• 2021年10月1日
  • 2022年12月20日

企業で働く保健師(産業保健師)とは? 仕事内容や給料事情を紹介

 

保健師は、人々の保健指導や健康管理を行う予防医療のエキスパートです。保健師助産師看護師法の第2条では、「保健指導に従事することを業とする者」と定義されています。
(出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法 第2条」

また、企業で働く医療関係者には、産業医と産業保健師がいます。産業保健師は一人の社員として企業に所属し、社員の健康管理や保健指導を行う存在です。

この記事では、産業保健師のなり方や給料事情を解説します。産業保健師の求人の探し方も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

企業で働く保健師(産業保健師)とは

保健師は働く場所によって、名称が異なります。企業で働く保健師は「産業保健師」と呼ばれ、社員の健康管理や保健指導を行っています。

産業保健師は、産業看護職の一つとされ、健康経営の意識が高まっていることもあり、産業医や産業保健師のニーズも大きくなってきています。

産業保健師として働く人の割合

日本看護協会の「令和2年看護関係統計資料集」によると、2019年の保健師の人数は64,819人でした。そのうち、事業所で勤務する産業保健師の人数は2,974人。産業保健師は保健師全体の4.6%しかおらず、かなり少ないことが分かります。

産業保健師を設置する企業自体がまだまだ少なく、それに比例して産業保健師の人数も少ないと考えられます。

【2019年】保健師の就業場所別、就業人数
【総数】 64,819人
保健所 8,353人
都道府県 1,395人
市区町村 30,299人
病院 6,427人
診療所 10,106人
居宅サービス等 1,429人
事業所 2,974人
看護師等学校養成所・研究機関 1,142人

(出典:日本看護協会「看護関係統計資料集 (2)保健師」

また、事業所で働く保健師の人数推移は以下の通りです。

【事業所】年次別、保健師の就業人数
2010年末 3,532人
2011年 3,695人
2012年 4,119人
2013年 4,184人
2014年 4,037人
2015年 4,280人
2016年 3,079人
2017年 2,967人
2018年 3,349人
2019年 2,974人
(出典:日本看護協会「看護関係統計資料集 (2)保健師」

事業所で働く保健師の人数は、右肩上がりで増えているわけではなく、保健師全体の4~7%前後の割合で推移しています。

産業保健師と産業医の違い

企業で働く医療従事者には、保健師のほかに産業医がいます。

50人以上の労働者がいる事業所では、選任要件を満たした14日以内に1名以上の産業医を選任および設置するよう義務付けられています。労働者が3,001人以上の場合は、2名以上の選任および設置が必要です。また、常時1,000人以上の労働者がいる事業所では、その企業に常勤する専属産業医が必要となります。

一方、保健師の設置は義務付けされていません。そのため、産業保健師の認知度は産業医に比べて低い傾向にあります。

参照元

産業保健師と産業看護師の違い

産業看護職には、産業保健師以外にも「産業看護師」という職種があります。基本的には産業保健師と仕事内容は似ており、企業の健康管理室や健康管理部門、医務室などで働き、健康診断のサポートや、社員の健康管理などを実施します。

産業看護職の求人には、保健師免許は不要で、看護師免許を所持していれば応募可能な求人もあり、そういった場合は「産業看護師」として働くことになるでしょう。

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企業で働く保健師の仕事内容

企業で働く産業保健師は、健康管理室や医務室で以下のような仕事を行います。

  • 社員の健康状態の管理
  • 健康診断の実施
  • 病気や怪我の応急処置
  • 成人病や生活習慣病の予防や啓蒙活動
  • ストレスチェックの実施
  • 社員のカウンセリング
  • 職場の過重労働対策

産業保健師の主な仕事は、社員の健康状態を把握することです。外部の健診機関と日程を調整して健康診断を実施し、結果の管理や保健指導を行います。また、健康診断の結果を分析して、成人病や生活習慣病などの病気の予防や啓蒙活動も実施。社員からの健康相談にものります。

さらに、社員のカウンセリングをおこなったりストレスチェックを実施したりなど、近年ではメンタルヘルスケアも行っています。

企業で働く保健師の給料事情

企業で働く保健師の給料事情

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、保健師の平均給料は以下の通りです。

きまって支給する現金給与額:32万3,800円

年間賞与やその他特別給与額:92万900円

(※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

年収は、【きまって支給する現金給与額(月給)×12か月+年間賞与】で概算できるので、保健師全体の平均年収は約481万円です。

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企業で働く保健師の場合、勤務する企業によって基本給やボーナスが異なります。なかでも大手企業に勤める保健師は比較的高収入で高待遇の割合が高いと言われているため、上記の保健師の平均給料よりも高い金額を得られる可能性があります。

また以下は、ほかの看護職の平均年収と比較した表です。

看護職の平均年収
看護師 約499万円
准看護師 約407万円
助産師 約554万円
保健師 約481万円
看護助手 約304万円
(※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

統計データ上では、保健師よりも看護師のほうが平均年収が高くなっています。産業保健師として企業で働けば、経験年数・待遇にもよりますが、年収500万円以上を得られる場合もあるでしょう。

特に企業規模が大きいほど、平均年収は高くなる傾向です。産業保健師として働きつつ、給与面もこだわりたい方は、大手の会社を視野に入れるとよいでしょう。
(※出典:国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査〔企業規模別の平均給与〕」

企業で保健師として働くメリット

企業で働く保健師は、働きやすさや高待遇であることがメリットとして挙げられます。詳しくは以下の通りです。

土日休みの場合が多い

企業によって異なりますが、一般的に土日を公休としている企業が多いです。企業で働く保健師は一社員として勤めているため、就業先の業務時間に合わせた働き方をします。そのため、土日休みだけでなくゴールデンウイークやお盆休み、年末年始などの長期連休も、一般社員と同様に取得することがほとんどです。規則的な休みが欲しい方や家族と休日を過ごしたい方などには、大きなメリットといえるでしょう。

負担の少ない働き方ができる

前述したように、企業で働く保健師は就業先の業務時間に合わせて働くため、夜勤帯の勤務はほぼありません。また、看護師のように体力を使う仕事も少なく、デスクワークがメインです。9時から18時など、規則的な勤務が基本なので身体的負担は少ないでしょう。残業も多くないため、生活リズムや体調を維持しやすい働き方が可能です。

企業によっては高収入を見込める

企業によって保健師の給料は異なりますが、規模が大きいほど高収入を期待できるでしょう。産業保健師を設置している企業の多くは、大企業といわれています。そのため、各種手当や賞与などの待遇面が手厚いだけでなく、福利厚生も充実している場合が多いようです。

企業に保健師を設置するメリット

企業に保健師を設置するメリット

ここでは、企業に保健師を設置するメリットを、企業目線でいくつかご紹介します。

【企業に保健師を設置するメリット】

  • 産業医よりも従業員に近い立場でサポートできる
  • 企業内のよりよい衛生環境づくりに貢献できる
  • 人事労務担当者の業務負担が少なくなる

産業医は、労働者の人数に応じて設置義務があるため、面接指導などの必要業務で忙しいことが多く、嘱託産業医であれば訪問回数が月に数回の場合もあるでしょう。そんな時に、常勤の産業保健師がいると、健康相談窓口のようなイメージで、産業医よりも従業員に近い存在として、従業員も健康に関する相談が気軽にできます。

また、産業医の面談日程調整など、業務のサポートも行えるので、産業医の負担軽減も期待できるでしょう。ほかにも、これまで人事労務担当者が行っていた、産業医との業務調整や、安全衛生委員会に関する業務、社内の健康管理に関する業務などを、産業保健師に一部任せることで、社内担当者の業務負担も軽減できます。

企業で保健師として働くために必要な資格とは?

企業で保健師として働くために、特別な資格は必要ありません。各企業の募集要項によって異なりますが、基本的には「〇年以上の経験が必要」というような経験年数も問われないので、未経験でも産業保健師として勤務可能です。

ただし、大前提として看護師資格と保健師資格を保有する保健師である必要があります。保健師になるためのルートは、以下の2つです。

①看護師と保健師、2つの国家試験を同時受験してどちらも合格する

②看護師資格を取得後、1年制の保健師養成学校に通う、または看護系大学保健師養成課程に3年次編入して保健師資格を取得する

①のルートでは、保健師と看護師の統合カリキュラムがある4年制大学や専門学校で学びます。看護師と保健師の国家試験を同時受験し、どちらも合格すれば保健師として勤務することが可能です。

②のルートでは3年制の短大や看護学校に進学して看護過程を修了し、まずは看護師国家資格を取得します。その後、1年制の保健師養成学校に通うか、看護系大学保健師養成課程に3年次編入して保健師課程を修了。保健師国家試験を受験して合格すると保健師になれます。

すでに看護師資格を保有している方は、1年制の保健師養成学校に通うか看護系大学保健師養成課程に3年次編入して保健師資格を取得し、産業保健師をめざします。

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産業保健師として需要の高い能力・スキルは?

産業保健師として、以下のような能力・スキルがあると企業から歓迎されやすい傾向です。

【産業保健師として需要の高い能力・スキル】

  • カウンセリング能力、コミュニケーション能力
  • 事務処理スキル
  • 安全衛生や健康管理に関する知識
  • 企業で働いていた実務経験

産業保健師は、従業員の健康面に関する、日常的な相談窓口となります。豊富な知識はもちろん、高いカウンセリング能力、コミュニケーション能力があると、従業員の気持ちに寄り添ったサポート・アドバイスができるでしょう。

また、産業保健師は、常に従業員の相談対応を行うわけではなく、事務作業の時間も比較的多いです。メール対応、報告書類の作成、スケジュール調整など、一般的な事務処理スキルも求められるので、簡単なExcel作業などは習得しておくとよいでしょう。。

また、保健師として企業での実務経験があると、産業保健やメンタルヘルス予防体制についての知識をある程度持ち合わせていると判断されるため、未経験者よりは産業保健師として採用されやすい傾向です。一方で、未経験の産業保健師求人もゼロではないため、ご興味がある方は、ぜひマイナビ看護師にご相談ください。

企業で働きたい! 産業保健師の求人の探し方

企業で働きたい! 産業保健師の求人の探し方

産業保健師の求人は、主に企業のホームページや求人サイトで募集しています。しかし、産業保健師は高収入かつ高待遇の傾向にあり、人気のある仕事です。よって、求人募集があっても応募する人が多く、産業保健師になるのは難しいといわれています。また、「土日祝休み」「夜勤なし」「残業少なめ」という働きやすさも相まって産業保健師の定着率は高く、求人募集自体が少ないのが現実です。

産業保健師は企業のホームページや求人サイト以外に、転職エージェントの非公開求人として募集していることがあります。そのため、企業で保健師として働きたい方は転職エージェントを活用するのがおすすめです。特に看護職に特化した転職エージェントであれば、一般的な転職エージェントよりも産業保健師の求人を見つけやすいでしょう。

企業で働きたい方や転職をお考えの方は、マイナビ看護師にご相談ください。

マイナビ看護師では専任のキャリアアドバイザーがご希望をお伺いし、スキルアップやキャリアアップをめざせる求人をご案内いたします。職場の雰囲気や考え方なども熟知しているため、詳しい情報を知ったうえでご応募できます。まずはお気軽にお問い合わせください !

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企業以外でも需要の高い保健師! 保健師の種類

保健師は勤務する場所によって名称が異なり、企業で働く保健師は「産業保健師」と呼ばれています。保健師の名称と勤務先は以下の通りです。

・産業保健師

産業保健師とは、民間企業に勤務する保健師のことです。

社員の健康状態の把握や健康診断の実施、生活習慣病の予防、ストレスチェックなどを行っています。近年ではメンタルヘルス領域での活躍も期待されています。

・行政保健師

行政保健師とは市区町村の役所や保健所、保健センターなど、行政関係の施設に勤務する保健師のことです。行政保健師の多くは、公務員として勤務しています。

行政保健師の主な仕事は、感染症の予防と対策、高齢者や障がい者の生活支援、産後女性への保健指導、乳幼児健診、予防接種のサポートなど地域住民の健康管理を行うことです。また、依存症、虐待、DVへの介入や支援も行います。

・病院保健師

病院保健師とは、病院やクリニックなどの医療機関に勤務する保健師のことです。勤務する医療機関によっては、看護師業務と兼務することもあります。

病院保健師の主な仕事は、病気予防のアドバイスや感染症対策、退院後の生活指導などです。健康診断や予防接種のサポートなど、患者だけでなく医療機関で働くスタッフの健康管理も行います。

・学校保健師

学校保健師とは、学校に勤務する保健師のことです。保健室の先生と呼ばれる養護教諭とは異なります。

学校保健師の主な仕事は、怪我をした人の応急処置や体調不良者の看護、メンタルケアなど、生徒や教職員の健康管理をすることです。

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まとめ

企業で働く保健師は、一般的に「産業保健師」と呼ばれ、企業で働く従業員の健康維持・改善を、産業医とともにサポートします。基本的には企業内に設置された、医務室・保健室などに在中することとなり、体調不良を訴えた従業員の対応をすることがメインの業務です。産業医と異なり法的な設置義務はないものの、企業の健康経営を促進するうえで、産業保健師の役割は大きいといえるでしょう。

マイナビ看護師では、産業保健師をはじめとした、保健師の求人も多数取り扱っています。皆様それぞれが描くキャリアの実現に向けて、しっかりとサポートをいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

※当記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています

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