【識者の眼】「高齢でも統合失調症には抗精神病薬は必須」上田 諭

ナースぷらす 編集部からのコメント

慢性の統合失調症で総合病院に入院してくる高齢者が、服用していた抗精神病薬を施設で減量または中止され、精神状態が悪化して身体疾患が発症したと思われる例が見られるそうです。

今回の日本医事新報【識者の眼】では、上田諭氏(戸田中央総合病院メンタルヘルス科部長)が「高齢でも統合失調症には抗精神病薬は必須」と題して寄稿。たとえ高齢でも慢性の統合失調症の人には、一定量(多くは高用量)の抗精神病薬が、生活のために必須な「命綱」となることを力説しています。ぜひ、お読みください。

慢性の統合失調症で総合病院に入院してくる高齢者と出会うようになった。統合失調症は長年精神科病院に入院を続けている人が多いが、近年、高齢化に伴って施設入所する人が少なからずみられる。施設で過ごすうちに、肺炎や脱水などの身体的疾患を生じて入院となるのである。

そのなかに、服用していた抗精神病薬を施設で減量または中止され、精神状態が悪化して身体疾患が発症したと思われる例がある。

減量・中止の詳しい事情はわからないが、そのまま服薬を継続していれば大きな問題は避けられたはずだと思われる。

長く精神科病院に入院している人の多くは、高用量の抗精神病薬を長年服用している。現代の精神科的常識から見れば、多剤・高用量で好ましくない。

しかし、慢性の統合失調症の人たちは、過剰とも思えるその薬で脳内の精神機能のバランスを保っていることが多い。自閉的で生気に乏しい傾向はあるが、薬のおかげで穏やかに会話をし、食事をとり、睡眠をとることができているのである。

もし急に減量・中止されれば、長年保った脳内の薬物バランスが崩れ、幻覚妄想による興奮が強まったり、拒否が強くなり会話や食事ができなくなったりすることが十分予想される。

服薬していた穏やかな時とは別人のようになってしまう。慢性の統合失調症の人の薬剤調整をするなら、精神科医師によって慎重に行われなければいけない。

施設で発熱や傾眠傾向などが出て、一般医や施設の嘱託医にかかることがあった場合、医師が抗精神病薬の多さに驚いても無理はない。ましてや高齢である。

こんな高用量を飲んでいたら、悪性症候群や脱水や過鎮静になっても不思議ではない、と考えるのはまっとうな医師の感覚である。しかし、減量・中止は待っていただきたい。ぜひ精神科医師にコンサルトしてからにしてほしい。

たとえ高齢でも慢性の統合失調症の人には、一定量(多くは高用量)の抗精神病薬が、生活のために必須な「命綱」といえるのである。

上田 諭(戸田中央総合病院メンタルヘルス科部長)[高齢者医療]

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