• 2021年5月28日
  • 2021年10月14日

つらい花粉症にはビタミンDが有効! 食事とサプリメントで、薬に頼らず症状改善

 

春から初夏にかけては、スギやヒノキの花粉の飛散量が増える時期。花粉症の方にとっては、目や鼻などのつらい症状に悩まされる時期でもあります。花粉症の症状が重いと日常生活に支障をきたすことにもなりかねないので、適切な対処法を知って、少しでも症状をやわらげたいですよね。今回は、「花粉症はどのような原因で起こるのか」や「症状を軽減させるにはどんな食事や栄養素をとればいいのか」などについて、管理栄養士・分子栄養学カウンセラーの篠塚明日香さんに教えてもらいました。ポイントになるのは「ビタミンD」だそうですよ!

管理栄養士・分子栄養学カウンセラー/篠塚明日香
写真/櫻井健司

花粉症とは免疫細胞の暴走によって起こるもの

まずは、花粉症の代表的な症状であるくしゃみや目のかゆみが、どんな仕組みで起こるのかを簡単に説明しましょう。花粉症はアレルギー反応のひとつですが、その反応は免疫細胞がコントロールしています。

鼻や目の粘膜に花粉がつくと、免疫細胞が異物だと感知して抗体をつくり、その抗体はマスト細胞(肥満細胞)という抗体を受け取る役目の免疫細胞とくっつきます。すると、マスト細胞に蓄えられたヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が放出され、鼻水やくしゃみといった反応が発症します(ヒスタミンは免疫の実行部隊のようなもので、体に入った異物を排除する役目を果たしています)。つまり、この一連の仕組みが過剰なまでに反応してしまった状態が、花粉症なのです。

いってみれば、免疫細胞が暴走を起こしたような状態になるわけですが……。実は、この暴走気味の免疫細胞を正常化する役割を持っている栄養素があります。ビタミンDです。ビタミンDが免疫細胞の正常化に有効という研究は数多くありますし、私が実際に行っている栄養療法でも、ビタミンDを摂取してもらったことで、花粉症の症状が軽減されたという事例が少なくありません。

ビタミンDはどうして不足する?

さて、ビタミンDをしっかり摂取できていれば花粉症の重症化を防げるわけですが、残念ながら現代人は、ビタミンDの摂取量が不足しがちなことがわかっています(下図参照)。

ビタミンDが不足する主な原因としてあげられるのは、日光にあたらないことや肉食傾向から魚をあまり食べなくなったこと。ビタミンDが豊富な食材の代表格といえば魚ですが、特に若年層においては魚の摂取量が減少傾向にあるのです。

また、人は日光にあたると紫外線を浴びて皮膚でビタミンDを合成できるのですが、近年の美白ブームにより日焼け止めで紫外線をブロックしてしまうことが多くなっています。加えて、オフィスワークの人が多くなったことや、車あるいは電車通勤が主流になったことも、日光にあたる時間が短くなった要因といえるでしょう。

血液検査でわかるビタミンD不足

「自分はビタミンDが足りているのかな?」。花粉症の症状に悩んでいる人は、気になるところではないでしょうか。

これについては、血液検査で測定することができます。「25ヒドロキシ(OH)ビタミンD」という項目がビタミンDの不足・欠乏の判定指針なのですが、この値が30ng /ml以上あれば適正値だといえます。余談ですが、インフルエンザの発症率とビタミンDの関係を調べた研究では、この濃度が38ng /ml以上を維持できれば、インフルエンザの発症率を大幅に減少させるとの報告もあるんですよ。

「25ヒドロキシ(OH)ビタミンD」は、栄養療法のクリニックではよく測定する項目ですが、検査を受けるほとんどの人はこの数値が低い現状にあります。しかし、食事療法やサプリメントによってしっかりとビタミンDを補うと、2~3カ月後には数値が適正値になり、同時に花粉症の症状が改善されていくケースがみられます。

ビタミンDは体内に貯蔵できるビタミンですが、体内量を増やすには少し時間がかかるため、花粉症対策として意識的に摂取するなら2~3カ月前にスタートするのが理想的。特に、冬場は日照時間が少なく肌の露出も減るため、ビタミンDが不足しがちです。春に向けて対策をする場合は、1月くらいからしっかりと摂取しましょう。

どんな食材にビタミンDが多く含まれる?

では、食事でビタミンDを多く摂取するためにはどうしたらいいでしょうか。ビタミンDは、鮭やサバといった魚やきのこ類に多く含まれます。きのこ類は乾燥させるとビタミンDが増えるので、干しきのこはぜひ食事に取り入れてほしい食材のひとつです。とはいえ、市販の干しきのこは大量に生産する都合上、天日干しではなく電気乾燥でつくられるケースも。それだとビタミンDがあまり増えないので、買ってきたら1日だけでも日光にあてて干すようにしましょう。きのこだけでなく切り干し大根も同様です。

乾物は保存がきくだけでなく栄養価も高いため、自宅に常備しておくことをおすすめします。

ビタミンDのサプリメントを選ぶコツ

みなさんのなかには、「もっと手早くビタミンDの血中濃度を上昇させる方法はないの?」と考えている方もいると思いますが、それは現代人とって“非常に難しい課題”です。

厚生労働省で定めている「ビタミンDの食事摂取目安量」も、日光にきちんとあたるという前提のもとで決められているため、オフィスワーカーが食事だけでその量を補うのはとても大変なことなのです。ですから、つらい花粉症の症状をできるだけ早く改善したいときには、サプリメントに頼って体調管理するのもひとつの手です。

ビタミンDのサプリメントは、主に羊の毛(ラノリン)由来、魚の油が原料、きのこを原料としたものの3つにわけられます。そのうち、魚の油は酸化しやすく製造過程に手間がかかるため、どうしても値段が高めに。一方の羊の毛やきのこが原料のものは、比較的安価で手に入ります。ただし、どの材料であってもビタミンDとしての効果は変わりませんので、「一度試してみたい」ということであれば、安価なもので十分だと思います。

選ぶ際に注意するべきポイントは、ビタミンDそのものの含有量です。マルチビタミンのように複数のビタミンが入っているタイプだと、ビタミンDの含量が少ないため、2~3カ月で十分な血中濃度にするのが困難。できるだけ、ビタミンD単体でつくられているものや、ビタミンDとビタミンKが一緒に含まれているものを選ぶようにしましょう。なぜビタミンKが一緒のものがいいかというと? ビタミンKにはビタミンDの働きを高める働きがあり、同時に摂取することで相乗効果が期待できるからです。なお、ビタミンKは納豆にも豊富に含まれますので、毎日1パック食べられれば、ビタミンKをサプリメントで補わなくても大丈夫です。

ここまで、ビタミンDについて詳しく紹介してきました。しかし、免疫機能をアップさせるのはビタミンDだけの役割ではなく、バランスのいい食事や睡眠、良好な腸内環境も大切な要因となります。毎年訪れる花粉シーズンに向けて、日頃から総合的にメンテナンスすることを心がけましょう。

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