高齢の患者さんに口腔ケアを行う際のマナー

口腔ケアは口腔内をきれいにするためだけに行うのではありません。特に高齢者は加齢に伴う機能の低下があるため、さまざまなトラブルが発生していることがあります。今回は、高齢者の口腔機能の特徴とケアを行う際のポイントについてご紹介します。
高齢者の口腔機能で知っておきたい3つのポイント
高齢者の口腔ケアを行う際には、高齢者の口腔機能について理解をしておくことが重要です。下記におさえておきたい3つのポイントをまとめましたので、確認しておきましょう。
<高齢者の口腔機能の特徴>
1.唾液分泌量の低下
唾液には口腔内を洗浄したり、口腔内の粘膜を守ったりする働きがあります。しかし、加齢とともに代謝が低下していくため、唾液の分泌量も減少していきます。唾液分泌量の低下は、口腔乾燥につながります。
2.口内の乾燥
唾液分泌量が低下し乾燥すると、口腔内は汚染されやすくなり、細菌の繁殖につながります。汚染されたままの口腔内は、虫歯や歯周病などを発生させる要因になることもあります。
3.舌苔の乾燥
口腔内の乾燥が強い場合、舌苔が乾燥して固まってしまうことがあります。舌苔が付着し続けたままだと、口臭の原因になったり、味覚の変化や細菌繁殖などが起こりやすくなったりします。
適切なケアを行わないと、最悪の場合、歯が抜け落ち、入れ歯などの義歯を装着しなければならないといった状況に陥ることも。日々の口腔ケアで口腔内の観察を行い、清潔にするだけでなく、口腔機能の維持や回復を目指していくことが大切です。
高齢者への基本的な口腔ケア方法
高齢者の口腔ケアを行う際、まずは安全に配慮した姿勢が大切です。口腔ケア中は、唾液や水分などによって誤嚥を起こす危険があり、ともすると肺炎を引き起こすリスクもあります。特に意識レベルの低い方、認知症の方、座位姿勢が難しい方は注意が必要です。ケアを行う際は、頸部を前屈するようにして、唾液や水分などが咽頭に流れ込まないようにします。また必要に応じて吸引を行い、誤嚥予防に努めましょう。舌は非常にデリケートな部分でもあるので、乾燥で舌苔が固まっている場合は無理に剥がさず、含嗽や清拭剤などで湿潤させてから専用のブラシで汚れを除去します。
また、認知症のある方で口腔ケアを拒否するような場合、これから何をされるのか理解できず、怖さや不安を感じている可能性があります。その場合は、水道から水の流れる音を聞いたり、触れたりしてもらいます。また介助者が歯磨きのしぐさをジェスチャーで伝えるなど、体験記憶を引き出す関わりを行うことで、口腔ケアを受け入れてくれることがあります。口腔ケアの前に分かりすく丁寧に接したり、拒否する理由を理解したりするように心掛けましょう。

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看護師ライター