家庭でも仕事でも輝きたい!キャリアの話

BOCプロバイダーで口腔ケアを極めよう!

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口腔ケアは看護師が患者さんに対して頻繁に行うものでありながら、学ぶ機会が限られています。そうした現状を受けて、口腔ケアの知識と技術を身に付け、一定水準に達した人を認定しているのがBOC(basic oral care)プロバイダー(一般社団法人訪問看護支援協会認定)です。
同協会の代表理事を務める高丸慶さんと、講座統括を務める長縄拓哉さんに、BOCプロバイダーの意義や教育システムについて伺いました。

<お話を伺った方々>

高丸慶さん
看護師、保健師、居宅介護支援専門員/訪問看護支援協会 代表理事

長縄拓哉さん
歯科医師、医学博士

看護師は口腔ケアを教わる機会が不足している

――BOCプロバイダーは口腔ケアを学び、実践する人を育てるプログラムということですが、どういうプロセスで認定を受けるのでしょうか。

長縄:申し込み後、「口腔ケアエビデンス基本講義」(3時間)やゲスト講師による講義を受け、口腔ケアに関する最新の知見、エビデンスを学んでもらいます。基本的なことをギュッと凝縮した内容です。この修了者に対して、認定証を発行しています。

高丸:講義の対象者は看護師、歯科衛生士、介護福祉士、ケアマネジャーなどですが、約9割を看護師が占めています。2021年3月現在で、トータルの認定者数は約1,100人。年齢層は若手から中堅、ベテランまで幅広いです。

長縄:認定証を受け取っても、それがゴールではありません。むしろ、スタート時点に立つための「入学試験」のようなもので、ここから基礎の上に乗る応用を学んでいく長い旅路が始まるのです。

――口腔ケアのことを深く学びたいという看護師は多いのでしょうか。

高丸:僕の看護学生時代を思い返してみたら、口腔ケアのことを習った記憶はほとんどありませんでした。口腔の解剖は勉強しても、そのケア方法に関してはさっぱり……という感じで。実際、某学会の看護部会で、有名な先生方が看護教育の中で口腔ケアが占める地位の低さを嘆いていたのを聞いたことがあります。それには同感だったのですが、その先生方は1コマかそこらしかない口腔ケアの教育時間を2コマに増やすにはどうしたらいいかということを真剣に話し合っていらっしゃった。僕は正直、「まず考えるべきところは、そこじゃないかも……」と感じました。こうした経験が、BOCプロバイダーを構想するスタート地点だったと思います。

長縄:看護教育で習っていなくても、看護師になって現場に出たら「口腔ケアを1日3回やってください」と言われるわけですよ。習っていないのにやらなきゃいけない。先輩看護師に聞くしかないけれど、その先輩だって習っていないのですから。そういう医療現場はおかしいな、という思いがありました。

ただ、教わる機会や仕組みがないのなら、それを作ればいい。看護教育を変えるのは時間もかかるでしょうから、私たちにできることは何かと考え、BOCプロバイダーの企画を始動させたのです。

――受講者は看護師が大半ということですが、受講動機はどういうものが多いですか。

高丸:「私は看護師である」という信念がど真ん中にあり、その臨床業務に生かすためという明確な意識を持っている人が多いと思います。今まで臨床で口腔ケアをやってきて、ある程度は分かっているつもりだけれど、「口の中のことだけ分かっていればいい」という認識では限界があると知り、もっと深く学ぶ手段を探してBOCプロバイダーにたどり着いた――というケースが典型例ですね。

長縄:歯科医師や歯科衛生士は口の中のことに関する専門家ですが、ほとんどの場合、患者さんの全身状態までアセスメントしながら歯をさわっているわけではありません。一方、医師は全身のことが分かるけれど、口の中のことだけが分かりません。そういう意味では、全身状態のアセスメントができ、実際にケアをする立場の看護師こそが、口腔ケアのスペシャリストとして最もふさわしいのだと思います。

高丸:BOC(basic oral care)と言っているくらいですから、本当はBLS(basic life support)と同じように、医療従事者はもちろん、一般の方でも基本的な口腔ケアの知識と技術は身に付けたほうがいいと思います。いつ親の介護が始まって、家族でケアしなければならなくなるか分かりませんから。ただ、現段階では看護師を中心にBOCの「使い手」を増やしていっているということです。

口腔ケアを極めるコミュニティの一員に

――先ほど、基礎を固めたら応用を学んでいくというお話がありましたが、具体的にはどういうことでしょうか。

長縄:認定証の発行を受けたら、口腔ケアの基礎は学んだということになります。しかし、例えば全身状態のアセスメントの上で口腔ケアをする、あるいは人工呼吸器を装着していたり、終末期だったり、経管栄養を入れて経口摂取していなかったり、認知症があって嫌がったりする患者さんに口腔ケアをするといった応用編までは、3時間やそこらではとても学び切れません。

高丸:そこで、BOCプロバイダーに認定された後は、Facebookグループ(BOCプロバイダー公式グループ)に参加して、オンラインのメリットを最大限に生かしながら応用編を学んでもらいます。グループ内では過去の講義動画やライブ配信の視聴ができますし、BOCプロバイダー同士の情報共有・相談も盛んに行われています。メンバーを対象としたイベントも頻繁に開催しています。

長縄:グループ内では最新の情報が流れているので、自分の知識を常にアップデートできます。また、相談に関しては講義動画などに関連したものに限らず、それぞれの臨床業務から生まれた疑問・質問を投げることも可能です。例えば、最近では、「がんで口腔機能が悪化し、痛みがある患者さんの口腔ケアはどうやったらいいでしょうか」「味覚障害がある場合、昨今はCOVID-19感染が疑われますが、他の要因は考えられるでしょうか」といった相談がありました。オンラインでなければ出会わなかったであろう仲間たちとつながり、学び合う環境が実現できていることは本当によかったと思います。

――BOCプロバイダーとして応用を学び、さらに上位の任に就くこともできるそうですね。

高丸:BOCプロバイダーの役割は、大きく分けて3つあります。

(1)provide(臨床で口腔ケアを行う)
(2)spread(口腔ケアの知識や技術を周囲に拡散する)
(3)keep updated(provideやspreadをするために学び続ける)の3つがあります。

これらを高度に医療現場で実践できる人材を生み出すため、BOCプロバイダーからさらに上位レベルの立場にステップアップできるようにしています。

長縄:具体的には、このような3つの上位レベルがあり、少しずつ認定者が増えてきています。

BOCインストラクター(約20人)
BOCアカデミックプロバイダー(10人)
AOHC(advanced oral health care)(約30人)

インストラクターは名前の通り指導者の立場で、特にspreadする(広める)能力に優れています。アカデミックプロバイダーは、臨床研究をして論文を発表し、エビデンスを発信していくチームです。AOHCは、provideの能力に長けた人材を育てるプログラムになります。人の考えや行動を変容させるのは大変ですから、特にspreadが難しいと考えていますね。僕らが大学院で学んだ行動変容理論やコミュニケーションデザインなども駆使しつつサポートしていきたいと思っています。

――最後に、看護師の皆さんにメッセージをお願いします。

長縄:一人ひとりの職場という狭い範囲では、口腔ケアのことを相談し、確かな根拠を持った回答をもらえる相手がなかなか見つからないかもしれません。しかし、オンラインのコミュニティでは物理的制限のない全国規模で、信頼できる仲間を見つけることができます。単に「認定を得ておしまい」ではなく、オンラインの良さを生かして継続学習できるBOCプロバイダーグループを、ぜひ活用してください。

高丸:看護の臨床では、口腔ケアを学ぶ優先度が低くなりがちだと思います。BOCプロバイダーが増えることで、口腔ケアの知識や技術を周囲にspreadし、そうした現状を変えていくことができるはずです。そうして患者さんの口の中が健康になり、誤嚥性肺炎などのリスク低下につながれば幸いです。

※BOCプロバイダー(一般社団法人訪問看護支援協会認定)の申し込みや認定資格講座の概要などについては、下記の公式ウェブサイトをご覧ください。
https://boc-provider.info/

取材・文/ナレッジリング 中澤仁美
撮影/ブライトンフォト 山本未沙子

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中澤 仁美

プロフィール

中澤 仁美

ライター

1984年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、中学受験塾の国語科講師として勤務。のちに結婚・出産のため退社。育児をこなしつつ編集業務に携わる。
保育士、ファイナンシャルプランナー、日商簿記2級の資格保持。

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