著名人・賢人コラム ココロの処方箋
【澤 円】忙しい看護師が知っておきたい「時間」との向き合い方

構成/岩川悟(slipstream) 写真/榎本壯三

Vol.4

注目のビジネスパーソン澤円(さわ・まどか)さんがアドバイス 忙しい看護師が知っておきたい一流が実践する「時間」との向き合い方

日々の看護や後輩指導、看護記録、勉強会など、患者さんとそのご家族の対応に加え、多岐にわたる看護業務で毎日目がまわるほど忙しい看護師さん。質の高い看護を行うためにも、業務効率化は大切です。そこで今回は、膨大な仕事量をこなすコツと、時間に対する向き合い方に関して、話題のビジネスパーソン・澤円さんが語ります。

“できる看護師”になる時間の使い方

「未来のためだけに時間を使おう」

最近ニュースや新聞紙面上で目にしない日がないキーワードのひとつが、「働き方改革」です。世界的に見て、日本企業の生産性が非常に低いことは紛れもない事実なので、改革が必要なのはたしかかもしれません。社会人なら、「日本人の働き方は非効率だ」というニュースやビジネス雑誌の記事を目にしたことがあると思います。

ある調査では、日本の時間あたりの労働生産性(2017年度版) はG7のなかでなんと48年連続最下位。OECD加盟35カ国中でも、20位という結果でした (公益財団法人日本生産性本部調べ)。おそらく公表されている数値だけで計算されているので、サービス残業なども含めれば実際はもっと悪い数値だということも十分に考えられます。なぜこんなことになるのか?

僕はいつも、とにかく日本人は「決める会議」ができないことが原因のひとつではないかと感じています。僕が会社で所属するチームでは、日本企業の人がビジネスインターンというかたちで常駐しているのですが、そのうちのひとりの言葉に衝撃を受けたことがあるからです。彼がある日、僕に対してこう言ったのです。

「会議でなにかが決まるところをはじめて見ました」

僕は会議でなにも決めないなんて絶対にしないし、そもそもなにも決まらない会議は召集自体しないので、この言葉を聞いて心底驚いてしまったのでした。「日本企業には無駄な会議が多い」とはむかしから言われていることですが、いつになっても改善されません。なぜか? それは、「会議ですべきこと」を理解していないからだと僕は考えています。

【報連相と時間の関係性】

会議自体が無駄なわけではなく、問題なのはその内容にある。あくまでも時間は有限なのだから、過去のことを議題にせずに、未来につながる議題を中心にしていくべき

たとえば、働く人間にとって「報連相(ほうれんそう) という言葉はおなじみですよね。このなかの「報告」に使うレポートに膨大な作業が発生していたり、「連絡」を対面で行ったりすることで時間を浪費している傾向があるのです。

考えてみれば、「報告」と「連絡」は過去から現在までのすでに起きたことについての話なので、本来はITツールなどを用いて自動化し効率化できるはず。データは、「見ればわかる」ものです。それをわざわざ時間を使って、人を集めて報告させることにまったく意味はありません。また、出席者は会議のために移動しなければなりません。ビジネスにおいて移動時間はなにも生み出さないのでこれもまた無駄なものです。

つまり、会議という立派な名目で、報告という無駄なことをさせ、さらに移動という時間の無駄まで発生させている。連絡はいまならチャットで十分で、電話する必要すらありません。おそらくは、「目上の人にメールで報告や連絡をするのは失礼だ」という意識が広く強く共有されているため、利益を度外視してまで無駄な時間をかけてしまうのでしょう。

一方、「相談」は未来の話をすること。僕はこの部分は対面で話す価値があると考えています。つまり、「未来のことを最大化」するために働くというわけです。

これからどうするか、次の一手はどうするかという未来の話は、生産的で楽しいものです。楽しい仕事だけが残るわけで、楽しい仕事なら誰もが高いモチベーションで臨んでくれるにちがいありません。誰だって、夢やビジョンを語るのは楽しいのです。

結果を出せるビジネスパーソンに共通しているのは、「未来志向」を持っていることだと僕は思います。「時間はなんのためにあるか」と考え、未来を良くするために使うところに思考を戻さなければいけません。

今日からあなたの働き方を変えるために必要なのは、高額なツールを買うことでもコンサルタントに頼ることでもなく、こんなマインドセットを持つこと。

過去のことに時間を使わないためには、どうすればいいだろう?

過去に学ぶ必要は当然ありますが、過去の出来事そのものが変わることはありません。過去に起きたことに一生懸命に時間を使うのは、とてつもなく無駄なことなのです。

業務を効率化して看護の質を上げ自分磨き!

「膨大なタスクを効率的にこなす3つの原則」

過ぎ去ったことに時間を使うのではなく、未来に目を向けること――。

未来のことに時間を使うためには、いま現在のタスクを効率良くこなして「考える」時間をつくる必要が出てきます。

あなたのまわりには、すごく忙しいはずなのになぜかゆったりしているように見える人はいませんか? あくせくしていなくて、いつも悠々とした雰囲気の人です。こうした人たちは、優先順位の立て方が上手なこともありますが、タスクを効率的にこなすための「3つの原則」を確実に身につけています。

【タスクを効率的にこなす3つの原則】

①できるタスクとできないタスクを理解している

②やると決めたひとつのタスクに集中している

③タスクにかかるスピードを把握している

これらを、順に説明します。

①できるタスクとできないタスクを理解している
できるタスクは自分でやりますが、自分がやるとかえって時間がかかる優先順位の低いタスクは迷わずアウトソーシングする。具体的には、得意な人にやってもらったり、ツールを使って自動化したりするとベストでしょう。また、「やらない」という選択肢もあります。そうした観点から、まずはタスクを取捨選択します。

②やると決めたひとつのタスクに集中している
やると決めたタスクに集中しましょう。ひとつのタスクに集中して取り組むと、スピードが上がり作業にかかる時間が短くなります。

③タスクにかかるスピードを把握している
それぞれのタスクにかかる時間を把握しておくと、急用が入っても予定を調整しやす

くなります。たとえば、ある作業に2時間かかると知っていれば、たとえ急用で中断して

も、前後1時間ずつ振りわけるなどすれば確実に終えられる算段ができるでしょう。

このように、自分が得意なことを着実に行いながら同じように他の人にも得意なことを

してもらい、ともに突っ走れる仲間を増やしていくこと。そのためには、「原則①」がよ

り大切なポイントになります。そんなアウトソーシングを、僕はこう呼んでいます。

他人と「時間の貸し借り」をする。

たとえば、僕の仕事は会社で開発した製品のプレゼンテーションがメインです。すると、限られた時間でオーディエンスにインパクトがある話をすることは得意中の得意。だからこそ、プレゼンの依頼が多方面から舞い込みます。

そんなプレゼンで大切なのは、コンテンツ(中身)と当日のパフォーマンスに尽きます。

ですから、まずはプレゼンに集中できる最良のコンディションをつくることに注力しなけ

ればなりません。そこで、コンテンツの材料となるクライアントのプロファイル分析や事業内容の精査は他者と協働することにしています。いわば、他者の時間を借りるわけです。他にも、当日の参加者や前後のプレゼンのバランスなどについての質問も投げておき、情報収集をまかせています。

なぜこんなことができるかと言えば、まわりから「この人がもっともインパクトを与えられるプレゼンができる」と思われているから。言い換えると、僕は僕で得意なことを他者から丸ごとまかされているというわけなのです。

業務にかかる時間はどのくらい?

「ボトルネックがわかれば仕事のスピードが上がる」

さて、時間に関することとしては、仕事全体のスピードを上げることも重要になります。ポイントは、ボトルネックによって左右されます。

これは、物理学者のエリヤフ・ゴールドラットが書いた大ベストセラー『ザ・ゴール』(ダイヤモンド社)でも詳しく紹介されている「全体最適化理論」のこと。全世界で1000万人以上が読んだとされ、ビジネスの原則としてよく知られています。

つまり、自分が最高のスピードを出せる状態にするには、まずボトルネックを知り、それをどう改善するかがポイントになるというわけです。つかえているところを先に取り除き、突っ走れる状態にしておくということですね。

そこで、先に説明した「原則③(タスクにかかるスピードを把握している)」の話になりますが、まず自分の仕事のスピードを把握することが、仕事や学習全体のスピードを左右するポイントになります。あたりまえですが、自分の仕事のスピードが早くなったかどうかを知るには、そもそも自分の仕事のスピードを知っておかなければわかりません。

自分の仕事のスピードを測るためには、仕事の中身をすべて棚卸しする必要があります。そして、すべてのタスクについて「どのくらいの時間で完成するのか」を順に測っていきます。このとき、あまり細かく測るとその作業自体に時間がかかってしまうので、だいたいの感覚でいいでしょう。あるタスクにかかる時間が1時間なのか3時間なのか、はたまた丸1日なのか。そのくらいの単位でも十分。いずれにせよ、なににどのくらいの時間をかけているのかを知ることが大事です。

そして次は、「時間がかかっている」と思うタスクの改善案を練っていきます。ここに、あなたのボトルネックが潜んでいるわけですが、一般的にボトルネックにはこのようなものがあります。

習熟度が低い

やりかたが自己流

そもそも興味がなく嫌々やっている

習熟度が低かったり、やり方が自己流だったりする場合は、練習したりうまくいっている人に教わったりすることで解決する可能性がぐんと高まります。自分の絶対スピードが上がると成長の実感も得られるので、やればやるほどモチベーションも上がっていくでしょう。もちろん、そのタスクそのものに興味がなく嫌々やっているという要因もあるはすです。

いきなりすべてを解決することは難しいかもしれませんが、ここにあることを実践していけば、時間に対する考え方は間違いなく変化していきます。ぜひ、自分のなかの思考に取り入れてみてください。

今コラムは、澤円(さわ・まどか)著『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒント―』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。

\看護師にはいろいろな働き方がある!

『あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント
澤 円著 
(2018年 セブン&アイ出版)

本コラムは同書を元に再構成しています。

次回予告 働き方を見直して、業務効率化を図り質の高い看護を実践したいですね! 新年は、人気占い師・ゲッターズ飯田さんのエッセイより「2019年の転職&お仕事開運メッセージ①」をお届け予定です。
プロフィール

澤円(さわ・まどか)

日本マイクロソフト

立教大学経済学部卒業。生命保険会社のIT子会社を経て、97年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任し、2011年、マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長に就任。18年より業務執行役員。06年には十数万人もの世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツが授与する「Chairman’s Award」を受賞。現在では、年間250回以上のプレゼンをこなすスペシャリストとしても知られる。
Twitter:Madoka Sawa/澤 円(@madoka510)

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