家庭でも仕事でも輝きたい!キャリアの話

出版社勤務を経て看護を学び、新卒で訪問看護ステーションに入職!

従来、訪問看護師は「ベテランナースが選択するキャリアの一つ」と思われがちでした。しかし、在宅医療のニーズが高まり続ける中、新卒で訪問看護の世界に飛び込む看護師も少しずつ増えています。ここでは、新卒看護師を数多く受け入れているケアプロ訪問看護ステーション東京(中野区・足立区)を取材し、新卒で入職した豊田美和子さんの経歴を追うとともに、教育担当者お二人に訪問看護師育成にかける思いを伺いました。

お話を伺った方

 

豊田美和子さん
ケアプロ訪問看護ステーション東京 看護師

 

岡田理沙さん
ケアプロ訪問看護ステーション東京 在宅医療事業部 看護室室長

 

金坂宇将さん
ケアプロ訪問看護ステーション東京 ケアプロ在宅支援センター東京 在宅医療事業部 事業部長

「絶対に復帰させてあげる」の一言に心震えた

私はもともと、医学系出版社で薬学分野の雑誌編集者として働いていました。二人の子どもを育てながらフルタイムで勤務し、目まぐるしくも充実した毎日を送っていたのですが、あるとき思いがけない転機が訪れました。3人目に授かった子どもが、いわゆる医療的ケア児だったのです。正直、自分が医療的ケア児を育てるなんて意識したことがなかったので、何をどうすればいいか見当も付きませんでした。

もちろん、そうしたなかでも、「これまでどおり育児と仕事を両立させたい」と思っていましたが……。病院の医療ソーシャルワーカーやほかの医療的ケア児の親から、「その状況で働いているママなんていない」と言われ、あきらめかけていたことも事実です。でも、そんなとき、私に希望を与えてくれたのが訪問看護師の方のひと言でした。仕事復帰について相談した際、「絶対に復帰させてあげるから!」と力強い言葉をかけていただき、それが何よりの支えになりました。そして実際、訪問看護と施設のサポートを受けながら、フルタイムでの復職がかなったのです。

それはとてもうれしいことでしたが、その一方で、医療的ケア児の親の就労に関してサポート体制の整備が追い付いていないことや、地域で医療的なケアを必要としている人がたくさんいることを実感。自分のなかに「私も医療を提供する側になって、そうした人たちを支えられる存在になりたい」という思いが芽生えているのを感じていました。

その後、自分の年齢や子どもの負担も考慮しながら、どんな選択肢があるかを調べてみると、聖路加国際大学看護学部看護学科に、学士3年次編入というコースが設置されたという情報を入手。大学既卒者であれば最短2年で正看護師になれるということだったので、この道に賭けてみよう思い、チャレンジしたのです。

濃密な2年間のプログラムを経て看護師資格を取得

2カ月の受験準備期間を経て、無事に試験をパス。久しぶりに大学の門をたたいたのですが、もともと新しいことを学んで吸収する作業が好きなタイプなので、あのときはとてもワクワクしました。学士3年次編入のクラスは、1学年30人と少人数だったのですが、看護の基礎・専門科目を並行して勉強し、座学を終えた領域については期間を置かず実習へ……。といった具合で、とにかくスピード感あふれる2年間を過ごしました。

当然、学習の密度もすさまじく、いわゆる「楽しいキャンパスライフ」からはほど遠い毎日だったと思います。実習時は、学校や病院の近くにあるホテルに宿泊し、夜中まで記録を書き続けたこともありました。そんなハードな生活ではありましたが、家族のサポートもあって乗り切れたことをとても感謝しています。夫は協力的な上に家事が得意で、レポートが山積みのときはほとんどすべてお願いしていたほど。子どもたちも、それぞれの年齢なりに私の状況を理解して、「小さな応援団」として力を与えてくれました。

30人のクラスメイトはまさに「戦友」と呼べる存在で、苦しいときは支え合い、楽しいときは笑い合うような、濃密な関係性を築くことができました。注射などの演習があるときは、みんなで物品を持ち寄って放課後に集合し、わずかな時間で集中的に練習したのも良い思い出です。家庭の事情でやむなく辞めてしまったメンバーもいますが、ほとんど全員で進級・卒業することができたので、いまでも大切な存在となっています。

新卒でも訪問看護に挑戦できるケアプロとの出会い

看護師資格を取得した後、そのまま訪問看護の世界に入りたいと考えていたのですが、まわりからは「病院で経験を積んでからのほうがいい」とアドバイスされることが多かったですね。そうしたなか、大学の先生から「どうしても新卒で行きたいなら、ケアプロがいい」と教えていただいたことで、ケアプロへの興味が一気にふくらみました。また、医療的ケア児の親の会でケアプロのスタッフと出会い、「豊田さんはうちの社風に合っていると思う」と言われたことも大きかったです。

説明会に参加したときも、新卒で入職した看護師とお話しする機会があり、「私がやりたいことを実践している人がやっと見つかった!」と心が弾みました。その後は、「不安はあっても思いを貫こう」と決意。インターンシップを経て、企業理念や事業の方向性、ステーションの規模感などを総合的に判断し、入職を決めました。

入職後は想像以上にていねいな教育制度があり、そのサポートの手厚さがとても心強く感じました。同行訪問でも、最初は見学だけ、次はバイタルサイン測定、その次は吸引……。というように、少しずつ先輩からケアを引き継いでいき、その方に必要なケアや緊急時の対応などを十分に習得してから、ようやく単独訪問が許されます。20204月に入社した私の場合、7月ごろに初めて1人の利用者さんを単独で訪問できるようになり、その後は1カ月につき12人の利用者さんが単独訪問に切り替わっていくというペースでした。

「その人らしく」を支える医療の魅力を実感

現在は、9時に出社して朝礼ミーティングと申し送りをした後、134件の訪問を担当することが多いですね。私の場合、家庭の事情で終業が16時と早く、残業もできないので、スマートフォンを使って外出先で記録業務の一部を行うなど、効率良く動くことを意識しています。また、1人の利用者さんと長期的に関わり、「生活の中にある医療」を提供できていることが、とても大きなやりがいになっています。自分自身が医療的ケア児の母親なので、家族の介護負担を軽減することについては人一倍の意義を感じており、その助けになれることにも喜びがありますね。

訪問看護の世界では、35年ほどで一人前のレベルに到達できると聞いているので、まずはそこをめざして、一生懸命にがんばることが当面の目標です。そのうえで、仕事の中でほんの少しでも疑問を感じたら、「そのままにせずに突き詰めて考える」ことを大切にしたいと思っています。キャッチした「?」を一つひとつ解決していくことが、その後の成長につながる——。それを、先輩たちの後ろ姿から学ばせてもらっているからです。

「病気や障害を抱えても、自宅で満足できる生活を送りたい」と願う方はとても多いです。だからこそ、それまでの人生で利用者さんが大切にしてきたことを尊重し、その方らしく生きることを支える訪問看護には、病院看護とは一味違った魅力があります。少しでも興味があるなら、思い切って飛び込むだけの価値があると思いますよ。

教育担当者インタビュー①
訪問看護ステーションと病院では「学びの順番」が異なる
岡田理沙さん
ケアプロ訪問看護ステーション東京 在宅医療事業部 看護室室長

訪問看護業界の課題である人材不足を解消するためには、若手看護師でも訪問看護にチャレンジできる環境を整えることが一つの突破口になります。そのため、当社では2013年から新卒看護師の採用をスタート。毎年、23人を新卒採用しており、その数は2020年末時点で累計14人にのぼっています。

新卒に限らず若手看護師や潜在看護師、ベテランナースなど、さまざまなステージにある看護師がやりがいを持って働けるようにするためにも、教育制度の構築には力を注いできました。入職後は、まずは4日間かけてオリエンテーションを実施。在宅医療の基礎や使用機器などについて詳しく説明します。その後、先輩看護師との同行訪問でOJTを重ねてもらい、数カ月後にフォローアップの機会を設けています。当社のOJTの特徴は、毎回の訪問に対して明確な目標を持たせ、必ず振り返りを行うようにしていることです。「見学」「一部実施」「全部実施」といったステップを踏み、まずは1人の利用者さんに対する理解を深めながら、できるケアを徐々に増やしていくようなイメージですね。

訪問看護での教育は、病院での教育と比べて「学びの順番が異なる」という表現もできるかと思います。たとえば、病院ではリーダークラスになってから担当することが多い患者さん・ご家族への説明や、多職種連携などの外部調整なども、当社では1年目から関わってもらいます。

また、在宅では呼吸器領域のケアが多いこともあり、クリティカルな手技を必要とされることもしばしば。そのため、最初は状態が安定している維持期の利用者さんからはじめて、業務に慣れてきたら新たな知識や技術が求められる利用者さんを担当してもらうといったように、段階を踏んで調整を行っています。訪問看護ならではの特徴を踏まえ、スタッフの個性や強みを最大限に生かせるような育成を心がけており、豊田さんも期待通りの成長を遂げてもらっていると思います。

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教育担当者インタビュー②
「共に育つ」風土の中で新卒看護師を支えたい
金坂宇将さん
ケアプロ訪問看護ステーション東京 ケアプロ在宅支援センター東京 在宅医療事業部 事業部長

ケアプロには、「教育する人もされる人も対等であり、ともに育て合う存在である」という考えに基づいた「共育」という組織風土があります。新人スタッフは、看護師として未熟なところが多いかもしれませんが、多様な経験や考え方を持った一人の人間であり、そこから学ぶこともたくさんあります。だからこそ、立場が上の指導者が一方的に教えるのではなく、互いにアウトプットする中で学び合い、利用者さんを支えるプロフェッショナルとして議論を交わすことが重要だと考えています。

そのため、当社では若手にも、指導する側に立つことを意識付けるようにしています。具体的には、入社後半年から1年ほど経ったタイミングで、「ベーシック教育研修」を実施し、後輩に経験や技術を伝えられるよう準備してもらいます。早い時期から「教える・教えられる」という両方の立場を経験させることで、「共育」の土壌を作るわけです。加えて、学ぶ側の主体性を育むことにも注力しています。たとえば、OJTで使用する振り返りシートには、その日の訪問でどんな課題に取り組みたいか、何を学ぶべきかといった点を書き込む欄があり、「自分のここを見てほしい」と学ぶ側から発信できるように工夫しているといった具合です。

利用者のプライベートな領域に足を踏み入れる訪問看護は、その方の生活や心身の状態に合ったケアを提供することが重要で、一つひとつのケアにおいて、適切な判断とクオリティーの高い技術が求められる仕事だといえるでしょう。また、基本的に医師がいない現場で活動するからこそ、臨床推論やフィジカルアセスメントの能力が身に付きやすいという側面もあります。たくさんの方々の暮らしに触れながら看護師としてレベルアップできる現場なので、ぜひファーストキャリア、セカンドキャリアの選択肢として考えていただきたいと思っています。

取材・文:ナレッジリング(中澤仁美)
撮影:ブライトンフォト(和知 明)

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(会社紹介)
ケアプロ訪問看護ステーション東京

「在宅医療の課題を解決し、私らしくいきたいを支える社会を創造する」という理念を掲げながら、24時間365日絶えず質の高いサービスを提供し、利用者が求める多様な生活の実現を目指す総合訪問看護ステーション。教育体制やフォロー体制が整っているため、訪問看護未経験の人でも安心して働ける職場環境だ。

所在地(本社):東京都中野区中央3-13-10 JOY HAYASHI 3F
TEL: 03-5389-1212
URLhttps://carepro.co.jp/

中澤 仁美

プロフィール

中澤 仁美

ライター

1984年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、中学受験塾の国語科講師として勤務。のちに結婚・出産のため退社。育児をこなしつつ編集業務に携わる。
保育士、ファイナンシャルプランナー、日商簿記2級の資格保持。

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