• 2021年9月16日
  • 2022年12月14日

看護助手とは? 資格・給料・仕事内容・向いている人を解説

 

「看護助手はどのような仕事をするのだろう」「自分に向いているだろうか」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。看護助手は医療現場で働く責任のある仕事ですが、その分やりがいも多くあります。看護助手の概要を知っておくことで、適性を判断できるでしょう。

この記事では、看護助手の仕事内容や1日のスケジュール、平均給料などを紹介します。向いている人の特徴やおすすめの資格なども解説しているので、看護助手をめざす際の参考にしてください。

看護助手とは?

看護助手とは、看護師のサポートをする職種のことです。看護補助者やナースエイドとも呼ばれています。看護助手の役割は、患者の介助や身の回りのお世話、環境整備などをすることです。

看護助手になるのに、資格は必要ありません。そのため、看護師をめざす人や医療の知識を深めたい介護職の人が看護助手として働いていることもあります。看護助手は注射や採血などの医療行為は行えませんが、人手不足の医療業界で必要とされている重要な職種です。

看護師・准看護師との違い

看護助手は看護師や准看護師と同じく、看護に携わる職種です。しかし、資格や業務内容が異なります。

職種 資格 業務内容
看護師 看護師免許
(厚生労働大臣が発行/国家資格)
主体的に患者さんの
療養上のお世話または診療の補助を行う
准看護師 准看護師免許
(都道府県知事が発行)
医師や看護師の指示を受けて、
療養上のお世話または診療の補助を行う
看護助手 不要 医師や看護師の指示を受けて、
看護補助業務を行う

看護師と准看護師は資格が必須ですが、看護助手は資格不要です。看護助手は看護に関する資格を有していないため、看護の専門的判断を要する療養上のお世話または診療の補助を行なえません。

介護士との違い 

看護助手と介護士は、「医療行為に当たらない範囲で患者さんの身の回りをお世話する」という点では似通った仕事です。ただし、サポートする対象やサポートの目的・範囲が異なります。

サポートの対象

看護助手 病気やケガで入院・通院している患者さん
介護士 介護施設を利用する高齢の方や障がいがある方など

看護助手がお世話をする対象者は、病気やケガで入院・通院している患者さんです。
一方、介護士がお世話をするのは、介護施設などを利用している高齢の方や障がいがある方です。なかには、認知症を患っている方もいます。

サポートの目的

看護助手 医師や看護師の業務を補助する
介護士 介護施設を利用する高齢の方や障がいがある方の生活支援や補助をする

看護助手の目的は、病院内で医師や看護師が治療に専念できる環境を作り、患者さんの回復を助けることです。
一方、介護士は高齢の方や障がいのある方が自分らしく生き生きと生活できるように、環境を整えたり生活を補助したりするのが目的です。

サポートの範囲

看護助手 病院で定められた範囲で、医師や看護師の指示に沿って行う
介護士 介護対象者の状態に合わせてケアをする

看護助手がサポートする範囲は、病院や医師・看護師の指示によって決められます。配置によっては、患者さんの介助以外にも看護用品や書類の整理整頓、ベッドメイキングといった環境整備が割り振られるケースも少なくありません。
一方、介護士は日常生活の介助や施設のレクリエーション企画など、介護対象者に関わる業務を幅広く担います。

看護助手の仕事内容

看護助手の仕事内容

看護助手は患者さんの回復を助けるために、病院内で医師や看護師が治療に専念できる環境を作っています。看護助手の主な仕事内容は以下のとおりです。

看護師のサポート

看護助手は看護師の指示を受け、以下のようなサポート業務を行います。

  • 書類の作成
  • カルテの整理
  • 備品の管理
  • 検体の移送
  • 医師へ検査結果の伝達
  • 患者さんに書類を渡す

看護助手は医療行為以外のサポートをし、看護師が看護に専念できる環境を作ります

介助業務

看護助手が患者さんの介助全般を行います。主な業務内容は以下のとおりです。

  • 食事の配膳や下膳と食事介助
  • 着替えの手伝い
  • 車いすへの移乗介助
  • 検査室やリハビリ室、トイレへの付き添い
  • オムツ交換
  • 排泄介助
  • 体位変換
  • 入浴介助
  • 清拭

患者さんにとって、看護助手は看護師同様身近な存在です。ときには、患者さんだけでなく、患者さんのご家族と話をすることも。看護助手は、患者さんやご家族の心の支えになる存在といえます。

環境整備

看護助手は医師や看護師が円滑に仕事ができるようにサポートしたり、患者さんが過ごしやすいように環境整備をしたりします。

  • 医療器具の準備や片付け
  • 医療器具の消毒
  • ベッドメイキングやリネン交換
  • 入浴時の浴室の準備と片付け
  • 病室や診察室の掃除
  • ゴミ捨て

看護助手の仕事は多岐にわたり、病室や診察室を清潔に保つための掃除もします。環境整備は患者さんが快適な入院生活を送るため、医師や看護師などの医療従事者が医療に専念するために大切な仕事です。

看護助手の一日の流れ

看護助手の一日の流れ

看護助手は看護師と同様に交代制勤務で、主に二交替制や三交替制で働いています。病院で二交替制で働く看護助手の一日の流れは、以下のとおりです。

時間 業務内容
8:15 出勤・仕事前の準備
出勤したら制服に着替える。外からの菌を持ち込まないために、必ず業務前に手洗い・消毒を行う
8:30 朝礼
夜勤担当者から引継ぎを受ける
9:00~11:30 介助業務や環境整備
排泄介助・おむつ交換・清拭・検査のための誘導といった介助業務や、ベットメイキング・清掃などの環境整備を行う
11:30 昼食準備
テーブルの上を片付け、配膳をする
12:00 食事介助
自力で食事が難しい患者さんの食事介助をする。食後は口腔ケアを実施
13:00 休憩
14:00 入浴介助
浴室内の清掃をし、入浴介助を行う
14:30~16:00 介助業務
午前同様、排泄介助・おむつ交換・検査のための誘導といった介助業務を行う。病院によっては、オリエンテーションを実施する
16:00 環境整備
病室のごみを集めたり、夕食の準備を行ったりする
17:00 記録
夜勤に引き継ぐために、一日の患者さんの様子を記録する。看護師の指示に従い、カルテの整理なども実施
17:30 退勤

看護助手は一日を通して、患者さんの介助業務や環境整備などさまざまな業務を行います。

看護助手の給料

看護助手の給料

厚生労働省が発表した「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、看護助手の給料は以下のとおりです。

給与 ボーナス 年収
男女平均 21万6,100円 44万9,800円 304万3,000円
男性 23万1,300円 49万9,600円 327万5,200円
女性 21万3,600円 44万2,000円 300万5,200円

看護助手全体の平均給与額は21万6,100円で、男性平均は23万1,300円、女性平均は21万3,600円でした。看護助手全体の平均年収は、約300万円です。

なお、看護師や准看護師とは大きな差があります。

給与 ボーナス 年収
看護師 34万4,300円 85万4,600円 498万6,200円
准看護師 28万6,700円 62万6,800円 406万7,200円
看護助手 21万6,100円 44万9,800円 304万3,000円

看護師の平均給与は34万4,300円、准看護師の平均給与は28万6,700円です。看護助手と看護師とでは、年収に約190万円もの差があります。

看護師・准看護師と看護助手は、いずれも患者さんの看護を行う看護職です。しかし、看護師と准看護師は、豊富な知識や技術を要する資格を有しています。資格があることで医療行為を行なえるため、看護助手とは給与に大きな差があります。

参照元:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

看護助手のやりがい

看護助手のやりがい

看護助手は、人の役に立っていることを実感できる場面が多い仕事です。看護助手が感じられるやりがいには、以下のようなものが挙げられます。

看護師や医師のサポートができる

看護助手は資格を有していませんが、いち医療従事者として看護師や医師のサポートができます。
看護助手の仕事は患者さんの介助をしたり器具やカルテの準備をしたりなど、看護師や医師の業務の補助をすることです。多忙な看護師や医師を上手くサポートできたときは、やりがいを感じられるでしょう。

患者さんやその家族に寄り添える

看護助手は、患者さんやご家族と接する機会が多くあります。ときには、相談を持ちかけられることもあるでしょう。患者さんやご家族の気持ちに寄り添ってメンタル面のサポートをすることも、看護助手の大切な仕事です。コミュニケーションを重ねることで、心を開いてもらえたり感謝の言葉をもらえたりしたときは、大きな喜びを感じられます。

医療現場を支えることができる

医療器具の洗浄や環境整備など全ての仕事が、医療を土台から支える責任を伴う仕事です。医療現場を支える縁の下の力持ちである看護助手の仕事は、その分やりがいも大きいといえます。

看護助手に向いている人

看護助手に向いている人

ここでは、看護助手に向いている人の主な特徴を紹介します。

コミュニケーション力が高い人

看護助手は、看護師や医師、患者さんなど多くの人と接する機会があるため、コミュニケーション能力が高い人が向いているでしょう。各所との連携を求められる場面も多く、ときには患者さんの家族と話をする機会もあります。そのため、自分から進んで情報の共有や収集ができる人は、看護助手として活躍できるでしょう。

心身共にタフな人

体力面や精神面でタフな人は、看護助手に適しているといえます。患者さんの体位交換や移乗介助、入浴介助など、看護助手には力が必要な仕事も多め。1日中病院内を動き回っているため、特に体力や筋力は求められます。

また、ときには患者さんの死に立ち会うことも。よく接していた患者さんが亡くなることもあるでしょう。看護助手には、悲しみを乗り越えて業務に邁進できるメンタルの強さも重要といえます。

臨機応変に対応できる人

医療現場では、患者さんの状態の急変や突然の患者の受け入れなど想定外のことが多く起こります。また、看護師などの指示により、日によって仕事内容が変動することも。そのため、状況に応じて臨機応変に対応できる人が看護助手に向いているでしょう。

新しいことを覚えるのが好きな人

向上心がある方は、看護助手に向いています。
日々、新しい治療法や新薬、医療器具などが導入される医療現場では毎日が勉強です。新しいことに出会っても臆せず、知識を身に付けていきたいと思える人は看護助手としてスキルアップできるでしょう。

チームプレーが好きな人

仲間と協力して業務を行うのが得意な方にとって、看護助手はぴったりの仕事といえます。
看護助手の仕事は、看護師や医師などの医療従事者と連携が必要なものばかりです。患者さんの状態を看護師とこまめに共有し、気になったことをそのままにしないことが適切な治療につながります。他者と連携して動くことが好きな人は、看護助手の適性が高いといえるでしょう。

看護助手が資格を取得する4つのメリット

看護助手が資格を取得する4つのメリット

看護助手には資格や経験がなくてもなれる職種です。しかし、資格を取得することで以下のようなメリットを得られます。

1.仕事に役立つ知識や技術が身につく

看護助手は資格を取得することで、現場で必要となる知識や技術が身につけられます。医療施設で使用される専門用語や医療機器の知識があれば、医師や看護師からの指示にすばやく的確に反応できるようになるでしょう。

2.信頼度がアップする

資格を取得する過程で得た知識や技術を実際の医療現場で活かすことで、周囲からの信頼を得られるでしょう。直接的な医療行為を行わないとはいえ、一瞬一秒が命取りになる恐れがある医療現場では、看護助手にも速やかな対応力が求められます。医療に関する知識を持っていると、医師や看護師からの専門的な指示を的確に読み取りやすくなるため、業務をスムーズに遂行できるでしょう。

3.収入アップにつながる

取得する資格によっては、収入アップが期待できます。
どの資格にどの程度の金額が出るかは職場によって異なるものの、資格を取得することで手当がつく場合があります。収入の増加をめざす場合は、資格の取得を検討すると良いでしょう。

4.キャリアアップにつながる

資格を取得することで任せてもらえる仕事の幅が広がり、キャリアアップにつながる可能性があります。看護助手は無資格・未経験でもなれる反面、医療行為が行えないなど、業務に制限があります。そのため、「患者さんの力になりたい」「さまざまな経験を積みたい」と考えても、業務の幅を広げるのは難しいのが現状です。携わりたい業務に関連する資格を取得することで業務可能な範囲が広がるため、キャリアアップも夢ではないでしょう。

看護助手のスキルアップにつながる試験・資格

看護助手のスキルアップにつながる試験・資格

看護助手は関連資格を取得することで、スキルアップをめざすことが可能です。

看護助手認定実務者試験

看護助手認定実務者試験は、全国医療福祉教育協会が実施する民間の資格試験です。看護助手に必要とされる知識や技能があることを証明できます。試験の概要は以下のとおりです。

試験日程 年4回(3月・6月・9月・12月)
試験会場 ・在宅受験一般は自宅で受験※在宅受験は日本国内のみ
・会場受験対象となる通学受講生は学校、スクールの教室等で受験が可能
受験料 ・一般受験は、5,000円(税込)
・認定機関の通学受講生の場合は、4,500円(税込)
試験形式 マークシート形式で35問出題
試験時間 90分
出題内容 「看護助手業務と役割の理解」と「患者の理解」からそれぞれ10問、
「看護助手業務を遂行するための基本技術」から15問出題
合格基準 6割以上の正答率
合格率 60%から80%程度

看護助手認定実務者試験は、受験資格が不要で誰でも受験できるのが魅力です。試験に合格することで看護助手として必要なスキルを有している証明となるため、即戦力として見てもらえ、採用時や待遇面で有利になるでしょう。

参照元:全国医療福祉教育協会「看護助手認定実務者試験」

メディカルケアワーカー®

メディカルケアワーカー®は、医療福祉情報実務能力協会が実施する民間の資格試験で、2級と1級の2種類があります。概要は以下のとおりです。

試験日程 年3回(3月・7月・12月)
試験会場 在宅試験
受験料 【2級】7,700円
【1級】8,700円
出題範囲 【2級】
・学科は20問出題
「病院環境衛生学」「医科薬科学」から出題
・文章作成を800文字程度
学科出題範囲及びガイドラインの事柄についての記述問題

【1級】
・学科は25問出題
「病院環境衛生学」「医科薬科学」「基礎心理学」「実技緒論」から出題
・文章作成を800文字程度
学科出題範囲及びガイドラインの事柄についての記述問題

合格率 【2級】72.7%
【1級】75.8%

メディカルケアワーカーの資格試験を受けるには、受験資格を満たす必要があります。
2級は医療福祉情報実務能力協会が規定する実務経験1年以上か、協会認定の講座の受講修了が必要です。1級を受けるには、2級に合格する必要があります。なお、1級と2級の併願受験が可能です。

参照元:医療福祉情報実務能力協会「メディカルケアワーカー®(看護助手)検定試験」

介護職員初任者研修

介護職員初任者研修は、介護職として業務を行ううえで最低限の知識や技術、介護を実践する際の考え方を身につけられる研修のことです。介護職員初任者研修の受講に必要や要件はなく、誰でも受けられます。研修時間は合計130時間で、研修科目は以下のとおりです。

  • 職務の理解:6時間
  • 介護における尊厳の保持・自立支援 :9時間
  • 介護の基本:6時間
  • 介護・福祉サービスの理解と医療との連携:9時間
  • 介護におけるコミュニケーション技術:6時間
  • 老化の理解:6時間
  • 認知症の理解:6時間
  • 障害の理解:3時間
  • こころとからだのしくみと生活支援技術:75時間
  • 振り返り:4時間

介護職員初任者研修は介護職向けですが、介助業務を行う看護助手にとっても役立つ研修といえます。病院以外での勤務を考えている方は、受けておくと良いでしょう。

参照元:厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について」

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看護助手に関する疑問

看護助手に関する疑問

ここでは、看護助手に関する疑問をQ&A形式で回答します。看護助手をめざす方は、疑問を払拭しておきましょう。

Q.看護助手に資格はいらない?

看護助手になるのに資格は必要ありません
ただし、資格を有していると知識や技術があることを証明できるため、就職には有利といえるでしょう。また、資格を取得するのは、看護助手になってからでも遅くありません。資格を取得することで、給料アップやキャリアアップにつながる可能性もあります。

Q.看護助手がしてはいけないこととは?

看護助手は医師免許や看護師免許を持っていないため、医師に許されている医療行為はもちろん、看護師が医師の指示のもとで行う診療の補助はできません。看護助手ができるのは、医療行為以外のサポートです。

まとめ

看護助手は、看護師の補助業務や患者の介助などを行う需要の高い職種です。医師や看護師の資格を持ち合わせていないため医療行為は行えませんが、医療を土台から支える仕事で大きなやりがいを感じられます。さらなるスキルアップをめざす方は、資格を取得してみるのも良いでしょう。

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