• 2021年10月14日
  • 2024年2月13日

公認心理師とは? 受験資格・年収・臨床心理士との違いを解説

 

「公認心理師はどんな仕事をするの?」「臨床心理士と何が違うの?」と、疑問に思う方も多いでしょう。国内唯一の心理系国家資格である公認心理師は、心のケアが必要な人に対して助言や指導、援助を行う職業です。

この記事では、公認心理師の概要や年収、臨床心理士との違いを紹介します。また、公認心理師試験の受験資格の取得方法や合格率も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

公認心理師とは

公認心理師とは、心理学に関する専門性の高い知識や技術を持ち、助言や指導、援助などを行う人のことです。保健医療、福祉、教育その他の分野において、以下の行為を行います。

  • 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析する
  • 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う
  • 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う
  • 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行う

公認心理師は心理的な問題を抱えている人やその周囲の人の相談に乗り、助言や指導、援助を行うことが求められています。また、心の健康に関する知識の普及に向けた教育や情報提供をするのも、公認心理師の重要な役割です。

参照元:厚生労働省「公認心理師」

公認心理師と臨床心理士の違い

公認心理師と臨床心理士はいずれも心理専門職であり、仕事内容に大きな違いはありません。しかし、保有する資格には大きな違いがあります。公認心理師と臨床心理士の違いは、以下のとおりです。

資格

公認心理師は、公認心理師法にもとづく「国家資格」です。2015年9月9日に公認心理師法が成立し、2018年9月に第1回公認心理師試験が実施されました。

一方、臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する「民間資格」です。1998年に公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が設立され、臨床心理士の資格認定がスタートしました。

国家資格である公認心理師に更新制度はありませんが、民間資格である臨床心理士は5年ごとに所定の研修や学会に参加して資格の更新を行わなければなりません。

仕事内容

公認心理師と臨床心理士の仕事内容は、以下のとおりです。

【公認心理師の仕事内容】

  1. 心の問題を抱えている人の心理状態を観察・分析する
  2. 心の問題を抱えている人の相談に応じ、適切な指導・援助・助言を行う
  3. 心の問題を抱えている人の関係者の相談に応じ、適切な指導・援助・助言を行う
  4. 心の健康に関する教育の提供や情報の発信を行う
【臨床心理士の仕事内容】

  1. 臨床心理査定
    心理テストや観察面接を通じて、心の問題を抱えている人の特徴や問題点、どのような援助が適切か明らかにする
  2. 臨床心理面接
    心の問題を抱えている人に対して、精神分析や行動療法といったまざまな臨床心理学的技法を用いて、心の支援を行う
  3. 臨床心理的地域援助
    心の問題を抱えている人だけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行う
  4. 上記1~3に関する調査・研究
    心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施する
 

心に問題を抱えている人に対し、相談や面接を通して適切かつ専門的な援助を提供する点においては、両者に大きな違いはみられません。ただし、公認心理師には対象者や関係者の援助だけでなく、心の健康に関する教育の提供や情報の発信を行うことが求められています。

公認心理師は比較的新しい国家資格であることから、今後どのように展開していくかは不明瞭です。公認心理師資格の保有者でなければ行えない業務が発生する可能性も十分にあるでしょう。

参照元:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」

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公認心理師になるには

公認心理師になるには、国家資格の取得が必要です。国家試験を受けるには受験資格を得なければならず、その受験資格を得るためのルートは2024年2月時点で6ルートあります。

以下では、公認心理師試験の受験資格を得るための6ルートと、試験合格後の資格登録手続きについて紹介します。

公認心理師試験の受験資格

公認心理師試験の受験資格を得るには、以下のA~Fの6ルートのいずれかをクリアする必要があります。

Aルート 4年制大学で指定科目を履修 + 大学院で指定科目を履修する
Bルート 4年制大学で指定科目を履修 + 指定の施設で2年以上の実務経験を積む
Cルート ●日本の大学で指定科目を履修 + 外国の大学院で心理学を履修する
●外国の大学で心理学を履修 + 大学院で指定科目を履修する
●外国の大学で心理学を履修 + 指定の施設で2年以上の実務経験を積む
●外国の大学で心理学を履修 + 外国の大学院で心理学を履修する
●外国の大学院で心理学を履修 + 外国の心理職資格を有する
●過去に日本の大学で履修科目が一部不足していた方(※令和4年度より新たに追加された対象区分)
Dルート 公認心理師法が施行される2017年9月15日以前に、
大学院で指定科目を履修済または履修中である
Eルート 公認心理師法が施行される2017年9月15日以前に、
4年制大学で指定科目を履修済または履修中で、
2017年9月15日以後に大学院で指定の科目を履修している
Fルート 公認心理師法が施行される2017年9月15日以前に、
4年制大学で指定科目を履修済または履修中で、
その後指定の施設で2年以上の実務経験を積む

B・C・Fルートの条件にある指定の施設は、以下の9施設です。

  • 少年鑑別所および刑事施設
  • 一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院
  • 裁判所職員総合研修所および家庭裁判所
  • 医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ
  • 医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック
  • 学校法人川崎学園 川崎医科大学附属病院
  • 学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター
  • 社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園
  • 社会福祉法人楡の会

申請の際は、 公認心理師試験受験資格認定願・履歴書・ 住民票の写し、もしくは戸籍個人事項証明書または戸籍全部事項証明書など、複数の書類が必要です。必要な書類は厚生労働省のホームページに掲載されているので、申請者は事前に確認しておきましょう。

参照元:厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ」

公認心理師試験の合格率

公認心理師試験は、60%以上の正答率が合格基準とされています。第1回~第3回の試験では総得点230点に対し138点以上、第4回は143点以上、第5回は135点以上、第6回は138 点以上を取った方が合格でした。

第1回~第6回の試験の合格率は、以下の通りです。

実施年 受験者数 合格者数 合格率
2018年(第1回) 36,103人 28,574人 79.1%
2019年(第2回) 16,949人 7,864人 46.4%
2020年(第3回) 13,629人 7,282人 53.4%
2021年(第4回) 21,055人 12,329人 58.6%
2022年(第5回) 33,296人 16,084人 48.3%
2023年(第6回) 2,020人 1,491人 73.8%

第1回目と第6回の合格率はやや高めですが、ほかの年は50%前後の合格率です。このことから、公認心理師試験は比較的難しい試験であるといえるでしょう。

参照元:
厚生労働省「第1回公認心理師試験(平成30年9月9日実施分)合格発表について」
厚生労働省「第1回公認心理師試験(追加試験)合格発表について」
厚生労働省「第2回公認心理師試験(令和元年8月4日実施)合格発表について」
厚生労働省「第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)合格発表について」
厚生労働省「第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)合格発表について」
厚生労働省「第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)合格発表について」
厚生労働省「第6回公認心理師試験(令和5年5月14日実施)合格発表について」

公認心理師試験に合格したら資格登録が必要

公認心理師になるには、公認心理師試験に合格した後に資格登録をする必要があります。

公認心理師法の第28条にも、「公認心理師となるには、公認心理師登録簿に、氏名、生年月日その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない」と記載があるため、忘れずに行いましょう。

公認心理師の資格登録の流れは、以下のとおりです。

  1. 公認心理師の国家試験に合格する
  2. 一般財団法人日本心理研修センターから発送される登録申請書類を受領する
  3. 登録申請書類および必要書類を一般財団法人日本心理研修センターに提出する
  4. 一般財団法人日本心理研修センターで登録申請受付および審査が行われる
  5. 一般財団法人日本心理研修センターが公認心理師登録簿に所定事項を登録する
  6. 一般財団法人日本心理研修センターが登録証を交付する
  7. 登録証を受領することで公認心理師を名乗れる

登録申請時には、登録手数料7,200円の支払い登録免許税として15,000円分の収入印紙の貼付が必要です。なお、登録申請の受付から登録証が交付されるまでは、通常2ヶ月ほどかかります。

参照元:一般財団法人 日本心理研修センター「公認心理師登録」

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公認心理師の活躍の場

公認心理師は、主に以下の分野で活躍しています。

分野 主な勤務先
保健医療分野 精神科病院・精神科診療所/一般病院・一般診療所/保健所・保健センター/
精神保健福祉センター
福祉分野 児童相談所/児童発達支援センター/障害児通所支援事業所・障害児相談支援事業所/
児童福祉施設・その他児童施設(認定こども園、保育所、児童館等)/障害者支援施設
教育分野 幼小中高等学校スクールカウンセラー/公立教育相談機関/大学等の学生相談室
司法・犯罪分野 少年鑑別所・少年院・刑事施設/家庭裁判所/保護観察所
産業・労働分野 組織内外の健康管理・相談室/ハローワーク等の就労支援機関
その他分野 私設心理相談機関/大学・研究所/大学等付属の地域向け心理相談施設

厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」によると、どの分野においても公認心理師は心理支援業務をメインに行っています。

なお、就業形態で常勤の割合が高かったのは、司法・犯罪分野で約73%、保健医療分野で約53%でした。一方、教育分野では約22%と低い結果となっています。

参照元:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

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公認心理師の年収

雇用形態や勤務先によって異なりますが、公認心理師の年収は300万~400万円程度といわれています。

厚生労働省が2021年3月に発表した「公認心理師の活動状況等に関する調査」によると、公認心理師の年収の割合は以下のとおりです。

200万円以上300万円未満 16.4%
300万円以上400万円未満 21.3%
400万円以上500万円未満 17.7%
500万円以上600万円未満 11.1%

最も割合が多いのは、年収300万円以上400万円未満です。2.9%とかなり少数ですが、1,000万円以上の年収を得ている人もいます

分野別で見ると、司法・犯罪分野がほかの分野よりも年収が高く、500万円以上600万円未満の割合が多い結果となりました。また、実務経験年数が10年未満の場合は300万円以上400万円未満、10年以上の場合は400万円以上500万円未満の割合が多いことから、公認心理師は実務経験年数と比例して年収がアップする傾向にあります。

参照元:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

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まとめ

公認心理師は、心理系資格としては国内初の国家資格です。近年は心の問題を抱える人も多いため、今後さらに公認心理師のニーズは高くなると予想されます。

キャリアアップとして、看護師が公認心理師資格を取得することは可能です。現に公認心理師と看護師、2つの資格を保有している人も多数います。公認心理師は保健医療分野での活躍も期待されているため、興味のある看護師さんは資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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