• 2021年10月14日
  • 2024年4月5日

助産師と看護師の違い|必要資格・仕事内容・向いている人の特徴も

 

助産師と看護師は、どちらも同じ医療職です。そのため、助産師と看護師は何が違うのか、明確に把握していない人もいるでしょう。助産師と看護師の相違点を理解すれば、どちらが自分にとって向いている職業なのかどうかを判断できます。

当記事では、資格や仕事内容などの9項目で助産師と看護師の違いを比較したうえで、助産師に向いている人の特徴を解説します。助産師という職種に興味のある人や、助産師としてのキャリアアップを考えている方は、看護師との違いを理解しておきましょう。

助産師とは?

助産師とは、妊娠中から産後まで、母子をトータルサポートする職種のことです。助産師になるには、看護国家試験の合格に加えて、助産師国家試験に合格する必要があります。

助産師の仕事といえば、出産時に医師をサポートし、赤ちゃんを取り上げるイメージを持つ方も多いでしょう。実際には、産前・産後の妊産婦さんの健康指導や新生児の育児アドバイス、本人・家族のメンタルケアなど、幅広い役割を担います。

正常分娩に限り、医師の指示を受けずに、助産師1人で赤ちゃんを取り上げることが可能です。また、自分で助産院を開業できるのも大きな特徴です。病院の産婦人科や助産院で経験を積んだ後、将来的に自分の助産院開業を目指す方も少なくありません。

看護師とは?

看護師とは、病院や福祉施設などに訪れる患者さんの看護や医師のサポートを行う医療専門職です。患者さんの怪我や病気の具合が少しでも早くよくなるよう、医師と患者さんを仲介する大切な役割を担います。

看護師の働く勤務先は、医師やほかの看護師、薬剤師、事務スタッフなど、幅広い職種の方と関わる環境です。医師と患者さんだけでなく、周りの職員や患者さんの家族などとのコネクションとなるため、コミュニケーション能力が求められます。

看護師と似た医療職種に准看護師があります。看護師は国家資格取得が必要であるのに対して、准看護師試験は都道府県が実施するものであり、医師・看護師の指示がないと看護師が行える行為の一部ができません。仕事内容に違いはないものの、看護師のほうが裁量が大きいといえます。

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【項目別】助産師と看護師の違い

【項目別】助産師と看護師の違い

助産師は、戦前は産婆と呼ばれ、古くから妊婦と赤ちゃんの安全・安心を守り続けてきました。女性にとって妊娠・出産は重要なライフイベントの1つです。医療が進んだ現代でも、女性や胎児の命に危険が伴うお産には、経験を積んだプロのサポートが欠かせません。一方で、看護師も人々の命を守る職業です。

ここからは、9つの項目に分けて助産師と看護師の違いを比較します。

資格

助産師と看護師は、どちらも保健師助産師看護師法で定められた国家資格です。看護師として働くためには看護師国家試験に、助産師として働くためには看護師国家試験と助産師国家試験の両方に合格する必要があります。

助産師

助産師国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣の指定学校、もしくは都道府県知事の指定助産師養成所で学ぶ必要があります。看護学科と助産師養成課程のある大学に進めば、助産師・看護師両方の受験資格が得られますが、助産師養成課程に進めるのは一握りです。そのため、看護師免許の取得後、助産師養成所あるいは助産師養成課程のある大学で学ぶコースが一般的となっています。
(出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

看護師

看護師国家試験の受験資格を得るためには、助産師同様に法律で定められた教育機関で3年以上の履修が必要です。看護師を目指せる教育機関には大学や専門学校などの種類があり、教育課程や資格取得にか(出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

仕事内容

看護師は子どもから高齢者まで老若男女を対象にケアを行いますが、助産師は妊産婦や新生児など対象者が限定されることが特徴です。

助産師

助産師の主な仕事内容は下記の通りです。

【妊娠期~出産後の健康管理・指導】
妊産婦さんの健康管理・指導やメンタルフォローに関して、妊娠期から出産後までトータルサポートします。

【出産のサポート】
出産に立ち会い、赤ちゃんを取り上げるためのサポートも、助産師の役割の1つです。実際に分娩介助をしたり、指示役として出産の進行をリードしたりと、助産師の持つ専門知識・技術をフル活用させる機会となります。

【新生児のケア】
妊産婦さんのサポートだけでなく、新生児のケアも助産師の担う大切な役割です。新生児の栄養指導や沐浴指導、ベビーマッサージなど、新生児についての幅広い知識と経験が必要となります。

【生活や育児に関する指導・アドバイス】
時には、妊産婦さん以外の家族への生活指導や育児のアドバイスも、助産師の役割に含まれます。

妊娠期から産後まで、長期間にわたるマタニティライフに一貫して携わる助産師は、妊産婦さんが安心して出産・子育てに専念するための大切な役割を担います。

看護師

一方、看護師は下記の役割を担います。

【医師の診察や治療の補助】
病棟・手術室などで、医師の診察や治療の補助を行います。レントゲンなどの検査補助や採血・点滴、カルテ整理など、医師の指示に従って幅広い業務に従事します。

【食事・排泄・移動など日常生活の支援】
療養中の患者さんの日常生活の支援も、看護師の役割です。食事・排泄の介助や移動の補助など、患者さんごとの状況にあわせて適切な支援を行います。

医療に携わる看護師には、確かな医療知識やスピーディーな判断力などが求められます。

職場

看護師・助産師ともに半数以上が病院で働いています。看護師は、外科や内科などさまざまな病棟に配属される可能性があります。一方で、お産の専門職とされる助産師は産婦人科あるいは婦人科に限られるため、希望しなければ異動はほとんどないでしょう。助産師・看護師の働く主な職場と割合は下記の通りです。

助産師

割合は少ないものの教育機関や研究機関などに勤務する方も存在しており、助産師の活動の場は徐々に拡大しつつあるといえます。このほか、不妊治療を専門にするクリニックや産後ケアセンター、出張型助産師、保健所(公務員試験に合格の必要あり)などもあります。

病院 60.9%
診療所 24.5%
助産所 5.6%
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(3)助産師(年次別・就業場所別)」

●看護師

医療機関以外の職場では、居宅サービス等・介護老人福祉施設の就業者数が増加傾向にあります。少子高齢化が進む中で医療の場が多様化し、看護を提供する場が病院から介護施設や在宅へ移行している状況がうかがえます。

病院 68.9%
診療所 15%
訪問看護ステーション 4.3%
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(4)看護師、准看護師(年次別・就業場所別)」

助産師には看護師にはない開業権が認められています。助産師として独立・開業すれば、こだわりのあるケアを提供することも可能です。

平均年収

助産師は、看護師に比べて約80万円高い収入になっています。

助産師 約584万円
看護師 約508万円
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

●助産師

看護師と助産師の2つの免許を持つため、看護師よりも高めの給料設定の施設や助産師手当の付く施設が多数あります。また、分娩介助手当や出産オンコール待機手当など、助産師ならではの手当も存在します。
また助産師は働く場所によって給与が変わります。企業規模が小さいほど、給与や年収が高くなる傾向で、企業規模が小さい就業先は主にクリニックや民間病院です。少ないスタッフで業務を回すため、人で不足を解消する目的もあり、給与が高く設定されています。助産師の数が少ないため、取り扱う出産数も多くなるのも給与が上がる一因です。

企業規模が大きい就業先は総合病院が一般的で、特に国立病院勤務の助産師は国家公務員となり、給与や昇給は法律で決められます。

看護師

収入アップを狙う方法としては、看護師長や部長などの管理職を目指すスタイルが一般的です。また、認定看護師や専門看護師などの上級資格を取得することで資格手当が付く場合もあります。また、助産師は女性のみ取得できる資格です。より高い専門性を求められることが、助産師と看護師の年収の差につながっているといえるでしょう。

求人数

助産師の求人は看護師と比べて少ないです。しかし、生命の存続に妊娠・出産は不可欠であるため、今後も一定の求人数が出ると予測されます。

助産師 680件
看護師 51,220件
(出典:マイナビ看護師

特に、2020年以降は新型コロナウイルス拡大により医療機関や療養施設が増加したことに伴い、看護師の求人数は多くなっています。また、不妊治療・ハイリスク出産の増加など、近年は助産師のニーズも高い時代だといえるでしょう。独自の分娩スタイルにこだわる母親や家族も増えています。そのため、助産師・看護師ともに需要がなくなることはないでしょう。

就業者数・学校養成所数

助産師の就職者数は、看護師と比べて圧倒的に少ないことが特徴です。また、学校養成所は助産師・看護師ともに大都市圏に集中しています。

助産師

都道府県別の人口10万対比を見ると、新潟・宮城・富山・秋田の順で助産師の割合が高く、東北地方に助産師が集中している状況です。学校養成所数は、東京・大阪・福岡の順に多く、主要都市がほとんどを占めています。

就業者数 42,000人
学校養成所数 230校
(出典:日本看護協会「看護統計資料)」

●看護師

都道府県別の人口10万対比では高知・鹿児島・長崎・宮崎の看護師数が多く、九州地方は看護師が充実している地域であることが分かります。学校養成所数は、東京・大阪・愛知の順に多く、人口の多いエリアに集中しています。

就業者数 1,320,000人
学校養成所数(大学・3年課程) 860校
(出典:日本看護協会「看護統計資料)」

助産師・看護師ともに就業者数は増えているものの、慢性的な人手不足であることに変わりはありません。

将来性・キャリアプラン

助産師・看護師ともに活躍の場は、今後も減ることがないといえるでしょう。

助産師

高齢出産や不妊治療など、女性の妊娠・出産の形態が多様化する中、産科医不足が問題となっています。多様化する妊娠・出産に対して、豊富な知識・経験を持つ助産師のニーズは高まる傾向です。

また、核家族化が進み、産後のケアや育児について相談する機会が少ないのも、妊産婦さんの大きな悩みとなっています。産前から産後まで、一貫して相談できる助産師は、妊産婦さんやそのパートナーの方にとって大きな存在です。

助産院の開業権が認められている助産師は、将来的に独立して開業を目指す方も少なくありません。

看護師

一方、看護師も、将来的に需要が高くなると考えられます。一般的に、年を重ねるにつれて、病気や怪我のリスクが高まる傾向があります。高齢化が進む日本において、医療機関や福祉施設などの利用者が増えるのに比例して、看護師のニーズも高まるでしょう。

また、病院や診療所だけでなく、訪問看護ステーションや老人ホームなど、看護師求人の幅が広がっています。なかには、一般企業に勤め、看護師の知識を活かして社員の健康管理やアドバイスを行う方もいます。

看護師のキャリアアップの道は、多岐にわたるのも特徴です。たとえば、「より専門的な看護資格を新たに取得する」「管理職としてマネジメントスキルを磨く」「看護師転職を重ねてさまざまな業務を経験する」などが挙げられます。

やりがい

助産師も看護師も医療専門職として、大変大きなやりがいのある仕事です。

助産師

助産師として働くと、下記のやりがいを感じられるでしょう。

  • 出産という貴重な瞬間に立ち会い、近くでサポートできる
  • 妊娠期から産後まで、長期間にわたって妊産婦さんと信頼関係を築き、達成感や喜びを一緒に分かち合える
  • 妊娠・出産のプロフェッショナルとして、一人ひとりの妊産婦さんや家族に向き合って仕事ができる
  • 年配になった後もベテランの助産師として働き続けることができる

出産という人生の一大イベントを迎える家族のパートナーとして、二人三脚で歩んでいけるのが、助産師ならではの大きなやりがいです。

看護師

看護師のやりがいとして、下記の3点が挙げられます。

  • 常に最新の医療情報を追いかけたり、適切かつ効率的な対処法を工夫したりと、向上心を持って働き続けられる
  • 社会貢献性の高い仕事で、本人や家族から「ありがとう」と感謝される
  • 患者さんの身近な存在として働き、回復に向かう患者さんの姿を見届けられる

人命に携わる看護師の仕事をプレッシャーに感じる方も多いものの、その分やりがいが大きく返ってくるのを感じられるでしょう。

大変な部分

助産師も看護師も、人の生や死に関わる仕事であり、大変な部分もあります。

助産師

助産師の大変な部分として、いつ始まるか分からない出産に対応しなければならないことがあります。日勤のみの助産師求人はほとんどなく、日勤と夜勤を繰り返す生活が続くと、心身が疲弊して大変だと感じる方が少なくありません。

また、死産や流産、中絶などに立ち会わなければならないことも、助産師の仕事をしていてつらい瞬間です。

看護師

さまざまな方と関わる看護師の仕事では、人間関係に悩む方も少なくありません。ほかの看護師や医師とうまく連携できない、患者さんと良好な関係を築けないなど、複雑な人間関係が看護師のストレスにつながります。

そのほか、交替制の勤務や長時間の残業、体力勝負の重労働などは、看護師の心身をすり減らすことにつながります。時にはプライベートを犠牲にして、勉強会に参加したり、残業したりするのも、看護師を大変だと感じる要素です。

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助産師に向いている人の特徴は?

助産師に向いている人の特徴は?

母親と子ども、2つの命を守る助産師の仕事は責任が重大です。しかし、ほかでは得られないやりがいや達成感のあるすばらしい職種だといえるでしょう。助産師に向いている方の特徴は、以下の通りです。

  • タフな強さがある
    時には死産・流産・中絶に関わることもあります。一緒に悲しむだけではなく、母親や家族を前向きな気持ちにできる精神的な強さも必要です。
  • 思いやりがある
    妊娠中は精神的に不安定になる妊婦さんが多いとされます。多忙な業務のなかでも優しさや思いやりを忘れず関わることが大切です。
  • 体力に自信がある
    出産は予測不可能であるため、夜勤帯の急な呼び出しや立て続けの出産など、超過勤務は避けられません。それでも妊婦さんを支え続ける体力が求められます。

神秘的な生命の誕生に魅力を感じる方、スキルを活かして自分にしかできないケアを提供したいと考える方に、助産師は適しているといえるでしょう。

看護師に向いている人の特徴は?

看護師に向いている人の特徴は?

人命に携わる看護師は、プレッシャーを感じやすいものの、その分大きなやりがいを得られるでしょう。看護師に向いている方の特徴は、以下の通りです。

  • 協調性とコミュニケーション能力に自信がある
    さまざまな職種のスタッフや患者さんと関わる看護師には、協調性とコミュニケーション能力が欠かせません。周りとの信頼関係を築き、スムーズに仕事を進めるのに役立ちます。
  • 責任感が強い
    ミスのないよう責任感を持って働くことが求められます。医療知識をアップデートし続け、積極的に経験を積んでいく向上心も大切です。
  • 心身ともにタフさがある
    交替勤務や立ち仕事、重労働と、看護師は体力的に大変な仕事が多い傾向です。多くのスタッフや患者さんと関わる中で、精神的に疲弊する方もいるため、看護師自身の精神的なタフさも必要です。

人とコミュニケーションをとることが好きで、向上心を持って働きたい方に、看護師はふさわしい選択肢です。

まとめ

看護師とのダブルライセンスとなる助産師は、専門的な知識と高い技術力が求められる職種です。妊娠前から出産後まで妊産婦さんと子どもが安心・安全に過ごせるよう、丁寧なケアが求められます。多様化する分娩を支える専門職として、知識や技術力をブラッシュアップし続ける向上心と、女性ならではの細やかな気配りが助産師には必要不可欠です。

マイナビ看護師では、看護師・助産師としての転職を目指している方に向けて、キャリアアドバイザーによるサポートを提供しております。就職・転職で不安に感じている方は、ぜひマイナビ看護師にご相談ください。

※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています

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