看護師国家試験

第10回

安静臥床で左上肢の牽引治療を受ける6歳女児

【一般問題】2017年 第106回 過去問題(午前80)

●小児看護学

【問題】 Aちゃん(6歳、女児)は、左上腕骨顆上骨折(left supracondylar fracture of humerus)と診断され、牽引治療のために入院した。医師からAちゃんと家族に対し、牽引と安静臥床の必要性を説明した後、弾性包帯を用いて左上肢の介達牽引を開始した。Aちゃんに対する看護で適切なのはどれか。

  1. 1 食事を全介助する。
  2. 2 左手指の熱感を観察する。
  3. 3 抑制ジャケットを装着する。
  4. 4 1日1回は弾性包帯を巻き直す。
  5. 5 痛みに応じて牽引の重錘の重さを変更する。

【解答】

  1. 1.全介助するよりも、Aちゃんのできる部分/できない部分を把握し、必要な部分のみ介助するほうが望ましいでしょう。
  2. 2.観察ポイントは、熱感ではなく冷感になるでしょう。同時に、しびれや疼痛の有無、皮膚状態の観察も必要です。なお、下肢の牽引時は腓骨神経が圧迫されて灼熱感を生じる可能性があります。
  3. 3.治療上やむを得ない場合以外は、抑制を行う必要はありません。
  4. 4..巻き直すことで包帯のしわや緩みなどを整え、牽引治療を適切に継続することができます。また、包帯部分の皮膚状態を観察したり、本人の苦痛を一時的に軽減したりすることにもつながります。
  5. 5.痛みに応じてではなく、医師の指示に基づき変更することが適切です。

解説

牽引治療は、持続的に引張負荷をかけることで骨折部位の骨を整復するものです。骨折すると筋肉の収縮する力に骨が引っ張られ、本来とは異なる向きに転位してしまいます。そのままでは骨がずれた状態で固定化してしまうため、本来の正しい位置に保つために整復が必要なのです。牽引治療が適切に行われるためには、おもに次の3つが観察ポイントになります。

現場ではこうする!

1.正しい方向・重さで牽引されているか
適切な整復のためには、正しい方向へ牽引されていることに加え、引っ張る重さが重要です。そのため、疼痛の訴えなどがあっても、看護師の判断で牽引の重さを変更することはできません。主治医に報告して指示を仰ぎましょう。

また、本人が許可なく牽引を外したりベッドから出て歩いたりするなど治療を妨げる状況がある場合は、抑制具の使用を検討することがあります。緊急時を想定して、抑制具の使用や抑制時間などについて、事前に本人や家族と相談しておくことも考えられます。

2.体位に苦痛がないか
安静臥床となると自由に動くことができず、体動に制限がかかります。良肢位を適宜調整することで、関節拘縮が生じたりADLが低下したりするリスクを下げましょう。

3.冷感、疼痛、しびれなどの有無や程度
牽引治療に伴い、冷感、疼痛、しびれなどが出現するおそれがあります。毎日確実に観察し、変化があった場合はすぐに対応しましょう。担当看護師が変わっても継続的にモニタリングできるよう、チェックシートなどを用いるといいでしょう。

「できることは自分でやれる」環境を整えよう!
看護の視点として、「患児の気持ちに寄り添って対応する」「患児の自立を妨げない」の2点は大切です。6歳のAちゃんにとって、安静を強いられる牽引治療を受けながらの入院生活はとても苦痛であるはずです。入院の第一の目的は治療を適切に遂行することですが、苦痛なだけの経験にならないようサポートすることが重要です。しかし一方で、本人がつらいからと他者がすべて助けてしまうことは、Aちゃんにとっていいことだとは言えません。入院治療を終えたら再び元の生活に戻るわけで、可能な範囲でAちゃんの普段の生活に近づけるよう環境を調整することが重要です。これらのポイントを踏まえ、現場でできる工夫をいくつか挙げてみましょう。

食事の時間を楽しめるようにするサポート
まずは「食」です。多少なりとも、誰もが食べるペースやタイミング、順番などに自分なりのこだわりを持っているでしょうから、全介助が必要でない限りは自分で食べることができるよう調整しましょう。

食事時の体位、食事を置く位置、食器の形状(深さや持ち手の有無など)、滑り止めの使用など工夫できることはたくさんあります。もし、Aちゃんが左利きだとしても、お箸ではなくスプーンやフォークなら食べられたり、コップにストローを入れたら飲めたりするかもしれません。最近は便利なアイデアグッズが豊富です。ペットボトルのキャップ部分に装着できるストローもあり、それを使えば片手でこぼすことなく飲むことができます。

また、食事内容にとくに制限がなければ、Aちゃんの好きなものを家族が持参できるよう主治医に許可をもらったり、通常3回食のところを15時におやつタイムを設けたりして、少しでもAちゃんが楽しめる時間を作ることもできるかもしれません。

ベッド上の生活にメリハリを与えるサポート
次に「過ごし方」です。ベッド上で過ごす時間が長く生活にメリハリがなくなりがちで、とくに6歳のAちゃんにとっては厳しい状況です。院内のボランティアさんと話す時間を設ける、同じ話題で話せる年代の子と病室を一緒にするなど調整してみましょう。他者とコミュニケーションを図ることは、スマートフォンやPCにずっと向き合っているより充実した時間になるでしょう。また、可能であればベッドごと移動して病室から出てみたり、ベッドの位置を廊下側ではなく窓側にしたりすることも生活リズムを崩さない工夫となります。

ただ、いずれにしても本人や家族の意向を踏まえ、相談しながら決めていくことが重要です。可能な範囲において、Aちゃんが少しでも充実感を味わえるようサポートできるといいですね。

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イラスト:シロシオ 「シロシオ イラスト&マンガポートフォリオサイト」

監修:医療法人鵬志会 別府病院 看護部長 行徳倫子

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