出産手当金とは、出産が理由で会社を休んだ際に、健康保険から支給される給付金です。出産手当金の申請は、まとめて行う場合、出産後56日経過後、給料の締日を過ぎてから行います。産前・産後の分割申請もでき、産前分は、申請期間を含む賃金締切日が過ぎてから提出できます。
この記事では、出産手当金の基本情報や申請のタイミングに加え、申請の流れや注意点を詳しく解説します。産休中の安定的な暮らしを実現するためにも、ぜひ参考にしてください。
そもそも出産手当金とは?
出産手当金とは、出産が理由で会社を休んだ場合に健康保険制度に基づいて支給される給付金です。
労働基準法では、産前6週間は休業期間とし、産後の就業は8週間経過後と定めています。一般的には、休業している間は収入が減少するため、出産手当金を受け取れることは働く女性にとって大きなメリットです。
(出典:厚生労働省「労働基準法における母性保護規定」)
出産手当金と同様に産後に受け取れる手当金には、出産育児一時金もあります。 2つの大きな違いは、下記の通りです。
- 出産手当金…健康保険に加入している女性従業員が対象者
- 出産育児一時金…公的医療保険に加入するすべての女性が対象者
(出典:全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき|こんな時に健保|全国健康保険協会」)
(出典:厚生労働省「出産育児一時金について」)
産前・産後休業や育児休業の期間中も安心して生活できるように、出産手当金の申請について知識を深めておきましょう。
出産手当金申請のタイミング
出産手当金は、産前と産後の両方の期間に対して支給されます。
産前と産後の出産手当金は、合わせて申請が可能です。ただし、対象期間中の給与の支払い有無を確認する必要があるため、申請できるのは出産後56日経過後、給料の締日を過ぎてからとなります。
(出典:全国健康保険協会「出産手当金申請のポイント」)
また、産前と産後に分けて分割申請もできます。
産前分と産後分を分ける場合の申請のタイミングは、以下の通りです。
【産前分】申請のタイミング |
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申請期間を含む賃金締切日が過ぎてから申請書を提出します。産前の出産手当金は、産休開始日から出産日または出産予定日までの期間が対象です。 |
【産後分】申請のタイミング |
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出産後56日経過後、給料の締日を過ぎてから申請書を提出します。産後の出産手当金は、出産日から産休終了日までの期間が対象です。 |
まとめて申請する場合に比べ、分割申請すると一部の支給時期を早めることができます。ただし、申請の手間と時間がかかることを理解しておきましょう。分割申請する場合は、できる範囲で事前に準備を済ませておくと安心です。
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出産手当金の申請方法
出産手当金の申請は、出産手当金の申請は、勤務先の健康保険担当者を通じて申請先へ必要書類を提出する流れが一般的ですが、従業員自身で行うことも可能です。自身の勤務先での手順を事前に確認しておいてください。以下では勤務先に提出してもらう場合を説明します。
出産手当金の申請には、「出産手当金申請書」が必要です。添付書類が必要となる場合もあるため、まずは必要な書類を揃えましょう。
ここからは、出産手当金の申請方法を詳しく解説します。
【STEP1】申請書を入手し記入する
まずは、申請に必要な「出産手当金支給申請書」を健康保険組合から入手します。
申請書は、ホームページからダウンロードが可能です。勤務先によっては、健康保険担当者が準備してくれる場合もあります。
申請書に申請者が記入する主な内容は、下記の通りです。
- 被保険者情報
- 振込先指定口座
- 医師、助産師による証明 など
(出典:全国健康保険協会「健康保険出産手当金支給申請書|申請書」)
被保険者情報には、被保険者証の記号・番号・氏名・住所などを記入したうえで、出産のために休んだ期間や出産年月日などを記入します。
出産前に申請する場合は、出産予定日のみ記入します。手続きをスムーズに行うために、記入漏れがないように注意しましょう。
【STEP2】担当医・助産師に申請書へ記入してもらう
出産手当金支給申請書には、担当医・助産師の証明欄があります。出産した病院または出産予定の病院で、必要事項を記入してもらいましょう。
担当医・助産師の記入欄には、出産年月日や出産予定日、医療施設の住所と名称、担当医師・助産師の氏名などが記入されます。
産前分と産後分で分割申請する場合は、「1回目の申請が産後」「1回目の申請時に出産日を確認済み」であれば、2回目の申請に担当医・助産師の記入は不要です。産前に1回目の申請を行う場合は、1回目と2回目の申請書にそれぞれ担当医・助産師の記入が必要です。
病院によっては、申請書への記入に文書料がかかる場合があります。
【STEP3】勤務先に提出を依頼する
必要事項を記入した出産手当金支給申請書は、勤務先の健康保険担当者へ提出します。申請書には事業主記入欄があり、「労務に服さなかった期間を含む賃金計算期間の勤務状況および賃金支払い状況」の記入が必須です。
産前分と産後分で分割申請する場合は、毎回勤務先に必要事項を記入してもらう必要があります。
勤務先では、申請者の勤務状況、事業所所在地と事業所名などを記入し、申請書を保険者へ郵送で提出します。出産手当金が振り込まれるまでの期間は、申請が完了してから1~2か月程度です。出産手当金は、申請者が指定した口座に直接振り込まれます。
出産手当金申請に関する注意点
出産のために仕事を休まなければならない看護師さんにとって、出産手当金は魅力的な制度です。しかし、出産手当金の制度には、さまざまなルールがあります。出産手当金の支給を受けられるように、制度のルールをしっかりと調べておきましょう。
ここでは、出産手当金申請に関する注意点を解説します。
手当支給の条件
出産手当金の支給条件は、下記の通りです。
- 健康保険に加入している
- 出産のために休業している
- 休業中に給与の支払いがない
(出典:全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき|こんな時に健保」)
出産手当金の支給は、協会けんぽや共済組合などの健康保険組合加入者に限られます。ただし、国民健康保険組合の加入者や健康保険の任意継続をしている方は支給対象外です(健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者は除く)。
休業中に給与の支払いがある方でも、給与額が出産手当金より少ない場合は差額が支給されます。
下記の条件を満たす場合は、退職者でも出産手当金が支給されます。
- 退職日の前日までに、1年以上継続した被保険者期間がある
- 健康保険の資格喪失時に出産手当金を受けている
または
- 健康保険の資格喪失時に受給できる条件を満たしている
(出典:全国健康保険協会「出産手当金について|よくあるご質問」)
ただし、退職日に出勤すると支給条件を満たさなくなるため注意しましょう。
手当支給の対象期間
出産手当金の支給金額は、手当支給の対象期間と被保険者本人の過去12か月の各標準報酬月額によって算出される仕組みです。
出産手当金の支給対象期間は、以下のように定められています。
出産手当金は出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった期間を対象としてお支払いします。
(引用:全国健康保険協会「出産手当金について|よくあるご質問」)
単体妊娠で予定日に出産した場合、申請可能期間は「42日+56日=98日」となります。
出産予定日より遅く出産した場合は、出産日までの日数も支給対象です。予定日より遅く出産した場合は、「42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+56日」で手当支給の対象期間を求めます。
申請の期限
出産手当金の申請には、期限が定められています。期限がすぎると時効により請求権が消滅します。
出産手当金の申請期限は、出産のために休業していた日ごとに、その翌日から2年です。出産手当金は、出産のために会社を休んだ日に対して権利が発生する性質上、時効も1日ごとに起算されるため注意しましょう。
(出典:全国健康保険協会「健康保険給付の申請期限について」)
たとえば、手当支給の対象期間が2月1日から5月2日までの場合、2月1日分の申請期限は2年後の2月1日、5月2日の申請期限は2年後の5月2日となります。
申請期間がすぎるにつれて支給額は減少し、出産手当金を受け取れなくなります。出産手当金をしっかり受け取れるように、忘れずに申請手続きを済ませておきましょう。
まとめ
出産手当金の申請方法は、まず申請書を入手し、担当医もしくは助産師に記入を依頼した後、勤務先から提出してもらうのが一般的です。しかし自分で提出する場合もあるので、勤務先から提出してもらえるか事前に確認をしておきましょう。
申請書は自身でもダウンロードできますが、勤務先によっては用意してもらえることもあります。出産手当金の申請に関して、支給の条件や対象期間、期限などには注意が必要です。
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※当記事は2023年3月時点の情報をもとに作成しています