【識者の眼】「産業医のための、企業が自主的に『濃厚接触者』を特定する際の注意点」和田耕治

ナースぷらす 編集部からのコメント

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の二次的な被害として、罹患してしまった人に対する差別的な待遇の問題が職場や学校などのコミュニティで生じ、深刻な問題となっています。
日本医事新報社の【識者の眼】に国際医療福祉大学医学部の和田耕治教授が、産業医のために「企業が自主的に『濃厚接触者』を特定する際の注意点」について寄稿されています。これは企業だけでなく、病院などにも該当します。濃厚接触者の認定については、対象者の家族などへの影響も大きく、細かく追及し出したら正直、キリがない部分もあります。
和田教授は「医療職が介在しない場合には、むやみに聴取を行わないことも選択肢となる」「体調確認と感染対策を一時的に強化する人ぐらいにしてはどうでしょうか」と提案。過剰な対応でコミュニティに本末転倒な不信感などが広がることこそを懸念すべきではないでしょうか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された際に、感染症法に基づいて保健所により発症前後の行動を確認する積極的疫学調査が行われます。企業や学校では、クラスターが発生した場合に名前が出るなど影響が大きいことから自主的に濃厚接触者の特定が行われていることがあります。保健所の聞き取りの負担が減り、喜ばれるという意見もありますが、新たな問題も発生しています。

COVID-19は発症から診断まで早くて5日程度かかっています。症状があれば会社を休むことが推奨されていますが、症状が軽微であったり、落ち着いた際には出勤していることがあります。発症5日目に診断が確定したとすると、発症前2日を含めて計7日間に、マスクを着けずに1m以内で15分以上会話した人、また食事を共にした人が濃厚接触者と考えられます。

そうした人を特定するには感染した個人だけではなく、周囲の人も含めて詳細な聴取が必要となります。その際、個人の行動履歴は機微な個人情報であるということを忘れてはいけません。企業では必ずしも医療職が介在せずにこうした調査が行われていることがありますが、個人の行動履歴の聴取は業務命令ではなく、信頼関係の上でなされるべきです。医療職が介在しない場合には、むやみに聴取を行わないことも選択肢となります。

企業として「濃厚接触者」と「認定」することは、対象者の家族などへの影響も大きいです。対象者を広範囲に広げたくなるかもしれませんが、体調確認と感染対策を一時的に強化する人ぐらいにしてはどうでしょうか。

最初に感染が明らかになった人が必ずしも最初に感染した人ではありません。つまり、職場で感染した可能性があるので、まず確認することは周囲の人の体調確認です。症状がある人は休みにする必要があるでしょう。

保健所の調査によりPCR検査の対象になる場合とならない場合があります。対象にならない場合には、企業がPCR検査をさせることがあるようですが、症状がまったくない場合に無理強いをしないようにしてください。

接触の調査は感染拡大防止のために御願いして行っているのであり、対象者には調査協力への感謝をもって接するべきです。感染したことを責めることがないようにするべきで、それはハイリスクの行動をしていたことがわかっても同様です。

感染者が職場で初めて出た、という企業はまだまだたくさんあります。過剰な対応で職場に不信感などが広がらないように慎重に行いたいものです。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

<PR>日本最大級の看護師の転職サイト