【識者の眼】「地域連携の救世主・訪問看護師の“関わり力”」細井雅之

ナースぷらす 編集部からのコメント

今回の日本医事新報の【識者の眼】は、大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター糖尿病内科の細井雅之部長が実際に経験されたエピソードです。大学病院から紹介された70代男性1型糖尿病患者が、とにかく言うことをきかないタイプで、入院中も看護師さんのインスリン注射は受け入れたものの、「外出させろ」と言って場外馬券を買いに行ってしまう始末…。
退院後も1日3回のインスリン注射を必要としていましたが、その様子では外来に毎日来てもらうのも難しい。そこで、近所の糖尿病専門クリニックと併診とし、訪問看護師さんに介入してもらうことになったそうです。細井氏はその訪問看護師さんの“関わり力”の絶大な効果に驚かされたとか。ぜひ、お読みください。

数年前にあった症例である。70代男性1型糖尿病患者。大学病院からの紹介理由は「繰り返すケトアシドーシスと重症低血糖の加療」。この6カ月間、ほぼ毎月救急搬送されているという。「専門加療(?)を望んでおられます」と紹介された。

糖尿病は約1年前に発症。初めは経口剤治療であったが、血糖コントロールがつかなくなり6カ月前に大学病院で1型糖尿病であると判明し、インスリン導入になったとのこと。

まずは入院していただいたが、「なぜ、インスリンなんか打たないとあかんのや」「そんなもんいらん、死んでもいいんや。ほっといてくれ」と、インスリンに対しては全く拒否の「前熟考期」。少しも話を聞いてくれない。家族は娘さん1人と同居。奥さんと早くに死別されていた。

入院中は、看護師さんのインスリン注射は受け入れてくれたが、「外出させろ」と言って、場外馬券を買いに行く始末。退院後も1日3回のインスリン注射は必要だが、まさか、当院の外来に毎日来てもらうわけには行かない。そこで、近くの糖尿病専門クリニックと併診とし、訪問看護師さんに介入してもらうこととした。

退院前カンファレンスに訪問看護師さん、ケアマネージャーさんにも来ていただき、患者さんにも紹介した。すると、今まで「そんな看護師なんか家には来てもらわんでもいい。いらん」といっていたご本人が、目の色を変えて(?)「あんたがこれから来てくれるのか。頼むわ」と、一目ぼれ。喜んで退院していった。その後、近医に毎月、当院へ6カ月ごとに来ているが、再入院したことはない。訪問看護師さんによると、6カ月ぐらいすると「いちいち(訪問看護師に)来てもらうのもめんどくさいと、もう自分でインスリンを打っている」とのこと。訪問看護師さんの“関わり力”は絶大であった。

当科では、本年は月平均54名の糖尿病患者さんの入院があった。高齢化が進み(平均68.0歳)、月平均7名(13%)が訪問看護師さんのお世話になり、月平均13名(24%)が医療ソーシャルワーカーに転院調整をしていただいている。地域包括ケアなしでは、退院できない患者さんが増加している。

細井雅之(大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター糖尿病内科部長)[病診連携⑥]

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