• 2021年10月20日
  • 2023年10月3日

保健師になるには? 資格の取得方法や仕事内容について解説

 

人々の健康維持や病気の予防を主な業務とする保健師は、同じ医療に携わる看護師とは違った魅力のある職業です。保健師のなり方や仕事内容、向いている人の特徴を知りたいという方も多いでしょう。

当記事では、保健師になるために必要な資格とその取得方法を解説します。働く場所による仕事内容の違いや保健師の平均給与、将来性が高い理由も説明しているので、保健師をめざしている方は参考にしてください。

保健師とは?

保健師とは、乳幼児から高齢者まで幅広い世代の方を対象に、感染症対策・定期健診・保健指導といった保健サービスを提供する職業のことです。保健所や保健センター、病院、学校、企業などで活躍しており、勤務先によって「行政保健師」「病院保健師」「学校保健師」「産業保健師」と呼び名が異なります。

保健師は医療・福祉・介護などの分野で保健サービスを提供し、地域住民の健康をサポートする予防医療の専門家です。

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保健師になるには資格が必要

保健師になるには、保健師免許と看護師免許の2つの国家資格を取得する必要があります
看護師と保健師の国家試験をW受験して免許を取得する方法と、看護師免許を取得後に保健師免許を取る方法があります。なお、保健師の試験に合格しても、看護師の試験に合格しなければ保健師免許を取得することはできません。

近年の保健師国家試験の合格率は90%前後です。

年度 合格率
2021年(第107回) 94.3%
2022年(第108回) 89.3%
2023年(第109回) 93.7%

参照元:
厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表」
厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表」
厚生労働省「第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表」

看護師と保健師の国家試験をW受験して免許を取得する

4年制の看護大学や専門学校には、看護師と保健師の2つのカリキュラムを受けられる学校があります。看護師と保健師の勉強を同時並行で行い、卒業年度に看護師国家試験と保健師国家試験をW受験することが可能です。

看護師と保健師の勉強を同時に行うので、計画的に試験対策を行う必要があります。その一方で、少ないコストで看護師免許と保健師免許を得られるのがメリットです。

看護師免許を取得後に保健師免許を取得する

看護師養成課程がある3年制の短大や専門学校で看護師免許を取得し、卒業後に1年制の保健師養成学校に入学して保健師免許を取得する方法です。まずは看護師として働いて、臨床経験を積んでから保健師を目指すことができます。

看護師と保育士それぞれの学校に入学する必要があるので、入学費用などのコストが余計にかかるのがデメリットです。しかし、看護師国家試験と保健師国家試験を別の年度に受けるので、余裕を持って勉強できます

行政保健師になるには公務員試験の受験も必要

保健所や保健センターなどの行政が管轄する機関で行政保健師として働くには、公務員試験を受験して合格する必要があります

公務員試験は、行政機関が実施する職員採用試験のことです。学科試験と面接があり、行政機関によって難易度は異なります。年齢制限が設けられている地域も少なくないので、行政保健師をめざす人は希望する地域の受験案内をこまめにチェックしましょう。

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主婦・社会人・看護師が保健師になるには

主婦や社会人など、看護職とこれまで縁がなかった方も保健師になることは可能です。もちろん、すでに看護師として働いている方も保健師にキャリアチェンジできます。
以下では、保健師のめざし方を主婦・社会人と看護師に分けて紹介しています。

主婦や社会人が保健師になるには

主婦や社会人が保健師になるには、以下2つの方法があります。

  1. 看護師と保健師の国家試験をW受験して免許を取得する
  2. 看護師免許を取得後に保健師免許を取得する

保健師になるには最低4年はかかります。その間は仕事や家庭をセーブする必要があり、ハードルは高いといえるでしょう。家庭や仕事と両立するために、夜間の課程がある看護師専門学校に通うのも一つの手です。

看護師から保健師になるには

看護師が保健師をめざすには、以下2つの方法があります。

  1. 1年制の保健師養成学校に入学する
  2. 看護系大学の保健師養成課程に3年次編入する

保健師免許を取得したら就職活動を行います。その際は、なぜ看護師から保健師への転職を希望したのか、目的を明確化することが大事です。たとえ、「看護師の夜勤がつらい」「保健師のほうが楽に働けそう」という理由であっても、「病気や怪我で苦しまないよう予防医療に注力したい」「メンタルヘルスに携わりたい」など、具体的な志望動機を考えておきましょう。

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保健師に向いている人の特徴

保健師に向いている人の特徴

保健師は地域包括ケアシステムの実現や感染症対策に不可欠な人材として、関心が高まっている職業です。ここでは、保健師に向いている人の特徴をまとめています。

現段階では特徴に当てはまらない方も保健師として働くなかで自覚が芽生え、適性が身に付くケースはあります。そのため、希望のキャリアを諦める必要はありません。「保健師になりたい」という気持ちを何よりも大切にして、ご自身にとって価値のある将来設計を行いましょう。

コミュニケーション能力が高い

保健師が保健サービスを提供する際には、さまざまな立場の方と接します。そのため、コミュニケーション能力が高く、信頼関係の構築が得意な方は、保健師向きです。

また、保健師が相談者と十分な信頼関係を構築するには、聞き上手であることも必要でしょう。朗らかな性格で、相談者が話しやすい雰囲気を作れる方は、保健師の職場で重宝されます。

洞察力がある

保健師が提供する保健サービスは、相談者の需要によって変化します。会話によって収集した情報から需要を汲み取り、最適な提案を行うには高度な洞察力が必要です。

さらに、相談者のなかには自分の感情や身体の状態をうまく表現できない人もいます。相手の表情や仕草から必要な保健サービスを見極めるには、高度な観察力や論理的な思考力も必要です。

思いやりがある

保健師はさまざまな方の健康相談に乗ったり、生活習慣に関する指導をしたりします。相談する方に聞く耳を持たせ、前向きに行動してもらうためには、相手に対する思いやりが必要です。

どのような場面においても目の前の相談者と真摯に向き合い、丁寧に対応できる方は、保健師として活躍できるでしょう。

物事をポジティブに考えられる

保健師は「地域の生活習慣病の羅漢率を低下させる」など、短時間で成果が出にくい仕事も多く担当します。自分自身の仕事の成果がすぐに出なくても落胆せず、前向きな努力を継続できる方は、保健師向きです。

保健師の仕事は成果が出るまでに一定の時間を要する分、取り組みが報われたときには大きな喜びを感じられます。地域住民が健康で安心して生活できる環境の整備に大きな価値を感じ、モチベーションを高く維持して働ける方は、保健師向きといえるでしょう。

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保健師の仕事内容

保健師の仕事内容は就業場所によって異なります。以下では、行政保健師・産業保健師・学校保健師・病院保健師の4種類の保健師の仕事内容について紹介します。

行政保健師

行政保健師とは、行政が管轄する保健所や保健センターなどで勤務する保健師のことです。地方公務員として働いています。乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層の地域住民の健康をサポートするのが役割です。

行政保健師の仕事内容

  • 地域住民の健康相談にのる
  • 妊婦・褥婦への保健指導
  • 新生児がいる家庭への訪問
  • 乳幼児健診・予防接種のサポート
  • 感染症予防対策と調査
  • 生活習慣病の対策
  • 身体障がい者・精神障がい者の生活支援
  • 高齢者の生活支援
  • 家庭内虐待への介入

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産業保健師

産業保健師とは、民間企業で働く保健師のことです。主に従業員数が多い大企業で活躍しています。企業に従事する従業員を対象に、健康管理やメンタルヘルスケアを行うのが役割です。

産業保健師の仕事内容

  • 従業員の定期健診の実施
  • 定期健診後のフォロー
  • 生活習慣病の対策
  • メンタルヘルスケア
  • ストレスチェックの実施
  • 産業医のサポート

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学校保健師

学校保健師とは、小学校・中学校・高校・大学・専門学校などの教育施設で働く保健師のことです。養護教諭である保健室の先生とは異なり、小学校・中学校・高校での設置が義務付けられているわけではありません。

学校保健師は、生徒・職員の病気や怪我の応急処置のほか、健康維持に関するアドバイスを行うのが役割です。

学校保健師の仕事内容

  • 生徒や教員の健康管理
  • 怪我や病気の応急処置
  • メンタルヘルスケア
  • ハラスメントへの啓蒙活動
  • 救急用品の準備・点検

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病院保健師

病院保健師とは、病院やクリニックなどの医療機関で働く保健師のことです。患者さんや職員を対象に、健康サポートや健康指導を行うのが役割です。勤める医療機関によって、看護師と近い勤務形態や業務内容になることもあります。

病院保健師の仕事内容

  • 職員の健康診断
  • 病気予防のアドバイス・指導
  • 予防接種のサポート
  • 患者さんや職員の健康管理・生活指導
  • 感染症対策

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保健師の年収

保健師の年収

厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、保健師の給与・ボーナス・年収は以下のとおりです。

平均給与 平均ボーナス 平均年収
33万3,800円 80万7,200円 481万2,800円

保健師の年収は所属する機関や法人、勤務地、施設規模、経験年数によって異なります。
施設規模で見ると、10~99人の施設の平均給与が29万8,800円なのに対し、1000人以上の施設は34万7,600円です。大手医療法人や大手企業は待遇面が充実しているケースが多く、年収500万円以上も期待できるでしょう。

また、一般的に経験年数が上がるにつれ、給料は増える傾向にあります。給料アップをめざす方は、同じ勤務先で長く勤めると良いでしょう。

参照元:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

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保健師の将来性が高い3つの理由

保健師の将来性

保健師の求人は、看護師と比べて多いとはいえない状況です。しかし、近年は生活習慣病予防の必要性やメンタルヘルスケアの重要性が高まっており、保健師のニーズが高まっています。

以下では、保健師の将来性が高い理由について詳しく説明します。

予防医療のニーズが高まっている

近年は、特に生活習慣病の予防において保健師のニーズが高まっています。生活習慣病とは、文字通り健康的でない生活習慣が原因で発症する疾病です。発症すると命に関わることもある一方、生活習慣を改善するだけで予防が可能であるため、予防医療が果たす役割は大きいといえます。

保健所や保健センターのほか、一般企業でも生活習慣病予防に向けた啓発や保健指導に力を入れています。そのため、今後さらに保健師の需要は増加するでしょう。

メンタルヘルス領域で活躍できる

企業におけるメンタルヘルスケアの必要性は、年々高まっています。メンタルの不調により休業や退職を余儀なくされる人が増加している状況を受け、厚生労働省は平成27年からストレスチェックを義務化しました。ストレスチェックの実施者となれる職業は、医師や保健師などです。

令和5年3月に厚生労働省が発表した「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」においても、メンタルヘルスケアを含む健康指導の必要性が指摘されています。

このことから、メンタルヘルスケアで重要な役割を果たす保健師の需要はさらに高まっていくでしょう。

参照元:
厚生労働省「メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要」
厚生労働省「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」

高齢化の進行により需要が高まる

高齢化社会の進行も、保健師の需要が高まる要因の一つです。厚生労働省は、高齢化対策の一環として、健康寿命を伸ばし医療や介護の負担を軽減することを推進しています。

健康寿命を伸ばすには、病気や要介護状態になることを予防する必要があります。そこで求められるのが、生活習慣の改善につながる保健師による保健指導や早期の受診勧奨などです。

高齢化は進行する一方であるため、今後も地域包括支援センターに限らず、介護福祉施設関係で高齢者の健康づくりに携わる保健師求人が増加するでしょう。

参照元:厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施について」

まとめ

保健師になるには、保健師資格と看護師資格の2つの国家資格を取得する必要があります。病気や怪我の予防につながる保健指導や相談対応など、予防医療の専門家である保健師は行政・企業・学校・病院と多くの分野で必要とされる職業です。

保健師の求人数は現時点で多いとはいえませんが、予防医療のニーズの高まりに伴い、需要が増加すると考えられます。保健師の求人を探している方は、多彩な求人情報や非公開求人を保有する「マイナビ看護師」にご相談ください。

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