• 2023年1月18日
  • 2023年1月18日

産後自殺予防介入、うつ病以外の幅広い精神疾患も東北大が研究成果発表~DPCデータ解析・検証

 
1月16日、東北大の研究グループがDPCデータを用いて、産後1年以内の女性を対象に自殺企図のリスク因子や既往症を網羅的に検証したと発表しました。検証結果によると、アルコールやタバコの使用障害、統合失調症、人格障害、不安障害などは産後の自殺企図の有意なリスク因子だったと考えられます。今後、産後の自殺を予防するため、「これらの産前リスクを有する妊婦への適切な評価法や介入法の確立が望ましい」との見解を示しています。

東北大は16日、同大大学院医学系研究科の齋藤昌利教授(周産期医学分野)らの研究グループが、日本全国のDPCデータを用いて、産後1年以内の女性(延べ80万人)の自殺企図のリスク因子や既往症を網羅的に検証したと発表した。自殺企図のリスク因子として、アルコールやタバコの使用障害、統合失調症、人格障害、不安障害などは「産前のうつ病と同等かそれ以上のリスク」であることが示唆されたという。産後の自殺を予防するための介入については、「うつ病の既往のある女性だけでなく、幅広い精神疾患をもつ女性にも必要である」との考えを示している。【新井哉】

齋藤教授や同大大学院医学系研究科の八重樫伸生教授(婦人科学分野)、富田博秋教授(精神神経学分野)、藤森研司教授(医療管理学分野)、東京医科歯科大の伏見清教授(医療政策情報学分野)らの研究グループは、2016年4月から21年3月までの5年間に国内のDPC対象病院に入院歴のある延べ約3,000万人の中から、分娩を扱っている712カ所の病院のいずれかに出産のために入院した延べ約80万人の女性を抽出して解析の対象とした。

候補となるリスク因子として、▽出産時の年齢▽BMI▽喫煙量▽内科的な既往症(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)▽精神科的な既往症(うつ病、統合失調症、人格障害、不安障害、アルコール使用障害、適応障害など)▽向精神薬の服用歴▽産前の自殺企図の既往-などを網羅的に検証した。

これらの精神科疾患は一部の患者で何種類か合併しやすい傾向があったため、それぞれの説明変数で単変量解析を行うだけでなく、適切な変数選択を行った上でロジスティック回帰による多変量解析も行い、それらの説明変数が独立したリスク因子とみなせるかどうか検討。また、産前に自殺企図のある妊婦は産後も自殺しやすい傾向があったため、産前に自殺企図のある妊婦を母集団から除いた感度解析も行い、得られたリスク因子について再現性を評価した。

その結果、BMIや解析対象とした内科的疾患の既往は、産後の自殺企図の有意なリスク因子ではなかった。その一方で、うつ病や統合失調症、人格障害、不安障害、アルコール使用障害などの精神疾患の産前既往は、産後の自殺企図の有意なリスク因子だった。また、産後の自殺企図は「喫煙歴があると頻度が増し、やや若い女性で多い傾向」も見られたという。

今回の研究により、産後1年以内に発生する母親の自殺企図のリスク因子として、産前のうつ病既往にも増して、アルコールやタバコの使用障害、統合失調症、不安障害、人格障害などの精神疾患の産前既往が重要であることが示唆されたという。今後、産後の自殺を予防するため、「これらの産前リスクを有する妊婦への適切な評価法や介入法の確立が望ましい」との見解を示している。


出典:医療介護CBニュース