【識者の眼】「コロナ禍における出産─体験と文献的考察」片岡仁美

ナースぷらす 編集部からのコメント

出生率の統計が開始された1899(明治32)年以降、2020年は過去最少となる84万人台半ばとなる見通しであると報道されました。

出生率低下には様々な要因があると考えられますが、今回の日本医事新報【識者の眼】では、ご自身もコロナ禍の状況で第2子を出産したばかりの片岡仁美氏(岡山大学病院ダイバーシティ推進センター教授、総合内科・総合診療科)が「コロナ禍における出産─体験と文献的考察」と題して寄稿。

産後うつについてもコロナ禍の影響を懸念されています。ぜひ、お読みください。

2019年の出生数は過去最少の86万5234人で、2020年は統計を開始した1899年以降で過去最少の84万人台半ばとなる見通しであると報道された。

出生率の低下には様々な要因があると考えられるが、妊娠に対する不安感も要因となり得るだろう。また、産後うつについてもコロナ禍の影響が懸念される。

PubmedでCOVID-19と産後うつで検索したところ、36件の論文が既に発表されている(2021年1月時点)。

23の研究をメタ解析した論文ではCOVID-19パンデミック中の妊婦における不安、抑うつ、心理的苦痛、不眠の割合はそれぞれ37%、31%、70%、49%であり、産後うつの有病率は22%であった(Yan H, et al:Front Psychol. 2020;11:617001.)。

筑波大学の松島先生らは、パンデミック下の我が国における産後うつの有病率は17%と発表している(Matsushima M, et al:Disaster Med Public Health Prep. 2020;1-6.)。

また、パンデミック下のイタリアの病院で出産した女性を対象とした調査では、うつ症状の有病率は44.2%に上り、うつ病からの保護因子は医療スタッフからの支援などであった(Ostacoli L, et al:BMC Pregnancy Childbirth. 2020;20(1):703.)。これらの論文では妊産婦に対する適切な支援の必要性を訴えている。

筆者もコロナ禍の状況で第2子を出産したが、第1子出産時とは大きく異なる環境であった。

外界から隔絶された病院の中で、医療スタッフの献身的な支援に大変支えられ、そのありがたさに頭が下がった。また、ガラス越しの家族との面会、オンラインで人と繋がることなど、通常時と比べてはるかに限られたコミュニケーションではあるが、それでも自分が多くの方に支えられていることを実感する機会でもあった。

妊産婦の不安を和らげることは、社会的にも重要な課題である。経験者が経験を伝えることは有効であり、経験者が未経験者を支える工夫もできるだろう。オンラインを含む間接的なコミュニケーションも積極的に進めるべきである。

さらに、我が国におけるデータをさらに蓄積することも重要であり、実践と研究の両輪を進めていくことが現在進行形の危機に際して求められるだろう。

片岡仁美(岡山大学病院ダイバーシティ推進センター教授、総合内科・総合診療科)[新型コロナウイルス感染症]

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