著名人・賢人コラム ココロの処方箋
【小林弘幸】「看護師を辞める」というわがままな選択

構成/岩川悟(slipstream) 写真/川しまゆうこ

Vol.2

2018.12.21

自律神経の名医・小林弘幸が教える 「看護師を辞める」というわがままな選択

「断れない」「休めない」「辞められない」……働いていると、なかなか自分の都合よく生きることができずストレスフルを招きます。特に、人手が不足する看護師さんならなおさらのこと。そんなあなたに、自律神経の名医・小林弘幸先生からのアドバイスです。

忙しさや責任感で休めない、有給は捨てるもの……看護師も自分ケアが大切です

「職場で“わがまま”にすぐ断る、きっぱり休む」

自律神経の専門家としての立場から、人間関係におけるストレスをなくし、自律神経を整えていくための「わがまま」に生きるコツをお伝えしていきます。

わたしたちのまわりには、イライラする人間関係があふれています。必要のない会議や打ち合わせ、得るものが少ない上司や得意先との飲み会、悪口だらけのママ友会……。本心では参加したくないのに、なかなか断りづらい状況もあって、自分をだましだまし続けていることがあるかもしれませんよね。

しかし、そんなことを続けていると、不要なストレスを溜め込んでしまい、どんどん自分を追い詰めてしまいます。あなたが守るべきは、まず自分の健康と時間です。この最優先事項に、もっともっと「わがまま」になってほしい。そこで、これからはそんな誘いは、すぐ断ることを意識してみてください。ここで大切なのは、「すぐ」ということ。

「そんな無下に断ったらみんなを悪い気にさせる」

「飲み会も仕事なのだから、上司の誘いはやっぱり断れない」

でも、そうして迷うそぶりを見せていると、ますます断りにくくなるだけです。もちろん、わざわざ波風を立てる必要はなく、断り方を工夫することは必要かもしれません。ただ、毎回断っていれば、さすがに相手のほうも「あの人はわたしたちの集まりには来ないんだな」とわかるはずで、自然に誘われなくなるまで「わがまま」に断り続ければいいだけのことです。

「嫌われるかもしれない……

「仲間はずれにされる……

と心配になるかもしれませんが、そもそもこんなに「やりたくない」と感じているあなたをしつこく誘ってくるような相手は、あなたのことなどたいして考えてはいません。ただ、自分が憂さ晴らしをしたり、愚痴を聞いてくれる相手がほしかったりするだけです。これこそ「わがまま」を通すときと考え、迷わず毅然と、すぐ断ってしまいましょう。

同じように、働く人間にとってできないことの代表格が休むことではありませんか? これもまた、誰かが気を利かせて「そろそろ休んだら?」と言ってくれるわけではないので、休めないと思っていたらそれこそいつまで経っても休めません。 

そこで、これからは自分の健康のために、きっぱり休むことも心がけましょう。休みは与えられるものではなく、自分から「わがまま」にとっていくものです。そうしない限り、あなたのことなどたいして考えていない他人に、どんどん奪われていくものだと自覚することが大切です。

「断れない」「休ませてくれない」と嘆いたり、あきらめたりするのではなく、もっとも大切な自分の健康と時間は、自分しか守れる人がいないという意識を持つことから、ぜひはじめてみてください。

看護師の人間関係や職場環境に疲れたら…

「死ぬときのことを想像すれば転職も一歩を踏み出せる」

会社や組織に所属する人にとって、最大の「わがまま」は、その会社や組織を辞めることではないでしょうか。よくカフェや居酒屋に行くと、会社や上司に対する不満を言い合いながら、「もう辞めてやる!」と興奮している人もいますが、そんな欲求不満を吐き出すことで、ある意味で人間関係のストレスをコントロールしているのかもしれません。

ただ、そんな方法に効果がないことは当然です。より根本的に人間関係を変えたいと願うなら、いまいる環境から去ることは有効な手段になり得るでしょう。

もちろん、その決断は難しいものです。「嫌なら辞めればいい」と言われても、生活や将来のことを考えて、二の足を踏んでしまうのは無理のないことだからです。しかし、もっとも大切なのはあなたの健康と人生の時間です。わたしは本当に嫌になったときのために、辞めるという「わがまま」な選択肢を考えておくことは、とても大切なことだと思います。

では、実際にその一歩をどのように踏み出せばいいのでしょうか。そこは考え方ひとつで、やっぱり自分が本当に嫌でたまらない場所に、これからもがんばって通う必要があるかどうかを自問することです。そして、そのときに役立つかもしれないのが、自分の人生の終わり、つまり死ぬときのことを想像してください。

なぜなら、人間は最終的に死んだらおしまいだからです。わたしはこれまで多くの患者さんの死を目にしてきましたが、どれだけ我慢して自分を犠牲にしてつらい場所でがんばっても、結局のところまわりの人はそんなことはすぐに忘れ去ります。冷たく聞こえるかもしれませんが、自分の人生に責任を持つのはやはり自分をおいてほかにありません。「わがまま」に生きることは自分の考え方と行動にかかっていて、死んでしまえばあたりまえですが、それでおしまいなのです。

あるいは、10年後の自分を想像してみてもいいでしょう。我慢しているときはたいていわからないものですが、いま50歳の人なら60歳になったときにはじめて、「この10年間はなんだったのだろうか」と気づいて愕然とするものです。

そして、ほとんどの人は、「あの10年をもう一度やり直すことができたなら」と、叶わぬこと思って後悔します。

看護師資格を活かして働く!

「“辞めなければよかった”と言っている人に会ったことがない」

しかし、世の中には自由を求めて、「わがまま」に一歩を踏み出した人たちもたくさんいるのです。そして、わたしのまわりを見ている限りでは、本当に嫌な場所から去って一歩を踏み出した人は、そのあとも案外うまくやっているものです。もちろん、生活のさまざまな面で不安定になることもあるかもしれませんが、少なくとも大きなストレスがなくなって心と体が健康になるのはまちがいなく、「辞めなければよかった」と言っている人には会ったことがありません。

人間は死ぬときに、「ダメな人生だった」とは思いたくないので、どうしても自分で自分を納得させて生きざるを得ない側面があります。多かれ少なかれ、人は後悔する生き物であり、もちろんわたしも例外ではありません。それでも、「あのときに一歩を踏み出して良かったな」と思える、その一歩の壁を破れるかどうかが、充実した人生を過ごすためにはとても重要になってくるのです。

いまつらい人間関係に悩んでいる人にとって、そこから「わがまま」な一歩を踏み出して去ることは、けっして後悔することのない選択になるのだと思います。そして、その一歩が自律神経を整え、自分自身の心と体を健康にしていくのです。

\看護師にはいろいろな働き方がある!

プロフィール

小林弘幸(こばやし・ひろゆき)

順天堂大学医学部教授。
日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

順天堂大学大学院医学研究科(小児外科)博士課程終了。ロンドン大学附属英国王立小児病院外科、トリニティ大学附属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科学講師・助教授を歴任。現職に至る。日本初の「便秘外科」を開設。自律神経研究の第一人者として、数多くのトップアスリートやアーティストも指導する。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『自律神経を整える「あきらめる」健康法』(KADOKAWA)など著書多数。

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