看護師国家試験

第6回

食前の歯磨きを希望して譲らない老健入所者

【状況設定問題】2016年 第105回 過去問題(午前99)

●老年看護学

【問題】Aさん(94 歳、男性)は、要介護1で、妻(84 歳)と2人暮らしであった。肺炎(pneumonia)で入院治療していたが本日退院し、介護老人保健施設に初めて入所した。現在の障害高齢者の日常生活自立度判定基準はランクB-2、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクIIaである。食欲は良好で、食事の姿勢や動作は自立している。部分義歯で不具合はなく、口腔内の異常はない。

入所後3日。Aさんは「家では朝起きてすぐに歯磨きをして、口の中をすっきりさせて1日が始まった。ここでは、歯磨きは食後に介助すると言われたが、私は嫌だ」と言い、不満な様子である。Aさんはベッドから車椅子への移乗に介助が必要であるが、歯ブラシとコップとを用いて自分で歯磨きができる。

このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

  1. 1 朝食前の歯磨きは効果がないと説明する。
  2. 2 朝食前の歯磨きの習慣を変更するように勧める。
  3. 3 朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談する。
  4. 4 朝食前は職員が少ないので対応できないと謝罪する。

【解答】

  1. 1.朝食前の歯磨きに、必ずしも効果がないとはいえません。
  2. 2.Aさんの生活習慣を尊重できる対応を検討します。
  3. 3.Aさんの希望に沿おうとする対応であり、適切です。
  4. 4.入所者にとって納得しにくい理由で希望を拒んでおり、謝罪したとしても不信感を招きかねません。

解説

Aさんの場合、「障害高齢者の日常生活自立度判定基準」(寝たきり度)はランクB-2であり、「屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベット上での生活が主体であるが、座位を保つ(介助により車いすに移乗する)」状態です。また、「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」はランクIIaであり、「日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭外で多少見られても、誰かが注意していれば自立できる状態」です。さらに、部分義歯の不具合や口腔内異常がないこと、歯磨き自体は自立してできることを踏まえ、Aさんの希望に沿った援助方法を検討します。

現場ではこうする!

ベッド上での歯磨きを勧める手も

正答肢は「朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談する」ということでしたが、具体的にどのような方法が考えられるでしょうか。もちろん、朝食前に職員がAさんの車椅子への移乗を介助できればベストですが、ただでさえ多忙な朝食前の時間帯で人手が足りないことも現実問題としてはあるでしょう。そこで、事前に物品を準備しておき、ベッド上で歯磨きしてもらうよう提案することも一つです。人手が足りない現場において、Aさんの希望の尊重やセルフケアの促進を図る現実的な方策だといえるでしょう。

歯磨きのタイミングはいつがベスト?

Aさんは「口の中をすっきりさせたい」という理由で朝食前の歯磨きを日常の習慣とし、入所後も継続したいと希望しています。日本ではそうでないかもしれませんが、「歯磨きは食前に」というのが普通の習慣となっている国は珍しくありません。

 

一方で、病院や介護施設では、職員による介助が必要な場合、歯磨きは食後にしてもらうことが多いようです。確かに、「食物残渣を除去し、虫歯を予防する」という観点からは、歯磨きは食後にしたほうが理に適っています。そこで、医学的な観点から食後の歯磨きのメリットを説明して習慣を改めてもらう(選択肢2の内容)ことも、それをAさんが本当に納得して受け入れるのであれば、あり得ない対応ではないと考えられます。Aさんは「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」ランクIIaであり、家庭外の施設という環境ではやや困難が伴うかもしれませんが、正答肢のように「朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談」できる状態であれば、必ずしも不可能ではないと思われます。

 

ただし、「就寝中に口腔内で繁殖した細菌によるネバつきを除去してから食事を口に入れたい」という希望も、それはそれで十分に理解できるものです。そこで、朝食前は水で口をすすぐにとどめ、歯磨きは朝食後に……という提案もありうるでしょう。口をすすぐだけでも口腔内の細菌やネバつきは除去できますし、乾燥した口腔内を潤すことにもつながります。

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監修:医療法人鵬志会 別府病院 看護部長 行徳倫子

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