著名人・賢人コラム ココロの処方箋
【山口真由】看護師の勉強法―新人・ブランク・ベテラン

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/辻本圭介 撮影/玉井美世子

Vol.7

2019.02.12

東大主席&NY州弁護士に教わる 【新人・ブランク・ベテラン】看護師勉強法

看護師は日々新しい医療知識を吸収しながら、質の高い看護を実現するため日々勉強を続けていく必要があります。なかには、キャリアアップのための試験を受ける人もいるはずです。でも、あまりの忙しさに勉強は後回し……そんな人も多いのではないでしょうか。看護師さんの「学び」の悩みに、東京大学法学部を首席で卒業し、大学生のときに司法試験と国家公務員Ⅰ種に合格した、いわば「学びのプロ」である山口真由さんが答えてくれました。

勉強が苦手な看護師必見の効果的な勉強法とは?

同じ教材を繰り返し読むだけで「学び」の成果は上がる

――看護師は日々進化する医療の世界に身を置いていますから、新しい知識をどんどん吸収する必要があります。非常に体力を要する仕事ゆえ……なかなか勉強に手が回らない人も多いようですが、山口さんが行ってきた勉強法はどんなものでしたか?

山口:同じ教材を7回読むだけで、勉強の成果は確実に上がります。わたしはかねてより、自身が実践して結果を出してきた「7回読み勉強法」を推奨してきました。その方法はとてもシンプルなもので、同じ本を7回読むというもの。この話をすると「え、読むだけなの?」といつも驚かれるのですが、実際は同じ参考書なり問題集なりを「7回読む」人はかなり限られます。

――たしかに同じ教材を何度も繰り返して読むことは大変な気がします。

山口:おそらく、11回をしっかり読もうとして途中で疲れてしまうからですね。でも、「7回読み勉強法」は、薄くサラサラと読み流すことを繰り返すことがポイントになります。

勉強が苦手という人に話を聞くと、そもそもやるべき教材を最後まで終えていない人がたくさんいます。つまり、「できない」のではなく「手をつけていない」だけなのです。そこで、同じ教材を繰り返し読むことで、学習内容全体を記憶に定着させるのがこの勉強法の基本的な考え方になります。同じ教材を7回読めれば大体の内容は頭に入るので、わたしはこの勉強法で、学生時代も塾などに通うことなく大学受験や司法試験にも合格することができました。

復職ナース・新人ナース…現場の看護師が実践したい勉強法

7回読むことで本の全体像を無理なく理解できる

――7回読み勉強法」の具体的な方法を教えてください。

山口:では、順を追って具体的に説明していきますね。

1回目
まず章のタイトルや見出しを、頭のなかのノートに写し取る感覚で読んでいきます。文章を11行読むのではなく、情報が集中している漢字を拾っていくように流し読むイメージ。また、見出し同士の関係をつかみながら全体の構造を感じ取っていきます。

2回目
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回目と同じように漢字を意識しながら、3行ずつ斜め読みするイメージで読んでいきます。1回目で見出しなどは頭に入っているため、そのうえで読み流していくと、より全体のアウトラインや構造が頭に入ってきて本の内容を捉えられるようになります。

3回目
さらに、2回目と同じ要領で流し読みします。2回目で把握した全体のアウトラインや構造がより明確になっていくでしょう。あくまでも内容を理解しようとするのではなく、サラサラと読むことがポイントです。

4回目
頻出するキーワードや詳しく説明されている用語に注目しながら、普通のスピードで読んでいきます(平読み)。この段階でもまだ内容を理解しようとするのではなく、「この単語がよく出てくるな」「この用語を詳しく説明しているんだな」と感じ取っていくだけで構いません。

5回目
基本的に4回目と同じですが、この段階で大切なのはキーワードとキーワードの間の説明文を意識すること。つまり、キーワードが「どのように説明されているか」に注目し、そのページや段落の要旨をつかむことを意識します。この要旨をつかむ作業が読書においてはとても重要なので、4回目と5回目にわけています。

6回目
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回目で要旨をつかみだいたいの内容もわかっているはずなので、細部に目を向けていきます。細部というのは、要旨(論点はなにか、どんな説があるかなど)を説明する箇所のことで、具体的な事例などにあたる部分。キーワードの意味や、キーワードとキーワードの関係を理解しながら、頭のなかに内容がしっかりコピーされているかを確認する感じで読んでいきます。いわば、要約していく段階です。

7回目
頭のなかにだいたいの内容を写し取れているため、最後に定着させます。この段階では、「ここにはこういうことが書いてあるはず」と頭のなかで先に要約し、読みながら答え合わせをする感覚で読むといいかもしれません。

――基本はサラサラと読み流すことを繰り返しながら、回数を重ねるごとに少しずつ読み方を深めていくわけですね。

山口:13回目で全体像を感じ、45回目でキーワードを意識して要旨をつかみ、67回目で内容を把握するという流れで1冊の本を読むのが「7回読み勉強法」です。どんなことも、「知らないこと」は理解できません。そこで、本の内容を理解する前に、まずその本と「知り合い」になっていくことをイメージすればわかりやすいと思います。

――7回読み勉強法」は、看護師のふだんの仕事にも役立ちますか?

山口:7回読み勉強法」は、もちろん看護師さんの仕事にも役立つはずです。たとえば、看護師さんは、医療に関する知識を頭のなかに詰め込んでいく必要がありますよね。本や資料などを、短期間で読まなければならないこともあると思います。

そんなとき、まず見出しなどを拾いながら全体を13回読み流してください。「探していることはどこに書いてあるか」を意識しながら、より深く読むべき箇所を見つけていくのです。そして、45回目でその部分の要旨をつかんでいけば、よりスムーズにリサーチすることができるでしょう。

看護スキルがみるみる身につく!

記憶は才能ではなく「反復と継続」で定着する

――具体的な方法はわかりました。でも、サラサラと読み流すだけで本当に内容を理解できるのでしょうか?

山口:わたし自身、記憶というものは、才能ではなく「反復と継続」で定着すると考えています。そこで、同じ項目を何度も繰り返し頭に入れていくことで、理解を深めて定着させることができるわけです。また、何度も読んでいると、読むたびに「こういうことだったのか!」「12回目では気づかなかったけどこんなことが書いてあったんだ!」と新しい発見もあり、勉強を楽しく続けることができます。同じ本を何度も読むことは、金銭的な負担も少なく誰にでもすぐにはじめることができるはずです。

――キャリアアップのための試験などを控えている場合は、どんな教材を選べばいいのでしょう。

山口:学ぶべき内容を詳細にカバーした網羅性が高い本を選びましょう。同じものを7回読むということは、「必要な情報がすべて書いてある」と信頼できる教材を選ぶ必要があります。ヌケモレがあるものを何度読んでいても、必要な知識を得ることはできませんよね。そこで、学ぶべき内容が詳細にカバーされた網羅性が高い1冊の本を選ぶことが大切になるのです。

キャリアアップのための試験でも「これをやればいい」と定評がある教材になるようなものがあると思います。まずはその教材を7回読んでいく。そして、その後は過去問も繰り返し解いていきます。資格試験に臨むなら、必ず過去問から出題傾向を把握しておきましょう。

忙しい・時間がない看護師さんでもデキる!

「隙間時間」を徹底的に活用すれば勉強時間は生み出せる

――悩ましいのは、正しい方法で勉強していても、仕事が忙しくてまとまった勉強時間がなかなか取れないことかもしれません。

山口:勉強は、「取り組んだ時間」がすべてです。キャリアアップのための試験にいかに勉強を積み重ねてきたか、その勝負なのです。でも、社会人になると自由になる時間は限られ、特に看護師は勤務時間が不規則なことも多いので大変でしょう。そこで、わたしが提案したいのが「隙間時間」の使い方を変えることです。

たとえば、わたしは移動時間や店の待ち時間などで、4分あれば本を読み、6分座れたらパソコンをすぐに開きます。こうした「隙間時間」の積み重ねは、本当にあなどれません。わたしの妹は専門医ですが、「今日は移動中にこれを読む」と決めて、薄い教材や資料を必ず持ち歩いています。繰り返しですが、勉強は「取り組んだ時間」がすべて。勉強時間をひねり出すために、ふだん何気なく過ごしている「隙間時間」の使い方にこだわってみてはいかがでしょうか。

――そもそも日ごろから勉強習慣がない人はどうすればいいですか?

山口:これは、もう「やる!」と決めてしまうしかないと思います(笑)。たとえば、「移動時間は教科書を読む」と決めてしまい、とにかく移動時間は本を開いてみる。このとき大切なのは、たとえ内容が頭に入ってこなくても、読んでいない時間よりは絶対にマシだと自覚することです。「少しでも読んでいるんだから」「今日はよくやっているな」と、意識的に自分をほめてほしいのです。勉強が進まないとすぐにネガティブに評価しがちですが、そもそも本を開いて23行でも読んだのは「大きな進歩」。そうした行動を積み重ねていくことで、少しずつ勉強習慣がついていきます。

社会人の勉強は、目標を高く立てすぎないことも大切。8割くらいの達成率でよしとしておけば、「今日もできなかった……」と自らを責めることも少なくなります。そのぶん、早めに手をつけておくことをおすすめします。

先輩看護師や医師とのコミュニケーションがポイント!

職場のコミュニケーションが学びの成果を左右する

――先にも少しだけ触れましたが、看護師は日常の仕事でも学ぶべきことがたくさんある職業です。勉強しているつもりなのに、なかなか仕事の成果に結び付かない場合はどうすればいいですか?

山口:病院内のことであれば、事前に「どんなことが問題になりそうか」を把握しておくことです。学びの成果がすぐに出ないときは、じつは的外れなことをしている場合があります。そこで、それぞれの病院や診療科で、「どのような方針で施術が行われているのか」「どんなことが主な問題なのか」を、まずはきちんと把握することが大切です。

そのためには、先輩との日ごろからのコミュニケーションがとても重要。最初に「この件はどこが問題になりそうですか?」と素直に聞いて、教えてもらいましょう。そして、そこだけをピンポイントで勉強する。すると、「この子はわかっているな」と印象が良くなり、次からも教えてもらいやすくなります。わたしの友人にも医療系で働く人は多いですが、看護師は女性が多い職場のため悩みも多いと聞きます(苦笑)。ならばなおさら、良い人間関係を築くことが学びの内容や成果を左右する面があると思います。

――看護師の仕事には勉強会や申し送りの機会が多いですが、人前でうまく話せずに困ってい人はたくさんいます。言いたいことを、聞き手に的確に伝える方法はありますか?

山口:じつは、わたしも話すのはあまり得意ではありません(笑)。そこで、発表の機会があるときは、必ず事前に自分で実際に話してみることにしています。すると、その過程で「先に結論を言ったほうが伝わるかな」「この表現のほうがわかりやすいかもしれない」と気づくことができ、説明がどんどん洗練されていくのです。

また、話の内容よりも、そもそも話すスピードが早過ぎたり、言葉の切り方が悪かったり、声が聞き取りづらかったりする場合もあります。そこで一度、家族や友人に聞いてもらうと、自分では思ってもみなかった発見ができるでしょう。逆に、話の上手な先輩をロールモデルにして、「どのように話しているのか」をよく聞いてみるのも上達の近道だと思います。

うまく話せないのは、「次に話す内容」が自分でもわからず、話自体が迷子になってしまうから。そこで、発表前は必ず事前準備として、あらかじめ「質問されそうなこと」をヒアリングしておくことも有効です。その意味では、やはり先輩とのコミュニケーションは大切ですよね。そうしたことに気をつけて少しずつ改善していけば、アウトプットの質は確実に変わってくると思います。

\看護師にはいろいろな働き方がある!

プロフィール

山口真由(やまぐち・まゆ)

NY州弁護士・コメンテーター

東京大学法学部を首席で卒業。大学3年次に司法試験、翌年には国家公務員Ⅰ種に合格。学業成績は在学中4年間を通じて「オール優」で4年次には総長賞も受ける。2006年4月に財務省に入省し、主税局に配属。08年に退職し、09年から15年まで大手法律事務所に勤務し企業法務に従事。15年から1年間ハーバード・ロースクールへの留学、修了し、ニューヨーク州弁護士資格も取得。現在は、テレビのコメンテーターや執筆でも活躍している。著書に『東大主席が教える超速「7回読み」勉強法』、『東大主席が教える「間違えない」思考法』(以上PHP研究所)、『リベラルという病』(新潮社)、『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55:家庭でできる最難関突破の地頭づくり』(学研)など多数。

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