COVID-19治療候補薬として注目の「アビガン」、投与開始は「早ければ早いほどいい」

ナースぷらす 編集部からのコメント

新型コロナウイルスと戦う人類にとっての救世主扱いされたり、専門家から「待った」をかけられたりと、賛否両論で全世界の注目を集めている抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」について、3月から観察研究の枠組みでアビガンを使用してきた西耕一先生(石川県立中央病院呼吸器内科診療部長)に、その効果と安全性、投与のタイミングについて、日本医事新報社がインタビューを実施しました。
発症から日が経つほど重症化しやすい新型コロナ感染症へのアビガン投与について、西先生は「早ければ早いほどいい」と個人的感想を述べると同時に、現場感覚としては日本感染症学会の手引きを遵守した場合、「治療が後手になる恐れがある」と警鐘を鳴らしています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療候補薬として世界中の注目を集める抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(一般名:ファビピラビル)。ウイルスの増殖を防ぐメカニズムを有することから、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスへの効果が期待されているが、治療の最前線で使用経験を積んできた医師はその効果をどう感じているのか。COVID-19患者が国内各地で発生し始めた3月から観察研究の枠組みでアビガンを使用してきた西耕一医師に、アビガンの効果と安全性、投与のタイミングについてどう考えるか、話を聞いた。(取材は5月上旬に電話で行いました)

【Breakthrough 医薬品研究開発の舞台裏(12)〈特別編〉:西 耕一 石川県立中央病院呼吸器内科診療部長】


西 耕一:1985年金沢大医学部卒。89年同大院医学研究科修了。公立能登総合病院内科医員、石川県立中央病院呼吸器内科医長などを経て2002年より現職。金沢大臨床准教授。


<アビガンをめぐる政府の動き>

─COVID-19患者に対しアビガンを使い始めた経緯を教えてください。


西 COVID-19患者が自分の病院に来たときにどのような治療を行えばいいか、2月頃から考え始め、ウイルス学が専門の知り合いの先生に相談したところ「治療候補薬の中ではアビガンが理論的に効果がありそうだ」という話をいただきました。「国立国際医療研究センターのレジストリに参加すればアビガンが使える」と聞いてすぐに申し込み、3月上旬に手続きを完了させました。その直後に1例目のCOVID-19患者が当院に入院し、アビガンによる治療を開始しました。


─COVID-19患者に対しアビガンを使い始めた経緯を教えてください。

西 COVID-19患者が自分の病院に来たときにどのような治療を行えばいいか、2月頃から考え始め、ウイルス学が専門の知り合いの先生に相談したところ「治療候補薬の中ではアビガンが理論的に効果がありそうだ」という話をいただきました。「国立国際医療研究センターのレジストリに参加すればアビガンが使える」と聞いてすぐに申し込み、3月上旬に手続きを完了させました。その直後に1例目のCOVID-19患者が当院に入院し、アビガンによる治療を開始しました。

■25~26例に使用、3分の2で効果

─直近のデータでどのくらいの患者にアビガンを使用しましたか。

西 25~26例です。そのうち3分の2の方で、熱が下がり、咳が減り、呼吸困難が改善し、酸素投与も中止になるという効果がみられました。

─アビガン投与を開始したタイミングは発症から何日目が多いですか。

西 早い方は発症後2日、最も遅い方は発症後14日。中央値は7~8日です。

─効果がみられたケースで最も投与が遅かったのは何日目ですか。

西 他の薬剤も併用したのでアビガンだけの効果とは言えませんが、発症から12日目に投与してなんとか間に合ったというケースがあります。ただ入院が遅れ重症化してから12~14日目に投与した他のケースはみな苦戦しています。

─アビガンの投与が必要と判断する際の基準は?

西 酸素飽和度が低下し、胸部X線・CTで陰影がかなり広範囲に見られる場合に使っています。

■学会の手引きで治療が後手になる恐れ

<アビガンの作用機序など>

─アビガンを開発した白木公康富山大名誉教授は「胸部CTで肺病変があれば、発症後6日までにアビガン治療を開始すべき」(日本医事新報3月28日号)と主張していますが、現場の実感としてはどうですか。


西 私もだいたい6日までに投与すべきだと思います。


「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上」という相談・受診の目安が国から示されていたため、多くの方は症状が出てから4日間様子を見て5日目に帰国者・接触者相談センターに相談します。その日か翌日にPCR検査をすると、結果が分かるまでに発症から6~7日が経過し、アビガンを投与できるのは7〜8日目以降になるので、実は発症後6日以内に投与するというのは難しいんです。


発症後2日に投与した例があると言いましたが、その方は感染した家族を持つ濃厚接触者だったため、すぐにPCR検査ができ、アビガンを早期に使えたケースです。


─発症後6日までに投与ができない場合でも、何日までなら効果が期待できるという感触はありますか。


西 発症から日が経つほど重症化しやすいので、早ければ早いほどいいというのが個人的な感想です。日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方」では、抗ウイルス薬使用開始のタイミングについて「概ね60歳未満の患者は肺炎を発症しても投与せず経過を観察してよい」とされています。いろいろな考えがあって作られた手引きだと思いますが、現場の感覚としては、これだと治療が後手になる恐れがあると心配しています。


─アビガンを使用して効果がみられたケースで、最も年齢が高かったのは何歳ですか。


西 87歳で効いたケースがありますが、高齢であるほど成績が悪いというのが全体の傾向です。低い年齢では30代後半の方に使用して効果がみられました。


─若い方にも積極的にアビガンを使ったほうがいいというお考えですか。


西 年齢が低くても重症化リスクが高い方には早めに使用したほうがいいと思います。現場の医師は重症化リスクがあるかどうかはすぐに判断できますので。


■副作用を懸念して拒否された事例はない

─アビガンについては動物実験で初期胚の致死や催奇形性が確認されていることから、厚労省の通知でも「妊娠可能な女性、妊娠させる可能性のある男性は慎重な検討が必要」とされていますが、現場では投与の是非をどのように判断していますか。

西 当院で治療対象となった女性は50代以上の方ばかりで妊娠が問題となったことはありませんが、妊娠可能な女性が対象となった場合は妊娠反応陰性を確認した上で投薬します。当然、妊婦には投薬しません。

男性には投与終了後10日間までは必ずコンドームの使用などで確実な避妊を行い、妊婦との性交渉は控えるよう指導していますが、これらのことがアビガン投与の支障になったことはありません。

すべての患者は病気を治そうと必死であり、少しでも効果のある治療薬の投与を希望します。副作用を懸念してアビガン投与を拒否された事例はありません。

─他の薬剤も含めてCOVID-19に対する現段階の治療戦略はどうあるべきと考えますか。

西 COVID-19に対する治療は多くの場合、アビガンだけでうまくいくわけではなく、いろいろな薬剤を組み合わせる必要があります。患者の状態に応じて抗ウイルス薬、過剰な炎症を抑える抗IL-6受容体抗体「アクテムラ」(一般名:トシリズマブ)などの薬剤、ヘパリンなどの抗凝固薬、呼吸管理を合わせて包括的な治療をしなければならないと考えています。

その治療戦略の中で、アビガンは、国産の抗ウイルス薬で供給面の不安が少ないという意味でも重要な治療選択肢として位置づけられるべきと思います。

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