• 2021年4月20日
  • 2021年11月24日

【識者の眼】「大阪府におけるコロナ第4波の病床逼迫」倉原 優

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大をうけて、大阪府の吉村洋文知事が「不急の手術を遅らせる」という発言をし、SNS等で多くの批判を集めていました。言葉尻を捉えて批判するだけではなく、実際に大阪府内の病床事情が逼迫した緊急事態に陥っているのも事実です。

今回の日本医事新報【識者の眼】では倉原優氏(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)が「大阪府におけるコロナ第4波の病床逼迫」と題して寄稿。第3波の上限病床数を維持していても第4波の急増に対応できなかった現状と詳細を説明しています。ぜひ、お読みください。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大をうけて、「不急の手術を遅らせる」という発言で、大阪府の知事はSNSでかなり批判を浴びていた。ただ、ここで注意したいのは、「不要不急」ではないということである(不要な手術などあってはならないが…)。HCUではなくICUのベッドを使わざるを得ない待機手術例もたくさんあるだろう。となると、交通外傷・内科救急用・外科用にある程度のICUベッドを確保した状態で、残りをCOVID-19の重症患者用に充てる必要があるが、当然その数には上限がある。

大阪府に届け出されているICUは、大阪コロナ重症センターの稼働病床を合わせると630余りになるが、4月15日時点でこのうち241が重症COVID-19に使われている。全体の約4割、かなりの割合である。COVID-19の重症患者数について、大阪府は2つのシミュレーションを行っている1)。①4月14日まで前週増加比2.0倍で増加し4月19日以降第3波と同じ前週比で減少する場合、②同1.5倍で増加し4月19日以降第3波と同じ前週比で減少する場合、である。これによると、重症患者数は①では最大427人、②では最大340人という試算である。既に大阪府の軽症中等症病床では、重症病床へ転院できなかった患者が30人以上発生しているので、さらなる医療逼迫が予想されることになる。

府の失策ではないかという批判もあるが、個人的にはそう思わない。そもそも重症病床として稼働できるベッドとマンパワーが限られており、第3波の上限の病床数を維持していても第4波の急増に対応できなかったのだ。これまでは、軽症中等症病床が防波堤になっていた。踏ん張っても通常酸素療法で対応できなかった重症例のみを重症病床に搬送していたのだが、第4波では全く防波堤の役割を果たせないほど、重症化する割合が多い。変異株(特にN501Y変異)の影響が大きいという見解が多いが、もしそれが本当で、大阪以外の都道府県にこれが飛び火するとなかなかやっかいである。(以上、2021年4月15日時点での見解)

【文献】

1)第45回大阪府新型コロナウイルス対策本部会議

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]