私が出会ったびっくりな患者さん

患者の睡眠ケア Q3 ケアの進め方【昼寝て夜起きる患者】

第17回

『エキスパートナース』201611月号<最新エビデンスに基づく今はこうする! 患者の睡眠ケアQ&A>より抜粋。知ると役立つ! 「睡眠ケアの今はこうする」「Q3“昼寝て夜起きるような患者、改善を試みるべき?」を紹介いたします。

丸井明美 獨協医科大学看護学部老年看護学 准教授

A :乱れた睡眠は、「神経」「免疫」「内分泌」などに悪影響を与えることから改善すべきです。原因を明らかにし、個別の対応で生活リズムを改善しましょう。(丸井明美)

 睡眠は神経系、免疫系、内分泌系等と深くかかわりがあり、睡眠障害は「免疫力の低下」「高血圧や心疾患」「脳血管疾患」の悪化要因ともされています1。また、睡眠問題は疲労感だけではなく「適切な判断力の鈍化」「認知症の悪化」「抑うつ症状」など、生活の質に大きく影響します(引用文献1)。
睡眠問題を改善することは、健康の快復促進と退院後の健康生活をサポートすることにもつながります。

◆“昼寝て夜起きる”原因をアセスメントする

Q2」にあるように、ひと口に昼寝て夜起きる患者といってもその原因はさまざまで、「心理・精神的要因」「身体的要因」「環境要因」「薬剤性要因」等 によって(Q21参照)、夜間の良眠が得られず昼間に寝てしまうといった状態になっています。

1)病気に対する不安

消灯・就寝時間後は睡眠をとるための休息の時間ですが、誰からも邪魔されず静かに考えることができる時間でもあります。そのため患者は自身の病気の良悪や今後の生活について考えてしまいます。
特に検査結果が明らかになっていない場合、治療に対してイメージや理解が乏しい場合1人で考え込んでしまいがちになり、夜間眠れない状況となります。

2)環境の変化

相部屋の環境は「1人ではない」「孤独ではない」と言って落ち着くという人がいる一方で、自分以外の他者が発する音・匂い・気配等が気になって入眠困難や中途覚醒のため不眠になる人もいます。
個室であっても、照明や寝具等がいつもの環境と違うことが入眠困難の原因となります。

3)身体的要因

痛み・発熱・掻痒感は睡眠の妨げとなります。また点滴治療・酸素療法・心電図のモニタリング等を行っている患者は、身体に装着されたルート類や機器による心理的拘束感や寝返り等の行動制限により睡眠が阻害されます。

4)睡眠に影響を及ぼす疾病・薬剤・飲料の影響

「認知症による昼夜逆転現象」「睡眠時無呼吸症候群(いびき)」「レストレスレッグス症候群」「周期性四肢運動障害」等の疾病は不眠の原因となります。
また、内服している薬剤(抗がん剤、自律神経・中枢神経に作用する薬剤、ステロイド等)やカフェインの摂取も不眠の原因となります。
カフェインはコーヒー・紅茶・緑茶・玄米茶・番茶・ほうじ茶に含まれています。玄米茶やほうじ茶は、緑茶に比べるとカフェイン量はおよそ半分程度ですが、カフェインによる覚醒効果・利尿作用には個人差があるため、夕食時の配茶には麦茶等のノンカフェインのものを提供するようにしましょう。また患者が自由に飲めるように給茶器をセットしている場合は、17時以降カフェインの入ったものの提供は控えるようにしましょう。

5)年齢

年齢によっても睡眠の量・質は変化します。ヒトの睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠がほぼ90分周期でおとずれます。
しかし高齢者の場合は、加齢によって睡眠相の前進が観察され、「寝つきにくく・眠りが浅く・夜中に何度も目が覚め・朝早く起きてしまう」という入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒といった睡眠障害を起こしやすい特徴があります。

6)入院前の生活リズム・習慣の変化

患者は入院によって、これまでの生活リズムと異なるパターンで生活する必要性が生じます。
また習慣となっていることがらが入院生活では継続しにくくなる恐れがあり、これらの変化に適応できず、睡眠に影響を及ぼします。

個別の対応で、生活リズムの改善を図る

入院生活では起床時刻や消灯・就寝時刻、食事の時間が決まっており、検査、治療・リハビリテーション、入浴等は日中の時間帯のなかで実施され、患者は決められた時間のなかで、そして他者との集団生活のなかで健康の快復を促進していかなければなりません
そのため昼寝て夜起きる生活リズムを改善する必要があります。しかし昼寝て夜起きる原因はさまざまであるため、その原因に応じた対処が必要となってきます。

1)睡眠衛生指導

まず、睡眠衛生指導を試みましょう。厚生労働省による『睡眠障害対処12の指針』をもとに入院患者における実施のポイントをまとめました(表1引用文献2)。
睡眠衛生指導において大切なことは、一方的な指導にならないように患者の夜眠れない原因を本人とともに考え、改善策や日中の過ごし方を話し合って解決していくようにしましょう。

2)生活パターンの工夫

多くの病院では、21時消灯・就寝、6時起床で9時間の睡眠がとれるようにスケジュールされています。しかし、睡眠時間は前述の通り10歳代前半までは8時間以上、25歳では7時間前後、45歳では7時間、65歳では6時間というように、加齢に伴って短くなっていきます(「Q1」図1参照)。
反対に寝床で過ごす時間は、加齢に伴い長くなり、この時間が長いほど中途覚醒の原因となります。就寝する23時間前は1日の中で最も寝つきにくい時間帯である1ため、寝られないからと言って早めに寝床に就く必要がないことを説明し、眠くなる前の過ごし方について本人と話し合いましょう。
病院では消灯後は病室で過ごさなければならないという固定観念もありますが、消灯後でも暖色系の照度を落とした照明のラウンジ等で過ごせる環境をつくり、個別に対応することが望まれます。
また眠りが浅く中途覚醒が多い場合や、睡眠時間が足りないと思い込み寝床で過ごす時間が多くなることで睡眠障害になっている場合は、睡眠制限療法が有用との報告もあります(図1引用文献1,3,4)。

3)ひるねの活用

ひるねに関しては午後の早い時間に30分程度は疲労回復に有用と言われていますが、午後の検査・リハビリ・清拭/入浴がない場合は、昼食後から何時間も眠ってしまうことがないように注意しなければなりません。また清拭は午後でもよいですが、体力を消耗する入浴はできれば午前中に行うことで、ひるねの時間を利用し体力の回復が図られます

[引用文献]
1.厚生労働省健康局:健康づくりのための睡眠指針2014,2014:10,49,51.
2厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成と
その実証的研究班」:平成13年度研究報告書,2002
3.広重佳治:展望 睡眠制限療法による青年期学生の睡眠問題への介入の可能性.福
山市立大学教育学部研究紀要 2015399-100
4.山寺亘:認知行動療法的なアプローチ.CLINICIAN 2015639525-531

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社
[出典]エキスパートナース2016年11月号
P.80~「最新エビデンスに基づく 今はこうする! 患者の睡眠ケアQ&A」

\看護師にはいろいろな働き方がある!

使える!看護テクニック ほかの記事も読む

  1. 第18回 患者の睡眠ケア Q4環境整備 【入眠しやすい環境づくりとは?】
  2. 第17回 患者の睡眠ケア Q3 ケアの進め方 【昼寝て夜起きる患者】
  3. 第16回 患者の睡眠ケアQ2 睡眠障害のアセスメント 【患者が 「眠れない」と訴えるとき】
  4. 第15回 今はこうする! 患者の睡眠ケアQ&A【巻頭言+Q1なぜ睡眠障害は問題となる?】
  5. 第14回 【まとめ】これからのERAS®&ESSENSE!
  6. 第13回 項目10【全体】“いまの周術期患者教育”はこのように行う!
  7. 第12回 項目9【術後】「リハビリテーションは術当日から! 目標設定が大切」
  8. 第11回 項目8【術後】「不要なカテーテル類は早く抜く!」
  9. 第10回 項目7【術後】「血糖管理は180mg/dL以下かつ低血糖を回避」。血糖値変動の感覚を磨こう!
  10. 第9回 項目6【術後】早期経口摂取は大切! …でも本当に摂取できる?
  11. 第8回 項目5【術後】術後の痛みのコントロールはナースが担う役割!
  12. 第7回 項目4【術中、術後】輸液量は大丈夫? 過剰でもダメ、不足でもダメ!
  13. 第6回 項目3【術前から術直後】ほかにも知りたい! ナースにできること
  14. 第5回 項目2【術前】術前の輸液療法は不要。経口補水療法を使おう!
  15. 第4回 項目1【術前】下剤処置は“必要最低限”のみ施行する!
  16. 第3回 [総論]なぜ、いま術後回復の考え方が大切?(後編)
  17. 第2回 [総論]なぜ、いま術後回復の考え方が大切?
  18. 第1回 術後のつらさを改善する【10項目】ナースができる!「 ERAS ®」