• 2020年6月12日
  • 2021年11月16日

【新型栄養失調対策】たんぱく質+鉄分で体の不調をととのえる

 

体がだるい、よく眠れない、めまいがする、頻繁に頭痛が起こる――。そうした不調を抱えている女性は、決して少なくありません。では、みなさんはそんなとき、どうしていますか? 「仕事は休めないし、気合いで乗り切るしかない!」と、栄養ドリンクに頼ったり、鎮痛剤を飲んだりして、無理をしまう人もいるのではないでしょうか。でも、ちょっと待って! その不調は、もしかしたら“栄養失調”かもしれません。現代社会で栄養失調? と感じるかもしれませんが、珍しくないことなのです。

現代女性のたんぱく質摂取量は、1950年代と同じレベル!?

ここで看護師のみなさんに質問です。毎日どのような食事をしていますか? 頭の中で1日に食べる平均的なメニューを思い浮かべてみてください。たとえば……。こんな食事が多かったりはしませんか?

・朝食:トースト、サラダ、コーヒー
・昼食:パスタセット(サラダ、スープ、デザート付き)
・間食:チョコレートを1~2片
・夕食:ごはん、みそ汁、焼き魚、おひたし、冷奴

こうした食事をしている方に「食生活で心がけていること」を聞くと、おそらく「野菜をたくさん摂るようにして、ヘルシーな食生活を意識しています」「カロリーが気になるので、タンパク質は大豆製品と魚を中心にお肉は控えめにしています」などの答えが返ってくることと思います。

でも、この感覚こそが“新型栄養失調”の一因でもあるのです。まずは、こちらのグラフをご覧ください。

日本人のたんぱく質摂取量(1人1日当たり/総量)

厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成15年~29年)、「国民栄養の現状」(昭和25年~平成5年)、「国民栄養調査」(平成6年~14年)をもとに編集部が作成

問題なのは、たんぱく質の摂取量。もっともたんぱく質摂取量が多かった1995年に比べると、1日20g近くも減っているのです。長年、女性の不妊治療や妊娠糖尿病などの臨床に携わり、“たんぱくリッチ食”を掲げた食生活指導も行っている宗田マタニティクリニック院長・宗田哲男先生は次のように話します。

「もともと日本人のたんぱく質摂取量は先進国の中では少ないほう。特に、動物性たんぱく質の摂取量は欧米の半分程度なんです。現在では、さらにその傾向が強くなっていて、特に女性のたんぱく質不足が深刻化しています」

宗田先生は著書『産科医が教える 赤ちゃんのための妊婦食』で「9割は栄養不足」だと断言するほど、日本人女性の栄養状態が危険だと感じています。スリムな体型=健康的だという意識から、低カロリーな食事を心がけている方も多いと思いますが、宗田先生は、もっと積極的にたんぱく質・鉄分・脂質を摂るべきだと言います。

たんぱく質や鉄分が不足すると心と体はどうなるの?

では、たんぱく質・鉄分・脂質が足りないと、心身にはどのような影響があるのでしょうか。下に一例を示しておきます。

・めまい、立ちくらみ
・イライラ、怒りっぽい
・急に心臓がドキドキする、不安に襲われる
・やる気が出ない
・疲れやすい
・体がだるい
・頭痛がある
・朝起きられない
・肌荒れ、爪が割れやすくなる
・髪の毛がパサパサ、抜け毛が増える
・すぐ風邪をひく など

これをみて、「あれ?」と思った方はいませんか? そう、栄養不足が引き起こす症状は、うつ病やパニック発作などの症状と非常に似ているのです。仕事で大きなストレスを抱えている、あるいは劣悪な環境で働いているなど、心に負担をかける要素がないにもかかわらず、体がだるかったり、疲れやすかったりするのは、栄養不足が原因かもしれませんよ?

「体に栄養が満ちていて健康であれば、幸せを感じさせるセロトニンや喜びを感じさせるドーパミンといった神経伝達物質で、脳内が満たされます。そして、これらの物質の材料となるのは、たんぱく質の構成成分であるアミノ酸なんです。また、セロトニンやドーパミン生成される過程では、鉄分も必要です」

つまり、たんぱく質や鉄分が足りないと、セロトニンやドーパミンが脳内で不足してしまうことに……。その結果、幸せや喜びを感じられなくなり、精神が不安定になって、うつやパニック障害、PMSなどを引き起こしやすくなってしまうのです。

「特に女性は、毎月の生理で50~120mlもの出血があるため、男性よりも鉄分が不足しやすい傾向にあります。中には重症貧血になる方もいるほどで、血液検査でフェリチン(貯蔵鉄)の値を調べてみると、15ng/ml以下の方も少なくありません」

なお、低用量ピルで月経をコントロールし、出血を抑えることで貧血を防止できるとのことなので、思い当たる方は対策の1つとして検討しても良いかもしれません。なお、“ダイエットの敵”として敬遠されがちな脂質も、「ホルモンや細胞膜の材料となるので、とても大事な栄養成分」だとか。不足すると疲れやすくなったり、体の抵抗力が低下したりするので注意しましょう。

どれくらいのたんぱく質・鉄分が必要なの?

では、毎日の生活の中で「新型栄養失調」を解消していくにはどうしたらいいでしょうか。まずは、チェックリストで自分の食生活を振り返ってみましょう。

【チェックリスト】

□丼ものや麺類など炭水化物を中心とした一品料理が多い

□ファーストフードや弁当など簡単な食事が多い

□コンビニ食のときはおにぎりと野菜ジュースを選ぶ

□野菜やサラダは積極的に摂っているが、肉や油は避けている

□菓子パンを食事代わりにすることが多い

□甘いお菓子をやめられない

2つ以上にチェックが入った方は要注意で、4つ以上なら厳重注意! 厚生労働省が推奨するたんぱく質の摂取量は、18歳以上の女性が1日50g、同男性が1日60gなので、その数値を目安にたんぱく質を摂るようにしましょう。

食材でおすすめなのは、肉類や魚、卵などで、豚肉(ロース)100gに含まれるたんぱく質量は19.3g程度。卵(Mサイズで約50g)なら100g中12.3g程度です。宗田先生に「1日に食べたい食品量の目安」を伺っておいたので、そちらも、ぜひ参考にしてください。

【1日に食べたい食品量の目安】

・卵 2~3個

・肉 100~200g

・魚 100g

・チーズ 60g

・納豆 1パック

もちろん、一つの食材だけでなく、肉、魚、卵と幅広く摂るのがベター。チーズや納豆も手軽にたんぱく質を補うのに有効な食材です。

なお、1日に必要な鉄分の推奨量は、月経のある成人女性で10.5mg、男性は18~29歳で7.0?、30~69歳で7.5?。これを食事だけで達成するのは難しいので、サプリや栄養機能食品に頼るのが良いとか。現在、不調を感じている方も、感じていない方も、この機会に毎日の食事を見直してみませんか?

<引用・参考>
文部科学省「食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
厚生労働省「国民健康・栄養調査」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html

監修協力/宗田哲男(宗田マタニティクリニック院長) 取材・文/招来にゃんこ

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