年内に臨床試験開始、早ければ来年1月にも医療従事者などにワクチン提供

ナースぷらす 編集部からのコメント

一般市民にとっては昭和の時代より『ミュージックフェア』(フジテレビ)のイメージが強い塩野義製薬ですが、薬剤業界では感染症を重点疾患領域に掲げる創薬型製薬企業として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬創製・ワクチン開発に積極的に取り組む企業として知られています。
今回、日本医事新報社では同社の同社経営戦略本部広報部に取材し、パートナー企業と連携しながら国内での生産体制構築を加速させ、医療現場からも大きな期待が寄せられている同社の取り組みについて詳しく話を聞いています。4月27日に塩野義製薬としてワクチン開発を進めることを決定・公表して以降、最優先プロジェクトとして取り組みを進行中とのことです。

感染症を重点疾患領域に掲げる創薬型製薬企業として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬創製・ワクチン開発に積極的に取り組む塩野義製薬。特にワクチンについては「1000万人規模の早期提供」を実現するため、パートナー企業と連携しながら国内での生産体制構築を加速させており、医療現場からも大きな期待が寄せられている。COVID-19の脅威から世界を守るためのワクチン開発の取り組みについて同社経営戦略本部広報部に聞いた。


 

■「1000万人規模の早期提供」実現へ

─COVID-19に対するワクチン開発を決定するまでの経緯をあらためて教えてください。

ワクチンに関しては、グループ会社のUMNファーマと国立感染症研究所が3月下旬頃から共同研究を開始し、UMNファーマが持つBEVS(Baculovirus Expression Vector System:昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術)を活用した組換えタンパク抗原の作製を進めており、それを引き継ぐ形で4月27日に塩野義製薬としてワクチン開発を進めることを決定・公表しました。それ以降、最優先プロジェクトとして取り組みを進めているという流れです。

─「BEVS」というのはどのような技術ですか。

バキュロウイルスという昆虫にしか感染しないウイルスに、ターゲットとするタンパク質の遺伝子情報(今回の場合は、新型コロナウイルスのタンパク質に関する遺伝子情報)を組み込んだ後、昆虫細胞に感染させて目的タンパクを発現させ、タンパク抗原を作製する技術です。

─その技術を用いてワクチンを開発し1000万人規模の早期提供を実現するためパートナー企業との連携も進められていますが、進捗状況はいかがでしょうか。

BEVSを用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を持つアピのグループ会社UNIGENが岐阜に大規模な工場を持っており、そこで商用生産を進める方向で協議を進めています。

─国からはどのようなサポートを受けていますか。

研究開発に関しては、日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援事業に国立感染症研究所、九州大学との共同研究として応募し、採択され、研究費として約13億円の助成を受けることが決まっています。

生産に関しては、経産省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の公募に塩野義、アピ、UNIGENの3社共同で申請しました。経産省で審査が行われ、7月17日に採択されました。

■インフルエンザなどで実績ある技術

─開発中のワクチンの特徴、国内外で開発が進められている他のワクチンとの違いは何ですか。

COVID-19に対するワクチンについては、現在100社ほどが開発中ですが、大きく分類すると5種類あると思います(参照)。

1つ目は不活化ワクチン。2つ目は、弊社も進めている組換えタンパクワクチン。3つ目はアストラゼネカとオックスフォード大が開発を進められているウイルスベクターワクチン。

あと2つはmRNAワクチンとDNAワクチンです。国内では第一三共と東京大学医科学研究所がmRNAワクチンの開発、アンジェスと大阪大学がDNAワクチンの開発をそれぞれ進めておられます。

弊社の組換えタンパクワクチンは、ウイルスのタンパク質を精製し、それを人に投与して抗体を得るものです。既にこの技術を活用したインフルエンザのワクチンが上市されており、実績のある技術という点は、弊社でも期待しているところです。

それぞれの技術にメリット・デメリットはあると思いますが、いまはパンデミックの状況ですので、弊社としては、いろいろな技術で多数のワクチン開発が進んでいることに意味があると思っています。

世界中の人々にワクチンを届けるためには、これら多種多様な開発品の中から成功するものが少しでも多く出てくる必要があります。そうすれば量として賄えることも期待できるようになります。いまは他社と比較してどちらが優れているという次元の話をする時ではないと考えています。

■最善は尽くすが、成功するかは未知数

─開発中のワクチンが臨床試験に入るのはいつ頃になりそうですか。

2020年内に臨床試験を開始し、2021年秋頃に上市というのを目標としています。

いつ頃から提供を開始するかは弊社が決定できることではありませんが、安全性と有効性の高いものが出来て、国からの要請があれば、来年1月頃には医療従事者などに限定してワクチンを提供できる体制を構築したいと考えています。

─国産ワクチンへの国民の期待は大きいと思いますが、実用化までいく可能性はどの程度あるでしょうか。

先ほどもお話ししたように、現在世界で100社ほどがワクチンの開発を進めています。そのうち10数社が臨床試験に入っていますが、成功確率は未知数です。弊社も最善を尽くしますが、現時点でワクチンの開発が成功するかどうか確実なことは言えません。しかし、ワクチンの開発が成功した際には必要とされる量を早期提供できるよう、臨床試験に入る前段階から生産体制の構築に取り組んでいます。

ワクチンの実用化にどこかが成功し、社会の混乱を少しでも抑えてほしいという気持ちですが、私たちも国産ワクチンにはこだわっており、引き続き最優先プロジェクトとして取り組んでいきます。医療現場の皆さんには温かく見守っていただきたいと思います。

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