• 2018年10月26日
  • 2022年5月13日

奨学金のお礼奉公中に転職・退職するには?

 

仕事のハードさなどから、転職や退職を考えることもありますよね。しかし、「まだお礼奉公中だから、いまの職場を辞められない……」と悩んでいる方も多いようです。実は、お礼奉公中でも転職・退職できるのをご存知ですか? 先輩看護師の中には、お礼奉公中に転職をして新しい職場で活躍している方がたくさんいます。今回は、お礼奉公中の転職・退職について、みなさんの疑問にお答えします。

そもそも、お礼奉公ってなに?

看護師や准看護師を目指して勉強する看護学生のため、さまざまな病院が奨学制度を用意しています。このとき、病院は奨学金を負担するかわりに、看護師資格を取得したらその病院で勤務することを看護学生と約束することがあり、これを「お礼奉公」と呼びます。

お礼奉公では、病院と看護学生の間でさまざまな約束が交わされます。たとえば以下のような内容です。

・准看護師や看護師資格を取得したあとは、その病院で〇年間働くこと

・お礼奉公の期間内に退職する場合には奨学金を即時返還すること

・お礼奉公の期間内に退職する場合には違約金を支払うこと

・約束の期間働いたら、奨学金の返済は不要になること

お礼奉公の期間はおよそ3年といわれていますが、具体的な期間や契約内容は病院によって異なります。

お礼奉公中に転職・退職はできないの?

お礼奉公の期間中に退職を申し出ると、「約束どおりに奨学金をすぐに返還してください」「違約金が発生しますよ」と言われるケースもあります。近頃は奨学金を返せずに自己破産に追い込まれてしまうという「奨学金破産」などのニュースも聞くことがあるため、職場環境に不満を感じ「辞めたい」と思ってもなかなか転職に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。
しかし、現実にはお礼奉公中でも退職はできますし、これは法律違反でもありません。

労働者を守る法律があります

勤務先との退職交渉がうまくいけばよいのですが、病院によっては高額な違約金を請求するなどして、引き留めようとするケースがあります。しかし、違約金の請求はそもそも法律違反。内容によっては、裁判で病院側の主張が退けられるケースもあります。

・労働基準法第14条
労働契約は3年を超える期間について契約してはいけない(例外あり
看護師が退職を申し出たとき、「5年間は働く約束になっている」など看護師に不利な条件を提示して強引に退職を引き留めようとすると、病院は労働基準法に違反している可能性が出てきます。

・労働基準法第16
労働契約の不履行について、違約金の定めや損害賠償額を予定する契約をしてはいけない労働基準法では労働契約の際に、「途中で退職する場合には違約金を支払うこと」など違約金を定めることや、「損害を与えた場合には100万円を支払うこと」など損害賠償額をあらかじめ決めておくことを禁止しています。

そのため、看護師が退職を申し出たとき、違約金や賠償金を提示して退職を引き留めようとすると、病院は労働基準法に違反している可能性が出てきます(労働者の責任で発生した損害を請求することは禁止されていません)。

違約金の請求などは法律違反ですが、「奨学金を返済しなくていい」というわけではありません。退職したあとにどのようにして返済していくのかについては、病院としっかり話し合う必要があります。今までお世話になった職場に配慮して、あくまでも協力的な態度で退職交渉を行いましょう。

キャリアアドバイザーからのコメント

「奨学金」の有無にかかわらず、医療現場は忙しく、看護師一人でも退職すると影響が大きいものです。そのため退職の意思を伝えても、必ずしも快く受理されるものではありません。とはいえ、介護や家庭の事情、事故や病気など、奨学金を返済している期間中にやむを得ない事情で退職や転職に至る場合もあるかと思います。円満退職や転職を行うためには、職場の事情を考慮して歩み寄る姿勢も大切です。

どうしても病院との話し合いがこじれることや、不当な要求をされて不安を感じることがあれば、一人で悩まず「マイナビ看護師」のキャリアアドバイザーに相談してください。転職のプロがあなたの転職や退職に関わるアドバイスをさせていただきます。

文:FPライター 斉藤 勇

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