• 2022年8月30日
  • 2022年9月2日

<医師監修>半身浴の効果とやり方 |適切な時間と温度も解説

 

記事:ナースプラス編集部/監修:内科医 橋本将吉

身体の疲れを入浴で癒すという方は多いでしょう。入浴の方法は全身浴が一般的ですが、疲れを癒すためには半身浴がおすすめです。

半身浴は疲れを癒す以外にも、さまざまな効果が期待できます。しかし、半身浴の効果を十分に感じられるようにするためには、正しい入浴手順を守ることが大切です。

当記事では、半身浴の効果と、入浴時間・温度を含めた半身浴のやり方をご紹介します。また、半身浴を避けたほうがよいタイミングや効果を高める方法も解説します。

半身浴とは?

半身浴とは、湯船の中で座った状態で、みぞおちの辺りから下のみがお湯に浸かるように入浴する方法です。バスタブに付いている段差や浴槽に入れたバスチェアに腰掛けて、下半身を中心にお湯に浸かる方法もあります。

半身浴では胸や肩はお湯につけず、直接温めることはありません。お湯の温度設定はぬるめにして、じっくりとお湯に浸かりリラックスする入浴法です。

半身浴は身体にかかる水圧が少なくなり、入浴による身体への負担を抑えられます。

半身浴のメリット

入浴には健康・美容によいとされるさまざまな効果が期待できます。入浴のなかでも特に半身浴をすることで得られる主なメリットは、以下の3点です。

・美肌効果

入浴には身体を温めることで毛穴を開かせて、皮膚の汚れを落としてくれる清浄効果があります。ゆっくりと身体を温める半身浴は、入浴による清浄効果を高めて、肌をきれいにしてくれる美肌効果を期待できる点がメリットです。

半身浴をすると皮膚がじんわりと汗をかいて、余分な皮脂や老廃物が排出されやすくなります。毛穴の中にある汚れも落ちやすくなるでしょう。

お湯の清浄効果だけでも皮膚の汚れは十分に落ちます。身体を洗うときは石鹼の泡で肌をやさしく洗うだけでよく、ボディタオルなどで肌をこする必要はありません。
(出典:名古屋市上下水道局うるおいライフ「医学的にお風呂が体にいい理由」

・ダイエット効果

半身浴を継続するとダイエット効果も期待できます。入浴にはもともと身体の基礎代謝を高める作用があり、特に半身浴は継続することで基礎代謝量が増加しやすくなるためです。

半身浴をすると、身体が徐々に温められて皮膚近くの血管が広がります。血管が広がり血流がスムーズになると、身体の基礎代謝量が増加し、安静時のエネルギー消費量が大きくなります。

下記の「半身浴による生理変化」では、半身浴の継続により、安静時のエネルギー消費量は1日あたり平均約200kcalの増加が見られたと結論付けられています。
(出典:日本温泉気候物理医学会雑誌 2007 年 70 巻 3 号「半身浴による生理変化」

・むくみ改善

入浴で脚のむくみ改善をしたい方は多いでしょう。むくみ改善を目的とするときは、全身浴よりも半身浴のほうが効果的です。

そもそも入浴によってむくみ改善が期待できる理由は、入浴には人体への静水圧効果があるためです。お風呂のように静止している水に浸かると、浸かっている身体の部位に水の重さによる負荷(静水圧)がかかります。静水圧により体表面が圧迫されて、血液やリンパの循環が促される効果が「静水圧効果」です。

半身浴では、心臓が位置する胸の部位に静水圧がかかりません。一方で、下半身は静水圧効果により血液・体液が心臓へと効率よく押し戻されるため、むくみ改善が期待できます。
(出典:名古屋市上下水道局うるおいライフ「医学的にお風呂が体にいい理由」

全身浴との違い

全身浴とは、湯船の中で肩や首までお湯に浸かる一般的な入浴方法です。全身浴は短時間の入浴で身体を温められます。

・疲労回復効果

お湯に浸かると温熱作用によって身体の表面が温まり、血管が拡張して血流量が増加します。全身に血が行き渡ることで、疲労回復効果を期待できます。

全身浴は全身を短時間で温められるため、全身の疲労回復が早まることが期待できます。長時間の入浴ができる場合は半身浴のほうが疲労回復効果は高いものの、短時間の入浴で疲労回復効果を得たい場合は全身浴でも問題ありません。
(出典:日本医師会ホームページ健康の森「健康になる!お風呂の効用」

・リラックス効果

入浴中は水の浮力作用により身体が軽くなり、リラックス効果を得られます。水の浮力作用は体重60kgの方が約6kgになるほどの大きな力です。

水の浮力作用で身体が軽くなると、身体に力を入れる必要がなくなり、関節の負担や筋肉の緊張を緩められます。
(出典:名古屋市上下水道局うるおいライフ「医学的にお風呂が体にいい理由」

・安眠効果

入浴すると温熱作用によって一時的に体温が上がり、入浴後は体温が下がります。人体は身体内部の温度(深部温度)が下がると眠気を感じやすくなるため、全身浴は安眠効果を得たいときに最適です。

また、38~40℃のお湯にゆったりと浸かると、副交感神経が刺激されることにより身体がリラックスして寝つきやすくなります。
(出典:東京都福祉保健局「とうきょう健康ステーション」

なお、全身浴で得られる疲労回復効果・リラックス効果・安眠効果は、半身浴で入浴した場合にも得られます。むくみを改善したいときや基礎代謝を向上させたいときは、半身浴のほうがより効果的です。

【準備編】半身浴の正しいやり方

【準備編】半身浴の正しいやり方

半身浴は正しいやり方で行わなければ、むくみ改善や基礎代謝向上などの効果が期待できません。半身浴の準備で押さえるべきポイントは下記の2点です。

  • 温度設定を確認する
  • 水分補給をしておく

それぞれのポイントが大切な理由や、準備するときの注意点などを解説します。

温度設定を確認する

半身浴をするときは、浴室とお湯の温度設定が重要です。浴室とお湯の温度設定は、一般的に下記の温度帯が適温とされています。

浴室の温度 26~28℃
お湯の温度 38~40℃

お湯に浸からない上半身を冷やさないように、浴室の温度を26~28℃に調整しましょう。浴室暖房機を使用して浴室の温度を保ったり、湯船やシャワーの湯気で浴室内を温めたりします。入浴中に上半身が寒く感じられることもあるため、肩に掛けられる保温用タオルの用意もするとよいでしょう。

お湯の温度は、じっくりと時間をかけて入浴できる38~40℃が適温です。ぬるめのお湯は副交感神経を刺激するので、リラックス効果や安眠効果を高められます。

水分補給をしておく

入浴中は大量の汗をかくため、事前に水分補給をしておきましょう。水分補給をしておかないと入浴中に汗が出にくかったり、脱水症状を起こしたりするケースもあります。

水分補給のタイミングは半身浴をする30分前がおすすめです。一気に大量の水を飲むのではなく、コップ1杯分の水を少量ずつ摂取すると、効率的な水分補給ができます。

また、半身浴では長めに入浴するため、入浴中も水分補給ができるように飲み物が入ったペットボトルを用意しましょう。半身浴の水分補給で摂取する飲み物は、汗に含まれるミネラル分を補給できるミネラルウォーターを選びましょう

【入浴編】半身浴の正しいやり方

【入浴編】半身浴の正しいやり方

半身浴で押さえるべきポイントは下記の2点です。

  • 半身浴をするときの湯量

  • 入浴する時間

・湯量

半身浴をするときの湯量は「みぞおちの辺りまでお湯に浸かる」程度に設定しましょう。

具体的な湯量はバスタブのサイズなどにより変わりますが、身体がお湯に浸かると湯面は上昇するため、バスタブの半分も湯量があれば十分といわれています。初めて半身浴をするときは湯量をバスタブの半分に設定して、後から自分に合った湯量に調整しましょう。

・入浴時間

入浴する時間は20〜30分が適しています。

入浴しはじめてから身体が発汗するまでにかかる時間は平均して約20分といわれており、半身浴で20分以上お湯に浸かっていれば十分に発汗が促されます。

ただし、発汗のしやすさは個人差や体調による差があるため、20~30分はあくまでも目安と捉えましょう。十分に身体が温まって汗もかいたと感じた場合は、無理をせずに湯船を出てください。

同様に、半身浴で入浴するときにはいくつかの注意点があります。半身浴をするときは、次に紹介する注意点も押さえましょう。

半身浴をするときの注意点

誤った方法で半身浴をすると、半身浴に期待される効果が得られなかったり、健康を損ねたりする恐れがあります。以下4つの注意点を押さえて、正しいやり方で半身浴を楽しみましょう。

・お湯が冷めないようにする

半身浴は全身浴よりも入浴する時間が長いため、入浴中にお湯が冷めないようにしましょう。特に冬場は浴室内の温度が下がりやすく、お湯が冷めやすいです。

湯温が下がると温熱作用も低くなり、身体が冷えて十分な発汗効果が得られなくなります。身体が出ている場所以外は湯船の蓋をして、お湯が冷めにくいように対策することが大切です。

・長時間入りすぎない

長時間の入浴は身体を疲れさせます。身体にかかる負担を抑えるために、長時間入らないように注意しましょう。

浴室内で使える時計を置いておくと、入浴時間を目視で確認できます。身体が十分に温まったら入浴を終えることが、半身浴の効果を十分に引き出すコツです。

・こまめな水分補給を意識する

入浴中はお湯の湯気によって喉の乾きを感じにくいものの、実際には発汗によって身体の水分は失われています。半身浴は20~30分を目安として長めに入浴するため、入浴中はこまめな水分補給を意識しましょう。

飲み物は常温の水かミネラルウォーターが適しています。こまめな水分補給を意識すると、身体の水分を保った状態で半身浴ができます。

・スマホを持ち込まない

防水対策をしたスマホであっても、半身浴でスマホを持ち込むことはおすすめできません。スマホに集中している状態では目や脳を休められず、半身浴のリラックス効果や安眠効果が十分に引き出せないためです。

また、スマホに集中していると水分補給を忘れたり、長時間入りすぎたりする可能性もあります。半身浴ではスマホを持ち込まず、身体をリラックスさせる時間を楽しみましょう。

【アフターケア編】半身浴の正しいやり方

【アフターケア編】半身浴の正しいやり方

半身浴終了後は、下記の2点を押さえてアフターケアを行ってください。

  • 水分補給をする

  • 保湿対策をする

・水分補給をする

半身浴後もしばらく発汗が続き、身体からは水分が失われています。準備段階や入浴中と同様に、半身浴後も意識してコップ1杯分の水分を補給しましょう。

飲み物も同様に、常温の水もしくはミネラルウォーターを選びます。常温の飲み物を摂取すると、半身浴で温めた身体を冷やしすぎずに水分補給ができます。

・保湿対策をする

大量の汗をかいた肌は乾燥しやすく、身体を洗ったあとの肌は保護機能も低下しています。そのままでは乾燥肌になりやすい状態であるため、半身浴後は化粧水や乳液などで肌の保湿対策をしましょう。

また、お風呂から出た直後はしっとりと潤っている肌も、ケアをしなければ10分後には入浴前と同程度の水分量に低下します。肌の潤いを保つためには、なるべく半身浴後の10分以内に保湿対策をすることが大切です。

半身浴を避けたほうがよいタイミングは?

身浴を避けたほうがよいタイミングは?

半身浴は健康・美容効果など多くのメリットがあるものの、半身浴を避けたほうがよいタイミングもあります。無理に半身浴をすると体調を悪化させる恐れがあるため注意しましょう。

ここでは、半身浴を避けたほうがよいタイミングと、避けたほうがよい理由を解説します。

食後すぐ

食後すぐの半身浴は、身体の血圧を大きく低下させる可能性があるため避けましょう。

食後すぐの身体には、食物の消化の役割を担う胃や腸に血液が集まっています。全身を流れる血液量が少なくなり、血圧が低下した状態です。

血圧が低下した状態で半身浴をすると、副交感神経が刺激されて血管が開き、さらに血圧が低下します。めまいや失神を起こす危険性もあり、半身浴は避けたほうが安全です。

食後に半身浴をするときは、血圧が安定する1時間後がよいでしょう。

寝る直前

寝る直前の半身浴は、寝つきが悪くなる可能性があるため避けましょう。

人体が眠気を感じやすくなるタイミングは深部温度が下がったときです。眠気を感じた状態であれば質のよい睡眠が取れます。しかし、半身浴をすると一時的に深部体温が高くなり、眠気をなかなか感じられません。寝つきも悪くなり、安眠効果を得られなくなります。

半身浴は就寝の2〜3時間前がおすすめです。半身浴で高くなった深部体温が就寝時には下がり、寝つきがよくなって安眠効果を期待できます。

体調不良のとき・薬を服用しているとき

体調不良のとき・薬を服用しているときの半身浴は、体調が悪化する可能性があるため避けましょう。

体調不良のとき・薬を服用しているときは、体力が低下しています。入浴は汗をかいたり、水圧が身体の負担になったりするため、基本的に体力が低下しているタイミングでは適さない行為です。

半身浴は身体に負担がかかりにくい入浴方法ではあるものの、負担が全くないわけではありません。体調が優れないときは半身浴を控えて、身体が健康な状態のときに行いましょう。

飲酒したあと

飲酒したあとの半身浴には、さまざまなデメリットがあります。

まず、飲酒したあとは食後と同様に血圧が低下している状態です。半身浴をすると血圧が大きく低下して、めまいや失神を起こす危険性があります。

また、飲酒にはアルコールによる利尿作用があり、身体は脱水している状態です。半身浴も汗をかくことで水分が失われるため、飲酒後の半身浴は脱水症状を起こす危険性があります。

身体にアルコールが残っている状態では注意力が低下し、入浴中の事故も起こり得るため危険です。身体の健康を損ねないためにも、飲酒したあとの半身浴は避けてください。

半身浴の効果をより高めるには入浴剤もおすすめ

半身浴の効果をより高めるには入浴剤もおすすめ

半身浴の効果をより高めるためには、入浴剤の使用もおすすめです。入浴剤には、お湯の温熱作用や清浄効果を期待できます。

入浴剤は主に下記の6種類があります。種類ごとに構成成分や期待できる働きが異なるため、どのようなお湯に浸かりたいかをイメージしながら選びましょう。

入浴剤の種類 主な構成成分や特徴 期待できる働き
無機塩類系 無機塩類が主成分であり、ほかの成分は保湿剤・着色剤・香料などが含まれている 入浴による温熱作用を高める
炭酸ガス系 炭酸ナトリウムなどの炭酸塩と有機酸類が主成分であり、ほかの成分は保湿剤・着色剤・香料などが含まれている 入浴による疲労回復効果を高める
薬用植物系(生薬系) 生薬類が主成分であり、生薬類をそのまま刻んだものと、生薬エキスを抽出して無機塩類などと組み合わせたものがある 入浴による温熱作用を高める
酵素系 酵素類が主成分であり、無機塩類と組み合わせるタイプが多い 入浴による清浄効果を高める
清涼系 無機塩類系や炭酸ガス系の基剤に、清涼成分などによって冷感を付与している 清涼成分によりさっぱりと入浴できる
スキンケア系 保湿剤などの保湿成分を多く含んでいる 肌をしっとりとさせる

(出典:日本浴用剤工業会「入浴剤の成分と種類」

入浴剤を選ぶ際は、半身浴をすることで自分がもっとも得たいと考えている効果と照らし合わせることが大切です。

たとえば、半身浴で温熱作用を得たいときは無機塩類系や薬用植物系を選ぶなど、半身浴の効果と入浴剤の効果が合っていると、半身浴の効果を入浴剤で高めやすくなります。

まとめ

半身浴はみぞおちの辺りから下をお湯に浸かる入浴方法です。半身浴をすると、美肌効果・ダイエット効果・むくみ改善などの効果が期待できます。

半身浴の適温は浴室が26~28℃、お湯が38~40℃です。入浴の30分前には水分補給をして、半身浴中と半身浴後に飲む常温の水もしくはミネラルウォーターも用意します。半身浴後は保湿対策も行いましょう。

半身浴の効果を高めるためには入浴剤の使用もよい方法です。半身浴を避けたほうがよいタイミングに注意しつつ、日々の疲れを癒せるバスタイムを楽しんでください。

※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

■監修者
ドクターハッシー(内科医 橋本将吉)
杏林大学医学部医学科を卒業。2011年に株式会社リーフェ(リーフェグループ)を設立し、医大生向けの個別指導塾『医学生道場』の運営と、健康情報の発信を通した啓蒙活動に力を入れる。実際に現役の内科医として診療を行う一方で『医学生道場』にて医学生の指導を行いつつ、YouTuber『ドクターハッシー』としての顔も持つ。
株式会社リーフェ(リーフェグループ):https://li-fe.co.jp
医学生道場:https://igakuseidojo.com
Twitter:@karada_plan

著者プロフィール