【識者の眼】「高齢者うつ病“昔の薬”の再評価」上田 諭

ナースぷらす 編集部からのコメント

今回の日本医事新報【識者の眼】では、埼玉・戸田中央総合病院メンタルヘルス科部長の上田諭氏が、この20年余りで大きく様変わりしている、うつ病治療に用いる抗うつ薬について提言。従来の三環系(イミプラミン、アミトリプチリンなど)は高齢者にとって副作用が重大で生命を脅かしかねないといえることが要因でした。統計的エビデンスはないものの、上田氏が推奨するのは1970年代から頻用されていた“昔の”抗精神病薬であるスルピリド(商品名:ドグマチール、スルピリド、アビリットなど)です。上田氏は低用量では副作用の恐れがない利点を挙げつつ、「現代の高齢者うつ病に試みる価値のある必須薬であり、再評価されるべきである」と述べています。

うつ病治療に用いる抗うつ薬は、この20年余りで大きく様変わりした。従来の三環系(イミプラミン、アミトリプチリンなど)をしのぐ形で、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)が一気に主流になった。これらは、三環系と効果は同等で副作用は少ないといわれた。確かに、三環系でみられた抗コリン作用(口渇、便秘、排尿障害など)、心循環系症状(低血圧、頻脈など)、認知症状(せん妄など)は大きく減ったが、効果が十分でない例は少なからずみられた。その場合、三環系を用いることで改善することも多いが、問題は高齢者である。高齢者にとって、三環系の副作用は重大で生命を脅かしかねないといえるからである。

そこで注目されるのが、スルピリド(商品名:ドグマチール、スルピリド、アビリットなど)である。1970年代から頻用された“昔の”抗精神病薬で、統合失調症には300〜1200mg、うつ病には150〜300mgが通例用量であった。胃・十二指腸潰瘍にも適応がある。近年は、新薬の登場でめっきり処方はまれになった。

ところが、スルピリドは高齢者うつ病に大きな効果をもつ場合がある。軽症うつ病に対して30mg前後で効果があるとの報告は以前からあった。しかし、中等症〜重症うつ病でも、低用量(25〜50mg)で著効を示すことが少なくない。食欲低下を伴ううつ状態にはひときわ有効であるが、SNRI、NaSSA、三環系が無効で電気けいれん療法しか方法がないと思われた重症例が寛解に至った例、うつ状態から「ネットに自分の悪口が出ている」と妄想的になり、SSRIが無効だった精神病性うつ病改善例もある。

統計的エビデンスはない。それでも推奨するのは、低用量では副作用の恐れがないからである。抗コリン作用にも血圧にも認知機能にも影響を与えず、きわめて安全だ。“昔の薬”ではあるが、現代の高齢者うつ病に試みる価値のある必須薬であり、再評価されるべきである。

用量にはぜひ注意していただきたい。添付文書通りの150mg処方ではパーキンソニズムや過鎮静を生じ、しばしば逆効果になる。低用量こそが最大の効果を発揮する。

上田 諭(戸田中央総合病院メンタルヘルス科部長)[高齢者精神科医療]

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