【識者の眼】「好循環を生んだ病院看護職員の訪問看護ステーション出向事業」齋藤訓子

ナースぷらす 編集部からのコメント

前回の日本医事新報【識者の眼】にて、「院内での看護職員研修の中に訪問看護ステーションでの研修を入れてはどうか」と提案されていた公益社団法人日本看護協会の齋藤訓子副会長が、2015〜16年の2年間、日本看護協会で「病院看護職員の在宅療養支援能力の向上および地域における訪問看護の担い手育成」を目的とした、病院看護師の訪問看護ステーションへの出向事業を実施していた時の成果を振り返っています。
病院と訪問看護ステーションとの間に出向契約を結び、看護師は病院に在籍しつつ、一定期間、訪問看護ステーションに出向する仕組みだったそうです。
齋藤副会長が提言する「1つの組織で人材育成を完結するのではなく、病院と訪問看護ステーション、あるいは地域にある資源が協力し合って人材を育成する時代の到来」は看護に限ったことではないようにも思えます。ぜひ、お読みください。

恐れていた台風が南にそれて、胸をなでおろしています。今年もあと3カ月ですが、秋の名月を楽しむ余裕はなく、コロナ禍で右往左往した春〜夏が過ぎ、今度はインフルエンザが被さっての対峙と、医療機関にとっては気の休まることがない季節を迎えます。

さて、前回(No.5031)は病院勤務であろうと在宅療養支援の視点は欠かせないため、院内での看護職員研修の中に訪問看護ステーションでの研修を入れてはどうかと提案いたしました。実は日本看護協会において2015〜16年の2年間で病院看護職員の在宅療養支援能力の向上および地域における訪問看護の担い手育成を目的とした、病院看護師の訪問看護ステーションへの出向事業を実施しております。既に訪問看護出向ガイドラインが発出され、都道府県においては、地域医療介護総合確保基金を使って実施しているところもあります。

この事業は病院と訪問看護ステーションとの間に出向契約を結び、看護師が病院に在籍しつつ、一定期間、訪問看護ステーションに出向する仕組みを作ったものです。出向看護師は訪問看護ステーションと労働契約を結び、実際に職員として働きます。ステーションとすれば一時でも人員が増え、他の職員への労務負担が減少したり、あるいは管理者が管理の仕事に専念できるようになるなどの効果を生みました。出向期間が終了すると看護師はまた病院に戻り、訪問看護ステーションでの経験から在宅療養を見据えたケアを実践していきます。治療を終えた患者さんがご自宅で療養する時にどのような準備が必要か、家の中でご自身や家族ができるシンプルなケアにするためには院内で何をしておけばよいのか等を考えることができます。この事業に参加した出向看護師が「在宅療養をあきらめていたのは私たち医療従事者でした」と語っております。

今後、さらに在宅医療の需要が増えることは、各地の地域医療構想で容易に想像ができますが、看護職が病院を辞めて訪問看護ステーションを職場として選択するかといわれると厳しいものがあります。訪問看護ステーションが選ばれる職場づくりをすることは当然なのですが、在宅医療のニーズにこたえる人材育成は喫緊の課題です。人口減少を迎える日本では1つの組織で人材育成を完結するのではなく、病院と訪問看護ステーション、あるいは地域にある資源が協力し合って人材を育成する時代になるだろうと思っています。

齋藤訓子(公益社団法人日本看護協会副会長)[在宅医療]

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