• 2021年4月13日
  • 2022年5月12日

自律神経を乱す夜勤。その「なんとなくの体調不調」食事で整えましょう

 

「夜勤のあとはなんとなく調子が悪い」という経験は多くの看護師さんが持っていると思います。だるい、頭が重い、やる気も出ないし、便通も乱れてしまう……。その「なんとなくの不調」は「自律神経の乱れ」が原因かもしれません。

自律神経は、自分の意思と関係なく体をコントロールしている神経で、血流や体温、睡眠など調整しています。しかし、夜勤などによる不規則な生活が続くと自律神経のバランスが乱れてしまい、様々な体調不良を招くのです。ちょっとした食事の工夫で自律神経の乱れをカバーするコツを紹介します。

管理栄養士・分子栄養学カウンセラー/篠塚明日香 写真/櫻井健司

自律神経は食事でコントロールできる

まず、「なんとなく調子が悪い」という状態の原因となる、自律神経について簡単に説明しておきましょう。自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、この二つがバランスよく働いていることが健康を維持するためのポイントとなります。

車にたとえると、交感神経にはアクセルのような役割があり、集中し活動的になるときに働く神経。一方の副交感神経には、ブレーキのような役割があり、リラックスしたり深く眠るときに働く神経で、これらはシーソーのような関係(下図)で働いています。

交感神経と副交感神経 交換神経と副交感神経の関係_図

夜勤では、本来寝ている時間に活動するため、交感神経が働きすぎの状態に……。そして、交感神経が働きすぎると、血管が収縮して血流が悪くなるため、肩こりや頭痛が起きやすくなってしまいます。そうした「夜勤乱れの不調」を回避するコツは、アクセルを踏みっぱなしにした状態の交感神経をしずめて、副交感神経のスイッチを入れてあげることです。

ここで注目してほしいのは、さきほどの図で示した「腸」と「副交感神経」の関係。腸は食べ物から取り出した栄養素を吸収し、不要なものは排泄するという選択をしていますが、この活動は副交感神経が優位のときにしっかり働くようにできています。つまり、「食べること」で体をリラックスさせ、副交感神経のスイッチを入れれば、過度なアクセル状態をリセットできるのです。

ちなみに、とても悲しいことや腹立たしいことがあると、食欲がなくなったりもしますが、それは気持ちの乱れが交感神経を刺激して、腸の働きが抑制された結果。このように自律神経と腸や血管、筋肉の働きには密接な関係があるのです。

自律神経を整える食べ方のコツは食事の間隔を空けないこと

では、副交感神経のスイッチを入れるためには、どんな食べ方が良いのでしょうか? ポイントは「食事の間隔をあけすぎないこと」です。

食事の間隔をあけすぎると、体は脂肪や筋肉を分解してエネルギーをつくろうとします。そのとき、体内には「エネルギーをつくりましょう」という指令を出すホルモンが分泌されるのですが、そうしたホルモンのいくつかは交感神経を刺激する作用を持っています。たとえば、アドレナリンもその一つ。アドレナリンは闘争心のホルモンともいわれており、交感神経をまさにアクセルを踏んだ状態にします(動物が神経をとがらせて獲物を狙うような状態をイメージしてください)。

そして、空腹の時間が長いほどアドレナリンが分泌されるため、たいした理由もないのに神経過敏になったり、小さなことでイライラしたりすることにもなりかねません。そうした状態を防ぐためにも、定間隔で食事の時間をつくることが大切なのです。

食事は基本的には1日3回が理想ですが、勤務時間が長いとなかなかそうもいかないと思います。そんなときは、1回の食事を数回にわけ、3回以上でとるといいでしょう。早めの時間におにぎりなどを食べておき、その後の休憩時間に汁物やおかずを食べるという形でも大丈夫です。

そうやって長時間の空腹をさけながら、“アクセルを踏みっぱなしにした状態をつくらないことと、食事で腸を動かすことを心がけ、体を一時的なリラックス状態にするのが自律神経を整えるポイント。とはいえ、立ったまま早食いしているようでは効果も半減します。食事のときは、意識してリラックスするように心がけましょう。

軽めの食事におススメその? 雑穀おにぎり

続いては、定間隔で食事をとる際に「なにを食べたらよいか」をご紹介しましょう。

おすすめの主食は、雑穀米のおにぎりです。白米にはエネルギーのもとになる糖分が豊富に含まれていますが、糖分はビタミンやミネラルがないと、エネルギーにつくり変えることができません。そこで、ビタミンB群やミネラルを多く含んだ雑穀を一緒にとるわけです。

エネルギー切れを起こすと交感神経を刺激してしまうので、雑穀米のおにぎりのように「安定してエネルギーをつくり出せる食事」はとても大事! 雑穀には腸内環境をよくする食物繊維も豊富に含まれているので、糖分の吸収スピードがゆっくりになって、腹持ちもよくなりますよ。

調理の方法は、白米を炊くときに雑穀を混ぜるだけ。手間がかからず簡単なうえに、プチプチとした食感がよく噛むことにもつながり、食べ過ぎの防止にもなります。なお、便秘しやすい人は水溶性食物繊維の多い押し麦を、つぶつぶの食感が気になる人はキビやヒエなどの小粒のものを選ぶのがおすすめです。

とはいえ、食事で一番大切なのはおいしく食べること。いろいろな雑穀を試して、好みのものを選ぶようにしましょう。時間に余裕があるときは、のりを巻いてみるとミネラルの補給にも役立ちます。

軽めの食事におススメその? お湯を入れるだけの簡単味噌汁

味噌汁は、リラックスするためのホルモン合成に必要なたんぱく質とミネラルが豊富にとれるメニューです。また、胃腸を温めることで血流がよくなって、内臓の働きが活発になるので副交感神経のスイッチも入れやすくなります。

ポイントは材料選びですが、味噌はきちんと発酵したもの、だしは魚や昆布でとった自然なものを選ぶのが理想です。ではさっそく、手軽につくれて職場の冷蔵庫に保管できる、栄養豊富な即席味噌汁のつくり方をご紹介しましょう。

<即席みそ汁の材料>
□味噌
□かつお粉、にぼし粉
□乾燥わかめ、ネギ、おろし生姜など

まずは、味噌選びから。きちんと発酵させた味噌には乳酸菌をはじめとする“腸にいい菌”がたくさん含まれており、栄養の吸収をよくする働きがあります。選ぶときのチェックポイントは、パッケージに穴が空けてあることと、生みその表示があること。パッケージに穴が空いているのは、乳酸菌から発生するガスでパッケージがふくらみ、破損してしまうのを防ぐためで、「まだ発酵が進んでいる証拠」でもあるんですよ。

だしでおすすめなのは、かつお粉や煮干し粉。粉末になっているので、調理の手間がないうえに、ミネラルの補給にもなります。具には乾燥わかめやネギを使うといいでしょう。冷えが気になる人は、おろし生姜を加えるとベターです。

以上の材料を混ぜ合わせて、冷蔵庫に保管しておけば準備はOK。適量の味噌をカップに入れ、お湯を注げば、あっという間に即席味噌汁のできあがりです。最近は、味噌玉が流行していますが、丸めるのに手間がかかるのでタッパーでグリグリと混ぜるだけで十分でしょう。

まとめ~夜勤で乱れやすい自律神経を整えるためのコツ~

最後に、夜勤で乱れやすい自律神経を整えるためのコツをまとめておきます。

自律神経を整えるコツ
[1]長時間の空腹をつくらない
[2]おすすめの軽食は雑穀おにぎり
[3]味噌と魚粉で即席味噌汁習慣を身につける

お腹の調子は自律神経の支配下にあること、そして食事のタイミングが影響を与えること。この二つを知っておくだけで、夜勤だけでなく旅行時や普段の体調管理にも応用できると思います。しっかり意識して、ぜひ実践してみてください。

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