心臓のリズムや電気的活動を評価する心電図は、循環器領域で重要な検査方法の1つです。特に、「サイナス」とは心臓が正常なリズムで動いている状態を指します。しかし、不整脈や伝導障害が生じた場合、心臓のリズムや血流に異常が発生し、放置すれば重篤な病態を引き起こすリスクがあります。
当記事では、サイナスの特徴をはじめ、正常な心電図の波形や不整脈が現れる疾患について詳しく解説します。心電図の基本的な読み方や注意すべきポイントを理解し、異常発見の早期対応につなげましょう。
サイナスとは?
サイナス(sinus rhythm)とは、心臓のリズムが正常な状態であることを指す用語です。心臓は、洞結節と呼ばれる心臓の一部で発生した電気刺激が心房・房室結節・心室へ順に伝わることで、全身の血管に血液を送り出す役割を果たします。この状態を、正常洞調律(別名:洞調律・基本洞調律・サイナスリズムなど)といい、心電図上で確認される特徴的な波形によって診断されます。
正常洞調律の心拍数は1分間に60~100回です。この範囲を超える場合は徐脈や頻脈と見なされることがあります。心電図では、P波・QRS波・T波が規則的に現れ、P波の後に必ずQRS波が続く「P:QRS=1:1」の関係が確認されます。
心臓のリズムが正常であることは、全身の血流が適切に保たれるうえで重要です。心電図波形と血圧の変化が連動し、拍動が安定している状態なら、サイナスであるといえます。心拍やリズムに異常が生じた場合は不整脈の恐れがあるため、注意が必要です。
正常な心電図の見方

心電図は、心臓の電気的活動を波形として記録する検査方法です。心臓を動かす最初のスイッチともいえる洞結節は、電気刺激を発しています。心臓が規則正しく収縮・拡張を繰り返すためには、洞結節で生じた電気刺激が心房・房室結節・心室へと適切に伝わらなければなりません。心筋の電気的な動きを感知し、P波・QRS波・T波などの波形として表示するのが、心電図です。
正常な心電図は、心拍数が60~100回/分の範囲内で、かつ一定のリズムで波形が繰り返されます。これが「サイナス」と呼ばれる状態です。心電図は、心臓のリズム異常や構造的な問題を早期に発見する際に効果的です。以下では、心電図を見る際に注目すべきポイントを説明します。
心電図を見るときのチェックポイント
心電図を正しく理解するためには、各波形とそれに対応する心臓の動きを把握することが大切です。
- P波の変化
P波は心房の興奮を表します。P波が正常であれば、洞結節が規則的に活動している証拠です。P波が欠けている場合、洞結節の機能不全や心房の異常が疑われます。また、P波の形状の変化から心房の拡大や弁膜症の兆候を推測できます。 - P波からQ波までの時間
PQ時間は洞結節から房室結節を経て心室に電気が到達するまでの時間を示します。正常範囲は0.12~0.20秒です。延長している場合は房室伝導の障害(房室ブロック)、短縮している場合は異常な電気経路(WPW症候群など)が考えられます。 - R波の高さ
R波は心室が収縮する際に流れる電気の強さを示す波形です。R波が高すぎる場合は心肥大、特に左室肥大が疑われます。 - QRS波の幅
QRS波の幅は心室の脱分極にかかる時間を示します。正常範囲は0.10秒以下です。これを超える場合、脚ブロックや心筋虚血など心室内の電気伝導に問題がある可能性があります。 - ST部の変化
ST部分は心室が収縮した後の再分極を示す波形です。ST部分が基線より下がる(ST低下)場合は心筋虚血や狭心症、上がる(ST上昇)場合は心筋梗塞や心膜炎の可能性があります。 - T波の変化
T波は心室が元の状態に戻る動きを示す波形です。T波が平坦になる場合や陰性になる場合、心筋虚血や心肥大が疑われますが、健康な女性や肥満の方でも見られるため識別が必要となります。逆に尖鋭化(増大)している場合は高カリウム血症や急性心筋梗塞の可能性があります。 - QT時間の変化
QT時間は心臓が電気的に興奮してから回復するまでの時間を示す波形です。正常範囲は0.36秒以上0.44秒未満で、延長すると心室細動などの危険な不整脈を引き起こすことがあり、突然死のリスクが高まります。
これらのポイントを押さえると、心電図の情報を通じて心臓の状態を把握しやすくなり、ミスの防止や異常発生時の適切な対処が可能です。特に不整脈や心筋虚血など、生命に関わる病気を見逃さないように注意しましょう。
不整脈が現れる疾患

不整脈は、心臓のリズムに異常が見られる状態です。脈拍が遅くなる徐脈や速くなる頻脈、不規則な拍動などが含まれます。不整脈には生理的なものと病的なものの2タイプに大別できます。生理的な不整脈は、運動の負担やストレスによる交感神経の緊張が理由の一時的な変化であり、健康面への大きな影響はまずなく、治療の必要もありません。
一方、病的な不整脈は心臓疾患の一部として現れる場合が多く、症状やリスクに応じた治療が必要です。以下では、不整脈を伴う代表的な疾患を4つ解説します。
期外収縮
期外収縮は、正常な心拍の間に早い拍動が入り込む不整脈です。心房から発生する場合を心房性期外収縮、心室から発生する場合を心室性期外収縮と呼びます。健康な人でもよく見られ、加齢に伴い発生頻度が増加します。
多くの場合、症状は軽微または無症状ですが、胸の違和感や動悸を覚えることがあります。心室性期外収縮が頻発する場合、心筋梗塞や心筋症といった基礎疾患が隠れている可能性があるため注意が必要です。また、心房細動・心室頻拍・心室細動を生じるケースも珍しくありません。
期外収縮の悪性度を調べる際は、ホルター心電図やトレッドミル負荷試験が行われます。心室性の場合は、心エコーや胸部X線撮影などを併用し、基礎疾患の有無を確認します。
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「不整脈」)
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「不整脈とは」)
(出典:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター「期外収縮」)
(出典:独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院「カテーテル治療対象疾患 期外収縮(きがいしゅうしゅく)」)
洞不全症候群
洞不全症候群は、心臓の正常なリズムを司る洞結節の機能低下により、心拍数が極端に遅くなる疾患です。心房の異常を伴うことが多く、洞性徐脈と頻脈が交互に現れる場合もあります。心拍が一時的に停止するケースも少なくありません。
症状としてよく現れるのは、倦怠感や息切れ、めまい、失神などです。洞不全症候群は、通常の心電図に加え、ホルター心電図を用いて24時間の記録を行います。一時的な不整脈が疑われる場合は、イベント心電計の使用が有効です。また、心エコーで心機能や構造異常を確認します。
特に患者さんが失神やめまいを訴える場合、症状の原因が洞不全症候群によるものかの確定が大切です。薬剤成分や基礎疾患の可能性もあるため、総合的な検査が求められます。
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「不整脈」)
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「不整脈とは」)
(出典:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター「洞不全症候群」)
(出典:東京大学医学部附属病院循環器内科「不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)」)
房室ブロック
房室ブロックは、心房で発生した電気信号が心室に伝わる過程で遮断される不整脈です。重症度に応じて第1度・第2度・第3度(完全房室ブロック)に分類されます。房室ブロックはほかの疾患との関係性が強く、洞不全症候群と比べて心停止や突然死に至りやすいのが特徴です。
軽度の場合は無症状ですが、重度の場合は徐脈による倦怠感や息切れ、失神が生じます。心電図での診断に加え、基礎疾患の有無を調べるため、心エコーや血液検査を併用するのが一般的です。ホルター心電図やトレッドミル負荷試験などを行う場合もあります。
軽症では経過観察が行われますが、症状が頻繁な場合や重度の房室ブロックではペースメーカーの植え込みが必要です。
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「不整脈」)
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「不整脈とは」)
(出典:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター「房室ブロック」)
WPW症候群
WPW症候群(ウルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)は、心房と心室を結ぶ正規の伝導路以外の場所に副伝導路(ケント束)が存在する疾患です。生まれつきの疾患であり、電気信号が異常な組織経路を通ることで不整脈を引き起こします。
主な症例は動悸や息苦しさで、脈拍が急激に速くなる頻拍発作が特徴です。発作が長時間続くと心不全や意識障害を引き起こす場合があります。まれに致死的不整脈である心室細動に移行するケースもあるため、注意が必要です。
心電図では、特徴的なデルタ波やPQ間隔の短縮、QRS時間の延長があるかを確認します。無症状の場合は経過観察が基本です。ただし、症状が頻発する場合や重症の発作がある場合は、専門医への相談が推奨されます。
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「不整脈」)
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「不整脈とは」)
(出典:独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院「カテーテル治療対象疾患 WPW症候群」)
まとめ
正常な心電図波形の特性を理解することで、疾患を早期に特定し、適切な治療を進められます。心臓の健康は全身の血流や臓器機能に直結するため、心電図を活用しながら、早期発見と適切な管理を行いましょう。
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※当記事は2024年12月時点の情報をもとに作成しています
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