• 2023年3月3日
  • 2023年3月3日

てんかん発生をピンポイントで抑える治療法開発~京都大が研究グループの成果発表

 
3月1日、京都大はてんかん発生をピンポイントで抑える治療法開発し、その有効性をサルモデルで実証することに成功したと発表しました。全身性のてんかんが引き起こしているサルモデルに対して、人工薬剤を投与すると、わずか数分でてんかんの脳波と症状が抑えられることを確認できたとしています。この研究の成果は「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

京都大は1日、同大ヒト行動進化研究センターの高田昌彦特任教授、井上謙一助教らの研究グループが、てんかんの症状が発生した時にのみ神経活動を抑制するオンデマンド治療法を開発し、その有効性をサルモデルで実証することに成功したと発表した。【新井哉】

てんかんは、局所の神経細胞の異常な興奮が脳の広範囲に伝播し、けいれんや意識消失などの発作を引き起こす。薬物療法や外科手術などの治療法は、正常な脳機能を阻害する可能性もあり、てんかん病巣のみに集中し、発作時のみに作動して異常活動を抑えるようなオンデマンド治療が求められていた。

今回の研究では、遺伝子操作で導入した人工受容体と、それにのみ作用する人工薬剤を用いて神経活動を操作する化学遺伝学と呼ばれる手法を用いて、てんかんサルモデルのてんかん発作の治療効果を検討した。

サルの一次運動野を仮のてんかん病巣と見立て、薬で異常興奮を引き起こすと、その活動が脳に広く伝わり全身性のてんかんが引き起こされる。この領域の神経細胞に人工受容体を導入し、薬剤で引き起こしたてんかん発生時に、人工薬剤(デスクロロクロザピン)を投与すると、わずか数分でてんかんの脳波と症状が抑えられることが確認できた。

これまで化学遺伝学技術の脳疾患への治療応用は、マウスなど小動物を対象とした研究に限られてきたが、「今回、ヒトと同じ霊長類で高度に発達した大きな脳をもつサルでその有効性を確認できたことは、今後の臨床応用に向け大きく前進する成果である」としている。研究の成果は「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。


出典:医療介護CBニュース