• 2018年8月31日
  • 2022年4月13日

項目8【術後】「不要なカテーテル類は早く抜く!」

 

『エキスパートナース』2015年12月号<術後のつらさを改善する【10項目】 ナースができる! ERAS®(イーラス)術後回復能力 強化プロトコル>より抜粋。第11回は《各論》術後回復を助けるための”エッセンス”10項目の「項目8【術後】不要なカテーテル類は早く抜く!」を紹介いたします。

郡 隆之 (利根中央病院 外科部長)

腸管機能や運動を促進したい。だから術後不要なカテーテル類は早く抜く

ERAS®ガイドラインでは、カテーテル類の早期抜去を推奨しています。カテーテル類を抜去することで回復の促進や運動への抵抗が緩和されます表1-①に、各カテーテル類を早期に抜去する(留置しない)理由について示します。

表1 各カテーテル類抜去の理由と観察・注意点 スクロール出来ます→

可能だと判断したら一刻も早くカテーテル類を抜去する

1)経鼻胃管チューブ(以下、胃管)
麻酔導入時に胃内に貯留した空気を脱気する場合には胃管を挿入し、イレウスや腸管の機能不全がなければ、原則手術室から帰室するとき(麻酔から覚醒する前)に抜去します。閉塞症状のないがんの手術の場合など、待機的な開腹手術後では、胃管の挿入は推奨されません。

2)腸管吻合部への腹腔ドレーン
胃・結腸手術では、腹腔ドレーンは原則として挿入しないことを推奨しています。一方、膵頭十二指腸切除では膵液瘻(すいえきろう)のリスクがあるためドレーンの留置は必要ですが、膵液瘻がない場合は早期のドレーン抜去が望ましいとされています。

3)尿道カテーテル
術翌日の朝の抜去を推奨しています。4日以上留置する際は、恥骨上からの経皮的尿カテーテルの留置が尿道損傷と違和感を軽減するため推奨されていますが、日本ではあまり行われていません。

4)輸液ライン
経口摂取量が十分であれば、輸液は行わないことを推奨しています。術後早期に食事を開始し、輸液を終了します。

早期抜去できる場合と、できない場合をきちんと把握

患者の苦痛の原因・離床の妨げになることから、早期の胃管・ドレーン・尿道カテーテルの抜去ならびに輸液の終了を医師に促しましょう。カテーテル類が1本多いだけでも患者の負担はかなり大きいという認識が必要です。そのほかモニタがないだけでも負担は軽減されます。 各カテーテル類抜去時の観察ポイントや注意点などを、表1-②に示します。

コラム①

硬膜外カテーテル抜去時は、“全体がきちんと抜けているか”に注意

一般的に、エコーガイド下で局所麻酔を注射する

 開腹手術では硬膜外カテーテルによる疼痛管理が推奨されており、低用量の局所麻酔薬とオピオイドを術後48時間持続投与します(項目5【術後】術後の痛みのコントロールはナースが担う役割!図1参照)。 硬膜外カテーテルは細いため、ねじれによる注入不良や事故抜去時の途中での断線に注意してください。抜去時は、必ず全体が抜けていることを確認しましょう。 なお、腹腔鏡下手術では、開腹手術と比べて疼痛が早期に緩和されるため、硬膜外麻酔より合併症が少なく腹壁の鎮痛が良好であるTAPブロック(図1)が主流になりつつあります。

Illustration:Hirohito Murakami


参考文献 1.Gustafsson UO,Scott MJ,Schwenk W,et al.:Guidelines for perioperative care in elective colonic surgery:Enhanced Recovery After Surgery(ERAS?)Society recommendations.Clin Nutr 2012;31(6):783-800. 2.Nelson R,Tse B,Edwards S:Systematic review of prophylactic nasogastric decompression after abdominal operations.Br J Surg 2005;92(6):673-680.

[PROFILE]

郡 隆之(こおり・たかゆき)

利根中央病院 外科部長

1994年群馬大学医学部卒業。モットーは「ON&OFF両立」。医師としてガンガン仕事をすることは大好きですが、それだけで1週間がほぼ終わる人生は、「最悪だ!」と思っています。

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社
[出典]エキスパートナース2015年12月号 P.68~「術後のつらさを改善する【10項目】 ナースができる!ERAS?(イーラス)術後回復能力強化プロトコル」


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