vol.76
電子カルテ 統一化・標準化を求める動き

社会保障審議会の医療部会で、医療情報の連携、活用についての問題点があがり、国をあげて電子カルテの統一化・標準化を早期にはかるべきだという意見が出ています。
厚生労働省の調査によると、2014年の時点で一般病院の35%が電子カルテシステムを導入済みという結果が出ています。現在では、さらに普及が進んでいるとされ、PCだけでなくタブレットなど、導入されるツールの種類も多様化しています。
一方で、導入したツールはそれぞれの製品供給業者が独自の規格で開発を進めてきたことから、データの連携ができないという問題があります。また、病院だけでなく、施設や在宅医療においても導入が進んでおり、それぞれの現場の特性に合ったツールが採用されていることから、すべてを統一化・標準化するのは非常に困難だといえます。
ただ、2025年に控える超高齢社会に向けて、地域包括ケアシステムに注力したい現状があります。地域包括ケアシステムにおいて、病院と在宅、病院と施設との連携は必須です。
そのため、電子カルテの統一化・標準化は、その連携を円滑にするだけでなく、患者さんや利用者の情報共有や看護現場における業務負担の軽減においても重要です。今年行われた診療報酬・介護報酬のダブル改訂でも、遠隔診療やITの活用がポイントとされています。
また、看護師の活躍の場が広がるいま、転職先でシステムの違う電子カルテの操作に戸惑う方もいるでしょう。統一されれば、そのような不安を払拭することができます。
電子カルテの統一化・標準化の実現は容易ではありませんが、部分的にでも早期の実現が望まれます。
特定看護師の課題「医師の理解が得られていない」

日本慢性期医療協会は、2018年9月13日、看護師の特定行為研修修了者を対象にしたアンケートで、特定行為を行う上での問題点として、「医師の理解が得られていない」という回答があったことを明らかにしました。
研修修了者のみが特定行為を行うことができる特定看護師については、徐々に話題性が高まり、その必要性や問題点についてたびたび取り上げられてきました。そんな中、新たな問題点として浮かび上がったのが、医師が特定看護師の存在を認識していないということです。
特定行為は、医師がこれまで行っていた一部の業務を看護師が行うものであり、医師からの指導や助言、理解が欠かせません。現場の医師が制度を知らない中で看護師が特定行為を行うと、看護師としても抵抗を感じやすく、スムーズに業務に取り組むことができない可能性が浮上します。
今後は、医師を対象に特定看護師制度の認知度を向上させる活動が必要となりそうです。制度が始まったばかりということもあり、医師だけでなく患者さんやご家族にも理解が得られていない可能性があります。
特に、需要が高いといわれる在宅医療の分野では、患者さんやご家族の理解なしに特定行為を行うのは難しいものです。今後、いかにして特定看護師の存在や制度を周知させられるかが重要になりそうです。
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文:看護師 水谷良介