたと周囲の人との関係性を幸せなものにするでしょう。
周囲から浮いている人間には、 浮いている人間なりの理由があります
「どうして、あの人はグループに入ってこようとしないのかしら」。そう感じることがあっても、その人は決してあなたたちを嫌いなわけではないと理解してください。
実は、わたし自身、ものすごく周囲から浮いている人間でした。とくに中学校時代は最悪で、同性のクラスメイトが楽しそうに会話している内容が理解できませんでした。どこが面白いのか、まったくわからなかったのです。
それゆえに、クラスメイトの輪に入っていくことができず、先生からは協調性がなく利己的な問題行動をとる人間と評価されました。
でも、誰にも悪意など感じておらず、ただ、異質だっただけなのです。とくに日本人は集団行動を好みますから、異質な人間がそばにいると不安になる気持ちはわかります。あなたが大切にしている集団を敵視しているように感じるかもしれません。しかし、そんなことはありません。異質は異質として、そのまま認めてしまうと、お互いに楽になるはずです。
人の顔立ちや体格がちがうように、 「変わった人」も脳にいろいろなちがいがあるだけ
自分が世の中から浮いている理由を知りたくて脳科学の道を選んだわたしは、研究を進めるうちに、自分と同じような人間が一定数いると知って、安心できた経験があります。
むかしはわからなかった脳内の様々な反応については、脳や脊髄の活動を視覚化するファンクショナルMRIの登場によって詳しく知ることができるようになりました。
その研究データを見ていくと、脳の一部の機能が未発達であったり、過剰に活動していたりする人たちが一定数、存在します。しかし同時に、脳のほかの領域を使うように努力することで、それらを補うこともできています。
人の顔立ちや体格がちがうように、人によって脳にいろいろなちがいが出ていたとしても、なんら驚くことではないのです。
はっきりとした意見を言おうとしない人から、 いいアイデアを引き出すには「イエス・バット」を活用しましょう
自分の意見を述べるときに、最初から核心部分に触れる人と、周囲の反応を見ながら少しずつ小出しにしてくる人がいます。後者の場合、話しはじめた相手に対し、こちらはどうしてもつまらなそうな反応を示してしまいがちです。
しかしそれをやると、相手は核心部分を言わなくなります。本当はつまらない意見だったわけではないのに、面白いところまで出させてあげずに終わらせてしまうことになります。
ですから、こういうタイプの人にはまず肯定。その後、「でも」をつなげる「イエス・バット」の手法を活用しましょう。
「なかなか面白いじゃない。でも、あなたならもう少しなにか面白いものが出てくるんじ
ゃない?」
たぶん相手は、このひとことで勇気を与えられ、いいアイデアを出してくれるでしょう。
普段から自分の言動を客観的に分析していると、 苦手な人とうまく付き合えるようになります
メタ認知とは、認知を認知すること。自分の思考や行動を客観的に認知することを言います。
「そうか、わたしはあの人がこういうことを言うから、戸惑っているんだ」
「とくにこういうことをしているときに声をかけられると、いつも困ってしまうんだ」
このように、客観的に自分の思考や行動を分析してみると、自ずと苦手な相手への対処法もわかってきます。
メタ認知能力を高めるためには、普段から自分を内観し、記録することをおすすめします。わたし自身、「メタ認知日記」とも言うべき誰にも見せない裏ブログをつけて、たびたび読み返しています。
あるいは、「この人はメタ認知能力が高い」と思える人と一緒に過ごさせてもらうのもいいでしょう。それによって、自分を客観視できている人の思考パターンや行動パターンが自然とあなたにも移ってくるはずです。
「あの人の本心は見抜けない」という前提に立ったほうが、 関係はうまくいく
心理学の専門家であれば、相手の細かい様子から隠された本心を見抜くことも可能でしょう。例えば、口角を上げて笑顔をつくっているのに目の周りの筋肉が動いていないとか、不自然なほどに爽やかだとか……。
でも、素人がこうしたことを考え過ぎていると誰とも付き合えなくなってしまいます。リスク回避ばかりしていると、それこそ恋愛など到底できませんし、職場の人間関係でも同じことです。もし、あなたが誰かに興味を抱いたなら、まずは近づいてみてください。ただ、「この人は危ない」と感じたときに、うまく退避できるような余裕は残しておきましょう。
「ズブズブにはまって逃げられない」ということにさえならなければ、どんな人と付き合っても大丈夫です。
【脳にまつわる意外な迷信!?】脳科学的には、 右脳型人間も左脳型人間も存在しない
よく言われる「右脳型・左脳型」という分類は、脳科学の世界には存在しません。創造性が高い人を右脳型、理論的な人を左脳型などと定義するのは、根拠のない話なのです。
かなり前に、「分離症」という、右脳と左脳を結ぶ脳梁を切断した患者さんを被験者にした実験が行われたことがあります。その結果、左脳を損傷しているけれど右脳が生きている人は、ディテールは認識しにくいけれど大きな輪郭はつかみ、逆に、右脳を損傷しているけれど左脳が生きている人は、大きな輪郭はわからないけれどディテールは理解するということが判明しました。
そのことから、右脳は全体像を、左脳は細かい部分を判断するのに使われると考えられるようになりました。しかし、全体を把握することと創造的であること、細かいところを見ることと理論的であることを結びつけるのは強引な気がします。
右脳型か左脳型かで人間を分けようとするのは、あまり賢い方法ではありません。
人間関係の環境を変えると、 運命が変わる
いまのあなたが手にしている結果は、あなたが自分で選択してきたものです。「運命」と言うと、どうにもならないもののように思えますが、すべて自分で選択した結果です。
ですから、これからの選択肢を変えることによって、運命を変えることも可能になります。選択肢を変えるにあたっては、人間関係を変えるのが早道。例えば、友だちを替えるだけで行く場所も食べるものも変わり、必然的にあなたの運命も徐々に変わっていきます。もちろん、パートナーもしかりです。
「この人と一緒にいていいのだろうか」と思いながらズルズル引きずっていると、あなたの運命に影響が出てしまいますよ。
『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』中野信子著(2017年 セブン&アイ出版) 本コラムは同書を元に再構成しています。