【識者の眼】「日本の新型コロナ感染症対策の失敗は何か」渡辺晋一

ナースぷらす 編集部からのコメント

今回の日本医事新報【識者の眼】は、「日本の新型コロナ対策の失敗の一つは、PCR検査を発症者に絞り、無症状者を含む幅広い検査を行わなかったことである」と断言する帝京大学名誉教授の渡辺晋一氏が「日本の新型コロナ感染症対策の失敗は何か」と題して寄稿。

渡辺氏は国内感染者、死亡者が東アジア諸国の中では一番多いことを指摘しつつ「感染症対策が成功している国をみれば、日本の感染症対策がいかに科学的根拠に乏しいかがわかる」と断言しています。ぜひ、お読みください。

既に何度も述べているように、日本の新型コロナ対策の失敗の一つは、PCR検査を発症者に絞り、無症状者を含む幅広い検査を行わなかったことである。

その結果感染者は水面下で増加し、ついには在宅療養中や高齢者施設等の高齢者にまで拡大し、死亡者を増加させた。

ワクチン接種が進まないなか、日本政府が行うべきは、PCR検査や病床の拡充、医療従事者の確保であるが、1年たってもほとんど何もしなかった。

最近民間会社では安い値段でPCR検査を行っているが、政府はまだ検査制限をしている。さらに1年前から中国で行っているプール法のPCR検査を日本でも行うというが、未だに進展がない。

また病床数であるが、20年ほど前に急性期入院医療では看護師1人当たりの入院患者は7人以下と政府が決めた結果、看護師の争奪戦が始まり、看護師を確保できない病院はベッド数を減らした。その結果見かけ上の病床数と実際の病床数が乖離した。

そして政府と地方自治体は医療費拡大を抑えるために、長年にわたって公的病院や保健所の統廃合を行い、保健所数は大幅に減少した。

さらに感染症対策の知識や技術がある医師や看護師の育成も行わなかった。そもそも日本の医師は国家試験を1度通れば医師として働ける。

米国では5年おきに専門医試験を通らないと専門医を続けられない。特に日本の感染症科や感染制御部は10数年ぐらい前に耐性菌対策として急ごしらえに作られたもので、基盤は十分でない。

実際に政府のコロナに関する会議でも肩書だけで、本当の専門家は少ない(私は感染症も専門としているので、感染症の知己は多い)。

さらにこのような人や一部のマスコミは、日本は欧米と比べ患者は少ないから日本の感染症対策の不備はないという。しかし日本の感染者や死亡者は東アジア諸国の中では一番多いし、感染症対策が成功している国をみれば、日本の感染症対策がいかに科学的根拠に乏しいかがわかる。

また感染症対策は、人との接触を避けることであるが、日本は飲食店の時短営業と中途半端である。昼でも4人以下でも、会食すれば感染するリスクはある。

最近の人流を見ると、減少しておらず、今後もクラスターが発生する懸念があるが、緊急事態宣言を解除するという。経済を回すためと言うが、感染を抑えないと経済は回らない。

本気で事業者を救うつもりならば、事業規模に応じて事業者や従業員に直接お金を渡せばよいのではないのか。

渡辺晋一(帝京大学名誉教授)[新型コロナウイルス感染症]

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