私が出会ったびっくりな患者さん

項目10【全体】“いまの周術期患者教育”はこのように行う!

第13回

ESSENSEでめざすのは患者の満足。特に、患者の回復意欲の促進が重要!

『エキスパートナース』2015年12月号<術後のつらさを改善する【10項目】 ナースができる! ERAS®(イーラス)術後回復能力 強化プロトコル>より抜粋。第13回は《各論》術後回復を助けるための”エッセンス”10項目の「項目10【全体】“いまの周術期患者教育”はこのように行う!」を紹介いたします。

海堀昌樹
(関西医科大学医学部 外科学講座 准教授/寄附講座 次世代低侵襲外科治療学講座 併任准教授/臨床研究支援センター 副センター長)

清水拓也
(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科(血管外科)助教/気仙沼市立病院 血管外科)

群 隆之
(利根中央病院 外科部長)

回復意欲促進のために行いたいこと①
患者にも治療に積極的に参加してもらう(海堀昌樹)

 

これまでの周術期のインフォームドコンセントでは、医師から患者への一方的な説明だけであることが多く、患者自身が受け身となり、自ら回復しようとする意欲が十分には発揮されていないのではないでしょうか。
日本外科代謝栄養学会が提唱している「ESSENSEプロジェクト」では、患者の回復意欲を促進することが真の周術期患者教育に重要ではないかと考えられており、そのための臨床試験も実施されています。
この試験では患者の回復意欲促進を実現するための一環として、「エッセンス日記(患者−医療スタッフ相互記入式周術期回復記録)」を、患者、外科系医師、麻酔科医師、看護師、管理栄養士、理学療法士等医療従事者間の情報共有のツールとして使用しています。エッセンス日記とは、手術前に患者に対して、手術および入院後の予定を綿密に伝えるだけでなく、術前・術後の患者自身の病状を自ら日記に記載してもらうもので、患者が病状回復に対する強い意思をもち、日々改善していくことを期待して実施しています。

術前・術後の病状を患者自身に記録してもらうことも重要

回復意欲促進のために行いたいこと②
具体的な目標を設定して、術前の不安を取り除く(清水拓也)

 

 

手術を受ける患者は多くの不安を抱えています。
病状や手術に対する漠然とした不安、術後の痛み、退院後の生活に対する不安など、その内容はさまざまです。また、不安の多くは、個人的なものとして心の奥深くにしまい込んでしまう場合も多く、病状や治療方針の説明のみでは、すべての不安を解消できるものではありません。加えて、正誤を問わずさまざまな情報が溢れている現代社会においては、客観的なデータの提示のみでは、かえって患者側の混乱を招くだけとなってしまう可能性もあります。
十分な満足感を伴った回復を達成するためには術前から患者の不安を十分に解消しておくことが重要であり、それが術後の自発的な回復意欲の励起にもつながります。そのために、個々の患者の社会的背景や希望を考慮し、回復の短期目標と、目標達成後の長期目標も掲げるなど、より具体的で、段階的な目標を設定する必要があります。
手術という、人生における最大の障壁を、自信を持って乗り越えられるように、ともに歩む姿勢を示すことが、医療者側に強く求められていると言えます。

回復意欲促進のために行いたいこと③
疼痛コントロールで、回復意欲減退を予防する(郡 隆之)

 

術後の患者への説明として私が特に重要だと考えているのは「疼痛コントロール」です。日本人は手術をすると“少しくらい痛くても仕方がない”と考えている方が多いようで、痛みを我慢しがちです。
しかし、疼痛によって表1に挙げたような悪影響が出るため、術後回復にとっては大きな障壁になります。そのため、鎮痛薬をしっかり使うことはとても重要です。
日常の患者ケアをしている看護師だからこそ、疼痛について会話する機会が多いと思います。術後鎮痛の重要性について説明して、少しでも疼痛があるようなら鎮痛薬を積極的に使用するように促しましょう。患者に快適な療養を提供することができるようになりますよ!

表1 疼痛によって生じる術後回復の障壁

これらがすべて回復意欲の低下につながる!


 

[PROFILE]

海堀昌樹(かいぼり・まさき)

関西医科大学医学部 外科学講座 准教授
寄附講座 次世代低侵襲外科治療学講座 併任准教授
臨床研究支援センター 副センター長

1991年関西医科大学卒業。同年同大学病院外科を経て、国保古座川病院などに勤務。1997年関西医科大学大学院修了。関西医科大学附属香里病院などを経て、2013年より現職。日本消化器外科学会評議員、日本肝臓学会評議員など多数。

 


[PROFILE]

清水拓也(しみず・たくや)

東北大学病院
移植・再建・内視鏡外科(血管外科) 助教/気仙沼市立病院 血管外科

1998年東北大学医学部医学科卒業。秋田県平鹿総合病院消化器外科、仙台厚生病院心臓血管外科を経て、2010年東北大学医学部博士課程を修了。2011年より現職。東北大学病院に勤務するかたわら、気仙沼市立病院にて血管外科の診療を行っている。

 


[PROFILE]

郡 隆之(こおり・たかゆき)

利根中央病院 外科部長

1994年群馬大学医学部卒業。モットーは「ON&OFF両立」。医師としてガンガン仕事をすることは大好きですが、それだけで1週間がほぼ終わる人生は、「最悪だ!」と思っています。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

[出典]エキスパートナース2015年12月号

P.68~「術後のつらさを改善する【10項目】 ナースができる! ERAS ®(イーラス)術後回復能力 強化プロトコル」

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