【識者の眼】「COVID-19とリスクコミュニケーション~説得ではなく納得を得るような説明を」細川直登

ナースぷらす 編集部からのコメント

今回の日本医事新報【識者の眼】では、「COVID-19とリスクコミュニケーション~説得ではなく納得を得るような説明を」と題して、細川直登氏(亀田総合病院感染症科部長)が新型コロナウイルスをめぐる矛盾した現象を分析しています。

いまだ繁華街などの人出が減らない、という問題については人々が新型コロナのリスクについて過小評価していることが要因の一つであり、一方で患者やその家族、医療従事者に対する差別については、リスクを過大に評価していることが要因の一つではないかと推測し、対策を提案しています。ぜひ、お読みください。

細川直登 (亀田総合病院感染症科部長)

年が明けても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に歯止めがかかる様子は見られない。

緊急事態宣言が発出されたが、報道によると人出の抑制は前回の緊急事態宣言の時と比較して特に昼間の時間帯であまり見られていないという。

その要因として、いわゆる“自粛疲れ”や“慣れ”があるのではないかとの見方がある。しかし、一方ではCOVID-19患者や家族、医療従事者への差別などが報告されている。

人出が減らない、という問題については人々がCOVID-19のリスクについてあまり気にしていない、過小評価していることが要因の一つであろうと推測される。

また、差別についてはリスクについて過大評価していることが要因の一つではないかと推測される。いずれの事例もリスク評価が適正に行われないことが影響しうると考えられる。

では、どうしてこのようにリスクの評価が適切に行われないのだろうか?

リスクとは起こりうる事象の重大性×発生する確率で示される科学的な事象である。しかし、人々の行動はこのような計算によって左右されるものではなく、心理的な安心感、不安感によって左右されるものであろう。

安心・安全とよくセットで語られるが、安心と安全は全く異なる事象である。安心は個人の心情に基づく心理的なものであり、安全はリスクによって評価される科学的なものである。

ISOによる安全の定義は“受け入れ不可能なリスクのない状態”とされ、ゼロリスクの状態ではない。しばしばゼロリスクの状態を“安全”と認識して、それを求める人々は不安に陥る、ということが起こる。

リスクの程度を評価できるのは専門家である。リスクを評価し、受け入れ不可能なリスクのない状態を作り、安全であることを一般の人に認識してもらうことがリスクコミュニケーションの重要な役割であろう。

逆に人出が減らない、というような状況ではリスクが過小評価されずに適切に評価されるようにすることが、人出を減らす行動につながるものと思われる。これもリスクコミュニケーションの重要な役割である。

専門家、あるいはその意見を受けた政府や行政が、一般の人の認識における安心と安全のレベルを一致させてゆくように説明することがリスクコミュニケーションであり、そのためには説得するのではなく、人々の心に落ちる、納得が得られるようなコミュニケーションが重要である。

細川直登(亀田総合病院感染症科部長)[新型コロナウイルス感染症]

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