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まず大前提として確認しよう! “なぜ尿道カテーテルを入れているの?”

第23回

貝崎亮二
大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院 外科医長

『エキスパートナース』2018年3月号<尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A>より抜粋。第1回は大前提として「なぜ尿道カテーテルを入れているの?」を紹介いたします。

尿道カテーテル留置の目的と長期化のデメリット

「尿道カテーテル」は、膀胱内にカテーテルを24時間留置することにより持続的に、かつ安全に尿を排出する目的で用いられます。

しかし、尿道カテーテルの留置期間が長くなると、尿路感染(urinary tract infection、UTI)のリスクが高くなるというデメリットもあります。尿路感染は最も頻繁にみられる医療関連感染の1つであり(図1)[文献1]、医療関連感染の30~40%を占めるとされています。

 

また、院内で発生する尿路感染症の約80%は尿道カテーテル留置が原因です[文献2]。そして閉鎖式ドレナージシステムを用いた場合において、留置7~10日後で約25~50%に、留置30日後にはほぼ100%の患者に細菌尿がみられます。細菌尿の出現率は、1日あたり3~10%ずつ増加していきます。

尿道カテーテルは、尿路感染症をはじめとするさまざまな合併症により、患者の不快感、在院期間の延長、そしてコストや死亡の増加を引き起こすばかりでなく、不要な抗菌薬の使用につながっています。また、尿道狭窄、尿道損傷、尿道出血、膀胱結石、膀胱萎縮などの合併症のリスクもあります(表1)[文献3 ,4]。

そのため、尿道カテーテルの適正使用・管理が不可避です。

もう一度確認しよう! 尿道カテーテルの適応

1)病態としての適応

尿道カテーテルの主な適応として、以下のようなケースが挙げられます[文献5]。

●周術期:手術施行症例における術中、および術後周術期を含めた重症症例の尿排出路の確保と経時的な尿量測定
●排尿障害:高度の残尿を認める症例および尿閉症例などの排尿障害例に対する尿のドレナージ
●蓄尿障害:膀胱萎縮などの高度の蓄尿障害症例に対する尿路管理

2)CDCガイドラインに示される適応

1981年にCDC(Centers for Disease Control and Prevention、米国疾病予防管理センター)が『尿道カテーテルにおける感染の予防のためのガイドライン』を公開し、尿道カテーテルの使用基準として以下の4つを挙げました[文献6]。

①尿路閉塞の軽減
②神経因性膀胱や、尿閉に対する尿のドレナージ
③泌尿器科手術の補助
④重症患者の尿量測定

2009年11月にはCDCは旧ガイドラインを改訂し、『カテーテル関連尿路感染の予防のためのガイドライン』として公開しました。それには、表26のような適切な使用例が挙げられています。“尿失禁があるから”“頻回の導尿が面倒くさいから”など、医療従事者側の都合で尿道カテーテルを安易に使用するのは論外です。
また同ガイドラインには、尿道カテーテルの不適切な使用例も挙げられています(表3)[文献6]。看護ケアの代替として安易に尿道カテーテルを使用することは、尿路感染のリスクを高め患者に不利益を及ぼす可能性が高いということです。

3)診療報酬上の評価「排尿自立指導料」

わが国でも、平成28年4月の診療報酬改定で「排尿自立指導料」が新設されました。これは、「尿道カテーテルを1日でも早く抜去し、尿路感染を防止するとともに排尿自立の方向に導くこと」を目的にし、下部尿路機能障害を有する患者に対するケアを評価するものです。
新たな排尿自立指導により、“人としての尊厳”に最もかかわる排泄ケアが、患者のADLやQOLを高めることにつながります。尿失禁がある場合はおむつで対応し、排尿障害がある場合は間欠導尿で対応すればよいわけです[文献7]。

4)留置による尿量把握の必要性

尿道カテーテルの挿入は、「①尿量の把握が必要な場合」と「②尿量は特に問題にならない場合」に大きく分けることができます。
1日の平均尿量は1,000~2,000mLですが、術後全身状態悪化時における点滴とのin-outバランスを考える際には、尿量の把握が必要となります。また、シスプラチンなどの腎障害のリスクがある抗がん剤を用いた化学療法施行時には、一定尿量の確保が必要になります。
一方、仙骨部に褥瘡がある場合は、尿失禁による褥瘡への悪影響を防いだり、ターミナル期にある患者に対してはおむつや導尿による不快を軽減しますが、このような場合には必ずしも尿量の把握が必要とはなりません。そのため、正確な尿量ではなく、尿回数の把握などで十分かもしれません。

 

「とりあえず尿道カテーテルを入れておこう!」といった安易な考えではなく、なぜ尿道カテーテルが必要なのかを常に考え、自然排尿や失禁ケアに移行するように努める必要があります。結果として、それが患者の利益につながります。

[引用文献]
1. Weinstein RA:Nosocomial infection update.Emerg Infect Dis 1998;4(3):416-420.
2. 日本泌尿器科学会 泌尿器科領域における感染制御ガイドライン作成委員会 編:泌尿器科領域における感染制御ガイドライン.日本泌尿器科学会雑誌 2009;100(4):1-27.
3. 渡邉雄一:尿道留置カテーテルによる膀胱穿孔の1例.西日泌尿 2012;74(1):31-33.
4. 吉川羊子:事例から考える排泄ケア─さまざまなケースへの対応方法 尿路カテーテルの管理.おはよう21 2015;26(2):48-51.
5. 三宅秀明,藤澤正人:尿道カテーテル留置.郡健二郎,藤岡知昭,大家基嗣 編,泌尿器科ベッドサイドマニュアル.臨床泌尿器科 増刊 2012;66(4):57-61.
6. CDC:Guideline for Prevention of Catheter-Associated Urinary TractInfections 2009.
https://www.cdc.gov/infectioncontrol/guidelines/cauti/index.html
(2018.1.20アクセス)
7. 渡邉順子:カテーテル・おむつを用いた排尿管理.臨牀と研究 2017;94(2):64-71.

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)照林社
[出典]エキスパートナース2018年3月号
P.56~「尿道カテーテル 挿入・継続・抜去の根拠Q&A」

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