業界ニュース情報便

vol.69

72時間ルール変更で「夜勤増加&離職率アップ!?」

「72時間ルール」が変わって夜勤は増えた? 減った?
2016年の診療報酬改訂で、看護師の夜勤「72時間ルール」が変更になりました。「72時間ルール」の目的は、看護師の夜勤負担を軽減すること。では、改定により夜勤勤務は減ったのでしょうか?
夜勤時間数別の看護師の割合について、厚生労働省の発表した統計を見ていきましょう。

2015年10月の結果では、夜勤72時間以上の看護師の割合が38.9%。それに対し、2016年10月の結果は37.3%と、1.6%減少しています。この結果から、夜勤回数の多い看護師の人数は、月あたりで見るとわずかながら減ったといえます。

参照:中央社会保険医療協議会『夜勤時間別の病棟勤務の看護職員数』

1人あたりの月夜勤時間は増加傾向に!
それでは、「72時間ルール」の変更により、1人あたりの月夜勤時間はどうなったのでしょうか。2015年10月と2016年10月を比較してみると、常勤の2交代平均値4.7回、3交代準夜勤4.2回、深夜勤4.1回、非常勤の3交代準夜勤0.8回は、それぞれ回数に差はありませんでした。しかし、非常勤では2交代が0.7→0.8で0.1回増加、3交代の深夜勤では0.8→1.1と0.3回ずつ増加したという結果が出ています。

参照:中央社会保険医療協議会『看護職員1人あたりの月平均夜勤回数』

参照:日本看護協会『看護職員1人あたりの月夜勤時間数の分布』

病院側は「72時間ルール」の変更に対し、夜勤のできる非常勤スタッフの雇用などで対応はしているものの、常勤スタッフ1人あたりの夜勤回数は変わらず、非常勤では増加傾向に。総合的に見て、1人あたりの夜勤負担は増えているといえます。

実際に現場では、有給取得者が多い月や退職者が出た後など、人手が少ないタイミングには夜勤が1人1回ずつ増えていることがあります。どうしても増やせないときは、交代勤務の常勤スタッフを臨時で夜勤専従にするといった措置が行われることも。それだけ、病棟師長も夜勤を組むのが困難な状況に直面しているといえます。

夜勤が多い病院は看護師の離職率が高いってほんと?
次に離職率を見てみましょう。月72時間超の夜勤を行っている看護職員が50%以上の病院では、離職率は11.9%。それに対し、10%未満の病院は離職率が9.1%であり、2.8%の差がみられます。全体で見ても、夜勤時間の長さとその人数に比例して、離職率が上がっているという結果になりました。

参照:日本看護協会『夜勤看護職員に占める月夜勤時間数が72時間超の看護職員の割合別にみた離職率』

病院の規模別の離職率は、200床未満の小規模病院で上昇する傾向が出ていました。小規模病院では夜勤のできるスタッフの確保ができず、結果として、看護職員の離職につながっていることがわかります。

参照:日本看護協会『病床規模別の看護職員離職率 日本看護協会』

100床程度の小規模病院で勤務している看護師の話を聞いてみても、「新人看護師の定着率が低い」、「入職から3年以内での退職が圧倒的に多い」、という意見が多くありました。この背景には、大規模病院と比べて「昇給率が悪い、または経営不振で昇給そのものがない」、「教育体制が整っていない」というような、小規模病院ならではの苦しい事情がうかがえます。

まとめ
厚生労働省が行った夜勤72時間ルールの改訂は看護師の負担が考慮されていましたが、現場レベルでは、法改正だけで解決されるような簡単な話ではないというのが現状のようです。
問題の根底にあるのは、小規模病院を中心とした看護師の離職率の高さと、そこに残された看護師への負担かもしれません。まずはこういった小規模病院に看護師を集め、看護師の定着を促す対策がなされなければ、状況は変わらないのかもしれません。

文:看護師 水谷良介

看護師ってやっぱり楽しい!イキイキ働く職場の声をお届け

業界ニュース情報便 ほかの記事も読む

  1. vol.110 【2020年】第109回看護師・保健師・助産師国家試験の気になる合格率・ボーダは?
  2. vol.108 患者さんとのコミュニケーションをサポートする 新コンセプトのナースウェア「プロフェッショナルプライド」誕生
  3. vol.107 【直前対策】看護師国家試験の理想的な勉強法
  4. vol.106 医療現場で活用したい怒りを見方にする「アンガーマネジメント」
  5. vol.105 イライラ・怒りをコントロール! ストレスフルな看護師が活用したい話題の「アンガーマネジメント」
  6. vol.104 国試対策の理想的なスケジュール
  7. vol.102 【読者プレゼント】木下晋也 1コマ日めくり2020(カレンダー)
  8. vol.101 知っておきたい!看護師の「独立」という選択肢(後編)
  9. vol.100 知っておきたい!看護師の「独立」という選択肢(前編)
  10. vol.99 ナガイレーベンと資生堂のコラボで誕生した 「肌がきれいに見える」ナースウェアとは?
  11. vol.97 新人看護師の転職ストーリー 経験者は語る!辞めたい理由と転職後の看護師人生
  12. vol.98 新卒でも挑戦可能!魅力いっぱい、訪問看護の世界
  13. vol.96 中堅看護師必見!チームの組織力を高める3つの方法
  14. vol.95 映画「家族を想うとき」~是枝監督も絶賛! 衝撃のラストは劇場で!
  15. vol.94 第109回看護師国家試験は2020年2月16日(日)
  16. vol.93 心が躍るような「意味のある花柄」って? ナースウェアブランドのサーヴォで、新作白衣の秘密に迫る
  17. vol.91 名匠ニコラ・フィリベール監督最新作『人生、ただいま修行中』インタビュー&聖路加国際大学の特別授業レポート
  18. vol.90 ジェラート ピケ×クラシコのコラボ! 仕事のモチベーションが上がる白衣の着心地を体験レポ
  19. vol.89 映画『人生ただいま修行中』看護師の卵40人の成長を記録した150日間の感動奮闘ドキュメント!
  20. vol.87 在宅における“理想の最期”を最新映画から学ぼう!
  21. vol.86 【レポート】ナース服は試着する時代に! 人気白衣ブランド「クラシコ」が期間限定ショップをオープン
  22. vol.85 看護職員を「今後増やす」、病院の3割超 訪問機能持つ病院は半数
  23. vol.84 5月12日「看護の日」
  24. vol.83 訪問看護師の仕事とは 最新映画から学ぶ在宅医療のリアル
  25. vol.82 「人間関係」で悩む看護師必見のアプリ登場! ―開発者インタビュー
  26. vol.81 「看護師辞めたい」のその前に!―辞めて後悔しないために知っておくべきこと(後編)
  27. vol.80 日本初の国際看護学部が誕生/看護師国家試験で不適切問題
  28. vol.79 【2019年合格発表】第108回看護師・保健師・助産師国家試験の合格状況
  29. vol.78 「看護師辞めたい」のその前に!―辞めて後悔しないために知っておくべきこと(前編)
  30. vol.77 【2019年】第108回看護師・保健師・助産師国家試験、気になる合格率・ボーダは?
  31. vol.76 電子カルテ 統一化・標準化を求める動き/特定看護師の課題「医師の理解が得られていない」
  32. vol.75 病院の就業管理がスマホで可能に/特定看護師への期待と課題
  33. vol.74 地方で深刻な看護師不足-民間頼みの現状で、看護協会が紹介業務を強化も
  34. vol.73 訪問看護に新卒採用/「看多機」-介護も医療も自宅で
  35. vol.72 看護師不足は医師不足より深刻/遠隔死亡診断の動き加速
  36. vol.71 19種の勤務時間で働き方いろいろ!/看護学校入学者40才以上10倍
  37. vol.70 72時間ルール変更による夜勤負担を減らすには? みんなの夜勤手当はどれぐらい?
  38. vol.68 スマートベッドで負担軽減?/ナースコール対応、遅くなる理由
  39. vol.69 72時間ルール変更で「月夜勤増加&離職率アップ!?」
  40. vol.67 「特定行為研修制度」って何?
  41. vol.66 要注意! 看護師も気をつけたい「6月病」とは?
  42. vol.65 潜在看護師、短時間から復職/注目の栄養サポートチームって?
  43. vol.64 被災地で心のケア/ウェア型生体センサー
  44. vol.63 終末期リハビリ/「患者さんの暴力」に病院はどう対応すべきか?
  45. vol.62 国試出題傾向変更で批判殺到/医療的ケア児の通う学校に看護師
  46. vol.61 色効果が患者さんに好影響/児童養護施設
  47. vol.60 看護師の夜勤短縮/自宅で看取り
  48. vol.59 最新治療を動画配信/栄養チューブの誤挿入
  49. vol.58 全国初「医療コンシェルジュ」/新事業・看護師出向
  50. vol.57 大卒プラス2年で看護学学士/看護師国試の新傾向
  51. vol.56 過酷さ増す看護師の労働環境/他
  52. vol.55 犯人は患者さん!? 身近にせまる「看護師ストーカー」
  53. vol.54 コミュニティナース/護身術
  54. vol.53 学費と給料から考える、看護師のコスパ
  55. vol.52 医療現場の未婚化加速/他
  56. vol.51 准看護師の応募者が減少/夜間巡視を助けるライト
  57. vol.50 看護協会が提言する「病院で働く看護職の賃金のあり方」とは?
  58. vol.49 新卒看護師育成で定着率アップ/特定行為に係る看護師の研修制度
  59. vol.47 保育所整備などで働く看護師をサポート/養成課程を一部共通化
  60. vol.48 和歌山県・看護学部新設/週1時間から働ける
  61. vol.46 看護師の「9割超」が身体、精神の疲労を訴える/「高学歴看護師」が増加
  62. vol.45 「災害ナース」の事前登録制度が開始/看護師教育の年限4年を要望
  63. vol.44 看護師の離職率/求人倍率最高も、ミスマッチで就職には繋がらず
  64. vol.43 看護師の「夜勤72時間ルール」が変わる
  65. vol.42 診療報酬改定は看護現場に直結! 超高齢化社会到来で変わる看護師ニーズ2
  66. vol.41 診療報酬改定は看護現場に直結! 超高齢化社会到来で変わる看護師ニーズ1
  67. vol.40 15年連続年休取得の割合50%割れ/他
  68. vol.39 2016年度診療報酬改定 看護師への影響は/他
  69. vol.38 入院患者の満足度、過去最高に/他
  70. vol.37 がん細胞を分離・回収する装置開発/他
  71. vol.36 卵巣がん新薬、腫瘍消失効果確認/他
  72. vol.35 X線胃がん検診、当面は「毎年も可」/他
  73. vol.34 脂肪肝治療のカギとなる物質発見/他
  74. vol.33 災害医療分野の人材養成プログラム開始/他
  75. vol.32 心臓マッサージに新提言/他
  76. vol.31 看護師の届出制度について/他
  77. vol.30 人工血液の臨床試験開始/他
  78. vol.29 糖尿病の貼り薬、開発か/他
  79. vol.28 SOSを発信できるアプリ開発/他
  80. vol.27 痰の自動吸引システム開発/他
  81. vol.26 「心の病」労災認定、過去最多/他
  82. vol.25 准看護師から看護師への道広がる/他
  83. vol.24 新型出生前診断、35歳以下でも判定可能か/他
  84. vol.23 肥満による乳がんのリスク2.25倍に/他
  85. vol.22 認知症ケアの「ユマニチュード」とは?/他
  86. vol.21 血管の位置を確認できる装置、開発/他
  87. vol.20 医療器具使用履歴を「刻印」で簡単管理/他
  88. vol.19 「舌下免疫療法」公的保険対象に/他
  89. vol.18 世界初、精神疾患に関わる遺伝子の働きが明らかに/他
  90. vol.17 生理的なプロセスで眠りをもたらす睡眠薬/他
  91. vol.16 子育て中の看護師に朗報、新保育制度開始/他
  92. vol.14 突発性難聴に対する新たな治療方法が明らかに/他
  93. vol.15 PNSの導入で新たな課題が浮き彫りに/他
  94. vol.13 針なし注射器の開発に成功。実用化への期待高まる/他
  95. vol.12 看護職員の7割以上が疲労感、3割が「切迫流産」に/他
  96. vol.11 看護職員の腰痛訴え85%以上に/他
  97. vol.10 アルツハイマー病、一滴の血液で診断可能に/他
  98. vol.09 スマートフォンで患者の危険を素早く察知/他
  99. vol.08 感情の表現力の低下が、燃え尽き症候群を引き起こす/他
  100. vol.07 見舞い用の花、持ち込み禁止の見直しも/他
  101. vol.05 「勤務編成の基準」ガイドライン策定の実現について/他
  102. vol.06 特定行為にかかわる看護師の研修制度、検討事項も多く/他
  103. vol.03 診療報酬改定をきっかけに病院の大リストラがはじまる/他
  104. vol.04 日本での外国人看護師の受け入れ条件は厳しすぎる?/他
  105. vol.01 注目される「看護専門外来」は、高度化する医療を支える礎に/他
  106. vol.02 いま問われる、男性看護師との円滑なコミュニケーション/他